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26人いる!その10 【投稿日 2007/01/14】

・・・いる!シリーズ


みんなが驚くのも無理は無かった。
豪田は可愛くなっていた。
普段の5割増しぐらいで可愛くなっていた。
気のせいか体も若干細くなっていた。
台場「どっ、どうしたの蛇衣子?」
豪田「まあ、一応ネットアイドルって役どころだから、ちょっとメイクに力入れたのよ」
沢田「どういうメイクしたら、そこまで変わるのよ…(冷や汗)」
神田「蛇衣子かーわいー」
豪田「それより千里、この暑いのにコンクリートの上で裸足はやり過ぎじゃない?」
国松「ヨク見ルネ(片足を挙げる)」
豪田「地下足袋?」
国松「田中サンガ作ッテクレタ、地下足袋べーすノ裸足風靴ネ」
豪田「さすがだ、田中さん…」
巴「て言うか千里、片仮名で喋ってるし…」
神田「役作りですね。マリアは役作りは何かしてないの?」
巴「一応用意したわよ。パンチラするキャラだから、見せパン穿いて来た。ほらっ」
スカートをまくってみせる巴。
女子一同「わざわざ見せんでいい!」
次の瞬間、惨劇が起きた。
巴の前方に居た男性のカメコやレイヤーや一般客たちが、一斉に鼻血を吹いたのだ。
そしてその中には、ちょうどコスプレ広場にやって来た斑目と、1年男子たちも居た。
巴「変ねえ見せパンぐらいで?(自分のパンツを見て)あっ…(慌ててスカートを戻す)」
豪田「どうしたの?」
巴「(赤面して)朝寝過ごして慌ててたから、間違えて勝負パンツ穿いて来ちゃった」
女子一同「間違えるな!」
浅田・岸野「(上を向きつつ)撮ったぞ!」
カメラを構えて叫ぶ2人。
他男子一同「(上を向きつつサムアップのポーズ)GJ!」
巴「(スカートを押さえつつ赤面し)いやーん!まいっちんぐ!」
沢田「いやそれ、役作り間違ってるし」

神田「あっ大変、先生倒れてる」
斑目は絶望先生コスのまま気絶していた。
駆け寄る一同。
国松「(斑目の体を探り)大変ダ、瞳孔開イテルヨ。ソレニ心臓止マッテイルヨ」
豪田「片仮名で喋ってる場合か!」
アンジェラ「よしこうなったら、私が人工呼吸で」
沢田「この場合人口呼吸は関係無いと思います」
神田「それに下手したら、完全に心停止しちゃうし」
巴「そんじゃあ私が心臓マッサージで」
台場「斑目さんのか細い体にあんたがやったら、あばら折れちゃうわよ」
大野「えーとえーと」
田中「しょうがねえなあ。とりあえず俺やってみるわ、心臓マッサージ。(1年男子たちに)
君たちは救護班呼んで来て」
1年男子「分かりました!」
走りかける1年男子たち。
そこへスーがトコトコとやって来た。
そして斑目に近付く。
しばし呆然と見つめてしまう一同。
スー「(斑目の心臓に左フックを放ちつつ)てりおすっ!」
固まる一同。
豪田「ちょっ、ちょっと!何てことするのよ!?」
巴「そうよ、いくら何でも無茶よそれは!」
だが次の瞬間、斑目の心臓は動き出し、むっくりと起きた。
神田「やったあ、先生生き返ったー!」
沢田「スーちゃん凄い!」
国松「先生大丈夫カ?」

斑目は本人の生命だけでなく、キャラ作り魂も復活した。
斑目「死んだらどうする!」
神田「(涙ぐみ)やっぱり先生はすばらしい教師です。常に命がけでキャラ作りに臨んでらっしゃる」
斑目「いや…あのそーゆーんじゃないから。本当に死にかけてただけですから。(巴に)それより何ですか、女の子が簡単にパンツ見せたりして、はしたない」
巴「申し訳ありません、まさか勝負パンツ穿いて来たとは思わなかったんで、つい…」
この時巴は、カエレというより大和撫子の別人格の楓に近い精神状態になっていた。
沢田「あの先生、今時パンツぐらいでそんなに目くじら立てなくてもいいと思います」
豪田「そうですよ、今時の女の子なんて超ミニでパンツ見せまくりですよ」
斑目「いいですか皆さん、男性はパンツさえ見れれば何でもいいという訳ではないのです。パンモロではなくパンチラでなければ萌えないのです」
神田「わーシゲさん先生ぽくなってきた」
国松「デモ綺麗事言ッテテモ、結局ノトコぱんつ見タインダロ?」
斑目「そりゃまあ見れないよりは…何を言わせるんですか!絶望した!パンチラの美学を理解出来ない、近頃の女子高生に絶望した!」
神田「さすがは先生、もうすっかり絶望先生ですね。それじゃあ先生も無事復活し絶好調みたいですので、サプライズをお呼びしますか」
一同「サプライズ?」
携帯を取り出して話し始める神田。
神田「もしもし、用意はいいですか?…分かりました、じゃあお願いします」
豪田「何なのサプライズって?」
神田「(ニッコリ笑って)すぐ分かりますよ」
斑目「何やら嫌な予感が…」

