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その四 雪溶けの前に【投稿日 2005/12/02】

カテゴリー-2月号予想


荻上『あいたた…昨日、飲み過ぎて…』

女子の寝室から出て、水を探す。

荻上『色々と喋りすぎ…。でも、やっぱり私は―――。』

笹原も起きていた。

荻上『・・・!』

笹原「おはよう、大丈夫?」
荻上「え…ええ、おはようゴザイマス」

ペットボトルの水をコップに注いで手渡す笹原。

荻上「ありがとうございます」
笹原「明日は一緒に全員で飲むみたいだけど、無理しないでね」
荻上「・・・ハイ。」
  「・・・・・・・・・あ、遅れましたけど、就職おめでとうございました」
笹原「うん、ありがとう。漫画好きだから頑張れるよ」

いい笑顔の笹原。心なしか荻上と話せてる事を楽しんでるようだ。
しかしさっと顔をそらし移動していく荻上。

荻上「トイレ行ってきますので」
笹原「あ、うん、じゃあ…」

明らかに落ち込み顔で見送る笹原であった。

荻上『やっぱり私、笹原さんの事―――。』
  『でも、だからこそ、私は傷つけないように離れるしか…』

ロッジの外に出て、朝もやの中うつむき座り続けるしかなかった。


合宿2日目お昼前には、田中が合流した。

田中「よぉー。どう?楽しんでる?」
斑目「ん、まぁね。宅配で衣装、さっき受け取ったぜ。」
笹原「おはよーございます」
大野「お疲れ様です~」ふふふ

皆、口々に挨拶を交わす。
田中はにこやかに玄関脇に着いた宅配の大箱を開け始める。

咲 「う…それは、ひょっとして(汗)」
大野「現視研の合宿ですから!コスプレ合宿ですよ!」
うっひゃ~~~

全員冷や汗。

恵子「あ、でも興味あるー。アタシのも有るの?」
大野「モチロン!恵子さんにはコレ!」
笹原「おいおい」
なし崩しで全員着替えさせられる。

春日部さんは抵抗するも、笑顔の高坂によって別室へ連行。
全員着替えるとなると荻上さんも空気を読んで着替える事になる。

田中「長物を全員分用意するの大変だったよ。」

と言いながら喜々としている。

ナムコの武器格闘ゲーム、ソウルキャリバーシリーズだ。
一同勢ぞろいでじゃれ合いや撮影開始になる。

春日部…ソフィーティア
高坂…セルバンテス
大野…ソン・ミナ
田中…アスタロス
恵子…タリム
笹原…御剣
荻上…シャンファ
斑目…吉光
朽木…ヴォルド

恵子「うわーアニキ、無理有る~。」
春日部「斑目とクッチーはオチ要員だね(笑)」
斑目「くっそー切腹してりゃ良いのか?」
朽木「コーホー(リアルに喋れません!)」

なんだかんだ言いながらノリノリ。全員やってる事と
身内だけで屋内なのも奏功だろう。

斑目は笹原を、女性陣は荻上を、それぞれ隣に隣にと押しやり
ツーショット撮影など試みるが、荻上は頑ななまま時間は過ぎていった。

終わって女子部屋で着替えながら

荻上「ちょっと皆さん、あからさま過ぎますよ!」
  「余計なことはしないで下さい!」

小声ではあるが、例の固い表情の荻上。

恵子「アニキの事、嫌い?なわけ無いよね。」
  「昨日の話聞いたけど、昔の男と兄貴は違うんだよ。」
荻上「違うことぐらい解ってます!」
  「でも私は私を許せないんですよ!
   一生801だけ書いて生きていくしか無いんです!」
恵子「好きなものを好きで居て良いじゃん!あたしだって
   コーサカさん好きだし、同人誌も読み始めたし。
   あんたも801好きで!兄貴にも素直になりなよ。
   絶対、兄貴も気があるって。」
荻上「だったら尚更、私は離れるしかありません」
  「絶対に、傷つけたくない人だから…」

最後のつぶやきは、しかししっかりと部屋の皆に聞こえた。

荻上「夜まで自由時間ですよね。昼食に出ます。」

部屋から出て行く荻上を追いかけたのは大野だった。

大野「荻上さん、わかりましたから。せっかくの合宿だし
   一緒に出ましょ。ね?」
咲 「悪ぃな、あたしゃ高坂と出かけるわ。頼んだよ、大野。」
恵子「あ、あたしも―――。」
咲 「おめーは今日は駄目だ!」

結局、田中・大野・荻上、高坂・咲、斑目・朽木・笹原兄妹、
という組み合わせでばらばらと出かけていった、げんしけんの面々。

湖畔の道を歩きながら、恵子が話しかけた。

恵子「兄貴、荻上さんの事、ちゃんとしなよ。」
笹原「ばっ、な、何言ってるんだよ。」

クッチーはヤバイ話になると急速離脱がお得意だ。

恵子「昨日、聞いたんだよ。あの子がああなった理由を。」
笹原「ストップ!それは聞かなくて良いよ。勝手に喋るもんじゃないだろ」
恵子「バカ!もう黙っちゃ居られないよ、兄貴!」

