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SSの狭間で 【投稿日 2007/06/18】

カテゴリー-現視研の日常


 *作者註*
参考にしたお話はSSまとめサイトの中の斑目と恵子その続きです。
内容は斑目と恵子が結ばれるというものですが、今回、投下しようと思っているSSは、
この話の続編ということですので、まず上の話を読んでいただきたく思います。


荻上と笹原が結ばれてから2週間が経とうとしていた。
笹原は落ち着かない。
ここ1週間ばかり笹原は荻上さんに会っていないからだ。
どうやら笹原と結ばれたことで創作意欲が異様に沸いてきたようで、
作品を仕上げるのに夢中になってるらしい。
今はその作品を仕上げる以外のことは考えられないといって、ほとんど会うことがない。
携帯でメールを送ってもそっけない返事しか返ってこない。

ふうっ。
げんしけんの部室で笹原がため息をつく。
(まあ、普通の子ではないから覚悟はしていたけど・・・・)
もうちょっと二人で過ごす時間をとってもいいんじゃないか?
そう笹原は思うのであった。

笹原が気にしているのは荻上のことだけではなかった。
斑目も、ここ1週間、部室にきていないのである。
あれだけ毎日、昼休みになるとコンビニ弁当を
持参して部室で食べていたのに・・・。

待てよ?と笹原は思った。
二人が部室に来なくなった時期が妙に符号するなあ・・・。
何かよからぬことを考えそうになって笹原は首を振る・・・。
(それはないわ)
うーんとおおきくのびをして時計を見ると既に昼だ。
(飯でも買ってくるか)
そう思った笹原は大学の近くのコンビニで弁当を買うことにした。

笹原がコンビニに入るとちょうど斑目が弁当を買っていた。
会社が近くなのでこういうところで顔をあわせることがあっても不思議ではない。
「あ。斑目さん。」気軽に声をかける笹原。
「仕事忙しいんですか?最近、部室で顔見ませんけど。」
「あ・・・うん・・・そういうわけじゃないんだけどね・・・。」
そういうと斑目は笹原と目を合わせるのを避け、コンビニを出て行こうとした。
「??どうしたんですか?」
斑目の不審な態度に疑問を感じた笹原が後ろから声をかける。
「あ・・・いや。なんでもないんだ。気にしないでくれ。」
まるで笹原から逃げるように去っていく斑目の背中を笹原は疑いの眼差しで見つめた。
(どうして、俺を避けるんだ?)

(やべー。笹原にでくわしちゃった・・・)
コンビニから出ると額に噴出す汗をぬぐいつつ斑目は思った。
恵子とやってから笹原にあわす顔がない・・・。

部室にいくと恵子や笹原に会うかもしれない。
その時、俺はどういう顔をすればいいんだ?
やっぱ笹原にはそのことを報告しなくちゃならんのか?
斑目はそのことで悩み部室への足が遠のいていたのだ。
(変に思っただろうな。今日の俺の態度・・・)
そう気にかけながら斑目は弁当を持ってとぼとぼと会社に戻っていった。

(なんで、あんなこそこそするんだろ。何か俺に対して後ろめたいことでもあるのかな?)
笹原は斑目の不振な態度がずっと気になってしようがない。
大学が終わり、自宅に戻ってからも、斑目の態度が頭にこびりついてはなれない。
(荻上さんもそうだ・・・普通、男女がああいう関係なったら
もっと親密な交際がはじまるんじゃないのか?)
(荻上さんが俺を好きなのなら・・・なんか・・・もう・・・もっと・・・こう・・・)
もどかしい気持ちが心に渦巻き発散できないもやもやが澱のようにたまっていく。

そういえば荻上さんの描いた漫画は斑目さんが良く出てたよな・・・。
もともとメガネ受けだっていってたし・・・。
ん?斑目さんって上石神井連子が好きだったよな・・・確か・・・

