※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

真っ赤な誓い 【投稿日 2007/01/18~03/08】

カテゴリー-斑目せつねえ


その日の斑目はいつもと様子が違っていた。
いつも通り仕事をそつなくこなしていたが
どこかソワソワした感じを漂わせており、落ち着かない様子であった。
「斑目くん」そんな彼の様子を見た上司が声をかけたのが
昼食も終わり、午後の業務に入る前であった・・・。
「今日ぐらいは、休みをとっても構わなかったのに・・・」
「大丈夫ですよ、明日は休日だし、
 仕事していないと落ち着かなくて・・・
 ここに連絡入れてもらえるように頼んでますから・・・
今日はまだ大丈夫なんじゃないですか・・・・」
斑目は引きつった笑顔で答えた。
「気持ちはわかるがなあ・・・
いざというときそばらにいなかったらあとあと恨み言をネチネチ言われるぞ・・・・
俺がそうだったから・・・。」
上司がそこまで行った時、突然事務所内に電話の呼び出し音が鳴った・・・。

「斑目さん、外線です。」
「えっ・・・あっはい!!」
あわてた様子で受話器を受け取る斑目
「あっはい・・・わかりました・・・すぐに・・・はい」
そんな彼の様子を見た上司は、事務所内にいた作業着姿の社員に声をかけた。
「山本くん、昼から現場まわるのだったら、斑目くんを送ってやってくれないか?」
「専務・・・・」
「なあに、気にすることじゃないよ。それよりも早く行ってあげないと・・・。」
「ありがとうございます!!」
斑目は一礼すると、カバンを引っつかみ事務所を後にした・・・。

笹原は少しあせった様子で歩いていた。
長くて広い廊下、その奥には大きな扉があり、その数メートル手前には
革張りの長いすが壁に沿うように置かれていた。
そこには斑目と初老の夫婦が座っていた。
「斑目さん!!」
「おお・・・笹原・・・」『心配』という文字が書いてありそうな顔であった。
「あら、笹原さん・・・息子がお世話になってます・・・。」
「いえ・・・こちらこそ・・・ところで」笹原はチラリと扉を見た。
「ええ・・・ちょうど今入ったところ・・・入ったとたん男二人ずっと
 この調子・・・。」
「はは・・・」
「すまないな・・・笹原・・・・」
「いいですよ、そんな・・・・あとで田中さん達も来るそうです。」
「そうか・・・」斑目はどこか遠くを見つめた目で答えた・・・。

足音が静かな廊下に響き渡る、その音からかなりの人数が
こちらに近づいているのが判った。
「あっ斑目!!」小さな幼女が彼を指差した。
「こらっマコ『斑目のおぢちゃん』でしょ!」咲はきつくたしなめた。
「ようこもごあいさつしなさい」可奈子の足元には彼女に良く似た
長い髪の幼女が彼女のスカートの裾を引っ張りながら「こんにちは」と
舌足らずな言葉でつぶやいた・・・・。

「斑目ー」マコは声をあげながら長いすによじ登ると
斑目の首筋に抱きついた。
いつものように、これをすると斑目がふざけて遊んでくれる・・・
マコはそう考えていたのだが、斑目は力なく笑いかけ、彼女の頭を軽く
ポンポンと叩きながら微笑むだけであった。
「重症だな・・・」田中はボソッとつぶやいた・・・。
「ほらっマコ、おぢちゃん困っているでしょ!!」
母親にきつく言われてバツが悪いのかマコは高坂の足元へ行きしがみついた・・・。
「あらまあ、皆さんありがとうございます・・・。」
斑目の母親は深く頭を下げた。

「すみませんね・・・さっきからもうこの状態で・・・。」
「いえいえ・・・自分の時もこんな感じだったので解りますよ・・・。」
田中はそう答えながら、斑目に声をかけた。
「メシまだだろ、今のうちに食いに行っておくか?」
「その方がいいわね・・・先は長いんだし・・・
 父さんと母さんここにいるから、先に食べてなさい。」

静かになった廊下、斑目の両親の会話だけしか聴こえない・・・。
「晴信・・・いい友達持ったな・・・」
「ホント・・・東京へ行くって言ったときは心配したけど、
 あの様子なら、安心ね・・・・。」
「あいつも・・・・・になるんだな・・・・」
「そうね・・・・・でも二人・・・・・・でしょう。」

