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アフターストーリー『リツコ・レポート』【宇宙編】 【投稿日 2007/01/13】

第801小隊シリーズ


この記録は、かの連盟の星「リツコ・キューベル・ケッテンクラート」が
ある『仲間』の半生ということで秘蔵していたものである。
内容はその『仲間』の戦後記録となっており、
戦後起こった軍離れについて克明に記録された私的文書として、
研究の大きな対象となっている。

「もう二年か・・・。」
窓から見える無限の宇宙を見つめながら、マダラメは薄ら笑い浮かべる。
「早いもんだな。」
戦争終結から丸二年。小規模な衝突はまだあるものの、
世界は落ち着きを取り戻しつつあった。
「早いと感じるのは、無為に過ごしたせいじゃなくて?」
メガネをかけた明朗そうな女性──
キタガワが奥の机に向かいながらマダラメのほうを見ずに話しかける。
「もっとあなたにはこちらの仕事をして頂きたかったのですけどね?」
「あはは~、私の力はこんなもんですからねぇ。買いかぶっちゃ困りますなぁ。」
マダラメは視線を窓からキタガワに移し、
オーバーなリアクションをしながらキタガワのほうへ近付く。
「そう?あの曲者ぞろいの小隊をまとめていたぐらいですから・・・。」
「なぁに、私は担いでもらってただけですからねぇ。
 一人の時の本当の実力は・・・。お察しくださいよ、キタガワ大尉。」
「あなたは中尉のまま?まぁ、それはいいです。今回お呼び出ししましたのはですね。」
ようやく視線を上げ、マダラメの方を見る。
「木星くんだりから久々に地球圏に来たんだ。それなりの用件でしょうな?」
この二年、マダラメは木星開発の任についていた。
本来なら地球圏復興の任につくはずだったのだが、
彼以外の小隊メンバーが軍属から抜けたこともあり、志願してのことだった。
ここはかつて801小隊が宇宙に出てきたときに利用した宇宙ドッグである。
キタガワは結婚した夫と共に、ここを統括する任についていた。
「・・・気になる方々がいらっしゃるでしょう?」
「・・・!まさか!」
「ええ、情報がようやく入りました。」
「しかし・・・そのために軍が動くとは思えませんが・・・。」
気になる方々。そう、あの戦いの後、消息を絶った二人のことである。
「・・・とあるお方がこの件に妙にご執心でしてね。関連性はわかりませんが・・・
 この件について動きやすいと思われる人選を頼まれました。」
「ほう・・・。それでこの私を・・・。」
「ええ。他にも何人かお願いしています。」
「・・・は?他に軍属でこの件に関して動く人間など・・・。」
「軍属ではなかったんですがね。私のほうからお願いすることにしました。」
「はぁ。」
「あとでお会いするでしょうから、この件に関してはそのとき本人からお聞きください。
 それより、とあるお方、がですね。」
「はい?」
「・・・その・・・。共に探したいということで・・・。」
(厄介ごとか・・・。)
口調、小声になったことを考えても、非常に厄介なことであることがマダラメはわかった。
「・・・重要人物ですか。」
「・・・ええ。」
マダラメも同じように小声になり、話を続ける二人。
「・・・なぜそんな地位の方が・・・。」
「ご本人に確認された方がよろしいかと・・・。」
「・・・来ているのですか。」
「ええ・・・。」
そういって、キタガワはそのまま扉の方へと向う。
黙ってついていくマダラメ。