      • あの二人・・・お似合いなんじゃないか・・・

笹原には嫌な過去があった。
高校の時、つきあってたと思っていた彼女が実は既に他の男とつきあっていたということがあったのだ。
しかも相手の男性は部活で自分の先輩にあたる人間だった。
その女の子は優柔不断で笹原の告白を断ることができなかったと言っていたが・・・
体よく二俣をかけられていたというだけかもしれない。
真相は笹原にもわからない。
やがて女性の態度が自分に冷たいものとなり、先輩の態度も変わった。
(おかしいな?)
二人の自分に対して豹変した冷たくよそよそしい態度が気にかかるうちに
男の方から「俺の彼女に手を出すな」的なことを強く言われて笹原と彼女の関係は終わった。
その時、笹原は誰もいない部屋でこっそりと咽び泣いた。
本当にその娘のことが好きだったからである。
その苦い思い出は過去のものとして心の奥底にしっかりと鍵をしめて忘れることにしていた。

そんな苦い思い出がよみがってきた。
その経験とここ暫くの荻上・斑目の態度がオーバーラップする。
(あの時とおんなじだ・・・)
笹原はゴロリとベッドの上で寝返りをうった。
(実はあの二人は既にげんしけんのみんなに内緒でつきあってるんじゃないか?)
それを知らずに皆があおり立てて・・・
いや、でもそれはないよなあ。だって、俺、荻上と最後までいっちゃったし・・・
(それだけか、あの時と違うのは)
      • でも・・・荻上さんは流されうけだし・・・
大野さんと咲さんが俺と荻上さんを結び付けようとして
積極的に動いたので荻上さんが本当のことを言えずにズルズルときてしまったという可能性は考えられないか?

荻上さんは斑目さんと俺との間で心が揺れ動いていた・・・その証拠があの漫画だ・・・
あの部屋でのことはその場の雰囲気で俺を選択することになってしまったが実は斑目さんへの思いも残っていた・・・
後で冷静に考え直して結局、斑目さんの方が好きだと判断した・・・
もしくは最初の1週間、俺とつきあううちにやっぱり俺の方がダメだとなったとか・・・。
そうだ。あの時、荻上さんは「・・・やおい観賞から突入っていうこの状況は・・・ちょっとイヤかも・・・」
っていってたのをあえて俺が強気でいっちゃったんだよな・・・。
あれは本当は断り文句だったんじゃないか?

笹原の頭の中に宿った一点の疑問は次第に黒雲のように心を覆い始めた。
はは・・そんな馬鹿な。そんなことあるわけない。
でも、二人の不振な態度。
一度、妄想がはじまってしまうとなかなかおさまらない・・・結局、同じ考えが頭の中で
繰り返し繰り返しリフレインされる。

これは・・・疲れているんだ・・・
馬鹿なことを考えるのはよそう・・・そう考えると笹原は布団にもぐりこんだ。

荻上さんの部屋。
ベッドの上で斑目と荻上が寝ている。斑目は仕事から帰ってきたばかりなのかワイシャツのボタンをはずし、
ネクタイは半分はずしかけただらしない状態だ。荻上はシュミーズを着て、斑目の横ではべっている。

「晴信さん・・。」
「ん?」
「いつになったらわだす達のこと笹原さんに話してくれるの?」
荻上は斑目の胸の辺りに手をはわす。
「あー。そのうちそのうち。」
「そんただこといって、このまま笹原さんとつきあったふり続けるのは笹原さんにも悪いし、傷口深めるべ。」
そういうと荻上は斑目のネクタイをキュッと締めた。
「いてててて。ちょっとやめれ。しかし・・・言うきっかけがないんだよなあ。」
「大野や咲が余計なことすっから・・・。」
「千佳。彼女らは善意でやったんだからそんなこというもんじゃない。余計なお世話ともいうが。」
「もー。晴信さんが秘密にしようっていうから・・・こんなことになったんでしょ。」
「それを言われると・・・。」
「この優柔不断!」
荻上は一層の力を込めて斑目のネクタイを引っ張った。
「いてて・・・。」
「はやぐわだしたちのこと笹原さんに言ってあげないと・・・このままではみんな不幸になるべ。」
荻上は斑目の股間に手をはわせる。
「わかってるよ・・千佳。タイミングを見計らって本当のこと言うよ・・・。」
斑目は荻上の唇に自分の唇を重ねようと顔を近づけた。
「晴信さん・・・。」
「千佳・・・。」