「結構イケルじゃない。」咲はハンバーグを口に頬張りながら言った。
「だっだろ?営業でここきっ来た時にはいっいつも食べてるんだ・・・」
「グッード、テイスト!!こういう所の食堂の定食は大抵出来合いのものと、
 相場が決まっておりますが、ワタクシ月一で通いますよ!!」
「メッメシもいいけど・・・ほっほら・・・」久我山は横を向くと窓の外を眺めた。
「本当にいい景色ですよね・・・」可奈子がなんともいえない声をあげた。
窓の外には町並みと港が広がっており、日も暮れかけているのが手伝って
神秘的な様子をかもし出していた・・・。
「クガピーお手柄だよ、こんないい所見つけて・・ねっ斑目!!」
咲は向かいに座っている斑目に声をかけた・・・。
「えっ・・・ああ・・・・」聴こえてなかったのか曖昧な返事であった
「やっぱり、気になりますか・・・?」笹原は心配そうな顔で尋ねた。
斑目の皿はまだ半分も手をつけられていなかった・・・・。
「まあ、男ならいつかは通る道ってことかな・・・。」田中は口元に笑みを浮かべている。
「そうですよ、田中さん自分の時は、今の斑目さんよりオロオロしていましたから・・」
「高坂、その話はもうやめろー!!」
ハハハハハと笑い声が食堂中に響き渡る・・・
「ところでさあ、後で可奈子から聴いた話しなんだけど・・・私の時はこの男
 ずーとゲームしていたって言うじゃない・・・どうよ!!」咲は親指をクイッと
高坂に向けるとイヤミたっぷりに言い放った。
「う~ん、僕は咲ちゃんなら大丈夫って信じていたからね。」
「これだよ・・・これ・・・・」咲の口調はウンザリと言った感じだった・・・。

「ん・・・・」朽木は目を覚ました。
「ハテ・・・?ここは一体・・・・」彼はぼんやりした頭で考えていた・・・。
「確か・・・・食事の後、『おちびちゃん』達とプレイルームで遊んでいて・・・・
 そうかそのまま寝てしまったんだ・・・。」
消灯時間はとっくに過ぎたらしく、保安灯の灯りだけであったがそこがプレイルーム
であることは理解できた。
朽木は上半身を起こし周りを見渡すと、すぐ横には『マコ』と『ようこ』が
『タンパンマン』のタオルケットをかけられてスヤスヤと寝息を立てており、
朽木にも『ふたりは ムノチュア』の大き目のタオルケットがかけられていた。
「そういえば、斑目さんはどうなったんだろう・・・」
時計を見ると、午前3:00を過ぎている。
朽木はそーっと二人を起こさないように静かにプレイルームを後にした。

大きな扉の前には何人かの人影が見えた。
扉の周辺には蛍光灯がつけられており、それが斑目たちであることが
遠目からでも朽木には理解できた。
「あっ、クッチー起きたの?」咲は声をかけた。
「にょー、おちびちゃんたちはまだ眠っておるであります~~。」
「ありがとうね、今ジュース買うところだったけど何か飲む?」
「では、レモンティーをばひとつ所望いたす。」
「こころえた!!」咲はおどけて、そばの自販機へ行った。
小銭を入れる音とジュースが数本出てくる音が廊下にこだました。
「様子はどうですか?」朽木はジュースを片手にして、斑目に声をかけた。
「うーん、中の様子は伝えられてるけど・・・」斑目の視線は扉に注がれたままだった。
頑丈そうな扉である、しかしその扉からは時折、小さなものであるがはっきりと
『うめき声』が聴こえるのである。
このようなしっかりした扉からでも声が聴こえるのだから、中ではものすごく大きな声を出しているのだろう・・・。
朽木はそんな声を聴いている斑目を見ていたたまれなくなってきた・・・。

それから、一時間くらいたったであろうか・・・。
扉がひらくと、中から一人の女性が出てきた。
「あともう少しです・・・・斑目さん・・・中へ入って励ましていただけませんか?」
「えっおれ?」斑目は驚いた顔であった。
「どっどうやら、くっ来るときが、来たようだな・・・頑張れよ。」
斑目は立ち上がると、「ほんじゃま、ちょっくら行って来るわ!!」と笑顔で振り向いたが
その表情は硬く、足は心なしか震えているようであった。
「斑目、手!!」咲は声をかけた。
「へっ?」
「右手をあげて」
斑目は言われたとおりに右手を上げると、『パシーン』と乾いた音が響き、
右の手のひらには衝撃が走った。
「ほらっみんなも」咲は皆を促した
皆は次々と斑目の手のひらに平手をうち、最後に朽木が打ち終えた時には彼の手は
『真っ赤』になっていた。
「気合入った?しっかり見届けなさいよ!!」
斑目は真っ赤な手のひらを見つめる、足の震えもいつの間にか止まっていた。
「あんがと、そんじゃいってくるわ!」斑目はそのまま扉の中へと入っていった。

