それで、浅田選手はトリノに出てはいけないの?


たしかに浅田選手の能力は現在でも極めて高く、既にシニアのトップ選手に迫るものがあります。ですから、浅田選手個人について言えば、年齢による出場制限は合理的根拠を持ちません。


しかし、フィギュアスケートという競技全体を考えると、浅田選手の特例を認めないことには合理的な根拠があります。

というのは、たしかに浅田選手は色々な意味で規格外の選手であり、トリノ・オリンピックに出たからといって競技寿命を縮める可能性はさほど大きくありませんけれども、あるジュニア選手がそういった桁外れの天才なのか、あるいは異常な早期教育を施されたいびつな選手なのかを判定する合理的な基準が設定できない以上、ここで浅田選手の特例を認めると、心身に過大な負担をかけて育成された選手であっても、グランプリ・シリーズで浅田選手と同等の成績を上げたならば、オリンピックや世界選手権に出さざるを得なくなるからです。


将来的に、例えば複数のスポーツ医学の専門家による診断書があれば年齢制限を解除出来るようにするなど、より合理的な制度が考案される可能性はありますが、そういった方策が未だ具体的な議論の場に出てきていない段階で、超法規的に浅田選手の出場を認めることは、将来に禍根を残すのではないでしょうか。

別の言い方をすると、フィギュアスケート競技におけるジュニア選手の心身の保護を、現在の年齢制限よりもより合理的に実現出来る対案が提出されない限り、年齢制限を解除することのリスクは、それによって得られるメリットより大きいという事です。




最終更新:2005年12月20日 19:12