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斑目&スーのステディライフ【2】 【投稿日 2007/01/29】

斑目&スーのステディライフ


「koyuki」おまけ/斑目&スーのステディライフ(その2)

土曜日の夕方。
道端に雪の残る街並みを歩く斑目。
スージーは、斑目の少し前をヒョコヒョコとはねるように歩いている。
表情には絶対に表れないが、どうやら楽しそうだ。午後から近くの公園で、日が陰るまで雪遊びをしていたのだ。
だがもうすぐ日が暮れる。斑目は時計を気にした。

「どうする。田中ん家に電話してアパートの住所確認する?」
「………」
スージーは振り向かず、黙って斑目の前を歩いている。
「あ、そうだ」と、斑目は携帯電話を取り出した。
「昨日乗ったタクシーの中で、スーが忘れ物をして俺が預かってるってシナリオで笹原ん家に電話して……」
「………」
スージーがステップを止めて振り返り、斑目も歩を止めた。
「………」
ピョン、と携帯電話を握っていた斑目の腕めがけてジャンプするスー。袖を取って着地すると、その袖を握ったまま離さない。
顔は明後日の方を向いていて、斑目と目を合わせない。

「スー…?」
「……tomorrow……」

ボソッと聞こえたスーの一言に、見る見る赤くなり湯気を発する斑目の顔。

寂しがりやが二人いる。
できる限り一緒にいたいと願うのが人情だ。
正直言えば、斑目も離れたくないという気持ちがある。それを相手も思っていた。彼にとっては、世界が一変したような気分だった。
(事実はエロゲより奇なり。笹原が言ってた通り役に立たんかも……かといって、現実とゲームプレイするのは別だけどね)
斑目は夢遊病者のように歩き出した。スージーは斑目の袖を掴んだまま、伏し目がちについてきた。

「ちゃんと……ちゃんとしないと」
歩きながら斑目が思ったことはただ一つ。夜のコトだ。
もちろん小心者の斑目から求める気はないが、もしも、昨夜のようなシチュエーションが生まれたら……。
昨夜は『初めて』のコトを勢いでやってしまったが、スーも自分もお互いに試行錯誤しながらの………だったのだ。
「もしもの時は、ちゃんとやんないと」
もう頭の中はソレの対処に占拠されていた。そうなると、まず必要なモノがある。

「スー、ちょっとコンビニ寄っていい?」

近所のコンビニに入店する前に、斑目はスージーに語り掛けた。
「スー、ちょっと電話してからコンビニに入るから、先に入って雑誌でも読んでいてよ」
スージーはコクリとうなづいてトコトコとコンビニに入っていった。
続いて、時間差で斑目が入店。スージーがコミックに夢中になっているのを確認して、『他人のフリ』でやってきたのだ。

(チャッチャと『アレ』を買って出て、外からスージーを呼べばいいさ。簡単だ。簡単な事だ)

ガチガチの動きで、ティッシュや靴下などの日用品の商品棚に向かう斑目。目指すは男性諸氏が装着するアレだ。

「どうやって付けるんだろうな、コレ……」

下品な話だが、今までの斑目ならば、『右手一本』で事足りていた。アレなど今まで買ったこともなかったのだ。

「買うからには良い物を買いたいが……。こっちはオカモト……日本のメーカーか。ん? ベネトン? ベネトンってアレだろF1の……(古い情報です)。スゲーな、今やF1チームもコレ売ってるんだ(間違った情報です)」

斑目は『ハッ』と周囲に視線を配り、素知らぬ顔で近く似合ったマスクやティッシュペーパーを品定めするフリをした。すぐ横に若い女性客が来たのだ。
スージーに目を移すと、まだコミックにハマっている。
(ああ、エヴァね。名作だ。最近再販したんだな)
斑目の近くに来た女性客は、商品を手に離れていった。チャンスだ。もういちどアレの前に勃つ……いや、立つ。

「いろいろあるな。12枚入り? そんなに必要なのか……」

そのとき、斑目の脳裏に、高坂真琴が就職を決めた時の咲の鬼気迫る姿を思い出した。
『ホテル行くよホテル今すぐ! コーサカ!』
斑目はあの時の咲の、平成ゴジラのような瞳が忘れられない。
怖い。