それから、一時間、扉からは先ほどよりも大きな『うめき声』いや
もはや『さけび声』とも言える声が聞こえた。
そして、『さけび声』と共に「頑張れ!!」「もう少しだ!!」と
斑目と思われる声も聞こえた。
扉の前では最早誰も口を開こうとはしなかった。
いや、むしろ立ち尽くして動けない状態でいた。

「頑張れ!!」「頑張れ!!!」「頑張れ!!!!」
斑目の声は段々激しくなってゆき、それと比例するように『さけび声』も
大きくなり、廊下中に響き渡った!!!

次の瞬間!!
廊下中いや、『病院中』に響き渡ったかも知れないと感じられた声が
扉から聴こえた!!!!














「ハラワタヲ!!ブチマケロ!!!!!!」



「おぎゃー!! おぎゃー!!」
産まれてきた事を喜ぶように、そして自らの存在を示すように
新しい命が歓喜の歌をあげた・・・・。
分娩室の扉が開き、助産師が出てきた。
「おめでとうございます!元気な女の子です!!!」
斑目の両親は手を取り合いその場に泣き崩れてしまった。
『現視研』のメンバー特に『元ネタ』を知っている咲以外
高坂ですら開いた口がふさがらないくらい、
絵文字で例えると(;゚д゚) な感じで呆れ返っていた・・・・。

「スージー・・・・」加奈子は頭を抱えてため息をついた・・・。
「やっぱり・・・意味解って・・・・・」
「なっ何も・・・こっこんな時に・・・・。」
「何か・・・・『散々引っ張ってオチがそれかよって』突っ込みがありそうな・・・」
そんなことを言っていると扉から斑目が顔を覗かせた。
「やあ・・・」斑目の声は叫びすぎたのか、かなりかすれていた・・・・。
一同はハッと我にかえり斑目を見つめた・・・。
「親父・・・おふくろ・・・・」斑目は泣き崩れている両親のそばによると
腰を落とし両腕で二人の肩を抱えた・・・。
斑目は震えていた・・・・ときどき「うっ・・・うっ・・・」と嗚咽が聞こえた・・・。

「や~ん!かわいい!!」
新生児室前のガラス張りの前で加奈子は嬉しそうな声を出した。
「ちょっと目元が斑目に似てない?」
田中のカメラからはシャッター音が次々と聞こえる。
「あっいたいた!」
その時大きな声とともに乾いたサンダルの音が廊下に響き渡る。
「おいっ!ここ病院だぞ!静かに出来ないのか!」笹原は少し強めの口調で声の主をたしなめた。
「ごめん!」兄に言われてバツが悪いのか、舌をぺろりと出しながら恵子は謝った。
「てんちょーこれ!」恵子は持っていた紙袋を咲に渡した。
「ありがと、ご苦労さん!」
「斑目は?」
「もうすぐ・・・」咲がそこまで言いかけたとき、近くの扉が開いて斑目が出てきた。
「どもっ!おめでとさんです!」
「ああ、ありがと・・・。」
「スージーは?」
「よく寝てるよ・・・疲れていたんだろうな・・・。」
「無理ないよ・・・あれだけ頑張ったんだものね・・・
 あっそうそうこれっ!」咲は恵子から受け取った紙袋を斑目に差し出した。
「えっ?」
「私からの出産祝い!袋から出してみて!!」
「あっ・・・うん」
斑目は紙袋の中に入っている物を取り出した。
「これって・・・・」
「そう、ベビー服!うちで若いお母さんをターゲットにし  
た新商品!!女の子用を恵子に持ってこさせたの。」
「ありがとう・・・でも結構高いんじゃないの?」
「いいのよ・・・スージーにはうちでモデルしてもらってい るから・・・
 マタニティー物を取り扱った時も評判良かったし・・・・。」
「ああ・・・あれね・・・・。」
斑目は心の中で冷や汗を流した・・・。