無言のまま無重力である廊下を移動していく二人。
ある場所に差し掛かったとき、キタガワが壁に手を置く。
機械の音が響いたかと思うと、隠し扉が開く。
「ほー。」
「早く。」
感心するマダラメに、急かすように入り口に佇むキタガワ。
その態度に焦りつつも中に入るマダラメ。
「・・・こんな隠し扉があったとはねぇ。」
「緊急時にしか使わないのですよ。まぁ、ここなら盗聴の危険性も皆無ですので。」
「ほう?なんでまた。」
「ミノフスキー粒子が半端じゃないんですよ。ここ。研究所の中心ですから。」
「なるほどね。」
そのまま進むと、一室あり、その中に、一人の少女・・・だと思われるのだが。
(・・・風格あるな。年はまだ18くらいだろうに。)
かもし出すオーラが違う。しかし、そのオーラもどこか儚げに感じられる。
(こんな態度にならなきゃいけないだなんてな・・・どんな生活送ってきたのだか・・・。)
遠めに見るその少女のこれまでを思うマダラメ。
「ご機嫌いかがでしょうか。少々不自由な生活だと思われますが・・・。」
「かまいません。こちらが無理を言ってるのですから。」
手に持った紅茶をテーブルに戻しながら、その少女は厳かな口調で言った。
髪の毛は金髪のロング・・・ウェーブが掛かっていて長い。
その顔は・・・マダラメも見たことがあった。
「リツコ・キューベル・ケッテンクラート!?」
「・・・その通りです。」
マダラメの叫びにも似た言葉に。苦笑いしてリツコは答えた。
ケッテンクラート家といえば連盟のトップとよばれる家系である。
リツコ・キューベル・ケッテンクラートといえば、その容姿と風格ある姿勢が好まれ、
連盟軍の士気を上げる広告塔に使われていた。
かく言うマダラメらの中でも人気は高く、特にササハラはポスターを貼っていたほどだった。
「そ、そのリツコ様が何でここに・・・。」
「立ったままなのもなんですので、どうぞ、お座りください。
 ・・・システム、といえば思い出していただけるでしょうか。」
呆然とするマダラメをよそに座るよう促すリツコ。
そのリツコの言葉に、マダラメとキタガワは同時に向かいのソファに座った。
「システム・・・うーん・・・あっ!」
「・・・カンジ・ササハラの機体に乗っていた物です。」
「あれが・・・・・・まさか・・・あのシステムの精神体の正体が・・・。」
「・・・ええ。私でした。」
少し俯きながら、リツコは口を噤んだ。
「なるほどね・・・。」
リツコから詳細を聞くマダラメ。
彼女が戦争前期、あの「連盟の白い奇跡」にいたこと。
戦争の最中、ここで実験の事故に巻き込まれたこと。
そして、あの戦いの後、意識を取り戻したこと。
「しかし・・・あの期間も活動してたはずじゃ・・・。」
「あれは影武者です。私が倒れる前も、常時、2~3人いたんですよ?」
少し笑いながら再び紅茶をすするリツコ。そして、羊羹に手を進める。
「それは羊羹ですかい?」
「ええ。和菓子の究極ですから。」
取り留めのない会話であったが、少し、リツコの気勢が落ち着いたように思える。
「なるほどね・・・いや、わかりましたよ。あなたがあの二人に会いたい理由も。
 そして、あの二人を最後に見たのもあなただって言うこともね。しかし・・・。」
「マダラメ中尉。言いたいことは分かりますよ。私も何度も言いましたから・・・。」
キタガワがはぁ、と溜息をついて困った顔をする。
「わかります。私の立場がいかに危ういものかを。狙われる危険性は大きいのも・・・。」
「ならなぜ。」
マダラメが急に真剣な表情で聞く。
「・・・あの二人に会わないと・・・終わった気がしないからです。
 これは我侭なのはわかっています。私とて・・・でも・・・。」
搾り出すようなリツコの言葉。少し、沈黙が流れる。
「・・・わかりましたよ。あなたが真剣なのも。覚悟も出来てらっしゃる。
 ならあとは私ども軍人の仕事でさ。しっかりお守りしましょう。」
沈黙を破るように少しおどけたように言うマダラメ。顔は少し笑っていた。
「・・・有難うございます。」
「なぁに、あなたが動いてくれなければあいつらを探すことも出来なかったんだ。
 みんな忙しいからな。生きるので精一杯さ。
 こういうことがあって俺が動けなきゃむりだとは思ってたんですよ・・・。」
「ではマダラメ中尉、E-5の部屋で諜報員が待っていますから。
 リツコ様に関してはシャトルの方へあとで案内しておきます。」
「りょーかい。」
キタガワの言葉に、マダラメは頷いて外へ出て行く。
「・・・本当によかったんですね?」
キタガワが改めてリツコに問う。
「ええ。決めてたことですから。
 でも・・・隊長さんがきていただけるならこんなに心強いことはありません。」
そういって、微笑んだ。

