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スザンナの消失【投稿日 2007/04/07】

カテゴリー-その他


これは絵板起源の「セカンドジェネレーション」-双子症候群-の独自設定
です。一応、「初期設定」とされるキャラクターの設定を拝借していますが、
独自に改編した部分もあります。
ここだけで完結されたバラレル設定ですので他のSS師さんたちや絵師さんた
ちの設定との差異はご了承ください。
また実在の団体、人物をモデルにした架空の設定がありますが、これも政治的思想的
個人的価値観とは一切関係ない物語の上だけのものです。
科学的表現もありますが完璧なる似非科学です。

□舞台設定 
げんしけん最終回から二十年後の世界の東京郊外の新興都市

□登場人物設定 
旧世代の登場人物は斑目晴信、アンジェラ・バートン、スザンナ・ホプキンス
のみの登場。その他メンバーは名指しも登場もしない方針。

□物語設定
物語はオムニバス形式で独立しており各自主人公が異なりますが、
前作の設定を一部引き継ぐ場合があります。一応、時間系列順に列挙して
おきます。
:げんしけんSSスレまとめサイト 「その他」カテゴリー収録
①「ぬぬ子の秘密」 主人公 服部双子(ぬぬ子) A.C.2026年
②「斑目晴信の憂鬱」 主人公 斑目晴信 A.C 2026年
③「アンの青春」 主人公 アンジェラ・バートン A.C 2010年
④「千佳子の覚醒」主人公 田中千佳子 A.C.2026年
⑤「春奈の蒼穹」 主人公 高坂春奈 A.C.2026年 
⑥「スザンナの消失」 主人公 スザンナ・ホプキンス A.C.2027年4月前後

□登場人物(○旧世代 ◎新世代 ☆オリジナル △シリーズ登場人物)
○斑目晴信 
新世代たちの中学校に用務員として赴任。過去にアンジェラと短期間交際し
ており、認知していない息子が一人いる。最近、その存在を知った。
○アンジェラ・バートン (アン、アンジェラ)
米国にて社会心理学研究をしている。斑目との間に一子あり。
○スザンナ・ホプキンス (スージー、スー)
新世代の中学校に英語教師として赴任。容姿は昔と変わらない。
◎千里(ちさ) 十四歳以下同
笹荻の娘。妹の万理と二卵性双生児。性格は積極的で物事に頓着しない。
漫画、アニメ好き。
美少女愛好趣味もある。どちらかというと消費系オタ。叔母や親友の春奈と
ファッションやゲームの話題で気が合う。
オンラインゲーム「GX-ガノタックス」ハンドル名「サウザンド」搭乗機「ブラック・ラグーン」
◎万理(まり) 前作でうっかり万里の変換せずにいましたので他の方々の
設定との区別の為に万理で通します。
同じく笹荻の娘。性格は消極的で思慮深い。納得のいかない細事に拘る面も
ある。腐女子趣味で創作もする。漫画、アニメ好き。創作系オタ。親友の
千佳子と気が合う。
オンラインゲーム「GX-ガノタックス」ハンドル名「ミリオン」搭乗機「スノーホワイト」
◎千佳子 
田大の娘。温厚で大人しい性格。父親に似て凝り性で几帳面な面も。漫画、
アニメ好き。消費系オタ。腐女子趣味。コスプレは嫌い。
思春期の難しい年頃で母親のコスプレ趣味には嫌悪感。その後何かの
きっかけで目覚める可能性あり。
◎春奈
高咲の娘。ボクササイズをしている。オタク趣味は無いが、父親の影響で
オンラインゲームの格闘ゲームが好き。
ファッションにも興味があり、アバターの服などのデザインを趣味にして
いる。
父親の天才性?は引き継いでいないが、母親のリーダーシップの素質の萌芽
がありそう。
オンラインゲーム「GX-ガノタックス」ハンドル名「アップルシード」搭乗機「キングクリムゾン」
◎服部双子(ぬぬ子)
突然、転校してきた厚底メガネのおさげの少女。メガネを取ると絶世の
美少女という古典的設定。その他にも秘密が多そう。
☆アレクサンダー・バートン(アレック) 十五歳
このパラレル設定での完全なオリキャラ。斑目とアンジェラの息子。
無責任な父親を拒否。
その反動でオタク趣味も寄せ付けない。しかし思いっきり素養がある。
母親似のスポーツマンで格闘技を習得。
オンライン格闘ゲームには興味がある。
オンラインゲーム「GX-ガノタックス」ハンドル名「ホワイトスネイク」搭乗機「ブルーディスティニー」
△ミハイル・ゴットルフ 十四歳 
「春奈の蒼穹」登場 日本の大阪出身の母親と某国人とのハーフ 双子の妹がいる。
ガノタ オンラインゲーム「GX-ガノタックス」ハンドル名「大佐」搭乗機「レッドフォックス」
「スザンナの消失」ゲスト出演 和名は別。
△アナスタシア(アニー)・ゴットルフ 十四歳
「春奈の蒼穹」登場 日本の大阪出身の母親と某国人とのハーフ 双子の兄がいる。
あやしい大阪弁を話す。「GX-ガノタックス」ハンドル名「中尉」搭乗機「グリーンラクーン」
「スザンナの消失」ゲスト出演 和名は別。
△《藍玉》
「スザンナの消失」登場 スザンナの敵役 少しお馬鹿。 ライカンスコープ(獣人)族
△《瑪瑙》
「スザンナの消失」登場 《藍玉》の配下 顔を覆う長髪の女性 マーメイド系 参謀役。
△《翡翠》
「スザンナの消失」登場 《藍玉》の配下 犬か猫かよくわからない 人狼?猫? 諜報役。
△《琥珀》
「スザンナの消失」登場 《藍玉》の配下 新入りで一番若い 茶髪のギャル系 ネコミミ娘。


