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スザンナの消失その3【投稿日 2007/04/07】

カテゴリー-その他


第五幕 探索 斑目とアレックそして千佳子

週末の「お買い物」は急遽取りやめになった。事情を知らない二組の双子たちにはアンジェラとぬぬ子は用事が出来て先に帰った事にした。さらわれる現場に居合わせた千佳子は少し動揺していたが、うまく状況を取り繕ってくれた。

二組の双子以外の者たちはアンジェラの家に集まって対策を検討した。もちろん「お買い物」に同行しなかった春奈もその場にはいない。斑目とアレックと千佳子の三人だけだ。

「スージー先生に用があるからって・・・。一体何なの? どうなってるの? あいつら何?」
千佳子は激しく動揺している。斑目はその問いには答えずに携帯でスージーに電話を入れた。

プープー・・・・

電話は予想通りつながらなかった。

「千佳子ちゃんのお母さんも知らないんだね?」
「ええ、前にも言った通り。心配症の母ですけど流石にスージーもいい大人だからって。小父さんやアレックも知らないの?」
「もっもちろん!!」と二人は声を合わせて言った。
「・・・アンジェラさんは知ってたのかな・・・。」と千佳子はボソリと呟いた。
「うーん、・・・知ってたとしても我々に今それを知る事は出来ないからね。最も知っていればさらった奴らが我々にスージーに連絡をつけろとは言ってこないだろうし・・・。」
「知っててもむざむざ悪党に教える人じゃありませんよ!!」とアレックが怒鳴って机を叩く。
その様子に斑目と千佳子はビクッと驚いて萎縮した。
「あ・・・すいません。」とアレックは二人に謝った。
斑目はその場を取り繕うように「まっまあなんだ!! 前の事件とは違って二人の身に危害が及ぶ事はなさそうではあると思うけど・・・。」と言った。気を使い極力みんなを安心させるように努めた。

「結局、スージー先生に連絡つかないと、あいつらの正体も背景も目的も分かりませんけどね・・・。」と千佳子はフーとため息をつきながらも気休めに微笑んでみせた。

「・・・スージーの部屋のスペアキーって預かってないかな・・・?」
ふと思いついたように斑目がアレックに尋ねた。
アレックはしばし熟考した後で「・・・確か預かっていたはずです。探してみましょう。」
アレックは席を外して部屋の中を物色した。
「あった!! ありました!!」そう言ってアレックはスージーのマンションの鍵を持ってきた。
「とりあえず何の取っ掛かりも無いからスージーには悪いけど部屋に手がかりがあるかどうか探してみよう。」と斑目はアレックから合鍵を受け取りながら言った。

「学校が言っているように研修に出てるんじゃ?」
と千佳子が聞くと、
「いや、聞いてみたんだけど違うようだ。変だ。平教員の無断欠勤なのに学校の上の方でスージーの事を庇っているみたいだ。」と斑目は首をかしげた。

三人はアンジェラのマンション内にあるスージーの部屋に向かった。

「何か気まずいなあ・・・。」そう言いながら斑目たちはスージーの部屋に入った。
以前にもスージーの家には入った事はあるが、改めて入って見ると貴腐人らしい部屋である事がよく分かる。部屋にはヤオイ系同人誌が所狭しと置かれている。
しかし一方で冷蔵庫には日持ちのするドリンクとか最低限のものしか入っていない。家具や電化製品はすべてレンタル。自分のものは極力持たず、まるでいついなくなってもいいようにしているかのようだった。
「千佳子ちゃん・・・。女性の家だからねえ、俺たちが勝手に物色するわけにもいかないから、そっちの方の手がかりは頼むよ。」
「ええ、分かりました。小父さんは他の手がかりを探しててください。用があったら呼んでね。」
そう言って千佳子は寝室の方に向った。

「俺たちはパソコンの方の手がかりがあるかどうか探してみよう。」
斑目とアレックはスージーの机の上に置かれているノートパソコンを起動させてみた。
「特別、ロック解除とかパスワードは必要無いみたいですね。」とアレック。
「うん・・・。というかほとんど業務連絡とか仕事上の用途にしか使われてないね。」と斑目。
(の割りにセキュリティーとかいい加減だな・・・。)
内心でそう思ったがスージーの消失とは無関係そうなので黙っていた。
「ねえ、斑目さん・・・。僕たち監視されてませんか?」とアレックがふいに斑目に尋ねた。
「? どうしてそう思うんだい?」