「E-5、E-5っと・・・。」
たくさんある小部屋を、認識票を見ながら回るマダラメ。
この宇宙ドッグは「テナント」型である。
基本的な管理は連盟軍によってされているが、
部屋一室一室はレンタルされているものの方が多い。
研究向けの部屋が多いため、いくつかの研究所が店子となっているわけである。
もちろん、居住区も多く、一つの研究都市のように形成されているのである。
場所によっては危険な実験をしている横で、人が生活することもあるので、
なんともいえない問題もはらんではいるのだが。
「よぉ!マダラメじゃーん!」
その声に振り向くと、見知った顔が一人。
「ああ、カスカベさん・・・。」
「木星じゃなかったの?」
「ちょっとした任務でね。戻ってきたところさ。」
「お久しぶりです、隊長。」
その後の方から、コーサカもやってくる。
サキとコーサカの二人は研究員に戻り、ここで活動を続けている。
「どう?義手の方。問題ない?」
「まぁね。特に激しく動かすこともないしね。」
わざとらしく手を動かすマダラメに、サキは苦笑いして言う。
「まー、何かあったら言いなさいよ。」
「はいはい。・・・そういえば結婚したんだよね?」
一年ほど前に木星で受け取った電子メールを思い出す。
「うん。子供もいるよ。」
「出来ちゃった婚ですか。」
「ちげーよ!ったく、久々に会ったっていうのに。」
マダラメの言葉にお約束の突込みを入れつつ笑うサキ。
「見に来ませんか?」
コーサカの言葉に、マダラメは慌てて手を振りながら言う。
「いやー、いいよ。今急いでるしね。今度戻ってきた時にでも・・・。うおっ!?」
その背中に衝撃が走る。
「なんだぁ!?・・・って!?」
驚いて後ろを振り返ると、なんと赤ん坊が浮いていたのである。
「あ、ハルナ!?何でこんなところにいるの!?」
サキの叫びを尻目に、赤ん坊はのんびりマダラメの方へ向う。
「あの・・・まさか・・・。」
「・・・ええ、うちの子ですよ。ふぅ。」
立ちくらみで倒れそうになるサキをコーサカが抱える。
赤ん坊はすっぽりとマダラメの手の中に納まる。
「あのー・・・。どうしたら・・・。」
「あはは・・・。隊長の事感じて来ちゃったのかもしれませんね。」
「冗談言うなよ・・・・。」
「いえいえ。冗談抜きにハルナのお気に入りみたいですし。
 将来もしかしたら・・・。」
「笑えねー。」
ははっ、とコーサカの言葉を受け流そうとするマダラメに、
「いえ、僕の言うことってけっこう当たるんですよね。」
そういってコーサカは満面の笑顔で笑った。
「・・・さて。かえろうか、ハルナ。」
コーサカがサキを抱えながら赤ん坊も抱えようとする。
すると急に泣き出す赤ん坊。
「・・・ほら。」
「・・・あー、もう。離れた方がよさそうね。」
「ええ。なんかこの子勘が鋭いんですよ。僕らが離れようとするとすぐ泣き出して。」
「ふーん・・・。じゃあこういえば大丈夫かな。『また来ますよー。』」
そうマダラメがいうと、ぴたりと泣き声がやむ。
「あはは。本当に来てくださいよ。グレたら隊長のせいだ。」
「やめてくれよー。まぁ、また顔は出すよ。・・・懐かしい顔も連れてな。」
「!・・・なるほど、任務って言うのは・・・。」
コーサカの表情が引き締まる。
「極秘なんだ。色々あってな、まぁお前は把握してるかもしれないが・・・。」
「ええ。・・・朗報、期待しています。」
そういって、再びいつもの笑顔に戻った。