第一幕 逢瀬 斑目とアンジェラ

どこともいえぬ一室で男女が睦みあっている。二人は年頃の男の子の親ではあったが、一見すればそれを感じさせない若々しい外貌をしている。

その男・・・斑目晴信は照れくさそうにじっと天井を眺めながら、そのトレードマークとも言うべき丸メガネをかけ直しながら言った。

「もう・・・いいだろう?」
「いいえ、駄目よ。久しぶりに会ったんですもの。もうしばらく・・・こうさせて・・・。」

そう言いながら、その女・・・アンジェラ・バートンは斑目の首筋に顔をうずめて、目を瞑りながらスンスンと首筋の匂いを嗅いでいる。

斑目は椅子に座りながらじっとしているが、段々気持ちが落ち着かなくなっている。
一方でアンジェラは穏やかな表情で斑目に寄りかかっている。

「落ち着くわ・・・。あなたとこうしていると・・・。」
そう言いながらアンジェラは目を瞑りながら首筋から耳たぶの方へ顔をすり寄せながら、やはり匂いを嗅いでいる。

斑目はその微妙に肌の触れ合う感触にビクビクとしてのぼせ上がったように顔が赤らむ。

「君・・・やっぱり変だよ・・・人が見たら・・・」

「あら? 変? 誰も見てないしいいじゃない。それとも変なのは私の方かしら?」
アンジェラははにかみながら照れくさげに顔を離して斑目の方を見た。

「いや・・・まあ・・・あんまりしないかな・・・こうして匂いを嗅ぐのって・・・、ハハッ。」
「不快?」
アンジェラに不安な表情で聞かれて斑目は慌てて打ち消した。
「いやいや!! とんでもない!! ただ・・・」

不快であろうはずがなかった。アンジェラの上気してほんのりと紅色に染まった白い肌からは控えめな香気がたち、斑目を幻惑させた。香水の類はつけていないのに欧米人特有の強い体臭はアンジェラからは感じられなかった。
瑞々しく潤んだ肌の感触が斑目の肌にまとわり付くように吸い付くと気狂いさえしそうになる。