「だって・・・二人をさらう奴らは尋常じゃないですよ。そんな奴らが僕たちにも出来る事をしないなんておかしいですよ。」
「・・・。言われて見ればそうだね。どういうことだろう。」
二人は顔を見合わせて戸惑った表情を見せた。

千佳子が寝室から出てきて「駄目ですね。寝室にも何もありません。」と途方にくれた表情を見せた。

三人は改めてスージーの部屋を見た。それなりにアニメキャラのアクセサリーや同人誌等で貴腐人風の部屋を演出していたが、生活の痕跡は著しく感じさせなかった。
台所も使われた形跡は無い。衣類も千佳子の話では宅配クリーニングによって洗濯されているらしかった。封を切られていないクリーニングもある。部屋の清掃もおそらく清掃業者が行っているようだ。
それなのに領収書や請求書も見当たらない。

「平教師の給料でここまでできるものかな?」と斑目は呟いた。
「たぶんここの賃貸の名義とか支払いの名義は母の名義になっていると思います・・・。」とアレックは言った。
「どうして?」と斑目は驚く。
「家でスージー姉さんの使ったと思われるクレジットの請求を見た気がします。それに本当に大事な『思い出の品』はスージー姉さんは母に送って保管してもらっているようでしたから。」
「つまり・・・自分の身の回りにはいつ捨ててもかまわないものしか置いていないという事か・・・。ウーム。」
斑目は唸り声を上げた。
(スージー・・・今どこだ?)

 *********************

ぬぬ子とアンジェラは蛍光灯の光で青白く光る装飾も何も無い部屋に軟禁されていた。気を失っていたが、目が覚めるとベットに丁寧に横にされていた。よほど巧妙に気絶させられたらしい。特に怪我は無く痛みも感じられなかった。

アンジェラが周囲を見回すとベットの他に監視カメラだけがある。バスルームにはトイレも完備され必要なものはそろっていたが、凶器となる可能性のあるものは置いていなかった。
『捕虜』としてはそれなりの待遇と言えた。

「ここ、どこでしょう?」と不安そうにぬぬ子がアンジェラに尋ねる。
「さあ? 少なくとも国内であることは間違いなさそうね・・・。」とアンジェラは答えた。

ふいに密閉されていたドアが開く。
ドアには白いスーツにサングラスをかけた長身の伊達男が立っていた。両脇には長髪の女性と茶髪の少女が男に腕組みして立っている。

男は微笑んで言った。
「手荒な事をして申し訳ない、元『ガーディアン』のバートン女史。そしてヌヌコ嬢。用が済めば開放する。わたしたちが用があるのは『スザンナ・ホプキンス』なんだ。あなたたちには撒き餌になってもらう。」

『ガーディアン』という言葉を聞いてアンジェラは身構えた。
「あなたたち何者? ここはどこ?」

男は余裕の表情で答えた。
「誰とは馬鹿げた質問だ。元『ガーディアン』の君ならもう薄々気付いているだろう。ライカンスコープ族とその眷属だよ。わたしの事は便宜的に《藍玉》と呼ぶといい。こちらの長髪の女性は《瑪瑙》、そしてこの子は《琥珀》。
もう一人《翡翠》がいるが別の任務遂行中なので後で紹介しよう。」
誇らしげにその男は言った。
「すげえ、御上!! そんな長いセリフ、カンペ無しで喋った!!」と茶髪の少女ははしゃいで言った。
「フフン、すごいだろう。」
《藍玉》はさらに得意げに喋った。
「ここは昔、夢のゴミ輸送システムとして開発されたのにリサイクルやゴミ分別の時代の流れで放棄された施設を改造した夢の『秘密基地』だ!!数年前に国が統一された某国の旧体制派の残党の組織を乗っ取ったんだがな。」

ここまで《藍玉》が喋ると、隣の《瑪瑙》がたしなめて言った。
「御上、喋りすぎですよ!!」
「いけねえ!!」と《藍玉》は舌を出した。
「・・・とにかく身の回りの世話はわたしたちがやります。もちろん一流のホテルの接客とまではいきませんが我慢してね。」と《瑪瑙》は微笑む。
《藍玉》は腕を組みながら「一応、聞いておくが『スザンナ・ホプキンス』の行方は知らないか?」とアンジェラに聞いた。

