第１話 疾風！ ザブン●ル - Royal Guard

　―――――――ここは地の果て流されてオレ。
　と言っても、別に今日もさすらい涙も枯れてるわけじゃないんだけどね。
　はぁ…なんでこんなんなっちゃったかな。
　周りをみまわすと目にとびこんでくるのは海。海。海。
　でも龍咲さんちの令嬢は関係ありません。
　そして、正面にこれでもかってくらい深そうなまっくら森があるわけだけど…。
　まぁ。要するにアレですよ。遭難ですよ。
　べ、別に迷ったわけじゃないんだからね！
　意図的に遭難させられたんだから！！
　いや。マジです。
　事の発端は…あのバカ姉のせい。
　まいどのことながらろくなことをしないバカ姉のせい。
　今からさかのぼること幾星霜。

「エルウウウウゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウ」
　一人時間差ドップラー効果で人を呼ぶな。
　と心の中でつっこんでいると、部屋のドアをぶちやぶって青い猛獣が飛び込んできた。
「どったの？」
　毎度のことだから別にどーこー言わずに答えてあげた。
　もちろんあとで半壊してぶらぶらしてるドアは直させるけど。
「腐腐腐腐腐……」
　人がめずらしく普通に受け答えしてあげたのにコイツはによによといやらしく笑っていた。
　うわぁー。によによしすぎて顔のデッサン狂ちゃってるよ。
　わたしと同じ顔で変な表情するなと言いたい。
「ジャーーーン！　なんとカバリア島宝探しツアーの懸賞が当たったのだ！！」
　赤い封筒をばーーんと掲げて叫ぶケモノ。
　カバリア島……ってなんだっけ？
　マクロス艦が落ちた所…は南アタリア島か。
　んーーーー。わからん。
「へぇ。そうなんだ。よかったね。いってらっしゃい」
「は？」
　適当にあしらうとぽかーんとアホ顔になる。
　お。アレはキレかかってる顔だ。
「キレてないっすよ。自分キレさせたらたいしたモンっすよ」
「人の心の中読むな」
　こういうとき、双子っていうのは不便である。
「どーせあんたのことだから忘れちゃってるんでしょ」
　正解です。
「ほら。前にメガロカンパニーのヒゲが死んで遺産がどーのこーのってあったじゃん」
「ああ。アレね」
　たしか、お金持ちのオジ様が逝っちゃってその遺産を自分がたてたテーマパークに隠したとかいう話があったような。
「それでね。ご自愛クレストだかジイくえすとだとかいう旅行会社の企画で『カバリア島で一攫千金！』っていうなんのひねりもないイベントやってて……」
　なんだ――――要するに。
「殺していんだな。テメェ！」
「人の話聞け」
「だって流そうだったんだもん」
「そうか」
「びょう」
「………」
　アルは放っておいて、手に持っている赤い封筒を引ったくった。
「うわっ。趣味わるっ」
　こんなのルガール様でもつかわないってば。
　封筒止めるのにバラのシールを使うな。
　うわー。しかもアルってばシールやぶらないように剥がしてるよ。あいかわらず几帳面なやつめ。
　中を開けると、チケットやら申し込み票なるものが入ってた。
　んと、手紙はっと………お。あった。あった。

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拝啓

　春麗らかなこの良き日にガズアル様におかれましてはますますご自愛ご発展のことと申し上げます。

　さて、この度はガズアル様が『カバリア島に一攫千金！』にて当選されたことを申し上げます。
　詳細につきましては別紙にてご案内致します。
　この機会に、多忙な日々の疲れを癒して頂きたいと存じております。
　きっとガズアル様に御満足頂けることと存じております。
　ぜひ御参加下さいまして旅の醍醐味をお味わい下さい。
　御参加下さいます際は、お手数ながら、同封の参加申し込み票に御記入の上、○月○日までにお出し下さい。
　なお、申し込みにつきましては二名までの御参加が可能となっておりますのでご友人、ご家族お誘い合わせ下さいますようご案内申し上げます。

　では、ガズアル様のご参加をお待ち申し上げます。

敬具

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　なるほど。そうか。そういうことかリリン。
「んで。アルはこれいくの？」
「もちろん」
「性的な意味で」
「………」
　あ。黙っちゃった。
「んで。二人までおっけーみたいなんだけど。
　あんたどうする？　どうせ暇でしょ？」
　ああ。それでわたしんところに来たんだ。この女。
「んーー…これって、なにでいくの？」
「多分、船だよ」
　そっか。船なんだ。それなら…いいかな。かな。
「ああ。あんた飛行機ダメだもんね。によによ」
「あんたもでしょ」
　飛行機はありえない。あんなもんが空飛ぶなんて…という理由じゃないけど。
　だめかもわからんねのガイドラインを見ても飛行機に乗れるやつは人間じゃない。鬼だ。
「いいよ。いったげる。アル一人じゃなにしでかすかわかったもんじゃないから」
「この口か。この口が言うのか」
「ひはい。ひっはるな！」

モドル