アンジェラの柔和な丸みを帯びた顔のくりっとした澄んだ碧眼が不思議そうに斑目を見つめる。その瞳に見つめられて斑目は目をそらしながら言った。

「気恥ずかしくてしょうがない。君は初めて会った頃とさっぱり変わってない。大げさだと言うのなら二十代後半にしか見えないよ。」

アンジェラは微笑んだ。
「あら? それは嬉しい事言ってくれるのね。でもあなただってやっぱり若々しいと思うけど。」

それは斑目もよく人には言われる。一人で好き勝手に趣味に生きていると所帯持ちよりは若々しくなれるものらしい。だがアンジェラの若々しさはスージーの尋常じゃないソレは例外としてまた別格と思われた。

「まあ・・・私はガーディアンだったし・・・。スージーのおかげね。」とアンジェラはつぶやく。
「ガーデン?」と斑目は聞き間違いをするが、アンジェラはそれには答えず微笑んで言った。
「アジア系の人たちは体臭が控えめだと言うけど、あなたのそれはさらに控えめで落ち着くわ。」
「最近はそれでも日本人男性も体臭を気にしているよ。」
「でも私にはあなたのそれが一番落ち着くの」
「うーん、でもやっぱり君は少し変かもね。」
「あらひどい。」
二人は笑いあった。

体を寄せ合いながら久しぶりに再会した二人は最近あった出来事をとりとめとなく話し合った。
斑目は自分の身に起きた・・・正確には自分の身の回りの人間に起こった不思議な出来事をアンジェラに話して聞かせた。

「色々たいへんだったのね。」
「イエイエ、それほどでもアリマセンヨ。」
斑目は頭を掻きながら答えた。
「でも・・・少なくともチカコの例を除けば大体は現実の範囲の現象とも言えるけど・・・。チカコの事例は明らかに「物理的法則」を超えた現象だったし・・・。」
「イヤイヤ、俺にはどれも現実のものとは思えないよ。」そう言って斑目は首を振った。
「そうでもないでしょ?。双子の感応能力もヌヌコの浄化能力も本来人が持っているコミュニケーション能力や共感能力の延長ですから。特にヌヌコの力はゲシュタルト心理学で説明できます。」
「ゲス・・・何だって?」
「ゲシュタルト心理学。あなただって言ってたそうじゃない!! 聞いてるのよ、XとYの記号で・・・。」
「あっあれはオタクサークルの活動目的を適当に誤魔化した説だって!!」
斑目は慌てて手と首を振って昔の若気の至りのような説を得意げに吹聴していた過去を思い出して冷や汗を流した。
(よくもまああんなの得意げに『彼女』に言って聞かせていたよな・・・。今の俺にはできん・・・。)

アンジェラは斑目が昔の事を思い出したついでに「誰」の事を思い出していたかを察してプクーと頬を膨らませてむくれてみせた。
「あら?誰の事を考えていたんでしょうね~」
アンジェラは意地悪げな口調で言う。
「いや、その、あの・・・。」
アンジェラは斑目の動揺した姿にプッと吹きだした。

「まあ、いいわ。とにかく『1+1=2+α』なの。「『全体の総和は部分の合計よりも大きい』の。古い心理学説の見直しとしてこの心理学は発展したの。」
「んー、それがヌヌ子ちゃんとどう関係あるのかさっぱりワカランデスヨ。」
「具体的に言えば記号の集合は単体の記号の意味を超えたものになるというのかな。実際、漁業民族は体に目の模様を刺青して目の大きい動物に擬態して鮫に襲われないようにしたり、紋章には魔よけの意味が持たれていたり・・・。」
「えと・・・つまり?」
「つまり人類には『集合的記憶』によって共通認識する・・・もうよしましょう。要するに今回私はヌヌコに会って色々研究したくて来日したわけ。」

