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「幸せになる様に」【投稿日 2007/10/25】

カテゴリー-斑目せつねえ


註:やおいです。激しい描写はないですが、苦手な方はご注意を。


俺、斑目晴信は今、笹原完二と二人で、笹原の部屋へと歩いている。
笹原の部屋に遊びに行くのはこれで何度目だろうとふと考えた。数えてみるが分からない。
「どうしたんですか斑目さん?」
ぼーっと考え事をしていた俺に、笹原が聞いてきた。「何でもねぇよ」と返して、又前を見て歩く。
歩きながらの話題は、昨日放送していたアニメの事、最近連載が始まった漫画の事。二人とも好きな事に関してなら何時間でも話していられる。
笹原が、口を動かしている俺を見て嬉しそうな顔をした。何かを噛み締める様な、そんな顔を。
それに気づいた俺は、ふいっと笹原から目を反らす。
自分の顔が赤くなったのが分かって、ますます笹原の方を見れなくなる。
急に黙りこんだ俺に不審そうな顔をした笹原だが、部屋についてしまった為それを追求しようとはしなかった。
笹原は、俺をどう思っているのだろうか?
一ヶ月前、俺は笹原に告白された。
それを、俺はまだはっきりと答えていない。
友人としては好きだと思う、悪い奴ではないし。
何も言わない俺と、告白前と変わらず過ごす笹原は、正直凄いと思う。俺だったら、告白すら出来ないだろうから。
笹原の部屋に入ると、俺はいつも座るテーブルの前に陣取った。笹原は飲み物を用意している。

最近、笹原と居ると、何となくあいつが俺を本当に好きだとゆう事が分かってきた。
態度とか、視線とか、言われなければ分からなかっただろうけど。
何で、俺なんだろう?
何度も繰り返された疑問。
こんなおたくで(笹原もだが)、顔も体も全然女みたいでも無くて……。
男と付き合う何て一度も考えた事が無かったから、最初は笹原がからかってんのかと思ってたけど、そうでもなくて……。
「何難しい顔してるんですか?」
いつの間にか、マグカップを持った笹原が俺の前に立っていた。テーブルにそれを置いて俺の正面に座る。
「笹原……」
理由を聞いてみたいと思った。今まで、俺なんかを誰かが好きになるなんて無かったから。
でも、聞くのは、怖い。
眉を寄せてそれ以上何も言えない俺を見て、笹原がため息をつく。
「すいません」
「えっ?」
笹原の言葉に、俺はまぬけな声を出す。
「俺、あんな事言って、斑目さんに迷惑かけてますよね……」
ついっと伏せられた笹原の目。手はマグカップをきつく握っている。
迷惑……では無い様な気がした。
だから俺は口を開く。
「違う、そうじゃねえ」
笹原が再び俺を見る。
「何で、俺が好きなの?」
意を決して聞く。
「理由が、分からない」
俺が言い終わると、みるみる笹原の顔が赤くなった。

何度か瞬きを繰り返し、笹原はぐっと俺の方へ身を乗り出す。
「全部、です」
「!!」
今度は俺の方が真っ赤になった。カッカと熱い顔から、湯気さえ出ている気がする。
「斑目さんの、気を使って自爆しちゃう所とか可愛いですし……」
カワイイデスカ。
「優しい所や、押しに弱い所も萌えます……」
モエチャウンダ。
「もちろん、キャラ作ってる所も好きですよ?」
…………。
笹原は、デレデレと絞まりの無い顔をしていた。
「俺は……」
心が、冷たくなっていくのが分かる。
「俺は、嫌い」
そう言った瞬間、笹原の肩がビクンと震えたのを、余裕の無い俺は気づかなかった。
「俺は、俺の、そうゆう所、嫌い」
両手を握り締めて、下を向く。
気を使うのは、自分が傷つかない為だ。
自爆するのは、コミュニケーションが下手なせいだ。
優しく見えるのは、臆病だからだ。
そして何より、キャラを作るのは、そんな情けない自分を見られたく無いせいだ。
趣味だけに生きられれば良いとうそぶいていても、趣味以外の事になると何も出来なくなる。
出来ない事は、「おたくだから」と言い訳して、逃げ道を作って見ないふりをした。
「斑目さんが、キャラ作ってるのって、自分が嫌いだからですか?」
笹原の声に、頷く俺。

「それに、楽だから……」
本当は、誰にも言いたく無い、でも、言いたかった言葉。
「キャラを作っておけば、それ以外は見られなくて済むだろ?」
強調された部分を見れば、人はそれだけで俺を判断する。そうすれば、それ以上、誰も入って来ない。
こんな無様な俺を、見られなくて済む。
笹原は何も言わない。
痛い程の沈黙が流れる。
言ってしまった。
きっと呆れられたに違いない。俺だって、こんな滑稽な自分が嫌になる。
ふと、俺の頬に何かが触れた。
顔を上げると、いつの間にか笹原が目の前まで来ていて、ボンヤリと、これはこいつの手なのかと思う。
「俺、好きです」
…………?
「そうやって、斑目さんが隠してる所も」
笹原は、何を言ってるんだろう。
「ねぇ、斑目さん」
オロオロと揺れる俺の瞳を笹原が捕える。
見た事の無い、真剣な表情。
「斑目さんがキャラなんて作らなくても、誰も斑目さんの事を嫌いになんてなりませんよ」
ゆっくりと紡がれる言葉。
「斑目さん、良い所沢山あるじゃないですか!」
そんな言葉が、何故かストンッと、心に落ちた。
「そう……、かな?」
泣き出しそうなのを我慢して、俺はぎこちなく笑う。
スッと笹原が更に近づいて来たと思ったら、背中に腕が回された。
力を込めた笹原の腕が暖かい。

こいつの言う事を、信じてみても良いかな……。
今は素直にそう思う。
でも、もうそろそろ離れてくんないかな。
「あ―――――っ!もう!!」
笹原が耳元で叫んだ。
「何で斑目さんはそんなに萌える事言いますか!?」
声の大きさにキンキン言ってる耳に、何かとんでも無い言葉が聞こえて来る。
「斑目さんが何の為にキャラ作ってるかなんて、多分皆にバレバレですよ?それを悩んでるなんて!」
俺、ヒドイ事言われてねえ?結構コンプレックスなんですケド?
って、バレバレ!?
バレバレなのか!!?
「でも、それを俺に言っちゃうって事は、フラグですよね?」
は?
硬直している俺の顔を、笹原が覗きこんだ。
半目になり、異様に鼻の穴を膨らませたその顔に、俺は何故か冷や汗が止まらない。
「フラグが立ったって事は、OKって事ですよね?」
「何が?」
OK?
OKって?
パニックになっている俺の顔に、笹原の顔が近づいて来る。
目を閉じて。
ああ、そうゆう事か……。

………
………
………
ボグウッ!!
俺は思いきり笹原の頭をぶん殴った。
「何すんですか!」
「それはこっちの台詞だっ!」
良い事言ったと思ったらこいつは!
「フラグが足りないんですか?」
それ何てエロゲキャラ?
もう一度笹原を殴りながら、俺は盛大にため息をついた。
その後、二人がどうなったかは、神のみぞ知る。
って事にしといてくれ……。


終わり