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アンの青春 【投稿日 2006/11/18】

カテゴリー-その他


■セカンドジェネレーション設定■

これは絵板起源の「セカンドジェネレーション」-双子症候群-の独自設定
です。一応、「初期設定」とされるキャラクターの設定を拝借していますが、
独自に改編した部分もあります。
ここだけで完結されたバラレル設定ですので他のSS師さんたちや絵師さんた
ちの設定との差異はご了承ください。

□舞台設定 
げんしけん最終回から二十年後の世界の東京郊外の新興都市

□登場人物設定 
旧世代の登場人物は斑目晴信、アンジェラ・バートン、スザンナ・ホプキンス
のみの登場。その他メンバーは名指しも登場もしない方針。

□物語設定
物語はオムニバス形式で独立しており各自主人公が異なりますが、
前作の設定を一部引き継ぐ場合があります。一応、時間系列順に列挙して
おきます。
:げんしけんSSスレまとめサイト 「その他」カテゴリー収録
①「ぬぬ子の秘密」 主人公 服部双子(ぬぬ子) A.C.2026年
②「斑目晴信の憂鬱」 主人公 斑目晴信 A.C 2026年
③「アンの青春」 主人公 アンジェラ・バートン A.C 2010年
続編未定


□登場人物 (○旧世代 ◎新世代 ☆オリジナル)
○斑目晴信 
新世代たちの中学校に用務員として赴任。過去にアンジェラと短期間交際し
ており、認知していない息子が一人いる。最近、その存在を知った。
○アンジェラ・バートン (アン、アンジェラ)
米国にて社会心理学研究をしている。斑目との間に一子あり。
○スザンナ・ホプキンス (スージー、スー)
新世代の中学校に英語教師として赴任。容姿は昔と変わらない。
◎千里(ちさ) 十四歳以下同
笹荻の娘。妹の万理と二卵性双生児。性格は積極的で物事に頓着しない。
漫画、アニメ好き。
美少女愛好趣味もある。どちらかというと消費系オタ。叔母や親友の春奈と
ファッションやゲームの話題で気が合う。
◎万理(まり) 前作でうっかり万里の変換せずにいましたので他の方々の
設定との区別の為に万理で通します。
同じく笹荻の娘。性格は消極的で思慮深い。納得のいかない細事に拘る面も
ある。腐女子趣味で創作もする。漫画、アニメ好き。創作系オタ。親友の
千佳子と気が合う。

◎千佳子 
田大の娘。温厚で大人しい性格。父親に似て凝り性で几帳面な面も。漫画、
アニメ好き。消費系オタ。腐女子趣味。コスプレは嫌い。
思春期の難しい年頃で母親のコスプレ趣味には嫌悪感。その後何かの
きっかけで目覚める可能性あり。
◎春奈
高咲の娘。ボクササイズをしている。オタク趣味は無いが、父親の影響で
オンラインゲームの格闘ゲームが好き。
ファッションにも興味があり、アバターの服などのデザインを趣味にして
いる。
父親の天才性?は引き継いでいないが、母親のリーダーシップの素質の萌芽
がありそう。
◎服部双子(ぬぬ子)
突然、転校してきた厚底メガネのおさげの少女。メガネを取ると絶世の
美少女という古典的設定。その他にも秘密が多そう。
☆アレクサンダー・バートン(アレック) 十五歳
このパラレル設定での完全なオリキャラ。斑目とアンジェラの息子。
無責任な父親を拒否。
その反動でオタク趣味も寄せ付けない。しかし思いっきり素養がある。
母親似のスポーツマンで格闘技を習得。
オンライン格闘ゲームには興味がある。


 **本編**

○斑目晴信

(めっきり部室に顔を出す事も少なくなったな・・・)

と斑目は秋足の早さを肌で感じながら、枯葉舞うキャンパスの大通りをゆっくりと歩いた。
在学中の顔見知りはもういない。唯一、スージーだけが大学院から何かの研究室に残ってはいたが、
すでにサークルには顔を出す事は少なくなっていた。

