※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

koyukiⅢ~フェチ、襲来その3 【投稿日 2007/03/13】

カテゴリー-斑目せつねえ


【2011年4月16日/東京駅】
土曜日の朝。
東京駅八重洲口の一角にあるコーヒーテラスで、高坂真琴とアンジェラ・バートンがタンブラーを片手に談笑していた。
咲は2、3歩離れた場所に立ち、携帯電話で自分の店に連絡を入れている。
「……うん、うん。じゃあ悪いけど店の方、よろしくね」
咲は電話を切って、二人のもとに戻った。

彼らの足下には荷物のカートが置かれている。軽い朝食を終えて、これから仲間達と合流。アンジェラ主催による『高坂夫妻結婚記念温泉旅行』として、伊豆へと向かうのだ。
英語と日本語が行き交う会話。3人とも『絵になる』容姿だけに、周りを行き来する人々の中でもひときわ目立っている。

この後、別の意味で、さらに目立つことになるのだが……。

「おはようございます!」
最初に合流したのは、田中総市郎、加奈子夫妻だった。
総市郎が4人分はあろうかという大荷物を抱え、背負い、引きずっている。その中身はもちろんコスチュームの山だ。
咲は総市郎の荷物の山を見て、大学卒業前の『撮影会』の記憶が蘇る。

「うわー……いつもお疲れ……。今回一泊旅行のはずだけど……」と、声を掛ける咲に、総市郎はやや高めのテンションで、「もうね、今日はアンジェラとスージーと『高坂さん』の分もバッチリ持ってきたから!」と答える。
呆れる咲の隣で、夫である真琴は、「うわぁ、楽しみだなあ」と呑気に笑う。ジロリと睨む咲。
「……ちょっとヤメてよ。私のコスチュームはそこら辺のロッカーに入れてきなよ……」

田中夫妻の赤ちゃんは、スリングに包まれ加奈子の胸元で寝息を立てている。アンジェラが中腰になってその寝顔をのぞき込み、目を細めた。
寝ている赤ちゃんの頬をなで、ぷにぷにとした手をつまんで握手する。
その様子を見ていた加奈子が、アンジェラに語り掛けた。

『アン、あなたも欲しいんじゃないの?』
『うーん、そうねえ……』
加奈子は、子どもから視線を外さないまま答えるアンジェラに、疑問に思っていたことを単刀直入に聞いてみた。
『……ところで、今回はどうしてスーと一緒に行動していないの? 何かあったの?』
アンは、笑顔で加奈子を見上げる。

『だって彼女、帰国したばかりでしょ。彼女の父さん厳しいから一緒には行けないと思ったの。私、サキの結婚式に行けなかったでしょ。二人にオメデトウを言って、ついでにマダラメも祝福してあげようと思ったのよ』
サラリと答えるアンジェラに、加奈子は納得がいかない表情で「ふーん」と頷くだけであった。

続いて、笹原夫妻がやってきた。
旅装は完士だけで、千佳は身軽な格好で双子のうち一人を抱っこしている。千佳は連載漫画の打ち合わせの予定が詰まっているため参加できず、欠席となったのだ。
二人とも寝不足なのか、目を真っ赤に腫らしている。

「オギー残念だね」
咲が声を掛けた。
「スミマセン咲さん」
「いいってば。でも旦那だけ参加して……いいの?」
「ええ。ここ数日、自分の仕事も忙しかったのに、朝まで私のネームの構成を一緒に考えてもらったし……。今回はゆっくり楽しんでほしいかなって……」

二人が完士に目を移すと、目を閉じたまま、生きる屍のようにゆらゆらしている。
高坂真琴が、「笹原君、笹原君?」と肩を叩いて2度3度呼び掛けることで、「……あ、ああオハヨゥ……」とか細い声が返ってきた。

咲は再び、千佳を見て、抱えていた子どもが一人であることに気付いた。
「そういえば、もう一人の双子ちゃんは?」と尋ねたとき、駅構内に響くような大声で、「ゴラァ『荻上ェ!』 とっとと先に行くとはどういう了見やねん!」と、藪崎の怒号が聞こえてきた。

「いいかげん旧姓で呼ぶのやめてください」と千佳。
「この方が怒鳴りやすいんや。……だいたいワレは人のことベビーシッターか何かと勘違いしとるやろ!」
千佳は、耳元まで来て叫ぶ藪崎を指して、「……この通り『助っ人』がいますので……」と力無く笑った。


