【-St.Sera's Temple-】

Chapter1 ユウ・レベリオン~Secret of myself~

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匿名ユーザー

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>「はぁ・・・はぁ・・・っ」
>体中が軋む様に痛む。息は上がり、酸素を取り入れようにも喉が渇いて張り付き、まともに呼吸すらできない。口内には鉄臭い血独特の味が広がる。
>冷静になろうとすればする程、己の怪我の酷さに気づき、精神は乱れるばかり。
>
>とにかくここを離れなければ━━━━━
>俺はそうとだけ心に念じ、数多の追手達の血を纏った剣を握り締めて月明かりの下を急ぐ。




>体の感覚が鈍くなってきた。明らかに重症なのだろうが、痛みを感じなくなってきたおかげで、多少頭が回るようになってきたな・・・
>一息ついて、辺りを見回してみる。未だに辺りを森が包んでいるが、発した魔力波の干渉率が低いところをみると、あと少しで抜けられそうだ。
>・・・だが空間の光子濃度が高くなってきたところをみると、そろそろ&html(<ruby><rb>卯</rb><rp></rp><rt>ボウ</rt><rp>)の刻になる。夜が明ける前にここを抜けて街を探さないと・・・
>
>そう思って歩みを進めようとしたその瞬間━━━
>「・・・誰だ。」
>「・・・ほう、簡単な攪乱結界を張っていたというのに。気づかれましたか。」
>禍々しい魔力を背中に感じ、剣を構えて振り向く。そこに立っていたのは、細身長身の男か。魔導師の様だが、暗がりと霞んだ目のせいでその姿を確実に捉えることが出来ない。
>「貴方の両親が使っていた攪乱結界、何かと使えそうだったので少々拝借させてもらいましたが・・・どうやら思ったほど役には立たないようですねぇ。」
>「そうか・・・貴様が村を襲ったのか。」
>「ええ、ちょっと探し物をしていましてね。無礼かとは思いましたが村ごと引っ繰り返させてもらいました。」
>「貴様・・・!」
>顔が見えなくとも嘲笑っているのが分かる、この男・・・この男が村を・・・親父と母さんを・・・!
>「おっと、そんな怖い顔をするのはまだ早いですよ。ちょっと貴方に聞きたい事が・・・ぬ!?」
>男の声も聞かず俺は斬りかかる。だが、男は素早い動きでそれをかわす。
>「ちょっと貴方、人の話は最後まで聞くのが礼儀というものですよ!」
>「貴様なんぞに礼儀を諭される言われはない!はぁああああッッ!!」
>振り下ろした剣を、続けざま横に薙ぎ払う。男は舌打ちしながら後ろに飛び退るが、俺はその隙を見逃さない。男を睨みつけると、男の頭上に雷が発生する。
>「何ッ!?うおッ!!」
>雷撃魔法、サンダーストームが男もろとも地を撃つ。雷は地面を抉り、砂塵を巻き上げる。
>
>・・・やったのか・・・?
>
>「・・・ただの荒くれ剣士かと思っていたが、&html(<ruby><rb>独立詠唱</rb><rp></rp><rt>オートスペル</rt><rp>)とはな。やってくれるではないですか。」
>砂煙の向こうから声が聞こえたかと思うと、次に見えたのは槍の様にそれを突き抜けてくる男の姿。
>
>夜明け前の森に金属同士がぶつかり合う、耳を&html(<ruby><rb>劈</rb><rp></rp><rt>つんざ</rt><rp>)く様な音が響き渡る。
>
>俺は間一髪で男が繰り出した斬撃を受け止めていた。
>「・・・貴様、魔導師かと思っていたが、剣の腕まで達者なのかッ・・・!」
>「無礼な行いをした上に私を見くびっていたのか、どこまでも失礼な方ですねぇ!」
>男が切り返したサーベルを再度受け止めるが、その衝撃に腕が悲鳴を上げる。くそう、この細身の体のどこにこんな力が・・・
>「気が変わりました。質問をする前に・・・魔法とはどういうものか思い知らせてあげましょう。」
>「何だと・・・ッ!」
>刹那、男のサーベルが簡単に俺の剣を宙へ弾き飛ばす。次に気がついた時には・・・俺の体は後ろの大木に叩きつけられていた。
>その後、俺の体を蝕む雷撃。
>「ぐぁあああぁああっッッ!?」
>馬鹿な・・・剣を弾き飛ばされてからの幾許か、俺は何をされたというんだ・・・ッ
>「零距離で上級魔法、ユピテルサンダーを叩き込ませてもらいました。これでも、威力は九割五分七厘程カットしたのですがねぇ・・・」
>顔を上げると男が俺を見下ろしていた。いかにもつまらなさそうな声でそう呟いて・・・
>「さて、では私の質問に答えてもらいますよ。貴方達レベリオン一族が代々守り継いできたはずの『証』はどこへいったのです?」
>「・・・『証』・・・だ・・・と・・・」
>「ええ、てっきりレベリオン夫妻が隠し持っていると思っていたのですが、見つからなかったのです。在り処を聞こうにも既に息絶えていましてねぇ。」