「はわわっ。」
笹原は飛び起きた。
「ゆ・・・夢か。」
(なんて夢見るんだ。)
笹原は目を覚ますために顔を洗ったが、さっき見た夢が正夢の様な気がしてしようが無かった。
「だめだ。こんなに気になるようじゃ何も手につかない。」
これは確かめなきゃいけない。
(・・・でも荻上さんに聞くわけにはいかない・・・斑目さんにメールしよう。)

斑目は笹原からのメールを受け取った。
『話したいことがあります。お時間とっていただけないでしょうか?』

普段のふざけた感じのメールではなく笹原の真剣な様子は文章からも伺えた。
「やっぱわかっちゃうよなあ・・・あのことだよなあ・・・」
自分が恵子とやっちゃったことが笹原にバレたと思った斑目は頭を抱え込んだ。
(こういう場合、普通の人はどう対処するんだろう・・・)
しばらく考えたが結論が出ない・・・仕方がない。とにかく笹原と会うことにしよう。

斑目はメールを送り返した。
『バレたんだったら仕方ない。今夜午後7時半に居酒屋○○○にきてくれ。そこで詳しく話する。』

メールを受けとった笹原は脳天を思い切りはたかれたようなショックを受けた。

      • やっぱりあの二人・・・・つきあってたのか・・・。

メールでOKの返事を出した後、笹原は何も手につかず、大学の授業も耳に入ってこなかった。
一日中、笹原の心を最悪の可能性がしめていた。
斑目に会うのが恐いような嫌なようなうつろな思いで時間が瞬く間に過ぎていく。

午後7時半 大学近くの居酒屋○○○・・・何度かげんしけんのメンバーと飲みにきたことがある場所だ。

斑目がおそるおそる店に入ると奥のスペースにつくられた小さな座敷に笹原がいた。
「よお。待った?」
斑目ができるだけ軽く声をかけるが、笹原は憮然とした表情で座っている。
マイナスのオーラがあたりに放たれ、近づきにくい雰囲気だ。

(うわっ。怒ってるよ・・・)
思わず引いてしまう斑目。
座敷に上がって笹原の正面に座る。
お手拭で手を拭きながら注文を取りにきた店員さんに
「とりあえずビール大ジョッキ2本。あとジャーマンポテトとベーコンエッグロールとカルボナーラ。」
と自分の注文を済ませると笹原の方に向き直って
「笹原、お前も何か頼むか?」と言った。
「いや。僕はいいです。」
強張った表情を崩さずに笹原は答える。
「そ・・・そうか。じゃ、それでお願いします。」
と店員に答えると雰囲気を和らげようと笹原の方に向き直って質問する。
「・・・で・・・げんしけんは最近どうだ?」
「今日はそんなことを話しにきたわけじゃないでしょ。」
(うっ。余裕なしかよ。)
斑目は緊張し、額から汗が滲み出る。
(どうしよ。怒ってるよ。笹原。)
暫く沈黙が続き、斑目の頭が混乱する。
とりあえずばれたんなら謝っておこう。そう思った斑目は突如、笹原に向かって頭を下げた。
「ごめん。笹原。」
急に謝る斑目を見て笹原は
(やっぱり・・・嫌な予感は当たったか・・・)
そう思い、あきらめとも絶望ともなんともいえない感情が心を支配し、大きくため息をつく。
「はあ~っ」
顔には縦線が幾つも刻まれる。

そんな真っ暗に落ち込む笹原の表情を見て、斑目は更に焦る。
「あっ・・・本当に悪かった・・・ほんの出来心だったんだ・・・。」
「えっ。」
笹原は斑目を睨みつける。
「出来心って・・・二人はつきあってないんですか?」
「え?いやつきあってはいない・・・。やっちゃったけど・・・。」
「えっ!?・・・やっちゃったって・・・セックスですか?」
「おい。声が大きい!・・・知らなかったのか?」
「知らないですよっ!!」
(あれ。知ってると思って話したんだけどなあ。)
斑目の頭が混乱する。
(バレたんじゃなくて、単に笹原が推測でそうなんじゃないかと思っただけなのか?)
笹原の顔が怖い。
笹原は斑目へのジェラシーが心の中で黒い雲となって渦巻きはじめたことに気づいていた。
それと同時に荻上さんへの愛が今までに無い深いものであることーー
特に自分以外の男が荻上を抱いたとなると荻上がどうしても手放したくない
愛しい存在であったことに改めて気づくのであった。