学者を職業とするアンジェラは日本に研究目的で来日していた。もちろんアレックも連れて・・・。

「アレック君は元気そうでなによりだよ。この前、GXなんたらとかいう国際ゲームではみんなも世話になったし・・・。」
斑目は何気にアレックの話題に触れた。GX・ガノタックスという国際オンラインゲームで春奈たちはアレックと一緒になったのだった。
「あら? あなたまだそんな他人行儀な・・・。」
「いや・・・だって・・・ねえ・・・。」斑目はバツの悪い顔をして言う。
「まあ、いいんですけど。」とアンジェラは困った人たちねという表情で微笑んだ

「とっところでGX・ガノタックスってずいぶん大掛かりなゲームだよねえ。春奈ちゃんの父・・・『彼』が企画したゲームだなんて知らなかった。けっこう軍事転用とかスケールのある話でついていけなかったよ。」
斑目は間の悪さにゲームの話に話題を変えた。

「そんな大げさでも無いけど・・・あのゲームはそういう軍事的な技術も重要視されているけど、民間医療の義手や『義体』の開発にも貢献しているの。」

「まるで『鋼殻防衛隊』だね。不思議な出来事ばかりでアニメの世界に迷い込んだかと思ったよ。」
「元々『鋼殻防衛隊』自体がサイバーパンク小説の祖とも言えるウィルヘルム・ギブスン、彼の著作『ヒューロマンサー』の影響を受けた日本の漫画家の原作を基にしているし・・・。」
「うん・・・。」斑目は頷いた。
「そしてそのアニメの影響を受けて映画の『サイバトリクス』がアニメや漫画の表現手法を映画に取り入れた・・・文化の混交や混血こそが無限に変化する世界の真実だわ・・・。」
ウンウンと頷きながら斑目はアンジェラの「語り」の熱の入り方に少し戸惑った。こういう話に興奮してくると段々積極的になってくるアンジェラの性癖をよく知っていたからだ。
「アン・・・あのね・・・。」 過熱するアンを抑制しようと斑目は話しかけた。
「・・・私とあなたの間にアレックがいるように・・・。」
意図せずアレックの話題に戻った。
「そっそうだね。アレックも混血だね。少し意味は違うけど。」
「私はユダヤ系との混血だし・・・。」
「あ!! そうだったの? そういうのとかって無頓着で・・・。」
斑目は思った。よくよく考えてみれば自分はアンジェラの事を何も知らない。その事が急に恥ずかしくなった。そういう事に再会してからも関心さえ抱いてなかった事にも・・・。
「じゃあ、詳しくないけど色々しきたりとか厳しいんじゃ・・・」と斑目は聞く。

「まあ、昔と違ってニューエイジですから厳しくないわ。でもアレックの場合には頭の固い一族の長老たちの手前『割礼』の儀式だけは受けさせたけど。」
「ごめん、そういう儀式って分からないからノーコメント。」
「私も説明するの面倒だからパス。」とアンジェラは無邪気に笑った。

そんな無邪気さが斑目を今でも苛む。本来であれば普通に一緒になっていれば二人で・・・いや三人で乗り越えてきた事柄の一つであったに違いなかったのだ。
「そうそうアレックが子供の頃に『割礼』の事を友達にからかわれたとか言って泣いたりした事もあった。それからケョロロショーグンのアップリケを恥ずかしいから嫌だって・・・。男の子って難しいわあ。」
アンジェラは二人の失われた時間を埋めるかのようにアレックの子供の頃の話を滔々と続けた。

「スミマセン。」
「え?」
「本当にスミマセン。」
斑目は心からアンジェラに詫びた。そして椅子の上でがっくりとうなだれた。アンジェラはやはりそばに寄り添って言った。
「何で謝るの? 『責任』とかそういう事は言わないで。必要ならそうしてただけ。必要じゃなかったから何も求めなかっただけ。」

