※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

恋と妄想の初詣 【投稿日 2006/12/23】

カテゴリー-斑目せつねえ



「あっ…春日部さん!?」
「ん?」

…本当、偶然だった。
俺が道に迷って春日部さんがトイレに行かなけりゃ会えてなかった。
…いや、あんだけ探しながら歩いてたんだ、偶然も何もないかも知れない。

「……ってうわ!え?この辺みんな飲み屋?…とは限らないか。
こんな広場あったのか……」
状況を把握しきれないまま広場のほうに目を向けたとき、春日部さんが急に視界の左下に消えた。

「………………………!!??」
考える前に反射的に手が伸びて、フラついた春日部さんの腕をつかんだ。
クタっとなった春日部さんの表情にドキッとする。

「…………」
春日部さんが何か言いかける。
「え?何!?」
「おしっこ」
「………………………………(汗)」

トイレの前で待ちながらなんだかソワソワする。

(待ってていいものやら…。いや、別に変なこたないだろ。
「連れ」だし…。第一さっきみたいに倒れられちゃかなわんからな)

やがて春日部さんがトイレから出てくる。
「……あれ?待っててくれたの?ありがと。
つーかあれ?…そーか、むしろキモいんだよね、そーだよね」
「は?…いや違ーよ、春日部さんがいねーとどこの飲み屋かわかんねーだろ」

(やっぱ何かしら言われるんだな…)
思わず苦笑する。
「それに、さっきみたいに倒れちゃ………っ!!!」

言ってるそばから、春日部さんがまたよろける。
慌てて後ろから肩を支える。
「ちょ、飲みすぎ…」
「………くかーーーーー」
「えええ、立ったまま寝んなよ!(汗)って、重…!」
「………すー、すー……」
「か、春日部さーーーん(汗)」

とりあえず道の端まで引っ張っていき、壁によりかからせる。
「あーも、どーすんのよコレ…。」

(…とりあえずみんないる店見つけて…。って、春日部さんここに放置しとくわけにいかんし。
広場のどこにいるかわからんもんな…。)

春日部さんが肩に寄りかかってきて小さな寝息をたてている。
さっきまで迷っててテンパってたのもあって、考えがまとまらない。

(…うう、煩悩に邪魔される…)
(…春日部さん運びながら探すしかなさそーだ。運………。)
(………………。)
(…無理だ!お姫様抱っこは俺には無理だ!!(汗)
えと、じゃあ背負うか…。)

「…春日部さん起きて」
「…うう…ん」
肩を揺さぶると、春日部さんは小さく目を開けた。
「だ、大丈夫、だーいじょうぶ…」
「いやいや、全然大丈夫じゃねーから。倒れてんじゃん」
「倒れてないよ…さっきのだってちょっと…フラついたらけれ…」
「ろれつ回ってねーから!(汗)背負うから後ろ乗って」
しゃがんで背中を見せると、春日部さんはフラつきながら背中にしがみついてきた。
予測していたはずなのに思わずビクっとする。

(…ええい、考えるな!背中にあたってるやらかいのとか考えるなー!!(汗))
自分に渇を入れて、背負ったまま立ち上がる。
立った反動で落ちそうになったためか、春日部さんが後ろから首に手を回してしがみついてきた。
(………うわーーー…。)
後ろからぴったりくっつかれて、平静でいられない。

とりあえず歩き出し、広場を見回す。

(…どこかなーーー…)
(…えと、アレだ。
「トイレでばったり会ったあと、春日部さんが酔って倒れそうになったからこうなって…」
…って、何で言い訳みたいに考えてるんだ俺は。)
(ああもう、探すのに集中しろ!!)
(………背中あったけーーー…。)
(…スーの肩車といい、新年早々縁起がいいなあ…縁起いいっていうんかなこういうの)
(………てバカ、探すのに集中しろ!…あれ?どこだここ(汗))
歩いてるうちに広場の端のほうまで来てしまった。

(げ、見落とした!戻らなきゃ…)
(と、とりあえずトイレのとこまで………くぁー何やってんだ俺は)
急いでトイレのところまで取って返す。
(…振り出しに…ホント何やってんの?orz)
そのときポケットの携帯が震えた。

「!…お、笹原。え?ああ、スマン。近くまで来てるはずなんだけど…。
あ、春日部さんがだな…。え?ああ、そう、トイレのとこで会った。
そのーー、春日部さんつぶれちゃってっから迎えに来てくれるか。場所わかる?
あ、そっか!そりゃ近くに決まってるよな、春日部さんそっからトイレ来たんだもんな…。
俺何やってたんだか…。
え?いやこっちの話。うん、うん高坂が。ん、じゃ…」

電話を切り、とりあえず春日部さんに話しかける。
「春日部さん、降りて、高坂来っから」
「…んん………」
またその場にしゃがむと、春日部さんがのろのろと背中から離れる。

「…大丈夫?」
「………ん、少し楽になった…」
「…そんならいいんデスケド」
春日部さんはまた壁によりかかり、目をつぶる。
お酒のせいか、眠いせいなのか、頬が赤く染まっている。

さっき、この人を探して境内をうろうろしたのを思い出す。
どんな気持ちでその影を追っていたことだろう。
こうして近くにいると、それだけでほっとする。
離れているとなんだか物足りなくて、さっきのように探してしまう。

俺はいつまでこんなことを続けるつもりなんだろう。

そのとき高坂が向こうから歩いてくるのが見えた。
「よう」
「どうもすいません。咲ちゃん、仕方ないなぁ」
高坂がいつもの笑顔で言い、春日部さんをひょいとお姫様抱っこで抱き上げた。
「さ、行きましょっか。…どうしました?」
「え、あ、いや、何でもない、あはは」

高坂の後をついて行きながら、思わず苦笑する。
(高坂にはかなわねーなあ…)

高坂の背中越しに、春日部さんの安心しきった寝顔が見える。
(………幸せそうだなぁ。)

(…うん、その顔をしていてくれれば、俺は………。)


「すいません、咲ちゃんも、みんなも飲みすぎちゃって」
高坂が話しかけてくる。
「…はは、ったくこのオゴソカナ夜にしょーがねーなー」
「あははは。まあ、でも煩悩は除夜の鐘だけじゃ消えてくれませんしね」
「……ヤベ、それすげえ実感できるわ(汗)」
「はい?」
「いや…。」

「ここです」
「………ホントだ」

店のあたたかい光の中に、みんなの顔が見えた。

             END