十数分後、サプライズの正体が分かった。
加藤「ごめんなさい、遅くなって」
声に振り返った一同は凍り付く。
やって来たのは「やぶへび」の面々だった。
神田「改めてご紹介します!特別参加の『やぶへび』の皆さんです!」
加藤さんはシーツに包まって、顔だけ(と言っても相変わらず前髪で隠れているが)出している。
藪崎さんは明治時代の女学生のような、下は袴の着物姿だった。
そしてニャー子はセーラー服だったが、背中に「もじもじもじ」と書かれたプラカードのような板を背負っていた。
豪田「加藤さんもしや…霧なの?」
巴「まあ髪型と美形なのは合ってるけど、ちと背高過ぎない?」
台場「藪崎さん…まさかまとい?」
素早く接近する藪崎さん、台場にヘッドロックをかます。
藪崎「そのまさかって何やねん?まといにしてはデブ過ぎる言いたいんか?」
台場「言ってません言ってません!ギブギブ!」
さっと台場から離れ、斑目に接近する藪崎さん。
斑目「(赤面し)なっ何を?」
藪崎「(赤面し)やっ役作りですわ」
神田「藪崎先輩、本当は万世橋わたる君の予定だったんですけど、絶望先生が斑目さんだと知ったら、強引にまといやりたいって言い出したんですよ」
藪崎「こっこら、それを言うな!」
神田「だから急遽親戚のお姉さんに頼んで、大学の卒業式の時に使った着物借りて来たんですよ。まあ乙女心から出た我がままですから、仕方ないですけどね」
斑目「あの、それはどういう…」
藪崎「(最大赤面で)言うなっちゅーに!」
沢田「ニャー子さんのは芽留ですね」
沢田の携帯が鳴る。
沢田「(携帯を出し)あっメールだ…ニャー子さん?…何々、『その通りだニャー』?うーん、役作り出来てるんだか出来てないんだか…」

神田「ねっどうです先生?ピッタリでしょ、『やぶへび』の皆さん?」
誇らしげに胸を張る神田。
神田「加藤さんの霧は、本当は毛布がいいんですけど、さすがにこの暑さじゃまた犠牲者出ちゃうからシーツにしました」
斑目の前に、ペタリと体育座りで座る加藤さん。
斑目は加藤さんと面識はあったが、あまり話したことは無かった(当然素顔は見たことが無い)ので、思わずドキリとして赤面する。
神田「ほら先生、役作り役作り」
斑目「そっ、そうですね。(しゃがんで加藤さんの前髪に手を掛ける)失礼」
加藤さんの前髪を左右に開ける斑目。
まだ赤面していて手が震えている。
こんな感じで女性の髪に触れた経験は、斑目には無かった。
初めて見る加藤さんの美人の素顔に、思わず見とれてしまう。
他の会員たちやカメコたちも思わず「おお!」とどよめく。
だがそこは斑目、オタクの中のオタクだ。
こんな場合でもキャラ作りは忘れない。
斑目「美人だ。しかも白い」
台場「わーシゲさん、マジで言ってる」
赤面しつつ、目を妖しく光らせる加藤さん。
斑目「(思わず素に戻り)えっ?」
加藤「(赤面し)あの…斑目先輩」
斑目「はい?」
加藤「(赤面)私、男の人に前髪開けられるの、初めてなんです」
斑目「そっ、それはどういう…」
加藤「(最大出力で赤面)…責任…取って下さいね」
神田「残念ながらこのクラスの女子は全員先生のお手付きなんで、それは無理でーす」
マジでうろたえる斑目。
斑目「人聞きの悪いこと言わないで下さい!」