「んで、何で君がいるわけかな?」
「えー、隊長さん、私の実力知らないでしょー?
 こう見えても立派な諜報員の一人なんだよ、私。まぁフリーのだけどね。」
「それってタレコミ屋っていうんじゃ・・・。」
「うるさいなっ!」
E-5にいたのは、懐かしい顔、ケーコであった。
「んで、情報持ってきたのは君なのね?」
「まーねー。私も二人の行き先は気になってたしぃ?
 暇見つけては色々聞いて回ってたんだよね。」
「ほーん。」
「そしたらさ、面白い情報が入ってさ。
 壊れたちょっと普通じゃないジムの残骸を見たって言うね。」
「・・・なるほど。それでそれはどこなんだい?」
「・・・それが驚いちゃってさ。シイオーバレー。」
「え?まさか。」
「そう、そのまさか。第801小隊の基地があった、あの密林の谷なんだよね。」
「・・・そうか、ありがとう。」
そういって立ち上がるマダラメに、ケーコは告げる。
「あ、私もついてくかんねー。」
「はぁ?何を言ってるんですかチミは。」
「だって私いないと道案内も出来ないでしょ~。」
「いや、場所をいってくれれば問題な」
「あのね~、私だってね、心配してるの、わかってよね。」
口を尖らして不満そうに話すケーコに、思わず苦笑いするマダラメ。
「・・・はいはい、わかったよ。」
「本当にわかってんの?まーいいよ。
 そうそう、Fー36でも待っている人がいるから会いに行って?」
「へ?ふーん。わかった。じゃあとでシャトルでな。」
「はーい。」

「・・・まったく、何があるって言うんだよ。」
F-36を探しつつ、再び無重力廊下を移動するマダラメ。
「・・・おお!やっぱりマダラメじゃないか。」
「ん?ああ、ヤナじゃねえか。相変わらずここか。」
「まぁなぁ。ここはいつでも防衛が必要だからなぁ。」
研究都市というだけあって、様々な研究がされている。
それを利用することが連盟政府の狙いなのだが、
その研究群を狙ったテロリストなどもたまに現れるのである。
もちろん、連盟軍の防衛は最新技術によるものに当然なるので、
成功したためしはないのだが。
「で、お前は木星だったんだろ、どうしてまた。」
「ああ、ちょっとあいつらに関する情報が入ってな。」
「ああ・・・。そういう事か。良く上が許可したな。」
「色々ありましてね。」
「・・・機密っぽいな。まぁいいや。でも気をつけろよ、最近テロが多くてな。」
「テロ多くなってんのか。」
「テロって言うより・・・海賊だな。宇宙海賊。」
「海賊ぅ?また突拍子もないもんが生まれたもんだ。」
海賊という語感に、少々驚きの色が隠せないマダラメ。
それもそうなのである。宇宙という環境が環境なだけに、
他から略奪を行う海賊は、なかなか危険が伴うものである。
「なんか白いMSが中心になってな。形はなんか・・・見たこともないやつだったが。」
「戦ったのか。」
「まぁな。なんか、漏斗みたいなの飛ばしてきてさ。自在に動きやがんの。」
「・・・そいつはファンネルって奴だな。前見たことがある。」
「・・・・・・らしいな。まったく・・・・・・厄介なもんだぜ。
 あの時は何とかなったけどよ・・・。また来たら勝てる自信はねーよ。」
ヤナが少しヤレヤレと言ったふうに肩をすくめる。
「しかしまぁ・・・豪華な海賊だな。」
「ああ・・・。」
「ちょっと隊長さん!何油売ってますのん!」
そこに、大声で声が掛かる。
その声にヤナは直立状態で身を固める。
「ああ・・・すまんね、ヤブサキ准尉。旧友に会ったもので。」
「旧友さん?ああ、これは失礼しました・・・。」
恥ずかしそうに身を縮めるヤブサキ・・・
とは言っても身長の割りに大きめの体は小さくはなってないのだが。
「ですがね、そろそろ準備していただかんと・・・。」
「わかってるよ。」
「カトウさんたちも待ちくたびれてはりますよ。」
「ああ・・・それは怖いな。じゃあ、また機会があればな。」
「・・・ああ。またメールくれよ。木星は暇でね。」
「ああ、わかった。」
そういって互いに敬礼すると、ヤナはヤブサキと共に奥のほうに消えていった。
「やれやれ、あいつも大変そうだな。相変わらず女性部隊なのかね?」
ヤナは厄介者を押し付けられてるのかもな、と少し笑って移動を開始した。

