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その一 点灯夫【投稿日 2005/12/25】

カテゴリー-3月号予想


笹原「荻上さん」
荻上「あ………」
振り返って笹原の方を向いていた荻上だが、すぐに山の方に向き直る。

荻上「追いかけて…来られても、私どうしたらいいかわかんないんですよ」
笹原「駄目だと思うけど、もう一回言うよ」
荻上「………」
笹原「俺、やっぱり…… 荻上さんが好き……だから」
  「さっきも 笑ってたけど、泣いてたよね? …守りたいんだよ」
背中で聞いて、やはり嬉しさが込み上げる。
笹原の笑顔が脳裏に浮かぶ。が―――。
次に浮かぶのは、屋上から飛び降りる巻田でなく、落ちていく笹原だった。
荻上『私はこの人を…殺してしまう…』
そして涙がこぼれる。

振り返ると、やはり冷たい笑顔で泣いている。
荻上「さっきも言いましたよね 私は男の人とは つき合わないんです」
笹原「うん、ごめん、オタクとは付き合わないって言ってたしね…」
  「俺はオタクだし、なんの特技も無くて、地味で、冴えない男だし…」
荻上「違うんです!」
叫んでうつむく荻上。
荻上「ありがとうございます…けど、駄目なんです」
笹原「え……?」
ありがとうございます、で一瞬喜色が浮かぶ笹原だったが再び神妙な面持ちで話を聞く。
荻上「気持ちは嬉しいです、本当に…でもきっと、笹原さんの心を」

荻上は顔を上げて、涙が流れ落ちる強い瞳を笹原に向ける。
荻上「…心を殺してしまう事になるんですよ」
笹原「そんな……え? そんなわけ無いじゃない!」
一瞬、笹原はきょとんとしてしまったが、次の瞬間には必死で否定する。
笹原「心を殺すなんて…さっき断られて一人で残ってた時の方が、よっぽど死ぬかと思ったよ」
普通だったら親しい人を振った相手を追い詰める台詞だが、笹原は思わず本音を述べてしまう。

荻上『笹原さん…私の事をそこまで!?』
荻上は、笹原への想いが笹原からの想いと繋がる嬉しさが胸の奥から込み上げてくる。
荻上『ああ、でも…つきあっても結局私は傷つけてしまう…この大事な人を…』
  『なのに、断っても死ぬかと思うって…どうしたら……』
きっぱりと断ろうとしていた気持ちに動揺が生じて、鋭かった目に迷いの色が浮かぶ。
しかし、意を決して笹原に過去を語り始める荻上。
その行為は、無意識に笹原に救いを求めているのかも知れない。
荻上「聞いてください、中学の頃、私は……」

その頃、げんしけんのメンバーは
斑目「今頃、どうなってるかなあ~~~(冷や汗)」
咲 「ま、笹やんもヤルときゃヤル男になってるでしょ」
斑目『笹原、お前、男だぜ……』
茨の道を歩み続けるのも、それはそれで男の中の男なのだが、
本人はそこまで客観的に自分に酔ってる余裕は無い斑目だった。
大野「う~~~」
田中「まぁまぁ、今日全てが解決するとも限らないでしょ。じっくりと一歩ずつ前進すれば良いんだよ」
今日夜の宴会の用意をしながら、大野をなだめるのだった。
恵子「あれ、クッチーが居ねぇ……」