加藤さんの気配が変わった。
顔に影が差し、頭上に「ゴゴゴゴ」という擬音の文字が見えそうな感じだ。
そしてシーツをパッと脱ぎ捨てる。
加藤さんはセーラー服を着ていた
一同「着てたんだ、セーラー服」
神田「一応用意しといたのよ」
加藤さんの髪型は、先程までと一変していた。
頭頂部の正中線で、きっちりと左右に分け目が出来ていた。
そう、彼女はキャラを途中で木津千里に変化させたのだ。
しかも顔は鬼の形相で、いつの間にか手には金属バットを持っていた。
通常モードではなく、殺人鬼モードの千里だ。
斑目「(怯え)ひっ!」
加藤「裏切ったな。私の純情を弄んだな」
田中が止めに入る。
田中「加藤さん!コミフェスで長物は禁止だ!」
斑目「そっちかい!」
加藤さんはバットを捨てた。
加藤「田中さん、素手なら問題無いですよね?」
田中「まあ腕切り落とす訳にも行かないからね、オケー!」
斑目「田中!許可するなよ!」
田中「お前もいい加減、責任取って身を固めろや」
斑目「責任取んなきゃいかんようなこと、しとらんっつーに!」
田中「まあつねられるぐらいで済めばいいじゃないか」

その時加藤さんが、500円玉を取り出して前に突き出した。
一同「?」
次の瞬間、加藤さんは親指・人差し指・中指の3本で500円玉を折り曲げた。
斑目「ひっ!?」
田中「(青ざめて)…まあ、つねられるぐらいで済めば…」
斑目「良かないっつーの!」
加藤「つねってやる~~~~!」
斑目「いやあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
全力疾走で逃げる斑目。
その斑目の後を加藤さんが追う。
それを止めようと藪崎さんも追う。
藪崎「ちょっ、ちょっと加藤さん、私の斑目さんに何しますねん?」
さらにはアンジェラや1年女子たち、それにスーもその後を追う。
それを止めようとする1年男子たちや、面白そうと判断したかニャー子までも追いかけっこに参加し、混乱は加速する。
だが周囲はアトラクションと思い、誰も止めない。
斑目「いやあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

田中と大野さんは追いかけっこを呆然と見つめていた。
そこへ様子を見に、荻上会長と笹原、それに途中で合流したクッチーがやって来た。
事情を聞いてあ然とする笹荻。
笹原「斑目さん、けっこうもてるんだ…」
荻上「そうですね」
大野「でも、やっぱり総受けですね」
荻上「総受けですね」

見ている内にお祭野朗のクッチーの血が騒いだ。
朽木「何か面白そうですな。自分も参加するであります!」
こうしてクッチーまで追いかけっこに加わった。
笹原「何か『うる星やつら』のアニメ版のオチみたいだな…」
荻上「そろそろ止めましょうか?」
大野「まあまあ、もう少し見ていましょうよ」
荻上「大野さん、この状況面白がってません?」
大野「斑目さんがたくさんの女の子に追い回されるなんて、早々あることじゃないですし」
田中「まあ案外、いい思い出になるかもな」
笹荻『鬼だ、この2人…』

コスプレ広場では、相変わらず追いかけっこが続いていた。
臆病者ゆえの逃げ足の速さのせいか、なかなか斑目は捕まらない。
だがそんな斑目が突然停止し、追手一同もそれに合わせ、まるで椅子取りゲームの音楽が止まった瞬間のように停止する。
斑目の数メートル前に、鬼の形相の春日部さんが立っていたのだ。
斑目「あの…春日部さん?」
春日部「斑目、お前この娘たちに何したんだ?」
斑目「しとらんしとらん、何もしとらんって!」
春日部「遠くからでも聞こえてたぞ。乙女心を弄んだとか、裏切ったとか」
どうやら加藤さんが追いかけながら叫んでいたことが、かなり遠くまで響いていたらしい。
斑目「してねえっつーの!」
春日部「言い訳無用!」
久々に春日部さんの、全体重を乗せた右ストレートが炸裂した。
斑目はギャラクティカ・マグナムを喰らったように、数メートル吹き飛んで気絶した。
でも何故か、斑目の寝顔(と言うのか?)は安らかだった。