「いつ、どこでやったんですか?」と笹原
「え・・えーと今から1週間前・・・俺の部屋で・・・。」
斑目はびびっていた。笹原の顔が今まで見たことがないほど怒気を含んでいたからだった。
(1週間前・・・ちょうど荻上さんが、ちょっと創作活動に入るから暫く会えないといった時だ・・・)
(やっぱりそうか・・・そうだったのか・・・)
笹原は心の中にあふれようとするジェラシーを必死で抑えながら搾り出すように言葉を吐いた。
「まあ・・・やっちゃったものは仕様がないです。斑目さんも彼女を愛していたんでしょうし。」
「いや。別に愛はなかったなあ・・・ついついなりゆきで・・・」
どこまでもバカ正直な斑目であった。

「すきでもないのに!!そんなこと!!!やっていいと思ってるんですかっ!!」
バンっと机を叩き、叫んで立ち上がった笹原の怒りは
『第一回緊急コミフェス対策原稿ほとんどできてねぇよ会議』で久我山に対した時の2~3倍増しであった。
斑目は完全にびびった。
「はひっ・・・申し訳ないです。」
斑目は頭を下げながら思った。
普段はあんなに喧嘩してるのにさすがこういうときは兄妹なんだなあと
妹のことをこれほど心配し思いやるとは・・・というか兄にとって妹とはこれほどかけがえのない大切なもんなのか・・・
妹持ったことのない俺にはわからん・・・。
「まさか・・・もしかして・・・・斑目さん・・無理やり・・・ってことはないですよね?」
笹原の目がいままでにみたことのない狂気を帯びている。
「はあっあ!?無理無理っ!!俺にできるわけないっしょ!!・・・っつーかどっちかっつーと俺が襲われたのっ!!」
「えっ!?そんなわけないっ!!」
笹原は一段と声を大きくして机を叩いた。
「でたらめ言わないでくださいっ!!そんなことあるわけないっ!!」
オーダーを持ってきた店員がびっくりした目で二人を見つめる。
「さ・・・笹原・・・落ち着け・・・落ち着けって。」
斑目が必死に笹原をなだめようとする。
店員がそそくさと注文された品物をテーブルの上に並べる間、二人は黙ってにらみ合った。
「ではごゆっくり。」
店員はひきつった顔でそういい残すと逃げるようにその場を去っていった。

斑目は冷や汗がダラダラ流れているのを感じた。
そして、これ以上、笹原が怒らないように祈るような気持ちで話すことにした。
「いや。ホントだって。だって・・・はっきり言って、俺童貞だったけど(斑目ちょっと顔を赤らめる)
      • 彼女、20人以上とやってるっていってたぞ。」
「え・・・そんな・・・そんな馬鹿な。」(荻上さん処女だと思ってたのに・・・)呆然とする笹原。
頭の中で必死に”あの時”のことを振り返る・・・いや、俺も処女かどうかなんてわからんな・・・経験なかったしな・・・。
余りに予想していなかった展開に頭は真っ白・顔には縦線が入る。
「ほんとだって。(あれ?知ってたんじゃなかったのか?)
勢いでみんなでってのもあって・・・それ抜かすと10ちょいだそうだが・・・」
「・・それってげんしけんの人間も入ってるんですか?」
「え?いや?高坂は狙ってたみたいだけど、げんしけんの人間とはやってないでしょ。」
「え?高坂狙ってたんですか?」
「あれ?おまえ知らないはずないだろ?・・・おかしーなーあんなにあからさまに誘ってたのに・・・。」
ここでなにか会話がかみ合わないことに二人とも気づくべきであったが、二人とも頭が混乱しているので
全然、気づくことなく話が続く。
斑目「多分、これは予想だけど・・・ほとんど高校時代に経験したんじゃないかな。」

高校時代・・・荻上さんの空白の時代・・・何があったのか笹原も何も知らない。
そうか・・・荻上さん・・・中学の時の事件の影響で自我が壊れて自棄になって男と遊びまくってたのかあ・・・
それは笹原の予想もしなかった荻上の高校時代であった・・・勘違いだけど。