スージーは日本に来てから時折、咲のショップのモデルとしてHPに掲載されていた。
容姿が幼く、金髪碧眼の彼女はすぐに10代の女子達から支持を得て
休日にはショップが人で溢れ変えると言った状態であり、朽木の提案で定期的に
握手会を開催するようになった。
人気は女子だけでなく、「いざ!めくりめくお兄ちゃんワールドへ!!」と
叫びながら『小学5年生』を『妖精さん』と考えているような方々からも
支持を得ており、連日『某所掲示板』にて盛り上がっている状態であった・・・。
しかし『店舗の場所』が場所だけに握手会に『その類の人間』が姿を現すことは
無かったのだが・・・(この話しはまた別の機会に・・・)

「ありがとう・・・あいつも喜ぶよ・・・」
「でもあんたが『親父』になるなんてね・・・」
「はは・・・」

「ン・・・・」心地よい暗闇の中で誰かに呼びかけられた・・・・
「ダレ?」声は聞こえないが返事があった様に感じた・・・・。
「ソウカ・・・・アナタナノネ・・・・今行クカラ・・・・」

スージーは目が覚めた、重そうな瞼のまま、ムクッと起き上がった瞬間
下腹部に痛みが走った。
「あっ起きたの・・・大丈夫かい?」ベッドの横には斑目がいた、腫れぼった目疲れている様子であった。
「呼ンデル・・・・」
「えっ?」トントンと音が鳴ると、ガチャリと病室のドアが開き、看護師が入ってきた。
「スザンナさん、授乳の時間です(英語)」覚えたての、たどたどしい英語であったが、看護師の言葉にはやさしさが感じ取られる。
「thanks・・・自分デ行ケル・・・」彼女はベッドから足を下ろすと再び下腹部に痛みが走り、表情を歪ませる。
「おいおい、無茶はするなよ・・・」体を支えた斑目の言葉にスージーは彼の目を見つめ親指を立てた。
「ダンシャク様ハ無敵デス!!」
「あっそうなの?」斑目の額に一筋の汗が流れた。
「善デモ!悪デモ!最後マデ貫キ通セタ信念二偽リナドハ何一ツナイ!!」
「はは・・・(言いたいことは解るけど・・・・・)」
彼女はそのまま斑目に体を預けたまま病室を出た・・・・。

椅子に腰掛けるスージー、彼女の腕の中には数時間前まで彼女と一心同体であった命が
はだけた胸に顔をうずめていた。
母乳を飲み終えた我が子を看護婦に託し、立ち上がろうとするスージー
だが、下腹部の痛みからか、足がおぼつかない・・・・・。
斑目が彼女の体を再び支える。
奥から看護師の一人が車輪の付いた歩行器を持ってこようとしていたが看護師長が黙ってそれを制した。
ゆっくりとした足取りで廊下を進み部屋に入るとベッドの前で止まった。
ベッドの高さは、今のスージーの状態では降りることは出来ても上がる事は難しそうであった。
斑目はベッドの高さを調節しようとリモコンに手を伸ばそうとした時、
病室を出てから黙ったままであったスージーの口が開かれた。
「ネコ夜叉!オスワリ!!」
「えっ!?」
「おすわり!!!」
斑目は腰を下ろし目線を彼女に合わせる。
スージーは彼の細い首に白い腕を絡ませる。
「hug・・・・・」顔を赤らめてボソッとつぶやいた・・・・。
「あっうん・・・・」斑目も顔を赤らめた・・・・
(なんで、こんなにドキドキするんだろう・・・・。)
斑目は彼女をお姫様抱っこをする形で持ち上げ、ベッドへ寝かすと、スージーの体から離れようと
腕の力を緩めた・・・・だが彼女の方の腕は緩めることなく斑目の首筋にしっかりと絡めていた。
グッと彼女の腕に力が入る。
斑目の顔はその引き寄せられる力の方向、彼女の顔へと近づいていた。


お互いの鼻先の間が数センチまで近づく・・・
「hold・・・チガウ・・・・hug・・・」高潮し懇願した顔でスージーはつぶやいた。
斑目は背中に両腕を回し、そっと触れるように抱きしめる、
彼の胸板には小ぶりであるが、しっかり張った彼女の胸の感触が伝わっていた。
「晴信・・・アタシ・・・ガンバッタ・・・・baby・・・・アタシ達のbaby・・・」
スージーの体が震える、そして斑目の頬に熱いものが触れた。
彼は彼女の涙が自分の頬を伝って来たとすぐに理解でき、そして自分も震えていることに気づく。
斑目は彼女の言葉にただ「うんうん・・・」としか言えなかった。