数分後、斑目は意識を取り戻した。
笹原がまた気付け薬を使ったのだ。
現視研一同と「やぶへび」の面々は、心配そうな顔付きで斑目を見つめていた。
そしてその中に春日部さんも居た。
斑目「春日部…さん?」
春日部「ごめんよ斑目(頭下げつつ両手を合わせ)ほんとスマン、事情も訊かずに殴っちゃってさ。大丈夫か?」
斑目「(少し顔をそらしつつ殴られた頬を押さえ)大丈夫じゃねえよ。相変わらず暴力女なんだから、ったく」
今回ばかりは春日部さん、平身低頭の姿勢を崩さない。
春日部「ほんとごめんね」
そう言いながらハンカチを出して、斑目の口の端に滲んでいた血をぬぐう。
最大出力で赤面する斑目。
春日部「ん?どした?」
斑目「いやー殴られたことはたくさんあったけど、介抱されたことは無かったなと思ってね。そう考えたら案外今回のは役得だなと思ってさ」
春日部「(苦笑し)相変わらず馬鹿なこと言ってるね、ったく」
斑目「そう言えば春日部さん、今日はどうしたの?初日には高坂に差し入れに来てたって聞いたけど」
春日部「今日はデートよ」
親指で後方を指す春日部さん。
その指の先には、かなり離れて高坂が立っていた。
例のごとく、微笑みを浮かべつつ会釈する。
斑目もそれに応え、「ようっ」という感じで片手を上げた。
斑目「夏コミでデートか、春日部さんも丸くなったもんだな」
そういう斑目の口調は、どこか寂しげだった。
春日部「慣れただけよ。『しょうがないなあ』って目で見てるのは相変わらずよ」
斑目「まるでバカボンのママだな」
春日部「(苦笑)それ何となく分かる」

斑目と春日部さん以外の一行は、何時の間にか2人から少し距離を置いていた。
古くからの現視研の面々と1年男子たち、そして「やぶへび」の面々と1年女子たちの2組に別れて、2人を見守っていた。
神田「どうも斑目先輩と春日部先輩の関係って、私たちが思ってた以上に複雑な感情があるみたいね」
台場「確かに春日部先輩、何か斑目先輩の前では飾らないし、本音ぶつけてるわね」
豪田「それって、ドラマなんかだと本命のカップルのパターンだよね」
沢田「まあ高坂先輩と春日部先輩の関係が表面上、上辺の魅力だけで付き合ってるみたいに見えるからだろうけど、何だか高坂先輩の方が当て馬っぽく思えてきたなあ」
巴「でも春日部先輩、恋愛に関しては徹底的に真摯な人よ。ふたまたとか浮気とかって出来ないと思うわ」
豪田「確かに意識の上ではね。でも、もしかして春日部先輩、無意識の領域では斑目先輩のこと…」
女子一同「うーむ…」
加藤「まあそれは何とも言えないわよ。我々は春日部さんの問題とは別に、独立部隊で斑目さん追うしかないわ」
藪崎「せや、私の愛で斑目さんを立ち直らせたる」
ニャー子「臆面も無く、堂々と言えるようになりましたニャー」
スー「ナリフリ構ッテランナイノヨ」
アンジェラ「そういう攻撃なら私の出番あるね」
神田「あの皆さん、お気持ちは有難いんですけど、あくまでもソフトに、スローに、じっくりじわじわを忘れないで下さいね」
巴「そうそう、試合はまだ1回裏よ。ここはじっくり攻めるべきね」

1年女子たちの相談を傍らで聞いていた荻上会長は、正直感心していた。
実は荻上会長、「斑目先輩を男にする会」が発足したことをアンジェラから聞いていた。
(もちろんその後、口の軽いアンジェラに堅く口止めしたことは言うまでもない)
最初にそれを聞いた時は不安だった。
あのデリケートな斑目に、誰かが春日部さんについて何か言ったらどうなるか分からないからだ。
だが彼女たちは想像以上に斑目のことを理解していた。
だから荻上会長は、彼女たちに斑目のことを任せてみようと思った。
荻上「そういうことでいいですね?」
笹原「うん」
大野「賛成です~」
田中「まあ斑目、これだけモテモテなら、いつか幸せになれるさ」
朽木「あの、これはどういう…」
事情を知らず戸惑う1年男子たちとクッチーに対し、荻上会長が笑顔で煙に巻く。
荻上「斑目さんがモテモテってことですよ」