「知らないわ。もっとも知っていても言うはずありませんけどね。」とアンジェラは毅然として言った。

その様子を《藍玉》はフフンと鼻で笑った。「まあ、そう言うとは思ってたがね。もっともシラを切っても強制や自白剤とか使わなくても情報を引き出す方法はあるから無意味だがね。」
《藍玉》は続けざまに言う。
「そしてそのお嬢さんの秘密もいずれ『スザンナ・ホプキンス』に喋ってもらおう。一体何を企んでいる?」そう言って《藍玉》は立ち去った。

後に残された《瑪瑙》と《琥珀》はぬぬ子とアンジェラの方を向いて言った。
「ああ見えても御上はお優しい方です。(馬鹿がたまに瑕ですが)心配する事はありません。」と《瑪瑙》。
「オバチャンたちを無傷で運ぶの苦労したんだからね!! すげえ重いしw」と《琥珀》は笑って言う。
「なっ、オバ・・・、口の悪い子ね!! それにわたしは重くなんてありません!!」とアンジェラは憤って言う。
「へへん、十代過ぎたらみんなババアだよ!!」と《琥珀》は十代の傲慢さで言う。
「あっあら、二十代に見えるって事?! 中々良い子ね!!」とアンジェラはコロッと機嫌が直る。
「ふふふ。《琥珀》は良い子ですとも。ところでオバチャンというのはわたしも入るのかしら? さあ、行きますよ!!」
そう《瑪瑙》は言って《琥珀》のほっぺたを引っ張りながら部屋を出た。
「痛てて、姐姐ごっごめんなひゃい・・・。」
《瑪瑙》に引っ張られて《琥珀》も立ち去った。

後に残されたアンジェラとぬぬ子は身を寄せ合った。そしてぬぬ子が「アンジェラさん・・・怖い・・・。と身を震わせて抱きつくのをアンジェラは抱き返して言った。
「大丈夫よ。きっと大丈夫。」

きっとあの人が救いに来てくれる。そしてスージーも・・・。そう・・・かつて祖母が・・・その小さな命が・・・幼子が・・・、狂乱の欧州から脱出する貨物船の中で、永遠の少女の腕に抱かれて守られたように今はわたしがこの子を守らなければならない・・・。

(ところで・・・可愛いわね、この子・・・。アレックが夢中になるのも無理ないわね・・・。)
アンジェラはムラムラとしてぬぬ子に頬ずりした。
「アンジェラさん? あ・・そこは・・・。キャー。」

「おのれは何やってんだー(怒)」と《藍玉》が叫び声に驚いて戻ってきた。
「おっ女の子同士はいいのよ、ハアハア。」
「良い訳無いだろー。それに誰が女の子だ!!」
「えーん、えーん。」とぬぬ子は泣いている。
「おお、よしよし。」と《藍玉》はなだめる。

「このシーンだけ見てるとどっちが悪役か分からないわね。」と《瑪瑙》がため息ついた。


第六幕 スザンナ登場 スザンナと斑目

「どうだ? 《翡翠》から連絡きたか?」と《藍玉》は《瑪瑙》に聞いた。
「ええ、連絡はきたのですが・・・。」と《瑪瑙》は戸惑った表情で答える。
「? 何だ? どうせあいつらに『スザンナ・ホプキンス』の居所なんて突き止められるわけないんだからな。あの女の方から接触してくるに違いないんだ。」と司令室の椅子をブラブラさせながら《藍玉》は言った。
「・・・それが・・・彼らはさらわれました。」
「な!!」
驚いて《藍玉》は椅子から落ちた。
「やられた・・・。味方をさらうとは発想がぶっ飛んでるな。ということは『スザンナ・ホプキンス』も組織を動かしたって事か・・・。一体奴のガーディアンは今は誰なんだ? ガーディアンがいなければ俺たち同様、社会との接点を持てないんだからな。」
「分かりません・・・。申し訳ありません。」
「まあいい。引き続き調査と監視を続けてくれ。今のところ、五分と五分・・・いや依然六分四分でこちらが優勢だ。」

 *********************

スージーのマンションを三人で出た途端、大型のバンが横付けされ、三人は有無を言わさず拉致された。その手際のよさは明らかに特殊訓練を受けた者たちの動きだった。
「おわ!! なんだ!! おまえら!!」
(こんなんばっかだな、俺・・・。)
「静かに!! 我々は味方です。あなた方は監視されてます。監視の目を振り切るのにご協力ください。」とエージェントたちは静かに斑目たちに告げた。普通ならそれに納得して大人しくさらわれるような事はあるまい。
だが斑目たちはすでに『普通』の状態から大きく脱線しているのだ。味方にさらわれ敵に追いかけられるとは変な話だとは思ったが大人しく彼らに従った。
慌ててバンを追いかけてくる車があったが、あっさりと引き離された。そして別の建物から違う車に乗り換えるという念の入用で追跡者を振り切った。