暫く・・・といってもほんの数分だが・・・沈黙が続いた後、笹原が搾り出すように話し始めた。
「彼女・・・斑目さんは知らないと思いますけど・・・中学の時に事件を起こしましてね・・・」
一転してしんみりとした口調で話し始める笹原。
「それが理由で学校の屋上から飛び降りて・・・下に木があったおかげで奇跡的に助かったんですよ。」
「へえー。それは知らなかったな・・・。」
(春日部さんは友達に染められたって言ってたけど・・・そんな事件があったんだ・・・
あんなに化粧が濃くなったのも金遣いが荒くなったのも、男関係が荒れたのも。その中学時代の事件のせいか)
と斑目は惠子のことだと勘違いして考えている。
「それで・・・多分、そのことが原因でかなり荒れた高校時代を送ったんじゃないかなあ・・・。」
笹原は考える・・・荻上さんが斑目を襲ったということは
それだけ斑目さんが好きなのではないだろうか・・・

一呼吸おいて笹原が続ける。
「斑目さんがいい加減な気持ちで抱いたとしても・・・彼女から誘ってきたというのは彼女の心の中では斑目さんが
一番だということですから・・・責任とってもらいますよ。」
「え・・・やっぱ責任とらなきゃダメ?」
ふと顔を上げた斑目の目に飛び込んできたものは目に涙をいっぱいにためている笹原の顔だった。
断腸の思いとはこういうことをいうのだろうか
ーーー好きで好きでたまらない人でも、その人の一番の幸せを願うならば、
自分が潔く身を引くのが最善の道・・・笹原は自分の心にそういいきかせた。
(荻上さんが斑目さんを選んだんだ・・・荻上さんが幸せならそれでいいんだ・・・)
笹原はあふれる涙をぐっとこらえた。
「だって・・・どうせ大野さんや咲さんもそのうち知ることになるわけですから。
大学の部活の後輩に手を出しておいて何も知らないではみんな許さないと思いますよ。」
「そ・・・そうだな・・・。」
斑目は心の中で咲の姿を思い浮かべた・・・これで完全に思いを断たなくてはいけないな・・・
もともと可能性のない恋心だが、完全にあきらめなくてはならないとなるとやはり未練が残る・・・
心の片隅が小さな針でつつかれたようにチクっと痛んだ。

「責任とるって・・・結婚しろってことだよな??」
おそるおそる笹原に聞き返す斑目。
「当たり前でしょ。結婚を前提としたお付き合いをしてくださいといってるんです。」
「・・・やっぱりな。」
斑目の視線が宙を舞う。
「でも・・・本人から『間違ってもアタシに惚れないように』『初体験相手に勘違いすんなよ』
って言われたんだけど・・・。」
「そんなの本気じゃないでしょ。どうして彼女の本当の気持ちをわかってあげられないかなあ。」
キっと睨み返してくる笹原を見て斑目は慌てて下を向いた。
「結婚となると笹原とは兄弟ということになるな・・・。」
斑目は小さな声でポツリと呟いた。

「え?兄弟?(穴兄弟ってことか?この人は・・・突然、何を言い出すんだ?)なんで兄弟ってことになるんですか?」
「え?だって・・・そうだろ?」
「もしかして・・・穴兄弟っていいたいんですか?」
「え?笹原・・・なにをいってるんだ?まさか・・・おまえ・・・おまえも彼女とやっちゃってたのか?」
笹原は顔を真っ赤にしながら言った。
「やりましたよ?いけませんか?」
「ええっ!!」
斑目は驚き、思わずビールジョッキを倒してしまう。ジョッキからビールがテーブルの上へ
そして床にこぼれおちるのを見て慌ててジョッキを戻し、お手拭でこぼれたビールをふき取り始める。
(斑目さん・・・驚きすぎ・・・俺と荻上さんがやっちゃってるのまさかまだ知らなかったのか?)と笹原。
床を拭きながら斑目が叫ぶ。
「実の兄弟でやっちゃったらまずいだろ??犯罪だぞ!!」
「はあ?なんで、そういう話になるんですか?」
あれ?頭が混乱してきたぞ??・・・いや混乱はずっとしているが・・・混乱に拍車がかかる。
「いや・・・だっておまえ。恵子とやっちゃったんだろ?」
「なんで恵子の名前がここで出てくるんですか?荻上さんでしょ?」
「はあ???なんで荻上さんなんだ???」
「???斑目さんがやっちゃったのって荻上さんでしょ???」
「ええええええええええええ。違う。違うぞ。笹原。俺がやっちゃったのは・・・恵子だ。」