コスプレ終了間際、現視研1年女子一同(スー・アンジェラ含む)が大野さんを取り囲む。
大野「あの…これはいったい?」
巴「(ニッコリ笑い)4年間お疲れ様でした!」
他女子一同「お疲れ様でした!」
言い終わるや全員で大野さんを担ぎ上げる。
大野「ちょっ、ちょっと何を?」
巴「みんな行くよ!せーの!
1年女子一同「わっしょい!わっしょい!」
景気良く胴上げを始める。
大野「ひゃ~~~!!!!!!!!!!」

大野さんが悲鳴を上げるのも無理は無かった。
巴やアンジェラ等、極端な怪力人間が散在することで全体の力が均等じゃないこと。
大野さんの体の重心が極端に胸部に集中していること。
それにみんな胴上げに慣れてないことなどが災いして、85年に阪神が優勝した時の吉田監督のように、大野さんは何度も裏返ったり元に戻ったりを繰り返した。
降りてきた時には、大野さんはすっかり目を回していた。
巴「よーし、次は会長行くよ!」
1年女子一同「おー!」
荻上会長に殺到する1年女子一同。
荻上「ちょっと、何で私まで?」
巴「優勝の胴上げと言えば、やっぱり監督もやらないと」
荻上「いや別に優勝してないし…」
豪田「まあまあ細かいことは抜きにしましょうよ」
胴上げされる荻上会長。
荻上「ひえええええ!!!!!!!!!!!」
荻上会長の場合は大野さんよりもきつかった。
大野さんまで胴上げに加わって、さらに全体のパワーバランスが崩れたこと。
荻上会長が小柄軽量なこと。
これらの要因により、裏返るどころか上がるたびに2~3回転し、しかも恐ろしく滞空時間の長い、スカイハイトルネード胴上げ状態と相成った。
荻上会長が目を回して降りて来るや、巴の号令が飛ぶ。
巴「よし、次は復活記念で斑目先輩だ!」
斑目「ひええ!!!」
痩身軽量の斑目もまた、スカイハイトルネード状態と相成った。

この頃から「やぶへび」の面々や1年男子、それに現視研一のお祭野朗クッチーまでもが胴上げに加わる。
その後も何のかんの理由を付けて、結局現視研会員全員が胴上げされる破目になった。
アンジェラやスーはもちろん、OBや「やぶへび」の面々までもが宙を舞った。
さらには終わりがけにようやくやって来た事情を知らない恵子、果てはたまたま通り掛かった久我山や連れの医師たちまでもが宙を舞う破目になった。
その頃には何か熱病でも蔓延したかのように、周囲のレイヤーやカメコやお客さんまでもが胴上げをやり始め、コスプレ広場全体が祭状態と化した。

夏コミ終了後、打ち上げコンパの会場はメントールの匂いに満ち溢れていた。
最初から胴上げに参加していた者たちの何人かは、結局のべ40人近い胴上げを繰り返した為に腕や肩を痛めた。
そこで浅田と岸野が自前の救急キットに入っていた、湿布薬やインドメタシン系の塗り薬を提供したのだ。
巴「もう誰よ、胴上げなんてやろうって言い出したの?」
豪田「あんたじゃないの、もう!」
沢田「痛たたたたたた…」
荻上「もうみんな、いくら何でもやり過ぎよ!」
そう言いつつも、自分の肩や腕をもむ荻上会長だった。
元気でテンションが高いのは、不死身のお祭野朗クッチーと、最高の素材を前に興奮している国松だけだ。
国松「ねえねえスーちゃん、学祭の時コスやらない?スーちゃん可愛いから、お姉さんいろいろ着せ替えしたいの~」
大野「うわー国松さん、すっかりやる気ね」
田中「これで俺も肩の荷が下りるな」
スー「押忍、それでしたら是非やってみたいのがあります」

国松「何々?私何でも作っちゃうから」
スー「ケロロ軍曹であります」
一同「ケロロ?」
国松「…でっ、何のコスがいいの?」
スー「自分、クルルがやりたいであります。クークックックッ」
国松「クルルかあ…」
何やら考え込み、現視研の一同を見渡す国松。
国松「ミッチーは身長いくつ?」
神田「160だったと思うけど」
国松「うーん…アウト!彩、身長いくつ?」
沢田「156…ぐらいかな」
国松「…ギリギリ合格!」
荻上「あの国松さん、何を…」
国松「ケロロ小隊って5人いましたよね、1人足りないんです」
荻上「5人揃える積もりなの?」
国松「スーちゃんの身長に合わせようと思ったら、やっぱり彩ぐらいが限度ですから。あとみんなミッチーより高いから、バランス合わないし…」
大野「もしかして国松さんもやる積りなんですか、ケロロコス?」
国松「当然です。スーちゃんと身長釣り合う人が足りませんから。晴海!学祭は着ぐるみ5着だから、予算よろしく!」
ゴトリッ!
テーブル上に大きな音を立てて、台場が算盤を置いた。
それは普段彼女が使っている、一般によく見かける細身の算盤では無かった。
一の桁の球が四つではなく五つ有り、おまけに本体の底は素通しでは無く一枚板になっていて、本体前後左右の板と共に箱状の本体を形成していた。
戦前に使われていたタイプのものだ。
とりあえず凶器として使われたら、普段の細身の算盤より痛そうだ。
台場「あんた現視研潰す気か!5着も着ぐるみ作ったら、学祭の予算が無いわ!」