そして今、斑目は一人でどこか分からない暗い部屋の中央に置かれた椅子に座っている。目が慣れてきても周囲の様子は分からない。全くの闇だった。

「・・・・・・・・」
静寂が辺りを包む。斑目はじとりと冷や汗を流した。周囲には何の気配も無い。だが突然背後から声がした。

「聖なる者、真実の者、ダビデの鍵を持つ者
彼が開けばだれも閉じられず、彼が閉じれば
だれも開かないお方はこういわれる。
わたしはあなたの業をしっている。わたしは
だれも閉じることのできない門を、あなたの
前に開いている。」

斑目はギョッとして体が硬直した。聞き覚えのある声・・・。スージーだった。
(いつのまに・・・全然気配を感じさせなかった。)

「あなたの前にその門は開かれている。その門とは違う門をくぐる『覚悟』があるなら振り向きなさい。」

スージーの声ではあるが冷淡な声が虚空に響く。斑目は振り返ろうとした。しかし体が動かなかった。どうしても振り返る事が出来なかった。斑目は冷や汗でびっしょりとなった。

「・・・それでいいのです。意志がすべてを決します。ですが意志を超えた力もまたあるのですね・・・。アンジェラがあなたを好きになるとはわたし自身も予想してませんでした。」

斑目はやっと一言言うことができた。
「アンジェラが・・・。」

「分かってます。大空を飛翔する鳥が深遠な湖に棲みたいと思わないように、湿潤で深く清い湖に棲む魚が空を飛ぼうとは思わないようにあなたは自分の本分に従いました。その境界を破る者が現れました。」

すると部屋に明かりが灯った。慌てて斑目が振り向くと誰もいなかった。椅子の前には出口があり、そこをくぐるとアレックと千佳子、そして普段通りのスージーがいた。

「あ、小父さん、どこにいたんです? スージー先生ならここに!!」と千佳子は斑目の方を見て言った。
「はぐれてしまったかと心配しました!」とアレック。

そしてスージーは「リーターヲ助ケタインダ!!」といつも通りアニメの真似をしてふざけている。

「ははっ・・・。」
さっきの事は夢だったのか、幻だったのか・・・。もし振り返ってたらどうなっていただろう・・・。

 ********************

《藍玉》は《翡翠》から受け取ったレポートに目を通している。《藍玉》のいる部屋には配下の三人のほかにアンジェラとぬぬ子もいる。

一番新入りという《琥珀》は「ほらネコミミ、ネコミミ」と半獣化してしっぽをフリフリさせながら、同世代のぬぬ子を相手にふざけている。ぬぬ子はクスクス笑って楽しんでいる。

「あ、すまん、これ何て読むんだ?」と《藍玉》は隣の参謀役の《瑪瑙》に聞く。
「御上、それは戸籍謄本(コセキトウホン)と読むんです。」
「馬鹿だニャ。」と猫顔の諜報役の《翡翠》が笑う。
「うっうるさい、英語圏で暮らすのが長かったから日本語は苦手なんだ!!」
「でもこの前、英語のスペルも間違ってたニョ」
「・・・・・・・・ゴッゴホン!! このレポート本当なのか?」
「アイ。」と《翡翠》が答える。

《藍玉》はアンジェラに向って言った。
「・・・・あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『俺は奴の前で階段を登っていたと思ったら、いつの間にか降りていた』。
な…何を言っているのかわからねーと思うが、
俺も何をされたのかわからなかった…。
頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか、
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。」

「・・・ええ、それやりたかったのね・・・。いいわよ~。フー(汗)」とアンジェラは疲れた顔で言った。

「アンジェラ、あんた『初代』の事は知ってるのか?」と《藍玉》は急に真剣になってアンジェラに聞いてきた。
「? 何を聞きたいか分からないわ。『初代』って何のこと? 会った事も無い。わたしだってスージーの全てを知ってるわけじゃないの。」