>男の言っている事が・・・良く分からない。
>「さぁ、答えてもらいますよ、ユウ・レベリオンよ。正当な血筋である貴方なら知っているはずだ。」
>男がサーベルの切っ先を俺の眼前に向ける。だが、俺が放つ言葉は一つだけ。
>「・・・知ら・・・ん・・・」
>「・・・何?」
>「俺は確かに・・・レベリオン一族の末裔・・・ユウ・レベリオンだ・・・だ・・・が・・・『証』・・・など・・・聞いたことも・・・ない・・・」
>「この場に及んで嘘とは関心しませんね。貴方が知らないはずがない。私の術を使えば、無理矢理口を割らせる事も出来るのですよ。」
>サーベルが更に近づく。そして男は執拗に問い詰めてくる。
>「もう一度聞く。『証』はどこにあるのです。」
>「知らん・・・ものは・・・知らん・・・」
>俺はそうとしか答えるつもりがなかった・・・否、俺には・・・そうとしか答えられなかった。
>「・・・仕方が無いですね。あまり無理矢理という手法は好みでないのですが・・・」
>男の左手に夥しい量の魔力が収束していくのが分かる。意識が肉体に動けと叱咤するが、傷つき過ぎたこの体は、もう動こうとはしてくれない。
>親父と母さんに生き延びると・・・約束したのに・・・なんて・・・ザマ・・・だ・・・
>「さて、その意識、我が手に下って頂きますよ・・・!」
>男の左手が天に突き上げられる、その手が振り下ろされれば・・・俺もどうかなってしまう・・・か・・・
>
>・・・さぁ、やればいいじゃないか━━━
>
>心の中でそう呟いて、男の左手が振り下ろされるのを待つ。
>・・・だが、その左手は思わぬ方向に向くことになる。・・・男はその左手を・・・背後から飛んできた何かを弾き飛ばすのに使った様だ。
>「弱いものいじめは、それくらいにしておいたらどう?」
>男の後ろから、凛々しい女性の声がする。あれは・・・ハンター・・・か・・・
>「背後からいきなり矢を射るとは・・・レベリオンの子孫といい、貴方といい・・・無礼が過ぎるのではないですかッ!?」
>男は矢を払った左手から、凝縮した魔力を撃ち放つ。それは確実にハンターを捉えていたが・・・
>ハンターに直撃する前に、それは離散してしまう。
>「何だと・・・ッ!?」
>「私の仲間に・・・危害を加える事は許さない。」
>離散させたのは、割り込んできたクルセイダーの盾によるものであった。
>「聡明なる神の慈悲を乞いし我ここに在りき。我、その大いなる祝福をもって、汝に守護の天蓋を与えん・・・キリエエレイソン!!」
>後ろから現れたプリーストの男性が、クルセイダーの女性を援護する。
>そして、剣を抜き男に向け、クルセイダーは続ける。
>「その者を開放なさい。さもなくば、我々は貴様を断罪せねばならない。」
>「ぬぅぅッ・・・どいつもこいつも私の邪魔を・・・」
>男の足元に大魔方陣が描かれる。だめだ・・・この3人では奴には適わない・・・
>「俺に・・・構う・・・な・・・逃げろ・・・」
>何とか声に出して警告するが、3人には届かない。その間にも大魔方陣は肥大していく。
>・・・一瞬が何秒にも感じられる瞬間。その矛盾を打ち破ったのは、男を照らす一筋の陽光だった。気がつけば、木々の間から光が漏れ始めていた。
>「くッ!しまった、日が出てしまったかッ・・・!」
>男は差し込む日光を避けるように木々の間に潜り込む。一体どうしたというのだろう・・・
>「復活したばかりのこの身体では・・・くそう・・・貴方達!この報復は必ずして差し上げますよッ!」
>「貴様!逃げるのか!?」
>ハンターは逃げる男に向かって矢を引き絞る。
>「ユウ・レベリオン・・・貴方が本当に『証』の存在を知らないというのなら・・・貴方は余程、両親に信用されていなかった様ですねぇ!」
>「何だ・・・と・・・?」
>「どちらにしろ、私が先に『証』を手に入れ、またその力を我が物にしてみせますよ・・・貴方は、レベリオン一族の責務を果たせぬまま、死を迎えるのです!」
>矢が放たれる・・・!
>「それでは皆様、またどこかでお会いしましょう・・・次は手加減しませんからね!ふははははははは・・・!」
>・・・だが矢は、男が居たはずのその場所を通り抜けただけだった・・・
>「チッ、逃げられたようね。」
>「イシュタル、男の事はもういいです。今はそれよりもストレイツォ、少年の介抱を。」
>「分かっている。・・・少年、大丈夫か?」
>プリーストが俺の前に屈み込んでくる。だが俺は、頭の中に飛び交う2つの言葉に意識を取られていた。
>
>『証』━━━レベリオン一族の責務━━━
>
>「少年、しっかりするんだ!」
>「・・・は・・・はっ・・・大丈・・・夫・・・なわけ・・・ない・・・だ・・・ろ・・・」
>もう考える力も残されていなかった。そうとだけ呟くと、意識は闇の淵へ落ちていった・・・
>







