駄目もとで嘆願書を出すくらい、やってくれても良いじゃないか!


事態はそう単純ではありません。まず、フィギュアスケート界が、残念ながら各国の思惑や政治的圧力、裏取引などを完全には排除出来ていない世界であるということをアタマに入れておいてください。それは端的にはルールづくりや審判の点数の甘辛という形で、競技に影響を与えます。


さて、ご存じのように現在の日本女子シングルの陣容は、掛け値なしに世界最高です。しかし、どちらかと言えば後発でしかも白人系ではない国である日本のこのような躍進が、世界のどこからも好意的に見られているとは言えません。日本のファンの中には、昨年の荒川選手の世界選手権制覇以降、目に見えて日本人選手へのジャッジが辛くなったと考えている人もいます。


そのような中、新たに浅田選手のような極めて高い能力を持つ選手を、特例でオリンピックに出せと日本から言い出したとしたら、日本への風当たりはさらに強いものになり、日本人選手に不利なルール変更や辛いジャッジングが出てくる可能性も、皆無とは言い切れません。


それはあくまでも可能性であり、しかも藪の中で行われる類のものですから、その存在は明確な形では立証されないでしょう。
しかし、実際にオリンピックで競技に臨む選手たちが、ジャッジに対して疑心暗鬼に陥り、実力を発揮出来なくなる可能性は明確に増大します。


加えて、嘆願書を出すということは、日本スケート連盟が自分たちよりも浅田選手を重要なものと考えているという意味に受け取られるでしょう。そのような心境の選手が、持てる実力を出し切る可能性は小さいと言わざるを得ません。日本スケート連盟は浅田選手の為にあるのではありません。3人の代表選手に最高の演技が出来る環境を用意するのが、日本スケート連盟の役割のはずです。


一言で言えば、期待出来るリターンに対して、発生するリスクが巨大過ぎるのです。
最終更新:2005年12月20日 18:20