119 名前:koyuki3~フェチ、襲来(3):2007/03/13(火) 17:20:16 ID:???
藪崎のおかげで一段と騒がしくなった人の輪を見て、「うわ…、入り辛いなあれは」と呟きながら、斑目がスージーを連れてやってきた。
何となく、スージーを隠すように、斑目が前に立って歩いている。

ジャケットとデニムのパンツにスニーカーというラフな姿の斑目。どれも安物だが、スージーと並んで歩くことが多くなってからは、少しばかり格好を気にするようになったらしい。
咲はタンブラーを口にしながら、『不器用だけど衣装を頑張ってみた』といった雰囲気の斑目の姿を見る。
その姿に目を細め、「ふふ…」と微笑んだが、直後にスージーが斑目の陰から出てきた時には、思わずコーヒーを吹いた。

スーは、柔らかい黄色のワンピースを着ていた。しかもノースリーブでミニ。さらに単色のニーソックスをはいて、素足が少しだけ覗いている。
ワンピの白い襟の中央にはピンクの大きなリボンがあり、金髪のツインテールと同じタイミングで揺れていた。
『萌えてください』と言わんばかりの妙な気合いの入り方に、咲ですら、『ドコのマンガから出てきたのよ?』と聞きたくなった。

「うわあ、記号のカタマリだな」
「咲ちゃんもこういうカッコすれば、『萌え』になると思うよ」
「絶対シマセン」
盛り上がる仲間達と、いつもの愛想笑いであいさつを交わす斑目。
その傍らでスージーは、斑目のジャケットの端を掴んだまま、ジーッとアンジェラを見ていた。

アンジェラは相変わらず露出度が高い。シャツの胸元を大きく開き、太股も露わなミニで駆け寄ると、胸が当たるほどに斑目に近づいて、彼の手を取ってニコニコと微笑んだ。
カタコトの日本語で「スー、マダラメ、オメデートゥ!」と繰り返している。
赤面でカクカクと頷くばかりの斑目。

アンジェラはスージーの刺すような視線に気付くと、彼女に視線を落としてニッコリと笑い、『Hi』とあいさつした。
スーが、仏頂面のまま『……Hi』と返すと、アンはにこやかな表情のまま英語で語り掛けた。

『スー、お家に電話したらお母様が、“スージーは友達とクリスタルレイクにキャンプに行ってる”って言ってたわ。……お母様は優しいのね』
『…………』
今回スージーが訪日することができたのも、母親の理解と協力があってこそだった。
『……でも十日近くもキャンプに行くなんて、お父様も心配されるんじゃないかしら?』

眉をひそめてムッとするスーに、アンジェラは『ゴメンネ』とウインクして、咲たちのもとに戻っていった。
二人の会話の意味は、斑目にはさっぱり分からなかった。

「これで全員だっけ……、ん?」
咲は、パシャ、パシャ……と、駅構内でフラッシュの明かりが灯されているのに気付いた。
デイバッグを肩からさげた現役会長の朽木が、「イエーイ!」と叫びつつ、デジカメで一団を撮影しながら歩いてきた。
「やめんかい!」
思わず叫ぶ咲。
怒鳴る女に生ける屍、奇行の男、萌えの記号をまき散らすガイジン女など、オカシナ団体は東京駅構内で思いっきり浮いていた。

【2011年4月16日/東海道新幹線のホーム】
手製の旗を持ったアンジェラを先頭に、元現視研一行が新幹線に乗り込む。
発車のベルが鳴り、ホームで見送る千佳に向かって、咲や加奈子が窓越しに手を振る。

その様子を『ホーム側から』撮影していた朽木は、危うく乗り遅れそうになった。
ドアに挟まれそうになりながら乗り込む朽木。『駆け込み乗車はおやめくださいッ!』と駅員のアナウンスが響いた。
クッチー、さっそくやらかす。

一行を乗せた新幹線は、西に向かって走り去った。

手を振って見送った千佳は、新幹線が見えなくなると、ふぅと軽いため息をついた。
彼女の後ろのベンチで、双子を抱っこしている藪崎は仏頂面をしていた。座って待っている間に、周りにいたご老人達から、『たくましいオカン』に間違われていたのだ。