お互いに顔を見つめあったまま呆けたように暫く静寂の時間が経つ。
そしてお互いにそれぞれ勘違いしていたことに気づくのであった。

10分後
「・・・それで・・・やっぱり俺は恵子と結婚を前提にしてつきあうべきなのでしょうか?」
呆けた表情で斑目が笹原に問う。
「いや・・・もう・・・それは・・・斑目さんのご自由に。」
「ご自由にっていうと・・・別につきあわなくてもいいということでイインデスカ?」
「まあ恵子にとっては20人のうちの間違ってやっちゃった中の一人でしかないでしょうし・・・
斑目さんには申し訳ないけど・・・。」
精神的にめっちゃ疲れた・・・もうどうでもいいや・・・という顔をして笹原が応える。
(うわっ!荻上さんの時と違ってなんとなげやりな・・・兄弟愛ってこんなものなの・・・)
それが笹原を見ながら思う斑目の感想であった。

翌日、荻上の家。
「最近、全然、ゆっくりする時間がなくて・・・ごめんなさい。笹原さん。」
「あ・・・いや。別にいいんだけどね。」
「これ、できた原稿なんですけど・・・よかったら感想なんか聞いてみたいと思って・・・。」
パラリとめくってみると正統派の恋愛漫画だった。
(こういうのも描けるんだ)
笹原はちょっと驚いた。
笹原がモデルと思われる主人公が荻上のような女性を相手にした甘ったるい恋愛漫画であった。
(まるで、荻上さんの希望を描いているような漫画だな・・・)
パラパラと漫画をめくって読んでいく。
ヒロインの主人公への自己犠牲的で盲目な愛が特に深く印象に残る作品となっていた。
それはおそらく今の荻上さんの気持ちがそのまま作品に投影されているのであろう。
同時に笹原は今、どれだけ荻上さんに愛されているかを感じることができて感激していた。
(これは荻上さんから俺への形を変えたラブレターなんだ・・・)

荻上は漫画を夢中で見ている笹原の顔をおそるおそる見る。
と、何か顔に陰が射しているのに気づく。
「どうかしたんですか?」
不思議に思って尋ねる。
「な・・・何が?」
「何か疲れているみたいですよ。笹原さん。」
「いや・・・昨日・・・ちょっと精神的に疲れることがあってね・・・。」
苦笑する笹原。
(ほんの少しでも荻上さんを疑った俺はバカだ。ごめんね。荻上さん)
そう心の中で荻上に手を合わせて謝る笹原であった。

更に翌日の昼休み
部室に荻上が一人いると久しぶりに斑目が顔を覗かせた。
「こんちわ荻上さん久しぶり。」
「あ。こんにちわ お久しぶりです。」
「あー。暑いねー。もう10月なのにねー。温暖化かなー。」
そういいながら椅子に座る斑目。
ちらっと荻上の方の様子を見る。
「笹原は元気かね?」
「え?元気ですよ。昨日も久しぶりに会いましたし・・・。」
ふふふ・・・と笑う斑目。
「どうかしたんですか?」
「いや・・・笹原の奴ね。何を勘違いしたのか俺と荻上さんがつきあってるって勘違いしちゃってね。
たいへんだったんだよ。」
えっ
という顔をして斑目を見る荻上。
「どこをどう考えたらそういうことになるんだか・・・笑っちゃうよね・・・」
そういって荻上を見ると荻上が固まっているのが見えた。
何かをじっと考えている様子であった。
(やべ 俺また地雷踏んじゃったかな?)
背中に汗が吹き出るのを感じ斑目は
「あ。用事思い出しちゃった・・・」といって部室をそそくさと出て行った。

部室を出ながら(あー俺って奴は)と自己嫌悪を感じながら額の汗をぬぐうのであった。


で、その後どうなったかというと・・・これがオチです。