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荻上 攻略 ノーマルend 【投稿日 2007/01/20】

まだらめメモリアル攻略日記


私には、妄想癖という、この先生涯ついて回るであろう悪癖がある。
私の世界は常に空想のスイッチで溢れていて、
押したが最後、あふれ出て止まらないイメージの奔流。
マンガが好きで、801が好きで、自分が嫌いで、でもやめられなくて。
中学で周りの人を傷つけて、もう傷つけたくなくて、閉じこもって。
高校まではうまく行った。大学でもうまくやれると思っていた。
でも、げんしけんは違った。みんな、みんな優しくて。それが心に響いて。痛くて。
そして。


そのシーンを見てしまったのは、つい先日。
いつものように講義を終えて、いつもの時間に部室に入ったら、
斑目先輩と笹原先輩がいちゃついてた。ネクタイ持って。

入っちゃった。すいっち。

きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アホなことさせないでくださいよっていったい何すりゃネクタイ引っ張るってのよ
何ですか僕を置いて卒業するつもりで忘れられるんですか僕をんーやっぱ責め
は笹原先輩かなあ斑目先輩はどこをどういじっても受けにしかならないからや
(以下略)

スイッチが切れたときには笹原さんのド攻め顔がノートに踊っていた。

で、それから咲先輩に見られちゃって誤解されて説明しても聞いてくんなくて
しょうがないから斑目先輩も描いて見せてみたけど結局理解されなくて大野
先輩には2秒で理解されちゃったりして。

ひどく疲れて家に帰った。
そしたら、ついこないだ買ったばかりのハレガン少佐受本が目に入っちゃって、
何故だか、笹原先輩の顔が思い浮かんで、

また、はいっちゃった。

キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(全略)

スイッチが切れたときには、スケブ1冊笹斑マンガのネームで埋め尽くされてた。
      • あー。またやっちゃった。
途方にくれつつも、出来には満足。うん、割といいかも。
      • また大野さんに見せてみようかな?あ、でも趣味微妙に合わないからなあの人。
そだ、これを咲先輩に見せたら流石に理解してくれるかな?・・・引くか、引くよね。

悩みつつ何気なくカバンに押し込んで、その日は就寝。

次の日、またいつものように講義を終えていつものように部室に入ると、
      • 誰もいないか。ま、そりゃそうだよね。そうそういつも・・
カバンを開いてふと気付く。あ。。昨日のスケブ・・・
誰もいないことをいいことに、私は昨日のスケブを見返し、
シーンの推敲に没入していた。

暫く作業にふけっていると、突然携帯が鳴り出した。
あれ?弟からだ。なんだろ?
電話に出て用件を尋ねていると、なんだか喉が渇いてきたので、
私は部室を出て購買に向かった。
「うぃーす荻上さん」「あ、こんちわ斑目先輩」
歩きながら先輩とすれ違う。弟の電話は他愛のない用件だったけど、
久々の電話だったので話しは弾んだ。
私は購買に着いてからも電話を続けていて、なんとなくオレンジジュースを購入した瞬間、

スケブのことを思い出した。

足元が瓦解する感覚。

私は蒼白になりながら部室へ取って返し、そこで、

真っ赤な顔でスケブを凝視している斑目先輩と対面した。


息ができない。


マダラメさんが、私の、スケブを、


「や、えーとね、その」
「違うのよ、これは」
「別に覗き見ようって訳じゃなくて、机にどーんと開いて置いてあってさ、」
「やっぱ目ぇ行くじゃん、オギウエさんの絵すごい綺麗だし」

しどろもどろになりながらも必死で釈明を試みているらしいマダラメさんの言葉は、
私には届かない。
フラッシュバック。神社。笑顔。自転車。校長室。笑顔。
牧田くん。文芸部。中島。笑顔。金網。笑顔。笑顔。回る。回る。落ちる。回る。落ちる。落ちる。

もう、だめだ。もう、居られ、ない。
わたしは、また、ここでも、マキ タくんのとき、と

発作的に部室を飛び出そうとした私の腕を、
斑目先輩は必死の形相で引き止めた。

「ごめん!本当にごめん!これは見るべきじゃなかった!」
「・・・もう、いい、です 私が悪い んです」
「へ?」
「私が全部悪いんです!こんなことしか思いつかなくてでも楽しくなっちゃって
自分がイヤで嫌でたまらなくて!それでどれだけ周りの人を傷つけてしまうのか、
私には判ってたはずなのに!」
「・・荻上さん?」
「でも!でも止められないんです!あふれてきちゃうんです!私が!私が
こういうニンゲンだから、繰り返すことしかできないから!だから」

「ちょっと待った」
「へ?」

眼前をさえぎる斑目さんの細くて薄くて広い掌に、私ははっと我に帰った。

「あの、荻上さん?・・・なんか、勘違いしてない?」
「え。。。何を、ですか?」
嗚咽で上手く答えられない、でも、
「俺は、ごめんなさい、って言ってるんだよ?まだ途中の作品を見ちゃったことに」
「    え?」