「おもんないわ~。何が乳の出が良さそうな体やねん。『荻上ェ』もう帰るで!」
「藪崎さん、せっかくだから、何か美味しいもの食べて帰りませんか?」
「は?」
「だって、見送りだけやって終わりじゃ面白くないじゃないですか。私の用事も大半は明日だし……」

双子の一人を千佳に返した藪崎は、空いた手であごをさすりながらニヤリと笑った。
「……ふむ、よっしゃいこ。溜まっとるんやな、ええでええで~。普段の夫への不満やドロドロした感情をドンドン吐き出すんやな。弱みを聞いてやるでぇ」
「不満なんかありません!」

仲が悪いのか良いのか分からない二人は、並んでホームの階段を下りていった。

【2011年4月16日/新幹線車内】
新幹線『こだま』は静岡県の三島駅へ向かう。
そこでローカル線とバスに乗り換えれば、目的の温泉地までは2時間半で到着する。
三島までは『こだま』を利用するため、自由席車両でも席は空いていた。
周辺が空いている席に爆睡中の笹原を『安置』。残った一行は、通路を挟んで4人がけの席を並べて旅行を楽しんでいた。

しかし、その一角は微妙な空気を醸し出していた。
斑目の隣にアンジェラが割り込むように座り、その向かい側には、追いやられたスージーと、デジカメで景色や一行の姿を撮影しまくる朽木が座っていた。
アンジェラはふくよかな胸を、斑目の腕と肩に押し当てるように密着している。
『ソーウケ、メガネフェチとして貴方と旅行するのが楽しみだったのよ。今日はエンジョイしましょう!』
「え、なに?……いやそんなにくっついて話しても意味分かんないし……(アンの吐息が耳元を襲う)……ッあぁっ……!(滝汗)」

咲と加奈子は、斑目たちの席を呆れた顔で眺めつつ、パックの静岡茶を飲んでいる。
「……なにやってんだか、あの席は……」
「アンはメガネフェチなんで、斑目さんで遊んでいるのかもしれませんが……。うーん、今日は飛ばしてますね……」
田中や高坂…それぞれの夫は、それぞれの妻の心配をよそに、オタ話に花を咲かせていた。

アンジェラが手荷物から、ラッピングした小箱を出して開け、手製のクッキーをつまんだ。
『はーいマダラメ、私がサキの家で焼いたクッキーよ。食べてみて』
「……え、何、サキ…さんが何だって? ああ、クッキーねどうもイタダキマス………ってうぉ!?」
慌てる斑目、ぽかんと開いていたその口に、アンジェラが優しくクッキーを入れてあげたのだ。

いかにもアメリカンホームメイドといった風味のチョコチップとクルミの味わいが口の中に広がる。
さらにアンジェラは、斑目の口元にこぼれた粉を指先ですくった。至れり尽くせりの状況に、顔面紅潮の斑目は声も出ない。

『はい、スーもクチキもどうぞ!』
続いてアンジェラは向かいに座る二人にクッキーを分け与え、さらに小箱を加奈子に渡し、彼女らの席にもお裾分けした。
「おいしい!」
「これいけるわ」
さっきまでアンの所業を心配していた加奈子や咲も、お手製クッキーの味に籠絡されたかのように、そのままお菓子の話題で盛り上がり始めた。

スージーは、クッキーを無造作に口に放り込みながら、目の前で展開する痴態を見守る。内心は面白くない。
(……『ソレ』ハ、ワタシノダ……)

そんな気持ちを知らずに、朽木は無遠慮に斑目とアンの姿をデジカメで撮影していた。
スーは、朽木のカメラに手を伸ばして語り掛ける。

「マチルダチューイ、アノォ……ハジノカキツイデデアリマスガ、シャシンヲトラセテイタダキタク、オ、オネガイモウシアゲマス!」
「おぉ、カイ・シデン! スージー殿がワタクシを撮ってくれるでありますか?」
「……(無言で頷く)」
「それはかたじけない!」と、朽木がデジカメを手渡すと、スージーはしばらくデジカメのメニュー画面を見つめ、素早い手つきで『カードのフォーマットを初期化』して、その後で朽木の顔を撮影した。

