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30人いる!その7 【投稿日 2007/09/02】

・・・いる!シリーズ


第6章 笹原恵子の采配

有吉「えーでは第3回 現視研で映画作ろうぜ会議を始めます!」
朽木「それはいいんだけど、何でここでやるのかのう?」
クッチーが素朴な疑問をぶつけるのも無理は無かった。
3日後の制作会議の会場、それは部室ではなく国松の部屋だったからだ。
ちなみに今回の制作会議、部室で原稿執筆中の藪崎さんと加藤さん、前回の会議の翌日帰国した外人コンビ、そして今日合流したクッチー以外のメンバーは前回同様だ。
国松「恵子先輩が、ケロロ軍曹のビデオをギリギリまで見たいって仰ったからですよ」
その言葉通り、恵子はまだビデオ再生中のテレビの前から離れなかった。
朽木「監督の命令とあらばやむを得ませんな」
体育会系体質のクッチーはあっさり納得した。
神田「それよりクッチー先輩、今日は就職活動大丈夫なんですか?」
朽木「その点なら大丈夫。実は僕チン、あるところからお誘いを受けて、今その為の試験勉強をしているんだにょー」
言い終わるやいなやクッチーは、自分のリュックから1冊の本を出した。
問題集のようだ。
神田「地方公務員試験?」
豪田「クッチー先輩、公務員になるんですか?」
沢田「でもこの時期に公務員と言えば…ひょっとしてお巡りさん?」
朽木「ピンポーン!」
一同「マジっすか?!」
荻上「(頭を抱え)朽木先輩がお巡りさん…世も末だ…」
朽木「失礼だなあ荻チン、わたくしこれでもスカウトされたのですぞ」
一同「すかうと?!」

クッチーはことの経緯を語り始めた。
夏コミの次の日、彼は就職活動を再開した。
だが面接の手応えは芳しくなかった。
憂鬱な気持ちを抱えての帰り道、彼の居る方に引ったくりが逃げて来た。
引ったくりはナイフを振り回し、クッチーをキレさせた。
その結果引ったくりは、全身包帯グルグル巻きで集中治療室に収容される破目になった。
多少(?)過剰防衛気味ながらもお手柄のクッチー、最寄の警察署の署長に表彰された。
署長はクッチーをえらく気に入り、彼に警官になるように熱心に勧めた。
その執拗な勧誘に音を上げたクッチー、遂に警官の採用試験を受けることを決意した。
(この辺の詳しい経緯は「はぐれクッチー純情派」参照)

沢田「でもクッチー先輩、警官の採用試験ってもうじきじゃないですか?」
朽木「その点ならノープロブレム。この問題集、署長さんが貸してくれたんだけど、これのチェックしてあるとことほぼ同じ問題出るらしいから、丸暗記すればオッケーだにょー」
一同『それって不正なのでは…?』
そう思いつつも、みんなクッチーが就活で苦労してるのを知っているので、敢えて誰もツッコまなかった。
荻上「それより国松さん、ごめんなさいね。こんな大人数でお邪魔して」
国松「そんなこちらこそ、狭い部屋で申し訳ないです」
国松の部屋は2DKの2部屋が障子で仕切られているので、会議をするにあたり障子を外して外へ運び出して、1つの大部屋とした。
だがそれでも、わざわざ部室から(脚部を外したのでボードだけだが)ホワイトボードを持ってきたせいもあってか、総勢15人を収容するにはキツかった。

そうこうする内に、テレビ画面の「ケロロ軍曹」がエンディングタイトルとなり、恵子はビデオを止めた。
「さてと、ここまでにするか」
そう言いながら、恵子はまだテレビの方を向いていた。
台場「恵子先輩、ケロロ全部見たんですか?」
恵子「(ビデオテープを取り出しつつ)さすがに全部は無理だったな。(テープのインデクスを見つつ)えーと今ので74話か」
台場「そりゃそうですよ。3日も続けて徹夜出来ませんし…」
そこで恵子は初めてみんなの方を向き、こう言い放った。
「この顔がちょっとでも寝た顔に見えるか?!」
「ひっ?!」
悲鳴を上げる一同。
恵子の目の下には、まるで覚せい剤中毒患者のような濃い隈が出来ていた。
笹原似のふっくらした頬は、心なしかこけていた。
顔色も死体のような土気色だ。
台場「でも先輩、ぶっ続けで見たのなら何故…」
ここまで言いかけた台場の言葉をさえぎるように国松が答えた。
「恵子先輩、ケロロ見てる途中でパロディの元ネタになった作品もご覧になっていたのよ。特撮関連は私のとこで全部まかなえたんだけど…」
神田「あっ千里、昨日借りに来たビデオってもしかして…」
国松「そう、恵子先輩にお見せする為に借りたの。私んち、アニメの在庫は乏しいから」