国松「それならいい方法があるわよ。着ぐるみ5着作って、なおかつ上手くいけば儲けが出る方法が」
台場「どんな方法よ?」
国松「(胸を張り)映画を作るのよ」
一同「映画!?」
国松「タイトルは『妖怪人間ベム・錬金術師アルフォンス・ケロロ小隊・7大怪人地上最低の決戦!』」
今度はあ然とする一同。
豪田「夏コミで使った着ぐるみ流用する気なんだ…」
日垣「うーん、俺はいいけど朽木先輩のスケジュールが大変だな。ベムとアルいっぺんに出そうと思ったら俺だけじゃ無理だし…」
台場が算盤を振り上げかける。
台場「あんたうちに特撮やれるスキルや予算があると思うの?」
沢田「それにその内容だと、どうやって話まとめる気?」
伊藤「こりゃ脚本難しそうだニャー」
国松「大丈夫よ。それらの問題は全部クリア出来るわ」
浅田「ほんとに?」
国松「撮影期間は1日。予備日を入れても2~3日あれば十分よ。余分なセットや仕掛けは要らない。普通の撮影機材だけ調達すればオッケー」
岸野「どこで撮影する気なの?」
国松「大学の近所の裏山に行けば、適当な空き地や原っぱはあるわよ」
何となく嫌な予感がする一同。
伊藤「でもその条件で脚本書くのは、かなり難しいニャー」
国松「ストーリーは簡単よ。ベムとアルが歩いて来て激突。ベムが怒って喧嘩になり、それをケロロ小隊が止めに入り、ベムとアルがケロロたちやっつけてお終い」

台場が勢い良く算盤をテーブルに振り下ろし轟音を立てた。
台場「『ウルトラファイト』かい!!!」
(注釈)ウルトラファイト
70年に放送された、平日の夕方5分間の帯番組。
当初は「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の格闘シーンを編集し、プロレス風の実況ナレーションを加えた特撮格闘名場面集的な内容だった。
(ナレーターの山田次郎氏の本業はスポーツ中継のアナウンサー)
当然すぐにネタが無くなり、急遽アトラクション用の着ぐるみによる新撮が撮り足されて放送され続けた。
だがその内容たるや、野原や海岸等での寸劇風味の着ぐるみアトラクションショーの実況中継に一気にスケールダウンする。
それでも意外と人気番組で、第2期ウルトラシリーズの牽引役の1つになった。
(71年に「帰ってきたウルトラマン」が始まった後も放送は続いた)

だが台場の激怒と裏腹に、他の1年生たちは国松の案に喰い付いた。
豪田「いいねえ、それ」
巴「なるほど、その手があったか」
沢田「それなら話作るの簡単ね」
伊藤「ほんとほんと、脚本書くのに1時間も掛かりませんニャー」
日垣「なるほど、それなら撮影期間1日で済むから、朽木先輩のスケジュールに合わせて撮影すればいいね」
有吉「僕、ナレーターやりたいな」
神田「有吉君なら弁が立つから、いいかもね」
浅田「ビデオ撮りにすれば、機材も簡単に調達出来るし、編集も簡単だね」
岸野「うち8ミリあるから、それも使って並行して撮ればいいよ。ビデオはフィルムの破損や紛失に対する保険と、撮影の確認用に使ってさ」
アンジェラ「なかなか本格的あるね。ハリウッドの映画は、撮影の時その方法取ってるあるよ」
お祭野朗クッチーもこの話に乗った。
朽木「そういう話なら喜んで参加するにょー」

