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いくらハンター 【投稿日 2005/12/21】

カテゴリー-笹荻


とある金曜の深夜、コンビニにやってきた筆頭の女学生…。
荻上千佳は弁当を買いに来た。
いつもはけっこう自炊だが、今夜はコミフェス等とは無関係に
漫画を書き始めて、気分を少し変えようと思ったのだ。

弁当コーナーの前に来て、まあ安くお結びランチなど買おうとした
その時!オレンジ色の透きとおったものが視界の隅に入ってきた。
「いくら丼新発売」の札がかかっている。今の残りはあと一つ。
思わず手に取るが、
「うーん、650円か…私には多いなぁ。それにコンビニの弁当だし
 どうせイクラを食べるなら、もっとしっかりした機会に…。」
そう思い、棚に戻す。
鶏そぼろ弁当、洋風幕の内、ミートソーススパ。。。
結局決まらなかった。イクラを振り切ったものの、無意識に
影響を受けていたのだろう。
「はぁ、買い置きのカップ麺にすっかぁ。」
店を出る荻上。すると朽木とすれ違う。
「あ、おぎちんにょー。夜遅くに奇遇だにゃ…」
「ちっ!」
鋭い一瞥を投げつけると、ガン無視で立ち去るのだった。

まあ大学近くに住んでるのでコンビニで会う事も珍しくない。
すっかり朽木のことは忘れて岐路につく荻上だが
「あーやべ、なんか頭がイクラモードだ。他の物を食べる気しね…。」
そう思いつつ数歩歩いたが、やはり引き返しはじめた。
「やっぱり買ってこよう。このままじゃ描けないわ。」

店に入り、一直線に弁当コーナーへ。しかし―――。
棚には既にいくら丼の姿はない。振り返りレジに目を遣ると
いくら丼をビニール袋に入れてもらう朽木の姿があった!
「―――な!!」
愕然とする荻上だが、朽木に気付かれないようにすぐ目を逸らし
棚の後ろで朽木が店を出るまでやり過ごすのだった。

「あーもう、ムカツクー!」
いくらを食べないと今夜は描けないとまでになってしまった荻上は
少し遠いが同じ系列の別のコンビニに向かった。
学生の町ではあるが、少し危なくないだろうか…。
しかし確かに、一人で深夜に出歩く女子学生もよく見かける。

そしてコンビニに入ろうとすると、なんたる偶然、今度は笹原に出会った。
「やぁ、荻上さんこんばんは。どうしたの。」
「あ、こんばんは。いえまぁ、別に…。」
その笹原がいくら丼の入った袋を手に持っているのを見て、嫌な予感がした。
「では、失礼シマス。」
急いで店に入り、弁当の棚を探すと、案の定…。
「あーーーっ!!」内心絶叫した。いくら丼は無かった。
もうこれ以上、系列のコンビには歩いていける範囲には無かった。
笹原に頼んでいくら丼を貰うなんて事は出来るわけがない。
諦めて、うなだれながらチキンカツサンドと…
「あ!」
あった!いくらおにぎりが1つだけ有ったのだ。
思わず口元がほころぶ。
すぐにおっと、という感じで冷静な表情に戻る荻上だった。
結局、サンドイッチとおにぎり1つを買って帰路につくことにした。

「や………。」
「あ………。」
店から出ると、笹原が待っていた。
「なんか最近ぶっそうだしね。深夜だし送るよ。」
柄にもないのは笹原自身よくわかっているのか、苦笑いしている。
「そんなに気を遣ってもらわなくても…。」
と、言いつつ笹原と一緒に歩き始める荻上だった。
そっけない感じの会話をかわしつつ二人で並んで歩く。

「気になる…。」
さっきから、ちらちらと笹原の持っているいくら丼に目が行ってしまう。
ラーメンやカレーなら、その食べ物しか受け付けないモードになるのも
解かるが、いくらでここまでとは、荻上自身も驚きだ。
「やべ、これ以上は気付かれる…。」
そう思った時にはもう気付かれてるものだ。
「荻上さん、いくら丼が気になるの(苦笑)?」
「っ!! いえいえ!決してそんなわけじゃ…!」
「いや~、そう言われてもねぇ…。」
みるみる真っ赤になっていく荻上。
「そういえば、寿司ネタでもいくらが好きだったよね。」
「………ぇぇ、まぁ。」
「これ、じゃああげるよ。最期の一個だったもんなぁ(苦笑)。」
たぶん恵子に色々と譲る人生を歩んできたからだろう。
非常に慣れた感じで弁当を荻上に譲ってくる。
「そんな………ご迷惑を………。」
「じゃあさ、荻上さんが買ったのと交換で良いでしょ。」
「どうもすみません。」
顔は真っ赤で、目元が微妙にニヤケそうになるのを我慢しながら
無表情っぽく礼を言う荻上だった。
二人は街灯の道を歩き、遠くなっていく。
笹原が荻上の部屋に上がりこむ事は…無理だろうなぁ。