「ならどうして君は今俺とこうしているんだい? 俺は別に必要じゃないんだろう?」
斑目は泣きそうな顔でアンジェラを見つめる。

「あなたは私にとって必要。今も必要。でもあの時私があなたに何かを望んだとしてもそれが善い結果にたどり着いたかどうかは分からない。今も『彼女』の事が忘れられないの?」

「まさか!! もう何年たつと思うんだい!! でも分からない・・・俺にはどうにも分からなくなった・・・。」
斑目は丸メガネの下に手を滑らせ、目を覆って下を向いた。

アンジェラはそんな斑目を椅子から押し倒した。そして驚く斑目の耳元に顔を寄せて囁いた。

「あなたは私の直感であり閃き。あなたをおいて他にそんな人はいません。私の中の何がそうさせるのでしょう? あなたの中の何が私からあなたを奪ったのでしょう?」

「分からない・・・分からない・・・。」
そう呟きながらも斑目はこんな時でも自分の中の『男』がそそり立つのに気付いて、ため息をつきながら天井を仰いだ。
「そう・・・誰にも分からない。でも今はただ自分を自分足らしめる『ゴースト』の囁きに従いましょう・・・。」

アンジェラは斑目を愛しむように抱きしめた。


第二幕 学校生活 アレックと春奈たち

アレックは思った。
母と『斑目氏』が会っている事は薄々気付いていた。その事に対して自分が特に思う事は無い。『あの人』は法的にも父では無い。そして心情的にもだ。
『無理も無いとは皆さんも思いませんか? 生まれて一度も会った事の無い人を父などと!!』
アレックはカメラ目線でそう言った。

『あの人』はただ単に母の『男』。自分にとっての関係はそれでしかない。問題は自分がその事にふてくされるほど子供では無く、また割り切れるほどの大人でも無いという事。
しかも母の来日に随行して編入された学校が『男』の職場であるという事。
そうした事実が生々しく自分にまとわりつき、その原因と毎日のように気まずく顔を合わせている事に忍従しなければならないという事が問題なのだと。
でも『あの人』との関係を知る者はこの学校には少ない。ヌヌコはかつて『事件』で一緒に行動した都合上知っている。チカコは母が彼女の母親と親友という関係上薄々気付いていると思われるが、二人の口からその関係が語られる事は無いと思っている。
『だから成り行きとはいえ日本在住の間、彼ら日本のクラスメートとの交友を素直に楽しめばいいと思っています。』

「カメラ目線で誰に向かって話しているんだい? アレック?」

アレックはその声の方を振り向いた。彼は自分と同様短期留学で編入された少年だった。同じハーフという親近感から親しくなった友人であった。

「いや、誰でもないよ、イエモン君。」
アレックがそう答えると、彼、伊衛門はフーと深く息を吐いて首を振って大げさなゼスチャーをして言った。
「何度言えばいいんだ? 僕はイエモンじゃなく、ツ・バ・サだと言ってるじゃないか!!」
アレックは不思議そうに「あれ? でも貰ったクラス名簿には・・・サキ・・・上の字難しくて読めないや・・・イエモンって・・・。」と質問した。

「苗字が読めなくて今時珍しい名前の方が読めるというのも君の日本語の知識も偏ってるな!! それは間・違・い!」
伊衛門はムスッとした表情で言い返した。そして話題を変えて教室の角に固まっている女子グループの方をこっそりと指差して言った。
「それより・・・角の女子グループ・・・こっち見てるけど何を話していると思う?」

アレックもこっそりと教室の角に視線を向けると確かに春奈たち女子グループがこちらを見てコソコソと内緒話をしている。


「総受け」
「総受けやな」
「総受けですね~」
「総受け・・・かなあ・・・」
「総受けね」

「ええ!! 何で? 何で? ヤオイに興味無いちさまでどうして? アレックは見ての通りスポーツマンじゃん? どういう基準かさっぱり分からない?!」
春奈は友人たちの批評が意外で驚いていた。
「いや、何でって言われてもね~。」と頭を掻いて千里が答える。


