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田中 08:00  【投稿日 2005/12/11】

げんしけん24


田中は携帯のアラームの音で目を覚ました。
田「いかん、いかん!寝過ごしたか!」

田中は苦笑してベットから這い出した。昨日は遅くまで、コスプレの衣装作
りをしていた。今日は専門学校の講義は無い。午前中に大野さんに約束の衣
装を渡す事になっていた。軽くシャワーを浴びた後、パンをかじりながら、
ミルクだけを入れたコーヒーで軽く朝食をすませた。

田「ああ、大野さん!ごめん、今起きたとこ!十時ぐらいには、そっちにつくと思う」

実は田中には約束のコスプレ衣装の他に大野に見せたいものがあった。大野
に着てもらう普段着である。もちろん田中の自作だ。普段着の衣装は初めて
作った。縫製の専門学校に通い始めて、このアパートに引っ越してから、大
野と会う機会は以前より少なくなっていた。それだけに今日久しぶりに会う
事が田中には心から楽しみであった。この意外なプレゼントにどんな表情をするだろうか?

縫製の専門学校では田中の技術に講師はじめ、同級生も目を見張った。専門
の教育を受けていないとは思えない、独学の技術とは思えなかったからだ。
しかし、一方で田中は基礎の技術やファッションの歴史や流行の潮流、伝統
や精神の知識がいかに足りないかを実感していた。遠回りだったが、自分の
したい事が見つかった自分は幸せだと思う。また遠回りしなければ、大野始
め、気の合う友人たちとも出会わなかったのだから。

上野駅に向かい、乗り込んだ山の手線の電車の中で、田中は大野の驚く顔を
想像して、細い目をさらに細めて、笑みを浮かべた。隣の人が怪訝そうな表
情をしたのに気付いて、あわてて顔をそむけた。しかし、表情が崩れるのを押さえることができなかった。

大「いらっしゃい!田中さん!さあ上がって!」
田「久しぶりだね、約束のコレ!」
大「ああ、やっぱり田中さんはすごいです!これは荻上さんのですね!お茶入れますからゆっくりしてください」
田「ああ・・・」

田中はいつプレゼントを渡そうか、機会をうかがっていた。が、大野の方か
らその機会を作ってくれた。
大「あら、その包みは何ですか?」
田「ああ、これ・・・見てもらえる?」
大「いいんですか?じゃあ・・・」
田中は内心の動悸を押さえることができなかった。
大「うわ!ダサー!これ、学校の課題ですか!縫製はしっかりしてるのにデザインひどいですね!
ファッションにうとい私でも着ませんよ!こんなの・・・」
田「あっあっそう!そうなんだ!ひどい課題で・・・」
大「せっかくの田中さんの腕がもったいないですね!」
田「ははっそうだね・・・」
田中はフーと息を吐き、遠い目をして窓から見える景色を眺めた。
よく晴れた初夏の日差しがまぶしかった・・・。