「ハーイ!隊長さん久しぶり~!」
「マタ、アエタネ・・・。」
「・・・なんで君らはここにいるんですか。」
ようやくたどり着いたF-36には、見知った二人・・・傭兵家業のアンとスーがいたのだ。
「ちょっとキタガワさんに頼まれてね。私達なら動きやすいでしょうって。」
「タノマレタナラダマッチャイレネエ。」
「そうですか・・・いやね、でもこんな大所帯・・・目立つとちょっと怖いなぁ。」
そういいながら、腕を組み悩むマダラメに、アンが気楽そうに声をかける。
「なに、昔の仲間が集まってるって言えばすむじゃない。」
「まぁ、そうなんだけどね。しかし・・・連れている人物が人物だけに。」
「でもねぇ。いざという時は人数いたほうがいいでしょ。」
「まぁそうだな。グチグチ言っても仕方ない。よろしく頼むよ。」
そういって手を差し出すマダラメに、ウインクをしながら握手を返すアン。
「キアイダー!ナニゴトモキアイダ~!」
そういってそういって手を突き出すスー。
「ははは・・・相変わらずだねー、この子は。」
苦笑いするしかないマダラメであった。

「にぎやかな旅路になりそうですね。」
「ええ、全く。」
三人でシャトルに向うと、すでにリツコとケーコは座っていた。
聞いた話によると、リツコが来ることをしならなかったケーコが叫び声を上げそうになり、
キタガワによって抑えられたということもあったらしい。
「・・・聞いてなかったんだもん。・・・普通驚くでしょ・・・。」
そういって拗ねてブーたれているケーコをよそ目に、アンとスーはいたって涼しい顔だ。
「まー、あの二人は特別かもしれんがね・・・。」
そういって笑いながら隣に座って慰めるマダラメ。
「さて・・・このまま順調にいけばいいんだが・・・。」
『シャトル発射10分前です。皆様、席に座りシートベルトの着用の方を・・・。』
俺の予想は悪い方にはよく当たる、と少し自嘲気味に笑うマダラメであった。
「さて、今後はどう動くつもりだね?」
隣のケーコに今後の予定を尋ねるマダラメ。
皆聞きたかったようで、耳を傾ける。
「あ、とりあえずね、タナカさんとこにいって、クガヤマさんと合流。」
「え、あいつらに会うのか。」
「うん。移動用のトラックとか、護衛用のMSとかね、借りにいくの。」
そういって、取り出した手帳・・・なぜかかわいいシールなどがついている・・・
を見ながら楽しそうに語るケーコ。
「ふーん・・・元気なんかねー。」
メールはもらっていたが、やはり実際会うとなるとそれなりに気になるものだ。
「みたいだよー。」
「カナコ元気かな。楽しそうなメールはよく届くんだけど。」
「・・・シアワセナラソレデイイ・・・。」
「・・・タナカさん・・・はあの技術士官の?」
おずおずと声を出したリツコにマダラメがえる。
「そうですよ。そうか、整備は大概タナカがやってたんでしたね。」
「ええ・・・何か一方的にあなた方のことを知っているのというのも妙な感じですね。」
そういって微笑むリツコ。それを見て少し気が緩むマダラメであったが・・・。
急にシャトルがゆれる。
「なんだぁ!?」
「隊長さん、外外!」
窓際に座っていたケーコの声にケーコの座っている上に体を乗り出し、
窓から外を覗くとそこには数機のリック・ドムが移動していた。
「・・・テロリスト?・・・・・・違うな。動きから見て・・・例の海賊って奴らか・・・。」
「あの・・・。」
「なに?」
ケーコの声に気付いて下を向くと、思いっきり胸のうえに手を付いていたことに気付く。