こうして何時の間にか話の流れは、学祭で映画をやる方向でどんどん進んで行った。
1年生たちの自主性を尊重する荻上会長は敢えて止めない。
だがそれを台場が止めた。
台場「ちょっとみんな!そんな簡単に決めていいの?」
巴「いいんじゃない?予算足りない分はみんなで出し合えば何とかなるわよ」
浅田「いざとなりゃまたバイトするし」
(彼は夏コミの軍資金稼ぎにバイトをしていた)
神田「それより晴海、あなたは映画やりたくないの?予算の問題抜きで考えてみて」
台場「そりゃ面白そうだとは思うけど…って何言わせるのよ!」
神田「なーんだ、じゃあお金の問題クリア出来るなら晴海も賛成ね」
言葉に詰まった台場だったが、やがて意を決して口を開く。
台場「分かった、やるわ」
国松「うっしゃー!」
台場「その代わりみんな、多分カンパお願いすることになると思うから、よろしくね」
1年一同「はーい!」

そんな様子を暖かく見守っていた荻上会長、ふとあることに気付いた。
荻上「あの国松さん、もしかしてケロロ小隊役の1人ってまさか…」
国松「安心して下さい。会長にはちゃんと軍曹さんお願いしますから」
荻上「(滝汗で赤面)ちょっ、ちょっと待って!」
国松「あ、アフロ軍曹バージョンの方がいいですか?」
荻上「いや、そうじゃなくて…」
国松「それともタママの方がいいですか?会長可愛いし。いや待てよ、会長ランファン似だから、忍者つながりでドロロの方がいいかも…」
荻上「だからそうじゃなくて、私がやるのは既定事項なんかい!」
沢田「私がやることも既定事項みたいですけど…」
国松「(目を見開いて涙を流し)会長嫌なんですか?」
朽木「あっ、荻チンが国チン泣かした~!」
スー「女ノ子泣カセタノヨ!責任取リナサイヨ!」
荻上「もう分かりました!やるわよ!やらせて頂きます!ケロロでも何でも!」
国松「ほんとですか?やったあ!」
飛び付くように荻上会長に抱き付く国松。
だがその時アクシデントが起きた。
国松はアンジェラの真似して、荻上会長の頬にお礼のキスをしようとした。
ところがそこで荻上会長は、飛び付く国松に反応して彼女の方を向いてしまった。
結果国松と荻上会長の唇が重なることとなった。
最大出力で赤面して離れる2人。
国松「会長に…ファーストキス差し上げちゃった…」
一同「何ですと!?」
荻上「あっ、あの国松さん…」
何が何やらで言葉の出ない荻上会長。
国松「責任…取って下さいね」
荻上「むっ、無理です!」
国松「なーんてね。言いませんよ、そんなこと。会長にならあげてもいいし、ファーストキス」
ホッとする荻上会長。
だが次の瞬間、2人は背後に殺気を感じた。
荻上・国松「ひっ!?」
豪田「私ですら荻様ハグまでなのに、千里ったら唇まで…」
巴「荻様、千里だけってのはズルいですよ…」
沢田「そうですよ、私も荻様とキスしたーい」
荻上「ちょっ、ちょっとみんな落ち着いて。今のは事故だから、あくまでも…」
じわじわと近付く1年女子たち。
台場「じゃあ事故ならオッケーですよね」
神田「ついでに千里にもしちゃいましょう。間接キスってことで」
国松「えっ、そんな…(両手で自分の口を塞ぐ)」
豪田「大丈夫よ、みんなでキスしちゃえば一緒だから」
紅潮し、息が荒くなってきた1年女子一同。
1年女子一同「荻様~~~~~!!!!!!!!」
荻上・国松「ひ~~~~~~!!!!!!!!」

居酒屋の店内を所狭しと逃げ惑う荻上会長と国松。
それを追い回す1年女子一同。
さらにそれを必死で止めようとする他一同。
結局今年の夏コミの現視研は、「うる星やつら」的なドタバタの追いかけっこに終始する破目になった。