昼食を採りながら、ひとしきり昨夜の事を語ってしまう恵子。

笹原「そうか―――。」
恵子「可哀そうじゃない。あの子、このままじゃ…いつまで引きずれば良いのさ」
  「兄貴もあの子も、見てて好きなの見え見えなのに。」

一瞬赤面する笹原だったが、真面目な顔になり

笹原「確かに好きだよ…でも、可哀そうっていうのはどうでも良いんだよ」
恵子「はぁ?ヒドくね?」
笹原「なんていうかな…確かになんとかしてあげたいけど、
   俺が今、無理してアプローチしても、余計傷つくでしょ。
   彼女の重荷を軽くしてあげたいのと、ずっと見守ってあげたいとは思うよ。」
恵子「…それじゃあ二人とも、平行線じゃん。そんなの納得いかない―――。」
斑目「まぁまぁ、確かに急いでもどうにもならないけど、好きな気持ちってさ
   消そうと思っても消えない物でしょ?本物だったら。」
  「今日、どうこうしようと結果を求めるもんじゃあ無いよ。」

いつもは頼りない姿として恵子の目に映っていた斑目だったが、
今日のこの一言に説得力のある佇まいだった。

恵子「そう、か…。」
斑目「ただまぁ、もうちょっと喋れないと、今の状況は辛いなぁ。」
  「ま、そういうわけだ、恵子ちゃん。皆にも、もうしばらくは
   見守ってあげるように言っといて。」

笹原に苦笑を投げかけ、笹原も納得したようすで嘆息する。
その二人を眺めつつ、恵子も黙るしかなかった。


夕食は定番のバーベキューだ。
男連中は網や炭の準備だが、流石オタク、手際は悪い。
高坂と田中に任せる形になる。

女性陣は野菜を切っている。

恵子「昨日の話、兄貴に話しちゃったよ」
荻上「なっ!」
咲 「おいおい、お前…」

大野も咲も汗ダラダラ状態。
一瞬焦った荻上だが、諦めにもにた表情を浮かべ冷静になる。

荻上「笹原さんは優しいから、可哀そうとか言ってくれたんですか?
   笹原さんを縛ったりしたくないですから―――。」
  「前にも言いましたけど、私がオタクと―――。
   いや、誰とも付き合うわけないじゃないですか!」
恵子「わかったよ、でも何にも話さないのなんてオカシイじゃん」
大野「そうですよ、全く会話が無いなんて、同じげんしけんなのに」

荻上「そうですね、今後は腐女子全開で行きます。」
   大野さんも恵子さんも、801話全開でいきますからね。」
大野・恵子「え、私たち(あたしら)も?」
荻上『笹原さんへの想いを吹っ切るんだ、もう―――。』


そしてバーベキュー&飲み会。
本当にカップリング話を繰り広げる女性陣…。

荻上「麦男×千尋が―――。」
恵子「えー、逆の方が萌えねぇ?」
笹原「はは…。」

斑目と田中、クッチーは二つある網のもう一方で半笑い。
笹原は、喋ってくれるようになった荻上に呼ばれてお隣だ。

さらに酒も時間も深くなり、室内に移動しても宴は続く。
完全にリミッター解除状態で全員黒目は白くなっている。もしくは渦巻き。

恵子「ねぇねぇ、今日気付いちゃったんだけど、身近な所でも
   カップリング考えない?」
荻上「それは私に対する挑戦ですか!」
恵子「いやマジで!!斑目と兄貴って良くね??斑×笹萌えとか―――。」
荻上「それは逆だァ!」
大野「まあ普通は斑×笹でしょう」
荻上「解ってませんね!ちょっと待ってて下さい!」

スケッチブックを取りに行って、例の絵を披露してしまう。

荻上「ほらコレ!これが萌えるんですよ…これをこうして…」

ネクタイを引っ張る絡みを描き始める荻上。

荻上「ほらー見てください!笹原さん!アハハハハハ」
  「メガネ君受けじゃないと萌えないんですよ!」
荻上「もう高坂さんなんて魔王ですから!魔王!」
大野「あーそれは禿げ同。禿げサイコー!」

完全にヤケになっている荻上…。
しかしこういう合宿で泥酔すると定番なのが、脱走&徘徊だ。
トイレに行ったかに見えた荻上だが行方不明になる。携帯も置きっぱなし。
生き残った男性陣の斑目、笹原、田中で捜索開始。
高坂は体力低下と咲の絡み酒で、二人して撃沈していた。

意外にも第一発見者は斑目だった。けっこう遠くまで歩いて来ている。
少し距離を置き見守りながら笹原を携帯で呼ぶ。

斑目「なんか飲み会の時、話すようになったっていうより痛かったしさ」
笹原「ええ、落ち着かせて帰りますから」

ふらふらと歩く荻上を呼び止める笹原。

笹原「荻上さん!帰ろうよ」
荻上「あ、笹原さん。私、家に帰ってるんですよー。一緒に行きますか?」
笹原「え?ああ、そうだね、こっちの道だよ」
荻上「私の実家は山奥ですからねー。どんどん歩かないと」