少し離れたところでは別の腐女子グループがアレックたちの方を見てクスクス内緒話をしていた。

「アレック君ってさー。70年代とかさー、80年代
のアニメのヒーローっぽくない?」
「あはは、言えてるー。じゃあツバサ(伊衛門)君は今風の新世紀系よね~。古いけどコードリアスとかさ。」
「あの二人仲良くてヤバイよね~ アレック×ツバサで何か出来ちゃうよね~」

彼女たちの会話は春奈たちにも聞こえていた。実際、二人の容貌は的を得ていた。アレックは精悍な古典的ヒーローっぽかったし、伊衛門は長身で痩せてて女性っぽい顔立ちで当世風と言えた。

「だろ? だろ? フツー そうなんじゃないの?」と春奈はみんなに食い下がった。
それに対して千佳子は「まだまだですね、彼女たちの見る目も」と言って首を振った。
みんなはその意見にウンウン頷いている。

「じゃ、じゃあ伊衛門君は?」と春奈がむきになって聞くと皆は答えた。

「鬼畜攻め」
「にいちゃんの事言うのもなんやから強気攻めくらいにしたろ。」
「怒涛の攻め寄りのリバ可」
「魔王攻めです~」
「サド攻め」

「さっさっぱり分からない!!」と春奈が言うと「春奈ちゃん、意外と人を見る目ないな~。にいちゃんは見た目と腹の底違うで。」と伊衛門の妹の米子はケタケタ笑いながら言った。

少し遠く離れたところでアレックと伊衛門の二人は春奈たちのグループを遠巻きに見ていた。
「ホント、何を話しているんだろうね。」とアレックが言うと、彼女たちの視線の意味に気付いた伊衛門は舌打ちして言った。
「チッ、あの腐れアマども腐った目で俺たちを見ているな。」

「クサレアマドモ? ごめん、スラングかローカルの言葉かい? 早口でよく分からなかったよ、イエモン君。」
「ああ? ツ・バ・サだと何回言えば分かるんや!! でかい図体して頭の中はカラッポかい!! ド低脳ガーーッ ケツから手え突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたろか!!」
伊衛門の言葉を聞き取れなかったアレックに対して伊衛門はやはり早口でまくし立てた。
「ごめん、それも聞き取れなかった。漫画・・・じゃなく日本語のテキストには載ってないね。その言葉。」
主に母親の買う一般的な日本語の漫画を(こっそりと)読んで日本語を習得したアレックには伊衛門の言葉は理解出来なかった。

きょとんとするアレックにハッと我に返った伊衛門はにっこりと天使の笑顔で答えて言った。
「ごめんよ~、『クサレアマ』というのはね、『尊敬できる女性』という意味なんだよ。」と伊衛門はアレックに教えてやった。
「なっなるほど、メモメモ。」

アレックはさっそく覚えたての日本語を春奈に使った。
「春奈! 君もやはり『クサレアマ』だよね。」と。

パシッ

顔を真っ赤にして激怒した春奈はアレックの頬をひっぱたいてツカツカと教室から出ていった。
「?ナンデ?どうして?」
アレックは頬を手で押さえて呆然と立ちすくんでいた。

ちょうど斑目が廊下を歩いて、春奈たちの教室の入り口に差し掛かった時に、教室を勢いよく飛び出す春奈とすれ違いにぶつかりそうになったが、春奈は斑目に目もくれずプリプリ怒りながら廊下を早足で歩いていく。
驚いた斑目は教室を覗きながら「どうしたんだい~」とのん気そうに声をかける。
そんな様子を女子たちはウンウン頷きながら見て言った。
「総受け」
「総受けやな」
「総受けです~」
「総受け・・・だねえ・・・」
「総受けね」

そんな事もあったりもしたがアレックの日常は、むしろ母国にいた時よりも充実なものと言えた。アレックはそんなに日常に安らぎさえ感じるようになっていた。


スージーが行方不明になるまでは・・・。