ひとしきり話し終えた荻上は、今は泣かないように堪えている。
荻上「巻田君はきっと、今でも傷ついてます…一生…」
笹原「荻上さんの罪の意識は…一生消えないかもしれない」
  「それは巻田君が赦してくれたからといって、過去は永遠に変わらないし」
告白という人生初のステージに浮足立っていた笹原だが、荻上の人生の話に気構えが定まってきた。
落ち着いた表情で荻上を見つめる眼差しは、暖かい。
笹原「過去は変わらなくても、人は変わっていくものだよ。荻上さんも、俺も、巻田君だって」
荻上「それでも私は、801を辞められないんですよ…変わろうとして、変われなかったんです」
笹原「うん、変えようと思って変えられない事は有ると思うよ」
  「俺みたいなヌルイ隠れオタクだった奴でも、辞められなかったんだし」
荻上「私はやっぱり、男の人…いえ、笹原さんと付き合ったら必ず傷つけちゃうんですよ…!!」
笹原「もう、傷ついてるよ」
荻上「……!」
笹原「断られるのって傷つくんだよ(苦笑) 俺の存在が全て無駄みたいでさ…」
  「それに、荻上さんが一生傷ついて生きていこうと傷ついてる事に、俺も傷ついてる…」
はっと笹原の目を見遣る荻上。頭でなく心が、通い合ってくる笹原に反応している。しかし―――。

荻上「やめてください! 私は私のことが一番赦せないんですよ!」
笹原「荻上さんは本当はどうしたいの?一生誰とも…俺とじゃなくても付き合いたく無いの?」
荻上「それは……」
荻上『ううん、笹原さんとじゃなきゃ、嫌……なんだ。それはもう分かったけど……』
荻上「私にそんな資格 あるわけないじゃないですか!」
  「人を 傷つけて…今度は笹原さんを…」
もう、何に必死なのか荻上自身も分からなくなってきた。罪の意識に縛られているので仕方ないが。

笹原「誰だって…俺だって、妄想は止められないよ」
顔を真っ赤にさせながら笹原は告げはじめる。
笹原「荻上さんの内面だって好きだけど、同じように身体だって、全部好きで…」
赤さにおいてはそれを聞いた荻上も負けてはいない。
笹原「その…荻上さんの体で、想像して…妄想して…○○○○した事だって!」
荻上「なっ……!!」
笹原「だっ…だから! 妄想は止められないよ」
荻上「………。」
真っ赤になりすぎて荻上の表情は判別不能だ。脳内も真っ白かも知れない。
笹原「止められないんだから、俺も荻上さんの妄想も込みで好きになるよ!」
荻上「……無理ですよ」
笹原「だって男でも801読む奴も居るし、荻上さんの作品だってこの先きっと…」
  「いろんな人に読まれるよ!」
編集者の卵としての性もあらわれたような夢を語る笹原の表情は嬉しそうだ。
笹原「それで、一番のファンは俺なんだよ」
  「それに、編集者の一番の特権ってさ、最初に読める事だよ(笑)」
荻上「笹原さん……私…でも、あの……」
笹原「すぐにオッケー貰えなくても良いから」
荻上「でも、まだ801好きになってないじゃないですか…」
  「うん…傷ついても構わないから 傍に居る方が嬉しいんだ」
  「好きだから… これからも、守らせて…よ…」
荻上の目から流れる涙は、悲しいものじゃない。笑顔から生まれる涙だ。
荻上「ありがとうございます、私も……私も、笹原さんの……」

パシャッ!
朽木「…あ、オートフラッシュが働いたにょー」
笹原「朽木くん、なにをしてるのかな……?」
珍しく怒り顔で青くなっている笹原は貫禄が出てきている。
朽木「イェーーーー!!」
猛ダッシュでホテルに戻っていく朽木であった。


結局その後、とりあえずホテルの浴場を借りた荻上も合流して、
合宿2日目のバーベキューでの宴会になるのだった。
冷やかし過ぎると、笹原がマジギレしそうになるので
みんな空気を読んで、今日はあんまり根掘り葉掘り聞かない。
荻上は今日は流石に酒は飲まないし。
しかし、荻上に寄り添って肉やおにぎりを皿に取り分ける笹原と
それを素直に受け取る荻上の姿を見て、皆ニヤニヤせずに居られない。
まぁ斑目はいじけ気味だし、クッチーは撮影熱心だが。
しかし確かに、言葉少なめだが、荻上の目には喜びの光が宿っていた…。