慌てて手を離すマダラメ。
「・・・うわ!ごめんごめんごめん!!」
「いや、事故だしいいんだけど・・・。」
「いやはは・・・。いやね、それよりね。どうにかせんとね。」
かなり動揺しているのか、しゃべり方がおかしくなるマダラメ。
「ちょっと、しっかりしてよ!」
「おおう、わっかてるよ~、わかってるよ~。」
ケーコの言葉に急いで席から離れ、操縦室に向うマダラメ。
「おい!勝手に入るな・・・」
「連盟軍士官マダラメ中尉だ!!現状はどうなっている!」
「え、あの、その。・・・荷物の引渡しを迫られています。
 あと・・・この艦にある人物が乗っているから引き渡せとも・・・。
 ・・・あの、何かご存知なのですか。」
「・・・まぁな。ちっ、どこで洩れやがった。」
操縦席にいた副操縦士から話を聞くと、マダラメは舌打ちをする。
「引渡しは不可能ですか。このままでは艦ごと落とされます。」
そういうメイン操縦士である艦長にマダラメはため息をつく。
「・・・ああいう輩が引き渡したからといって無事に済ますとお思いで?」
「・・・まぁ、そうですよね・・・。」
「・・・プチモビぐらい積んでますよね?貸して貰えますかね?」
「ありますが・・・どうするおつもりで?」
「何とか時間稼ぎをする。その間救援信号を送りまくるんだ。
 ・・・10分。これ以上は無理だと思うが、きっと近くを巡回中の隊がいるはずだ。」
「・・・わかりました。こうなれば一蓮托生ですな。」
そういう艦長に、マダラメは敬礼を送る。
「うまくいくよう願っててくれ。」
「私達も手伝うよ!」
「・・・フフフ、マッカセナサ~イ。」
気付くと後にアンとスーが立っていた。
「・・・お前ら・・・よろしく頼む!」

プチモビ、というのは作業用のMSで、
・・・いやMSというにはちょっと貧相な二頭身ほどの作業用機械である。
基本的に戦闘能力は皆無に近く、緊急時の補修などに使われるため、
大概の輸送艦には積んであるのだ。
「よし・・・あくまで目標は牽制だ。無理はするなよ。」
「モチロン!こんなので落とそうとは思わないよ!」
「・・・ムリハシナイ。」
三機のプチモビに乗り込む三人。
「よし・・・みんな、生きて帰るぞ!」
「ヒュ~、久々に聞いたね!」
「・・・コレヲキカナキャハジマラナイワ。」
「・・・なんか恥ずかしいな。まぁいい、いくぞ!」
宇宙に三機のプチモビが出撃する。
「ふいー、地球圏は重力影響が弱くて操作しやすいな。」
「やっぱ木星は大変?」
「まあなぁ。重力影響は半端じゃないよ。事故でたまに木星に持ってかれる事もあるからな。」
「重力ニ魂ヲヒカレタモノヨ!」
「それ使い方違うような・・・。まぁいいか。よし来るぞ!」
前方にドムの編隊が広がる。数にして三機。多くはないが。
「ま、数の上じゃ同じでも、性能差が大きく違うしね。」
そうぼやきつつ、スイッチを操作する。
「さて、どの程度慌ててくれますかねっと!」
そういうと、プチモビのボディから一本のアンカーが飛び出す。
それはそのままドムに張り付いて・・・。
「作業用のマグネットアンカーのお味、いかがかなっ!」
そのまま、回転を開始し、ドムは慣性のまま回転を始める。
同時にアン、スーの機体もマグネットアンカーを射出し、同様に回転を始めた。
「そのままどこかへ飛んできな!」
ボタンを押した瞬間、電磁石になっている先端から磁力がなくなり、
その勢いのまま、遠くへ飛んでいくドム。三機とも、遠くへ飛んでいく。