>
>・・・本当に、ここに村があったの・・・?
>本来、レベリオン一族とその側近が住んでいたはずの村は、そう疑いたくなるほど・・・完膚なきまでに破壊されていた。
>「瞬、もう一度村を端から調べて頂戴。わたしは、夫妻の家があった場所を調べてみるわ。」
>「了解。・・・まだここも安全とは言えません。アーク様もお気をつけて・・・」
>「瞬・・・わたしを誰だと思っているの?」
>「・・・申し訳ありません、失言でした。それでは。」
>会釈をすると、瞬と呼ばれたアサシンはその場を後にする。
>・・・さて、わたしも行こう・・・
>
>
>
>
>夫妻の家も例外では無かった。その殆どが吹き飛ばされ、礎にあたる部分がその原型を残しているに過ぎなかった。
>・・・フローリアが言っていた・・・確かこの辺ね。
>
>フローリアの夫、アイザック・レベリオンは、かつてから多少の予知能力を有しており、わたしにこう言っていた。
>『私が生きている間に・・・一族に災厄が降りかかるだろう。それまでに我々は決断せねばならない。』
>当時復活して間も無かったわたしは、その意味を分かりかねたが、今となれば信じざるを得ない。その言葉にもう少し理解を示していれば・・・
>・・・そう考えようとして止めた。今更後悔しても仕方が無い。今となってわたしが出来るのは・・・あの二人が残した意志を知り、それを受け継ぐ事。
>フローリアに教えられた場所に立ち、解呪魔法を唱える━━━魔力キーというパスワードの様なものがかかっており、真相を知らないと解除出来ない仕組みだ。
>解除した空間から出てきたのは、一つの文書であった。
>紐を解き、中を読む━━━
>
>・・・そこには、夫妻らが残した意志の一部始終が記されていた。
>
>「・・・そう・・・フローリア、アイザック・・・それがあなた達夫妻の下した&html(<ruby><rb>決断</rb><rp></rp><rt>・・</rt><rp>)なのね・・・」
>わたしは覚悟を決めようと空を仰ぐ。廃墟と化した村が目に入らないように・・・
>「元々は、わたしが原因だったんだもの。『証』に縛られた呪われし運命からユウを開放するのは、わたしの責務・・・」
>唇を噛み締め、わたしは今一度廃墟を見据えて呟く。
>「あなた達の意志、確かに受け継いだわ。ユウに辛い思いはさせない・・・それがわたしの&html(<ruby><rb>決断</rb><rp></rp><rt>・・</rt><rp>)。」
>
>瞬が戻ってくるまで・・・わたしは辛くて、悲しくて、そして嬉しくて・・・涙を流した。
>




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