国松の説明を恵子自ら補足した。
「あたしさあ、ハッキリ言ってアニメとか特撮とかの知識って、ほんと無いのよ。春日部姉さんが知ってるようなやつでも知らなかったから、あたし」
荻上「それでパロディの元ネタを?」
恵子「ケロロの1番の売りってパロディだろ?まあ分かんなくても面白かったけど、監督がそれじゃまずいっしょ?」
荻上『あのチャランポランな恵子さんが、よくぞそこまで…』
恵子「まあそんなことより伊藤、例のプロットとかいうの見せろや」
伊藤「はい、かしこまりましたニャー」
「笑点」の座布団運びのような返事をしつつ、伊藤はプリントアウトして閉じておいたプロットをみんなに配った。
全員に行き渡ったところで、各自黙読し始める。
以下の文章は、そのプロットを要約したあらすじである。

ケロロ小隊が地球に来てから数年の年月が経った。
冬樹と夏美は共に大学に進学した。
母親の秋はケロロを正式に日向家の家政夫として採用し、ケロロは完全に日向家の家事を1人で取り仕切ることとなった。
一方他のケロロ小隊の面々は、相変わらずの状態であった。
そんなある日、タママが冬樹のところに大きな箱を持って来た。
ヨーロッパにショートホームステイに行っている、桃華から送られてきたという箱の中身は、タイムカプセルのような謎の物体だった。

そのカプセルは13世紀頃のある学者の屋敷跡から発掘されたもので、西澤グループが調べる前にオーパーツ好きの冬樹に見せたくて送ったとのことだった。
クルルが珍しく自分から分析を申し出、一方冬樹は、箱に一緒に入っていた学者が残したノートを調べ始める。
(この時冬樹は、クルルの発明した何語でも翻訳出来る万能翻訳機を借りた)
2人の出した結論は以下の通りであった。
冬樹によれば、学者は錬金術師であり、ノートに書かれていたのは人造人間ホムンクルスの製法だという。
一方クルルによれば、カプセルの中身は細胞レベルで圧縮されている人工生命体だという。
(ちなみにカプセルの表面には、古代ケロン文字が刻まれていた)

そんな中、クルルズラボに置いてあったカプセルから、人工生命体ベム1号が復活する。
クルルはクルル時空にベム1号を引きずり込み、ケロロ小隊もクルル時空へ。
だがベム1号は強く、ケロロ小隊の攻撃は全く歯が立たない。
その時クルル時空に、1体のロボットと冬樹が飛び込んで来る。
ロボットはクルルが開発した超兵器アル1号だ。
激しい格闘を続ける、ベム1号と冬樹が操るアル1号。
だが何度倒しても、ベムは自己修復機能で復活する。
クルルのアドバイスにより、冬樹はアルに最後の手段を使わせる。
だがその最後の手段とは、ベム諸共自爆することだった。
ベムは無事撃破したものの、同時にクルル時空も爆散し、日向家もメチャクチャに。
そこへちょうど夏美と秋が戻り、夏美はケロロたちを締め上げるのだった。

「みんな読み終わった?」
荻上会長の呼びかけがきっかけになって、制作会議が再開された。
有吉「えーそれでは、まずはみなさんの意見を伺いましょうか」
国松「これ凄くいいよ、伊藤君。ケロロにベムとアル何とか絡めてるし、他の特撮ネタもいろいろ絡めてるし」
日垣「俺分かんなかったけど、どんなのがあったの?」
国松「ベム1号ってのは『ウルトラQ』に出てくる人工生命体M1号のパロよ。単に語呂合わせじゃなく、ケロロの写真撮影のせいで細胞分裂ってとこまで本家通りだし」
伊藤「よく分かったニャー」
国松「あとベム1号ってのは『シルバー仮面』の光子ロケットの名前とも掛けてるし」
伊藤「いや、それは偶然ですニャー『さすがにそこまでは考えなかったニャー』」
国松「そうなんだ。あとアル1号ってのは『ウルトラセブン』の超兵器R1号のパロね。それに冬樹が使う腕時計型操縦機と、敵諸共自爆ってのは『ジャイアントロボ』ね」
伊藤「いやあ、お見事。さすが国松さんですニャー」
片隅では腐女子たちが小声で話し合っていた。
荻上「ねえ、今の話分かる?」
豪田「私はちょっと…」
巴「私も…」
沢田「私は番組の名前ぐらいしか。『シルバー仮面』は分かんなかったですけど」
台場「私も名前ぐらいですね」
荻上「やっぱり特撮の話させたら凄いね、国松さんって」

