姫路のサルーン。 恐らくスロットを打つ者なら誰もが知ってる名であろう。 俺ももう何年も前からサルーンの噂を聞いていた。 その店に行けば、強烈な裏物が打てると。 もっとも その頃は、わざわざ裏物を打ちに行かずとも、 それに近いゲーム性の台を、身近で打つことができた。 そして何より「片道3時間」という距離が、出不精な俺を益々辟易とさせた。 かくして、噂は何度も耳にしながらも、俺が姫路へ旅立つ事は無かった。 あれから何年もの歳月が流れた。 かつては自分の青春そのものとも思えたスロットも、 5号機規制と同時にその魅力を失い、 俺の中のスロットへの情熱も、急速に冷めていった。 そしてスロへの熱が冷めると共に、俺の体に存在した「若さ」までもが失われた。 友達と徹夜してパチ屋に並び、閉店までスロットを打ち倒してた頃の俺は、もうどこにも居ない。 慢性的な肩こりと腰痛を抱え、3時間もスロを打てば頭痛と吐き気がしてくる。 健康診断を受ければ再検査ばかり。 5分も走れば息切れをし、急に立ち上がると目眩がする。 趣味もない。特技もない。彼女も居なけりゃ友達も居ない。 スロットに興味を無くした俺の居場所など、もはやこの地球上のどこにも存在しないのだ。 しかしこんな俺でさえ、いつか結婚して、家庭を持つのだろう。 そしていつしか、何の生き甲斐も持たない、つまらないオッサンになる。 ―――そうなる前に。 一度で良い。 俺はサルーンで裏物を打つべきではなかろうか。 噂が本当なら、そこに在るはずだ。 とうの昔に無くなってしまった、血湧き肉躍る様なスロットが。 スリルと興奮、希望と絶望。それらが入り交じった、混沌の空間が。 いつかは分からないが、そう遠くない将来、俺は必ずスロットを止める日が来る。 その前に俺は、サルーンへ行くべきなのだ。 自分が失った、スロへの情熱、若さ、そして青春を取り戻すために。
蟲:2009/09/22(火) 22:03:12
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蟲:2009/09/23(水) 11:29:32
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