ようやくみんなが落ち着いた帰り道、国松は完全に学祭対策モードになった。
国松「さあ明日からが忙しいぞ。着ぐるみ5着ともなると、明日からでも始めないと学祭に間に合わないわ。大野さん!」
大野「はっ、はい!」
国松「スーちゃんって、明日帰るんですよね?申し訳ないですけど、大野さんとこ寄っていいですか?スーちゃんの採寸だけ先に済ましときたいんです」
大野「それは構いませんけど…スー、いい?」
スー「押忍、よろしくお願いします!」
国松「あとは…そうだ!ニャー子さんも確か身長155ぐらいだったな。ギリギリいけるかも知れない。さっそく交渉してみよう。それからそれから…」
大野「ハハハ、国松さん完全にスイッチ入っちゃいましたね」
荻上「て言うか制御装置壊れちゃいましたね。学祭は着ぐるみか、トホホ…」
夏コミは何とか無事終了(そうか?)したが、秋には新連載開始、スー&アンジェラ来襲、そして着ぐるみに学祭、荻上会長の多忙と苦闘はまだまだ続くようだ。

夏コミについてのレポートを笹原からもらった、漫画家のA先生はご満悦だった。
漫A「いやいやいや笹原君、君のレポートなあ、ごっつい役立ったでえ。ほんまおおきに」
笹原「いやあそんな、あんなんでお役に立てましたか」
漫A「十分や。おかげでわしにも君ら若いオタク君や腐女子のお嬢ちゃんたちの、『萌え』っちゅう感情がよう分かったわ」
笹原「そうですか…ハハッ」
漫A「ところで実は笹原君、今度の作品もちろんヒットさす積もりやけど、もしヒットせんかったらわし、この作品最後に引退しようか思てんねん」
笹原「えっ?」

漫A「まあ貯えはそれなりにあるし、昔の伝手はいろいろあるから、引退しても生活には困らんと思う」
笹原「そんなことおっしゃらないで下さい」
漫A「もちろんこれは売れんかった時の話や。売れたら死ぬまで描いたるわい。ただな、わし漫画以外にやりたいことが出来てもてな、もし引退したらそれやろ思てんねん」
笹原「何をなさりたいのですか?」
漫A「大学受けよ思てんねん」
笹原「大学?」
漫A「君のレポートを読んどったらオタ魂ちゅうのに目覚めた上に、大学のオタクサークルっちゅうもんに入りたなったんや」
猛烈に嫌な予感を感じる笹原。
漫A「まあ受験勉強の進捗具合にもよるけど、わし椎応受けよ思てんねん」
凍り付く笹原。
漫A「そんで笹原君のおった現視研に入ろか思てんねん」
まだ凍り付いている笹原。
そこで玄関のチャイムが鳴った。
漫A「おう、ちょうど来はったな」
我に返る笹原。
笹原「来客のご予定があったんですか?」
漫A「わしの古くからの知り合いでな、今の話もその人に相談して決めたんや。その人な、わしのやりたいようにやり言うてくれたんや」
笹原『誰だよ、そんな無責任なアドバイスしたの?』
玄関に向かうA先生。
漫A「すまんけど笹原君、お茶入れてくれるか」
笹原「はっはい(台所に向かう)」
台所から客間にお茶を運んできた笹原、危うくお茶を落としそうになった。
来客の顔には見覚えがあった。
中途半端な長髪、小柄で痩せ型で猫背で撫で肩な体格、そして眼鏡をかけた犬のような顔。
客間に座っていたのは初代会長だった。
笹原「かっ会長!?」
初代「やあ、久しぶり。君が先生の担当だったんだね」
漫A「よして下さいよ伯父貴、先生やなんて照れ臭い」
笹原『伯父貴って…確かやくざ社会だと目上の人に使う呼び方だよな。どういう関係なんだよ、会長と先生?』
2人の話によれば、どうも2人は近所の居酒屋で偶然知り合った飲み友だちのような関係で、先生も会長についてよく知らないらしい。
ただ会長がなかなか博学の情報通で、A先生にいろいろとアドバイスしていたので、先生が尊敬して何時の間にか「伯父貴」と呼ぶようになったらしい。
漫A「そやけど伯父貴が笹原君の先輩とは、世間は狭いでホンマ。まあもしわしが椎応入れたら、笹原君もわしの先輩ってことになる訳やな。よろしく頼んまっせ、笹原先輩」
笹原『神様、どうか何とぞ、先生の作品をヒットさせて下さい!ほんとマジでお願いします!』
心の中でフルパワーでヒット祈願する笹原であった。

悪い人では無さそうだが、どう考えても現視研と肌が合うとは思えないA先生。
果たして現視研史上最悪の黒船は来襲するのか?
スー&アンジェラの迎撃(歓迎)体制に入った荻上政権下現視研だったが、その後にはもっと厄介な黒船が迫っている(かも知れない)。
がんばれ荻上会長。
オタクたちの自由と平和の為に。

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