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王犬・犬兵衛パニック?


「…なんでここに来たんだろう」
 今日何度目か分からないその言葉を僕はつぶやいた。無事入国審査を終え、アウトウェイ国に入国した翌日、に話がさかのぼる。まだ旅の疲れが残ったまま寝ていた朝、いきなり藩王が部屋に押しかけた。

「起きろ、相葉」
「…なんですか、こんな朝早く」
「もう昼前だ!」
「…はえ?」
 この相葉という男、普段からのんびりとしているところがある。その気になれば昼過ぎまで平気で寝ているような男である。とはいえ、その中身の人はバイトの時間がまちまちでそこまで寝れない男である。
「ところでお前、犬探しとか得意か?」
「え?…まあ、路銀稼ぎにそういうのやったりしましたけど」
「ならここに行って犬兵衛つれて帰ってこい」
「……はい!?」

 そういう理由で今僕は無名騎士藩国のお祭会場にいた。
「…何でここに来たんだろう」
 その言葉は周りの喧騒にかき消されてしまうほど弱々しいものであった。
「とはいえ…特長だけあっても、これだけにぎやかだと骨が折れるよなぁ」
 周りを見渡せば人、人、人…さすがにこう多くてはネコの子一匹探すのも一苦労しそうだ。とりあえず、観光しながら藩王から渡された王犬・犬兵衛の特徴を確認すべくメモに目を通す。
―オス、茶と白の豆芝のような雑種に見えない全長40cmのおなかぽっかりとした食い意地のはったマナーの悪い犬。―
「…食い意地が張っているならフードコートかな?それとも屋台か…」
 そう考えた時、屋台の一角から悲鳴にも似た声が聞こえる。その声に一斉に周りが振り返る。そこの人ごみを掻き分け、近づくと異臭がした。そしてその中心には探していた犬、犬兵衛がいた。そしてその周りには食べている人には申し訳ないとしか言えないものが所々に転がっている。
「何でこんな…」
 と、メモを見ると最後のほうに小さくこう書いてあった。
―ただし、よく糞をたれるから何かあった時の後始末はお前に任せた―
「……こんなオチありかあぁぁぁぁぁっ!!」
 無常な叫びが辺りに響き渡った。

 その後、僕は無名騎士藩国に一時拘束され、お祭が終わるまでの間無料奉仕が続いた。
「…なんでこんな貧乏くじを…」
「いつまでもそんな事言ってないで次こっちね」
 ちなみに犬兵衛はと言うと、僕の持ち物の中に藩王から預かった無名騎士藩国宛ての書状のおかげで大きな問題になる前に無事本国に帰されている。