数分その状態が続いただろうか、震えが収まった斑目は少し体を離し、スージーと見詰め合った。
彼女の頬には行く筋かの涙の跡が走っている。
斑目はまだ濡れている彼女の頬を親指でそっと拭い
そして、彼の顔がゆっくりスージーへと近づいていく・・・・。
「スージー・・・ありがとう・・・・・」




そのまま二人の唇は重ね合わされた。



どれくらいの時間が経ったであろうか・・・・。
わずか5分くらいであったのにもかかわらず、彼らにとっては何時間も過ぎたように感じていた。
お互いの唇は離され再び見詰め合う・・・。
彼らの周りには何者にも寄せ付けない壁が出来ていた。
しかしこの壁は次の瞬間にぶち壊された!

「んーゴホンッ!!!」彼らのものとは違う咳払い、斑目はその方向へ目を向ける。
半分開かれた病室の扉、そこには咲が意地悪そうな目でこちらを見てにやけていた。

「あわわわあわあああ!!!」斑目は慌ててのけ反るとそのままバランスを崩して尻餅をついてしまう。
「かすか・・・いやもとい・・・咲さん・・・イッタイイツカラソコニ・・・・。」
赤面で冷や汗だらけの斑目、言葉もうまく出せない。
その横でスージーはいつもの無愛想な顔に戻っている。
「えーと・・・斑目が『ありがとう』って言った所かな・・・・・」
咲の顔はニヤニヤしている。
(みっ見られた・・・『春日部さん』に・・・いやっ落ち着け・・・・キスなんて結婚式の時、散々見られているじゃないか・・・)
「いやあ・・・暑いね・・・今日は暖房なんてつけなくていいんじゃない?」
(たっ助けてくれ!!)斑目はスージーを見上げる。
「イヤン!アタイ、モウオヨメニイケナイ!!!!」
彼女のその言葉にトドメを刺されたのか、彼のタマシイは抜けてしまった。
「プッッッッッ!!クーッククク・・・」
スージーはそんな斑目を見てか、それとも自分の言葉にウケてしまったのか、
込み上げた笑いを抑えられずにいる。
そんな二人を見て溜めていたものを吐き出すかのごとく咲も笑い始めた。
「ごめんごめん・・・からかうつもりはなかったんだけどね・・・・。」
まったく、悪びれた様子も無く咲は謝った。

「あんなに慌てて・・・あいかわらず『オタクっぽい』ね・・・。」
「はは・・・こちとら『オタク星人』ですから・・・こういう事には慣れておりませんので・・・。」
何とか、平常心を取り戻した斑目は立ち上がった。
「とっところで他の連中は・・・・」何とか話題をそらそうと必死である。
「あっそうそう!さっきアンから連絡入って、スージーのご両親が日本に着いたから、今、田中達が空港へ迎えに行ったところ!
 他は笹は・・・・」その時、病室の扉が勢いよく開き、息を切らせて恵子が入ってきた。
「てってんちょー『おねーちゃん』がう・・・産まれそうだって・・・」
「えっオギーが?解った、先に行っておいて!!」恵子は慌てながら部屋を出て行く。
「チカ・・・・」
「スージー俺、ちょっと様子見てくる。大丈夫だから!!!」心配そうなスージーを気遣いながら咲と共に病室をあとにする。

長い廊下、斑目の前を進む咲
「斑目!!」振り向き彼に声をかける咲
「今日のあんた、すっごくかっこいいよ!!」
「へっ!!いっいまなんて・・・・」あまりの突然の台詞に面食らう斑目
「『かっこいい』って言ったの・・・・父親になったあんたが・・・・」
「あ・・・う・・・」
「だから、ずっとそのかっこいいままでいておいて・・・・
 そうすればあんたはずっと幸せだから・・・」
「うん・・・・」
「でももし・・・スージーや子どもを泣かすような真似したら私たちが許さないよ!!」
そう言うと咲はくるりと前を向き先へ進んだ・・・。
斑目は右の手のひらを見つめる・・・
(わかっているさ・・・『春日部さん』あの時『真っ赤』になったこの手に俺は『誓う』事が出来たんだ・・・・
 ありがとう・・・・『春日部さん』・・・・)
「ほらっ何しているの・・・早く行くよ!!」
「ああ・・・・」
斑目は再び歩み始めた・・・・・。


おわり