「ひゃー、奇襲だっただけにうまくいったな。」
『でも次はうまくいかないでしょうね。』
そういいながら通信越しにアンは少し笑う。
「さて、残りは・・・二機?」
『意外と多いわね!』
編隊構成は普通4機で行うものである。
大概そのうち一機は情報収集タイプ
・・・EWACなどがついている機体であるのが一般的である。
しかし、この襲撃隊はドム5機による編成なのである。
「まぁ・・・軍隊の常識が通じるとは思っちゃいねえけどな。」
『センソウハカズダヨ!アニキ!』
「・・・兄貴って誰やねん。」
そうスーの言葉に突っ込みを入れつつブースタを点火させるマダラメ。
「さて・・・あとは動きまくっときますかね。」
ドムからビームバズーカの光が迸る。
「ビーム兵装かよっ!安定感不足であまり配備されてないんじゃなかったのかよ!」
ビームの処理というのはデリケートであり、
皇国軍は最後までビーム兵器を量産させることが出来なかった。
ゲルググは確かにビームを標準装備していたが、
一般兵が多く使っていたのはリックドムであり、
リックドムはビームの扱いに長けてはいなかった。
三機のプチモビは移動を繰り返しつつ砲撃を避ける。
「やれやれ、安定してるじゃねえかよっ。」
ビームの迸りをギリギリで交わしつつも、だんだんと追い詰められていく三機。
「さすがにビーム兵装はつらいな・・・。」
普通のリックドムの武装は実弾兵器であるジャイアント・バズ。
これは単発で出てくるため、数発よければ後は弾切れである。
しかし、ビーム兵装はそれよりも発射数が多い。
「あと・・・数分・・・早く来てくれ・・・。うおっ!?」
乗機の片手が吹っ飛んだのがわかる。
「く・・・。大丈夫か!」
『何とか・・・ね。』
『マダダ、マダオワランヨ!』
その瞬間である。
一筋の閃光が宇宙を奔る。その元には、大きな影が。宇宙用戦艦である。
「来たか?・・・なに?あれは・・・うちの軍じゃない!?」
このあたりを巡回している巡洋艦であれば、見覚えがないものはない。
仮に新造艦があったとしても、そう大きく様相を変えるもんでもないはずである。
しかし、その艦は明らかに異質であった。
『帆』があるのである。
「おいおい、こりゃ何の冗談だよ・・・。」
『こいつが噂の・・・宇宙海賊って奴かしら!?』
「ならおかしいだろ・・・じゃあこのドムたちは何者だよ・・・。」
ドムは明らかに挙動がおかしくなっていた。
襲い掛かっていた二機に、先ほどぶっ飛ばした三機が戻ってきて、
共に逃げようと後退を始めた。
「なんだ・・・??」
すると、海賊船から二機のMS・・・。一方は白く、一方は黄色の・・・。
見たこともない所属不明の機体が飛び出してきた。
すぐさま、その黄色い機体は変形し飛行形態になったかと思うと、
ドムたちの前に立ち、ビーム砲を打ち放つ。
これによって二機が致命傷を負い動けなくなった。
残りの三機が地理尻に逃げようとしたところを、
白い漏斗・・・が打ち落としていく。まるでその純白の機体は・・・
堕天使とよぶにふさわしい姿であった。
「ファンネル!?あれが噂の・・・本当の宇宙海賊か・・・。」
しかしなぜ宇宙海賊はドムを倒しているのだろうか。
『え~・・・お騒がせしました・・・シャトルにご搭乗の皆様。』
女の声だ。マダラメはどこかで聞いたことがある・・・気がした。
『このたびは私どもの脱走兵がご迷惑をおかけしました。
 私どもは一般市民の乗っている艦は襲わないよう心がけているのですが、
 モラルのないもの達が逃げ、このような結果になってしまいました。
 それではよい航海を。』
そういって通信をきる。どうやら、白いMSに乗っている女性であるようだ。
「なんなんだ・・・こいつら・・・皇国の敗残兵なのか?」
『そのようだね・・・。』
その時である。ようやく駆けつけた連盟の巡洋艦が、MSを展開してきた。
『またせたな。マダラメ。』
「お?ヤナか?もう大丈夫だぞ、終わった。」
『は?何を言ってるんだ、目の前にいるじゃいか!はよ逃げろ!』
「いやぁね・・・。」
『ごちゃごちゃ言ってないでぶちかましたりましょうや!』
そういって、ヤナ機後から巨大なランチャーを構えたジム・カスタム
・・・色がピンクなのが目もあてられない・・・
が、それを構え、白いMSを打ち倒そうとする。
搭乗者は・・・先ほどのヤブザキ准尉である。
『おちろやぁ!この海賊がぁ!』
シュウウウウウウウウウウウウウ・・・・。
収束音が通信越しにも聞こえる。
「ちょ、おま、それ、やば、だろ!」
声にならない声を上げ、マダラメが講義するも。
バシュウウウウウウウウウ!!
光の迸りが宇宙を駆ける。
しかし、二機はあっさりそれを交わし、
光はそのあたりを漂うゴミを焼いたに過ぎなかった。
『慌てんでも、今度相手になってやるさね。』
『なんだと!かかってこいやぁ!』
白いMSのパイロットとはもはや顔見知り状態らしく、
罵声を浴びせかけるヤブサキ。
『・・・では、ごきげんよう。』
そういうと、二機は艦船に引き返す。
『く、追いかけますわ!』
『バカヤブ。無駄弾撃った上に無駄な追い討ちもしようとするのか?』
『カトウ少尉・・・。でもですね!』
『ばかですにゃ~。』
『お前にだけは言われたくないわ!』
『・・・あ~みんな落ち着いて・・・帰るぞ・・・。』
騒ぐ三人の部下に、おずおずと声をかけるも、完全無視されるヤナ。
「・・・大変だな。」
『・・・うん。』

