Royal Guard
第9話 森のくまさん
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あるーひ、もりのなーか、くまさーんに、でああぁぁった。
クマじゃないが。
でああぁぁったー。
というわけで、出会ったうさぎの名前は熱暴走。暴走さんと呼ぶといやがるので熱たんと呼ぶことにした。
熱たんは、学園でよく遊ぶらしく、登校路の近道などを知っていた。
そのおかげで、わたしは遅刻をまぬがれることができたのだ。
そして、当初の狙い通り転校生っぽいフラグ立てに成功したのだ。
「あーーっ、さっきのぱんつのぞき魔!」
先生にうながされて入った教室に、熱たんがいたのだ。
「あ、あれは君が勝手に見せてただけだろ!」
「ひどーーい、やっぱり見ていたのね!」
「ちょっと、ホームルーム中よ!!」
「いいんじゃない、おもしろそうだし」
(以下アドリブ)
って、人類補完すんな。
「えっと、わたしの名前はガズエルです。得意な魔術は五大元素(アベレージ・ワン)だけど、特にあげるとしたら土系でーす。好みのタイプはアスランくん。好きな男性声優は石田さん。女性声優ならマリ姉でーす」
担任のテンレン先生に自己紹介を簡単にしろといわれて、5分ほど語っていると、どたどたと廊下から怪獣の足音みたいなのが聞こえてきた。
「ぇぇぇぇぇええええるうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
そして声がして、その声はドップラー効果しながら遠ざかっていった。
人の名前でドップラー効果するやつなんて一人しか思い浮かばない。
駄菓子菓子、わたしは無視して話を続けた。
そいつが入ってきたのはさらに3分後のことだった。
ばぁぁぁん、とけたたましい音を立てて教室のドアが開いた。
ドアの向こう側には想像どおり、姉がいた。
「える! あんたわたしの携帯のアラームきっていったでしょ!」
「失礼な。そんなことするわけないじゃん。ドライブモードにしただけだよ」
「なお悪いわっ! あれの直し方あたし知らないんだからっ!!」
「そうなることも知っていた」
「それ、サムライソード隠してる」
「どうみても背車刀までは詠めていません」
てなわけで、わたしはこっそりと夜中のうちにアルの携帯をドライブモードにして、アラームがなっても気がつかないように細工をしたのだ。
うちにはめざまし時計がないのでこれをやると、この姉はずーーーっと眠りこけているという寸法だ。
マナーモードでもよかったけど、たまにぶるってる音でも起きることがあるので念のためドライブモードにしたんだけど…。
「よく起きれたね」
一回寝るとよほどのことがないかぎり起きてくるはずないんだけど…。
「あんたの携帯が鳴る音で起きたの」
「……しまったあああぁぁぁぁぁ」
前の学校のくせで携帯をおいてきてしまった。
わたしは校則だけは守るのだ。
ううぅ…次からは自分の携帯のことも念頭におこう。
気がつくと、みんなぽかーんとあほ顔していた。
とりあえず、このままじゃまずいかなって思っていると、アルがこほんと咳払いをして、何事もなかったように笑顔で話しだした。
「えっと、わたしの名前はガズアルです。得意な魔術は五大元素(アベレージ・ワン)だけど、特にあげるとしたら水系でーす。好みのタイプはライカンくん。好きな男性声優は大塚明夫。女性声優なら榊原良子でーす」
なんてどっかで聞いたフレーズを繋げた。
「ちなみに、そっちのひんぬーが妹であたしが姉やってます」
ぷちぷち。
は? 今、こいつは何と言ったのか――――。
「双子でなんでここまで違うのかほんと謎よねぇ。あたしは●カップもあるのにエルなんて●もいかないもんねぇ。によによ」
ぷっちーーーーーん。
このおんなは 、 う る ない
姉 さ ん は 、 許 さ な い。
「声は遥かに―――」
わたしが呪文詠唱に入ると、アルの足元に魔法陣がうかびあがった。
「ちょwwおまwwwww」
「―――私の足は緑を覆う」
ばこん!
呪文の完成とともに、うかびあがった魔法陣を中心に地割れが起きた。
わたしの得意な魔術のうちのひとつ、アースクェイクが発動したのだ。
「えええぇぇぇぇるぅぅぅぅぅおぼえてなさぁぁぁぁあいいいいぃぃぃぃぃぃ」
落下して遠ざかるだけなのになぜかドップラー効果を残しながらアルは地割れに呑まれていった。
成敗!
しかし、これで終わったわけではない。
いつ、なんどき、第二第三のガズアルが現れるとも限らない。
天才美少女魔導士ガズエルの戦いは始まったばかりなのだ。
この後、わたしは罰で教室清掃ソロ活動をしていたのは言うまでもない