「・・・そうだな・・・。だが会ったやつもいる。なのになんで存在の物理的証拠が無いんだ?」

「?」
アンジェラは何をそんなに不思議がっているのか理解できないといった顔をした。

「《翡翠》、調査では『初代』の在学中の記録を調べたんだな。」
「アイ。」
「在学中の委員会、ゼミの教授、その他同窓生はやつの事を覚えている・・・。」
「アイ。ずいぶん時が経っているから苦労したニャ」
「なのに在学記録も戸籍も居住地も経済活動の記録が無い・・・。あっても他人名義・・・。」
「アイ。」
「そっそうか!! 全部、現金決済なら記録は残らんな!! 偽造証明書とか!!」
「その痕跡も無いっス!! ボス。」
「じゃあ何か・・・。記憶には残っているのに物理的に存在する事を証明ができない・・・。物理的痕跡を消すのは不可能だ・・・。」

「じゃあ、この娘はどうだ? あ、こっちで聞かせろ!!」
そう言って《藍玉》は部屋の隅に《翡翠》をひっぱっていった。
「この娘の両親は実在するニャ。共稼ぎの普通の両親ニャ」
「偽装で仮親ってことは?」
「両親の身元、出生届け、母子手帳の記録・・・。まったく不備はないニャ。ただ・・・。」
「なんだ? 何かあるのか?」
「転校以前の『信者』たちからこの娘の記憶が消えてるニャ。」
「なぬ?」
「両親も離れて暮らしていて、生活費を仕送りしてるんだけど、なんか・・・娘の存在は知っているというか、信じていても具体的には何も覚えてないで仕送りだけせっせと送ってるニャ。」
「・・・じゃあ何か? 一方は実在しないが人の記憶に残り、もう一方は実在するが人の記憶から消えていく? てっきり『初代』がこの娘に関係があると思ったんだが・・・。」

《藍玉》は《琥珀》と戯れているぬぬ子の方を向いて呟いた。
「・・・じゃあ、あの娘は誰なんだ?」

 *********************

「ここにSOS(スージーを・S・畏れ敬い・O・崇拝する・S・)団が結成されたわけですが・・・」
スージーが演説する。
「誰がだ!! 誰が!!」
斑目が突っ込む。
「本題に入れ!! 本題に!!」
「コホン・・・。不心得な下僕が一部騒いでいるようですが、アン・ヌヌコ救出計画を始動したいと思います。」

「ねえ、何で学校に来なくなったんですか?」と千佳子が聞く。
「転勤。」
「へ?」一同驚く。
「酔っ払って校長の頭にビールぶっ掛けたら転勤になった。」
「そっそんな理由で転勤なんてパワハラですよ!」とアレックが義侠心から騒ぎ出した。
「どうも他にもいっぱいやったみたい。」
「ははは。だからか! みんなの口が堅かったのは!」と斑目が笑った。
「どうして連絡してくれなかったんです? みんな心配したんですよ。」と千佳子が言うと
「せっかくだから赴任前に有給休暇全部使おうと思って。」とスージーはケロッとして言う。
斑目は高笑いして「わはは、そんな事だと思ってたよ!」言ったが、内心では(下手な嘘くさいが調子を合わせとこう、うん。)と思っていた。
斑目は続けざまに聞いた。「それでどうやって二人を助けようか?」

スージーは部屋のロッカーから何か衣服らしきものを取り出した。
「これは某国で開発された強化服です。白兵戦の低コスト化と生存率の向上のために開発されたものです。これをアレックとチカコ、着てください。」
二人はそのビチビチの強化服を別室で着替えてから部屋に戻った。
「なっ何か胸の辺りがキツイですね~。」と千佳子が窮屈そうにしている。
中学生離れしたそのプロモーションに斑目とアレックはそろって顔を赤らめて顔を背けた。
「オーダーメイドではないので我慢して。その上から服を着れば目立ちません。」
「おっ俺には?!」と斑目はスージーに聞いた。
「・・・・・・・。」
「無しかよ!!」
(とりあえず何でそんなの持ってるの?とは聞くまい、聞くまい(汗))

「その防御力はこんなもんです。」
そう言ってスージーはやはりロッカーから拳銃を取り出してアレックにいきなりぶっ放した。

ドン!! 
アレックがもんどりうって吹っ飛んでいる。
「痛ててててて。」
「おっおい!! 俺の息・・・。」
「俺の?」とスージーはニヤニヤしている。
「いや、何でもない・・・。大丈夫か? アレック君!」と斑目は顔を赤らめてアレックに手を差し伸べた。
「ええ、大丈夫です。」と咳き込みながら答えた。
「敵は撃ちますよと断ってから撃ちませんからね。」と平然とした表情でスージーは言った。

斑目はこの予測不能の行動力を頼もしいと思うと同時に改めて恐ろしく思った。