話の意図が読めない。
この人は、いったい、何を。

「だってさ、これ、ほぼネーム状態じゃん。しかも未発表の。そういうのを勝手に見られるのって、
誰だってやっぱ恥ずかしいんじゃないの?」
「え、ええ、それはそう、ですが」
少し落ち着いた私を見て、斑目先輩もほっとした様子。
こちらを眺め、少し芝居がかった仕草で両手を広げる。
「俺はそれを無神経にもじっくり読んでしまったわけで。それはもう、謝るしかないよね」

「・・・でも、でも!」「ん?」
「・・中身、わかってますよね?私は、その、斑目さんと笹原さん」

「ああ、やおいのこと?俺らの」
何故だろう、カッとなった。
「・・っ!そんな、簡単に!」

「うわ!ごめん、また俺気に障ること言っちゃったかな?」
斑目さんはあわてて、私に両手を合わせる。
そんなに謝らなくてもいいのに。
「いえ、気にはしてないんですが・・・斑目さん?その、気にならないんですか?」
「ん?何を?」
きょとんとした目で私を見る斑目さん。なんだろう、何故か、まっすぐ見返せない。
そんな私の奇妙な動揺に斑目さんはまったく気付かない素振りで、
「ああ、そういうことか。何言ってんの、俺のおたく暦がどれだけ年季入ってるか教えてあげようか?w」
きしし、と屈託なく笑う。
「俺は別に気にしないよ。割とガキの頃からこういう本何度か読んでるしね。それに、
荻上さんはさ、」
知らず見とれていた私の頭にはなぜか、
「マンガ描くの、大好きなんだよね?」
牧田くんの笑顔が浮かんでいた。

「俺はおたくとしては消費の側でしかないからさ、マンガへ情熱持ってる人は無条件で尊敬してるし。
荻上さんもだよ?って、俺に言われても嬉しかないかw」
「・・・そんなことないです!」
「え!?」
「そんなこと、ない、です・・・」
堪らず上げてしまった大声に、再びびくりとする斑目さん。
訪れる沈黙が、なんだか重い。顔が赤いのが自分でもわかる。
斑目さんはどうなのかな。顔が見られないから、私には判らない。
ああでも、斑目さんは咲先輩が好きなんだよね。綺麗だもんなあ咲さん。私なんか。
あれ、あたしなんでこんなこと考えてるんだろう。変だ。おかしい。
斑目さんは総受けでヘタレ攻めで、咲さんが好きで、でも笑顔もちょっと可愛くて、
思考が止まらない、顔が熱い、部屋が熱い、あ、これってもしかして

すいっち?

「おーぎーうーえーさーーーーん?」
「ぅひゃ!」

再度思考の波にとらわれた私は、困った顔で立ち尽くす斑目さんに気づきあわてて顔を背けた。

「どうしたの?ほんとに具合でも悪いとか」
「い、い、いえ!なんでもありません!」
「そっか、それならよかった。」
もうだめ、絶対顔見れない。うううう。
どうしたんだろ、絶対おかしい。こんなのありえない。

「・・・でもさ、これほんと凄いよね」
雰囲気を和ませようとしたのか、斑目先輩はあのスケブを目の前で拡げて見せた。
って!ちょ、まって!まって!
「ヤちょっと、目の前で広げないでくださいよ!?」
「いやぁホラこれとか?あとどれだったかな・・・」
「あ、これ、なんか質感リアルすぎてやばくない?無駄にレベルたけ~」
「だから、今はちょっと・・・」
「うわこれ笹原人相悪すぎ。・・・あと俺カワイソスギ。絶対本人見せらんない。」
「わかってますそんなの!」
「特に下半身が反応したのはこの・・」
「斑目さん~~~~~!!!」

ん?        下半身?

しまった、という顔で固まる斑目さん。
私は私で別の意味で凝固。
斑目さんが!?私のマンガで!?べっ、ぶべべべべ~~~!!???

これで完全にテンパってしまった私は、

    1.そんなに801が好きなんですか?
 →  2.実はもっと凄いマンガが・・・
    3.・・斑目さん、やっぱり・・・・

この隙を見逃さず、予め準備してあった
更にもんのすごい絡み満載のスケブを3冊斑目先輩に無理やり預け、
「すいませんオツカレサマデシタさよオならー!」
超特急で部室をあとにした。

この時は、恥ずかしさでその場に居たたまれなくなった故の行動だったのだけど。

次の日、斑目先輩にお会いしたときに気付いた。
斑目先輩の視線の先。
笹原先輩だ。
ちょっと顔が赤い。もじもじ。
        • あちゃー。

そうして、私の短い、つーか短すぎた恋は終わりを告げた。
でも、今から思うと、この件をきっかけに、私は私を取り戻せたのだと思う。
創作こそ私の命であり、背骨だ。
誰かに影響を与えること、それこそが私の業なのだ、と。
ま、その後げんしけんは男女入り乱れた愛憎渦巻くBLだかレディコミだかよくわかんない事態に
突入しちゃったのだけど。
でも、斑目さんは笹原さんと幸せそうだし。
いいよね?マキタくん。

幻影の牧田くんが半目で、「そんなんでトラウマ解消すんのかよ」って言ってる気がした。
うっさいわ。

[Normal end.]