恵子「まあ元ネタはともかく、千里的にオッケーってことは、特撮映画の筋書きとしちゃあオッケーってことだな」
浅田「俺もいいと思いますよ、この話。カメラマン的には凄くやりがいありそうだし」
岸野「俺もそう思います」
荻上「あとひとついいかな?伊藤君、何で数年後って設定にしたの?」
伊藤「うちの会員の中には、着ぐるみの人以外に中学生役が出来そうな人は居ないなと思いまして、こういう強引な設定を考えましたニャー」
恵子「まあ確かに、中学生が演れそうな童顔で小柄なのって、今回全員着ぐるみだもんな」
荻上「何で私の方を見るんですか?」
恵子「んなこと今さら気にすんなよ、姉さん」
荻上「はいはい、今さら気にしませんよ」

「ただねえ…私たち初心者にこの話、上手く作れるかしら?」
沢田が会員たちの内なる不安を代表して口にしたのをきっかけに、他の会員たちも不安要因を口にし始めた。
有吉「確かに当初の計画と違って、えらくスケールの大きい話になってるもんな、これ」
日垣「こりゃ殺陣たいへんそうだな。俺、出来るかなあ…」
神田「そうね。これだけ長い話を映画にするとなると、かなり綿密な計画が必要ね」
豪田「それにセットもかなり大がかりなの作らなきゃね」
台場「念の為にスポンサー増やした方がいいかな」

巴「あと千里、率直に訊くけど、この話に必要な特撮って、アマチュアの8ミリの映画で出来るの?」
国松「(キッパリと)出来るわ、理論上は」
巴「理論上?」
国松「つまり実際にやったことは無いけど、知識としてのノウハウはちゃんとあるってこと。ただ、出来上がりが上手いか下手かは、やってみないと分かんないけどね」
巴「そう…」
国松の答えに、巴の顔にも不安の色が浮んだ。

「お前ら、何守りに入ってんだよ?」
恵子のひと声に注目する一同。
「お前らの今の話聞いてるとさあ、何か成功したいっつーより失敗したくねえって感じがすんだよね、あたしには」
図星なのか、ウッという表情の1年生たち。
「いいじゃねえか、失敗作なら失敗作で。そういうのが内輪では1番ウケるんだよ。それはそれでいい思い出じゃねえか」
国松「監督、そんなに失敗作失敗作言わないで下さい。少なくとも私は成功させるつもりなんですから」
豪田「ちょっと千里、そりゃないでしょ。私たちだって成功させたいわよ、この映画」
他の1年生たちも同様のことを口にする。
恵子「あたしだってそのつもりだよ。たださあ、全員映画作り初めてで凄い傑作が出来たら誰も苦労しない、あたしが言いたいのはそういうことさ」

「恵子さんの言う通りね」
今度は荻上会長の発言に注目する一同。
「うちは営利企業じゃない、大学のぬるいサークルなのよ。もちろんいいものが作れるようには頑張るけど、それ以上に作ることを楽しまなきゃ」
恵子「姉さん…」
豪田「そうですね、荻様の仰る通りだわ」
他の1年生たちも賛同しかけるが、台場が異議を唱えた。
「でも会長、スポンサーさんたちから金集めてる上に、金取ってお客さんに見せる以上、それなりにいいもの作らないと…」
荻上「もちろんそうよ。でもスポンサーと言っても、あくまでも寄付とかカンパだし、お客さんの方も祭りの余興なんだから、あんまし堅苦しく考えないで」
台場「でも…」
荻上「それともひょっとして台場さん、まさかスポンサーの方々に利益還元するような裏の契約とかしてるの?」
台場「(慌てて)してませんしてません!一瞬しようとは思ったけど、してません!」
一同「やるつもりだったのかよ!」
恵子「まあまあ、つもりまでならいいじゃねえか。で、どうよ?映画、やるよね?」
「やります!」「やらせて下さい!」「頑張りまーす!」
全員が口々に賛同の意志を示し、再び制作会議は続行された。
そして細かいことについての議論を1時間ばかり経て、伊藤のプロットに基づいてシナリオが書かれることが決まった。


次回予告

とうとう本格的に動き出した映画制作プロジェクト。
そして次回、制作会議の流れはキャストの選考へと移る。
果たして配役の行方や如何に?