完全に正体を失ってると判断した笹原は、話を合わせつつ帰路に誘導する。

荻上「えーもー引っ張らないで下さい!やらしいですねぇ。」
  「って、私の方がエロエロですから!」
笹原「いやいや、俺の方がエロいってば・・・」
荻上「きゃー私、危ないですか、今?」
  「なーんて、こんな腐女子ですから。安全ですよね、ごめんなさい」
笹原「まあまあ」

荻上「極悪腐女子ですから!
   笹原さんも夏に私の本見ちゃったから呪われてますよ!」
笹原「いいから。」
荻上「ハトよめですか?どんどん歩かないと。私の実家は山奥ですよー」
てくてくと歩く二人。

さらにしばらく歩く。酔いはすこし冷めてきたようだ。繰り返し発言は無くなった。

荻上『なんでこんな所歩いてるんだろう~。
   あれ?ロッジで飲んでたはずなのに~。
   それに笹原さんと二人で。キャーやばい!この背中…。』ドキドキ

意識は戻ったもののまだ脳内も酔っている。

荻上「笹原さーん、なんで今歩いているんですか?」
笹原「うん?帰ってるところだけど、疲れた?少し休もうか」

自販機の明かりが見えた。道沿いに屋根とベンチの休憩所が有る。

荻上『そうだった、私は801だけで生きていくんだった。
   さっきも自分の絵を笹原さんに見せて―――。』
荻上「なんか、すみませんご迷惑お掛けします」
笹原「はは…今日は凄かったね。意外と笑い上戸だったんだね。」
荻上「ええ、今日から素直に腐女子全開で行きますから!」

その表情はまた固い。

笹原「素直っていうか、辞められるもんじゃないよね。おれも一生オタクだよ」
荻上「なんで笹原さんは私にまだ優しいんですか?」
笹原「何言ってるのさ、荻上さんは荻上さんじゃない。」

まだ笹原は笑顔だ。

荻上「話、聞きましたよね。さっきも私の絵を見て…。
   笹原さんでも妄想してるんですよ」
笹原「うーん、それを言われると………。
   俺も荻上さんのコスプレ姿が脳裏に焼きついてるよ」
荻上「残念でしたね、私がこんなにひどい女で。」
笹原「そんな事ないよ。」

真面目な目でじっと見つめる笹原。

荻上『―――!!』
  『ああ、このままじゃ駄目だ、また私傷つけちゃう…。』

目を逸らす荻上。涙がにじんで来る。いや、酔いのせいか早い。
もう雫が落ち始めている。
(私がオタクと付き合うわけないじゃないですか!)
(絶対に嫌です!!)の時並みに強張っている。

荻上「無理しなくて良いんですよ、気持ち悪いに決まってるじゃないですか。」
  「可哀そうな子とかじゃないですからね。業の深い801スキーなんですよ」
笹原「うん、そうだね。…それでも今日は荻上さんといっぱい話せて嬉しかったよ」

涙に動揺しつつも、指で涙を少し拭ってあげる。

荻上「そんな…私は…私だって…。」

頬に感じる笹原の指。

荻上『…あったかい。』
荻上「私は男の人を傷つけるんですよ…。801で…。昔も、今も…。」
笹原「…荻上さんは801好きなのが荻上さんでしょ。」
  「そういう所も含めて、俺の知ってる荻上さんなんだよ。」

荻上『ああ、見なくても解る、笹原さんの笑顔…。』

頬に触れる笹原の手に、荻上の手が重なる。流れる涙の種類が変わる。

笹原「あれ!?荻上さん?」

笹原にもたれ掛かる荻上。酔って寝てしまったようだ。
その表情はいつしか穏やかになっている。

流石に応援を呼ぼうと電話するが誰も出ない。
小柄な荻上といえど、負ぶって帰るには遠い。とはいえ、放置する訳が無い。
途中で休憩を挟みつつ、なんとか背負って帰った笹原だった。
全員寝てしまっているのか?斑目が報告しているから心配はしていないだろう。
荻上さんを空いている女子室ベッドに横向きに寝かせると…

高坂「笹原君、お帰り。」
笹原「あ、起きたんだ?」
高坂「酔ったというより寝ちゃってさ。」
  「咲ちゃんと二人で酔っちゃった人の様子見てるから。」
笹原「うん、ありがとう。眠くなったら交代するから起こしてね。」

笹原は広間に戻っていった。しばらくして高坂も広間に戻る。

高坂「どうだったの?咲ちゃんから聞いたけど、告白とかしちゃった?」
笹原「はは…告白なんてとてもとても。」
高坂「そう・・・でも心配なさそうだね。荻上さんの表情も、笹原君の表情も。」
笹原「うん、ありがと。」


翌朝、二日酔いに苦しむげんしけんの面々だったが、笹原を避ける荻上―――。
という姿は無く、そこには荻上の良い笑顔が有った。
荻上の長い冬は終わり、雪溶けと芽吹きが萌える季節が来る。