「ゥオォーーーーッ!? ナンテコトヲーッ!」
朽木の悲鳴が車内に響きわたった。

【2011年4月16日/バス車中】
三島駅で新幹線を降りてローカル線に乗り換えた一行は、続いて修善寺駅で路線バスに乗った。
彼らが向かうのは、伊豆の中央部、天城山系に囲まれた温泉地であった。
レトロなデザインにオレンジのカラーリングのバスが、トコトコと山々に囲まれた国道を走る。車内では、一部間違った日本語の歌がアカペラで熱唱されていた。

『♪ウランッデモォ~ウランッデェモォオ~、ココロウラワラ~アナタ~、ヤマゲモ~エエ~ルゥ~!』

ご機嫌のアンジェラが、この日のために憶えたという演歌を歌う。あやふやな日本語をカバーするかのようにクッチーもこぶしをきかせてデュエットしている。

『♪アメギィ~モゥォゥエェ~』

バスの乗客は彼らだけではないのだが、頭を抱えているのは咲くらいで、乗り合わせたオジジオババの観光客も手拍子とヤンヤの喝采を送っている。
「いいぞねえちゃん!」
「外人さんステキヨ~!」
他の乗客の喝采に手を振り、投げキッスをして応えるアンジェラと朽木。
加奈子も、「アンがあんなに上手に日本語で歌えるなんて驚きました!」と感心している。

「そういえば私のマンションで練習してたっけ……」
加奈子の隣に座っていた咲は、アンジェラが彼女のマンションに泊まり込んでいる間、演歌「天城萌え」を繰り返し聞いてたのをおぼえている。
それ以外にもアンジェラは、英語字幕のない日本語のアニメを、ビデオで何度も繰り返し見ていた。咲はビデオの内容について詳しく尋ねることはなかったが……。

【2011年4月16日/浄蓮の滝】
温泉地に行く途上、観光スポットがあるということで途中下車した一行。爆睡中の笹原は危うくバスの中に『置き忘れ』されそうになった。

降り立った駐車場では、観光バスや乗用車がひっきりなしに訪れ、土産物屋や屋台は観光客で賑わっている。
総市郎が加奈子に語り掛け、「ここが、さっきの歌に出てきた場所だよ……人が少なければ、『撮影』にもってこいのロケーションなんだけどね」と残念がった。

そこは浄蓮の滝。
20メートル以上の落差がある天城の観光名所だが、谷間の下にある滝壺までは、200段以上の石段を降りていかなくてはならない。
彼らが立っているのは、その石段の入り口付近だ。
新緑の鮮やかな緑に包まれた谷の向こうから、人の賑わう声に混ざって、微かにドドドドド……と滝の音が聞こえてくる。

咲やアンジェラは、さっそく名物の『わさびソフトクリーム』を買い食いしている。辛口版はクリームの甘みとともに、舌にピリピリと刺激がくる。
咲がニヤニヤしながらわさびソフトをスプーンですくい、立ったままゆらゆらしている笹原の口に突っ込んだ。
「……んぐンッ!」
ビクッと目を覚ます笹原に、真琴が「おはよう」と声を掛けた。

その様子を遠目で見ていた斑目は、(……『春日部さんのソフト』……)と、笹原にちょっとしたウラヤマシサを感じつつ、ベンチに座ってため息をついた。

「いやもう移動だけで疲れたわ……」
朝から続くアンジェラの過剰サービスに疲れ気味の斑目。そんな彼の隣に、再びアンジェラがやってきて座った。
その手には、わさびソフトを持っている。

『これピリピリして食べきれないの~。マダラメお願い』
「……これ、俺にくれるの?」
朝からスージーが不気味に沈黙しているのが気になる斑目だったが、気の弱い彼はアンジェラの接触も強く断れない。
いま周りにスージーの姿は見えないので、仕方なくわさびソフトを受け取った。
その間、アンジェラは、店舗とトイレがならぶ一角を眺めて、何かのタイミングを伺っていた。

ペロリとソフトクリームを舐める斑目だったが、その直後にアンジェラも、彼が持っていたソフトをペロリと舐めた。
驚く斑目に、ニッコリと微笑みかけるアンジェラ。

ちょうど『その瞬間』を、トイレから出てきたばかりのスージーが目撃した。
彼女の視線上には、滝に向かう石段入り口付近にたむろする仲間達の姿が見えたが、その一角で、ソフトクリームを交互に舐める斑目とアンジェラが見えたのだ。