「あのとき春日部さん(旧姓)、『10回はしなきゃダメ』とか言ってたな……。人間業じゃねえ。もし、もしもだ……」

斑目は商品棚越しに、「エヴァンゲリオン」のコミックを読みふけっているスージーを見る。視線はハーフコートの下から伸びた、タイツに包まれた足へと落ちる。
昨夜の感情の高まりと勢いで求め合った夜を思い起こした。その衣類に包まれた雪のような素肌を見て、触れた時のことを思い出すと、頭の奥がしびれてくるようだ。
「……彼女がもし今夜コトに至って、『複数回』求めてきたら、俺は果たして耐えられるのか?」

オカモトとベネトンのアレを両手に持ったまま、勃ち尽くす……いや、立ち尽くす斑目。
「いや、余計なことは考えるな! アムロだってコンスコン隊の12機のリックドムを3分で撃墜したんだ。俺だって3分12回くらいやれるさ!(この場合超早漏です)」

フン!と気合いが入る。
で、ここまで迷ってたくせに、ようやく12枚入りの商品の値段を確認した斑目。
「何ぃ! 二千円弱もするのかコレ! 廉価版DVD買えちゃうよ! う~む。やはり1枚にすべきか」

そのとき再び、ニュータイプのひらめきのように、『春日部咲』の顔が浮かび、高価なジャケットを買いに行った時の事を思い出した。
(自分の判断で決める)(『これはいいものだ』と思ったら金を出す)(俺はそうやって選んだモノに誇りを持っている)

(な ぜ な ら そ れ は 俺 そ の も の だ か ら !)

(それはエロゲーだろうが同人誌だろうが、『アレ』だろうが同じ事!)
斑目はベネトンパッケージの高価な方のアレを手に取った。アレだけではちょっと恥ずかしいので、同じ棚から適当に、ボックスティッシュを買うことにした(間違った判断です。余計に恥ずかしいです)。

胸を張ってレジへ歩みだす斑目。
(ありがとう『春日部さん』。君のおかげだ! あの経験が今の俺を強くする!)
おそらく本人がこの件を知ったら、グーパンチだけではすまないだろう。

レジには、バイトの店員らしき若者が二人くっちゃべっていたが、威風堂々とティッシュとアレを突き出した斑目に、一瞬気圧された。
しかしティッシュとアレである。彼らは笑いをこらえながら商品を受け取った。
斑目は、(クッソー、オタクがアレ買って何が悪い。貴様らに先程の俺の戦いは理解できまい!)

アレが今まさにレジ打ちされようとした瞬間。店内にスージーの声が響き渡った。
「マダラメ! マ ダ ラ ー メ !」
スージーが駆け寄って、斑目のコートの裾を掴んだ。
激汗の斑目とバイト店員2人。
オタク青年と金髪美少女。そして買い求められるティッシュとアレ。店員はさぞ驚いたことであろう。

斑目にとっては、アレを買おうとした瞬間、大声で名前を呼ばれたショックで呆然としていた。『他人のフリ』作戦も失敗である。
しかし、レジを覗き込まれたら大変だ。慌ててスージーに向き直る。
「ど、どうしたのかな?」
スージーはヤブニラミの顔のまま、手にしていたコミックを差し出した。
「あ、エヴァのコミックね。買ってほしいの?」
コクリを頷くスー。斑目はそれを受け取ると、震える手で店員に手渡した。

ようやく料金を払い、店員がレジ袋に商品を納める。例のアレは慣例に従って紙袋に入れられようとしていた。
その時、またもスージーが斑目に話しかける。

「イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ!」
「イヤ、イヤ、イヤァ!」

またも激汗の斑目と店員。
斑目は、その悲鳴が、エヴァのコミックに載っている、『使徒の精神侵入を受けたアスカのセリフ』であることは0.1秒で察することができた。
だが、店員と店内の客には、それを知るよしもない。
斑目はダッシュでおつりと商品を受け取ると、スージーの手を取って逃げるようにコンビニを出た。店を出る寸前、スージーが叫ぶ。

「カジサン……ドウシヨウ、汚サレチャッタヨ……」

斑目は涙目で駆け出した。
(頼むから、『心が』と付け加えてくれ)
せめて、人間らしく。

その日以来、斑目がそのコンビニに足を運ぶことはなかった。

結局、「12枚入り」のうち何枚が使用されたのか?

それは、二人だけの秘密(紅の豚のラスト風に)。


<おしまい>