事の顛末をヤナに伝え、シャトルに戻ってきた三人。
「おつかれさん~。」
ねぎらいの
「本当だよ。全く・・・前途が多難だぜ・・・。」
ふう、と息をつきつつ、椅子に座るマダラメ。
「・・・あの方々・・・いえ、あの方・・・。」
「え?白いのに乗ってた奴かい?」
リツコが、何か思い出したようにマダラメに語る。
「声、聞いたことあります。あれは、あの基地にいた・・・最後の相手だったはずです。」
「なにぃ?じゃあ、あの兵器使おうとしてた奴かよ・・・。
 妙に紳士的になりやがって・・・。」
不満ありげに鼻息をふかすマダラメ。
「よくは分かりませんが、今度は違った方向で戦うつもりなのでは?」
「ふーん・・・。しかしまぁ・・・。とりあえず当面の航海は大丈夫かな・・・。」
『当機は、もうすぐ大気圏に突入します。』
振動と共に、機体が地球へと降下していく。
久々の、地球という重力を感じながら、マダラメは少しの眠りについた。

前編 終わり


【次回予告】
地上の降りた一行を待つのは希望か、絶望か。

それは・・・誰にもわからない。

いや・・・それがどうなのかを・・・
決めるのは、自分自身なのである。

第801小隊アフターストーリー『リツコ・レポート』【地球編】
お楽しみに