そんな劇的状況も知らず、「あ、スージー。滝まで降りましょう!」と誘う加奈子。
スーはコクリと頷くと、ベンチに座る斑目の前にスタスタと歩み寄った。
「あ…スー、ドシタノ」
声が裏返る斑目。メガネの奥の瞳が緊張している。

「…ネコヤシャ…」

「……それってもしかして、『オスワリ』ですかぁ?」
「Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.Yes.」

「ネコヤシャオスワリ」で肩車をするハメになった斑目。
滝が見えるまでの約200段の下り道を、肩車のまま降りていく。苦悶の表情を浮かべながら歩く姿は、まるで初期ジャッキーチェン映画の修行シーンのようだ。

飛沫が涼しげな浄蓮の滝を眺め、その滝をバックに朽木のデジカメで記念写真を撮る一行。だが、斑目はその間もスージーを肩車したまんまであった。
「うーん、斑目先輩、もうちょっとずれてくれないと、『上のスージー殿』で滝が隠れちゃいマスヨ!」

滝とスーが並ぶけったいな記念写真を撮った後、高坂や笹原たちは滝の周りの河原でマス釣りを楽しむ。田中夫妻は赤ちゃんに川の水を触らせては、その愛らしい姿を写真に納めている。
咲やアンジェラも、川の冷たい水を活かしたわさび田を眺めたり、男性陣が釣ったマスを焼いて食べながら談笑していた。

ただ斑目だけは、肩車のままウロウロしていて落ち着きがない。
スージーの『感触』がいつもと違うのだ。頭に接する部分がいつもよりも密着していて、暑くて汗ばむほどであった。
しかも今日のスージーはミニのワンピにニーソックスで絶対領域を作り出している。その生足部分が直撃していた。

「あ、あの……今日はちょっと密着しすぎじゃないデスカ?」
恐る恐る尋ねる斑目に、頭上のスーからは即答が返ってきた。

「アテテンノヨ!」

結局斑目は、200段の階段を登って帰る時もスージーを肩車し、ヒーヒー言いながら移動するのであった。

【2011年4月16日/天城七滝】
再び路線バスに乗り込んだ一行は、天城トンネルなどを眺めながら移動。バスは、急斜面を緩やかに上り下りするために螺旋状に造られた『ループ橋』を降りていく。
「うーむ、ループ……いい響きですね」と、朽木が感心している後ろで、疲れ切った斑目は、隣に座る笹原と一緒に爆睡していた。

ループ橋を降りてすぐに下車し、橋の下をくぐるようにして移動した一行は、温泉宿が並ぶ「河津七滝」へとやってきた。
「伊豆の踊り子」で有名な滝を中心に、七つの滝を見物できる観光スポットでもあり、滝を見ながらの露天風呂も楽しめるという。

咲や加奈子はガイドブックを手に、温泉郷の一角にある喫茶店に入る。
「ここのイチゴのデザートが美味しいんだって」
「お昼の軽食と一緒に食べましょう」
盛り上がる女性陣。
「新幹線の車中からずっと食べっ放しだな」と呆れる田中。
「あぁ、この人たちも女だったんデスネ」
斑目が疲れた表情で応える。
田中は小さな喫茶店の店内を見渡し、「……座りきれないから、俺ら隣のソバ屋で食うから」と加奈子に語り掛け、男性陣を引き連れて移動した。

斑目、田中、高坂、笹原の四人は、ざるソバをすすりながら何気ない会話を交わしていた。
田中がズルズルッと最後のソバをすすって食べ終わった後、隣に座る斑目に問い掛けた。

「斑目、『ああいう時』は態度をハッキリさせた方がいいぞ……。経験上、曖昧な態度は後で自分を苦しめるからな」
「え、何のこと?」
「とぼけるなよ。スージーご立腹じゃないのか?」
「あ~、そうねぇ……(汗)」
高坂がその会話に入ってきた。
「あの~、アンジェラなんですが、この旅行を機に、『やりたいことがある』って言ってたそうですよ」

「……やりたいことねぇ。おれ、それに巻き込まれてるのかな……」
斑目は深いため息をついて、残りのソバをつゆの中に放り込んだ。