当然、斑目ともスージーは顔をあわせる機会も少なくなった。部室に顔を出しても、現役の部員たちが
最新のゲームやアニメの話題に興じていて、時々斑目にも話題についていけない時があった。

「あれえー、斑目さん、また来たんですかあ~」とからかうように現役の部員たちが笑いながら声をかける。

「馬鹿言え、またとは何だ、またとは!! ほれ、お前ら差し入れだ!! 」と斑目も苦笑しながら、
手に持っていた差し入れのジュースやお菓子を差し出す。

「やったー。いつもすみませんねー、さすが社会人!! 高給取りですねー」

「そんなわけないだろう。調子のいいやつらだな。」
そう言いながらも斑目はまんざらではない気分だった。このくらいは格好つけさせてもらいたい。

(いや・・・手ぶらで来るのに気を使う年齢になったんだな・・・)
そして後輩たちに気を使うほどの隔たりを感じてもいた。
「六年か・・・」と斑目はつぶやいた。最近はあいつらとも疎遠になってきた。仕事はそれなりに順調だ。
最近は重要な用件も任されてくれるようになった。すっかり中堅扱いだ。だがしかし・・・。

突然、部室の扉が開いた。この時間に部室を訪れる人はもういないはずだ。斑目と部員たちは同時に
驚いて、扉の方を向く。そこには見知らぬ女性が、しかも金髪、碧眼の欧米人がきょとんとした表情で
立っていた。意外な訪問者に皆声を出せずにいた。

どこかで会った顔である・・・。ずいぶん会っていない。そうだ・・・。
その女性はその深みのある澄んだ瞳を斑目のほうに向けて、ほっとしたように笑った。

「アンジェラか!!」

斑目晴信。二十八歳、踏ん切りをつける事のできない想いをいまだに抱き続けている男。
アンジェラ・バートン 二十六歳 己の運命と闘い打ち克つ事を願う女性。


○アンジェラ・バートン

(以前、日本に行ったのは何時のことだろう・・・。)

スーが留学してそのまま日本に滞在するようになってから大分たつ。アンジェラもスーが
日本に渡ってから自身の仕事の忙しさから、すっかり日本に来る事が少なくなっていた。
もちろん日々、メール等でスーとは連絡は取り合っている。
私たちの『絆』は人が思う以上に深いのだ。

(今回は・・・特別・・・緊急だからね・・・)

スージーからの連絡を聞いた時には耳を疑った。もう絶滅していないと思っていたのに・・・。
『私たち』で『使命』は終わりだと思っていた。いや『使命』を果たす機会無く平穏に終わるのだと・・・。

アンジェラは手配を済ませて飛び乗った飛行機の席で大きく息を吐いた。心臓がドキドキしている。
むしろ今回の事はアンジェラには刺激的な出来事だと思った。
大学の研究は楽しい。言い寄ってくるボーイフレンドとのデートや遊びも楽しい。

(ああ、でも本当に楽しいなんて思ってなかったわ・・・。)
アンジェラはその満たされぬ思いに気付いていた。
飛行機の窓から見える雲間をぼんやりと眺めながら、物思いに耽っていた。

(本当に損よね・・・。時々わずらわしいと思っちゃう・・・)

アンはふと視線を自分の胸元に向けた。10代の頃からその大きすぎる胸は好奇の目の対象だった。
学校の成績は良かったが、周りはそんな風に見てくれなかった。好色で軽薄な女と思われたくなくて、
アンジェラは勉強もがんばったし、スポーツでも活躍した。それなのに周りの好奇の目は変わらなかった。

日本から来た、気持ちを同じくし、そして趣味も共有できる親友と出会うまで、スーにすら(いや幼児体型の
スーには理解してはもらえない)悩みを共有できる人はいなかったのだ。

その気持ちは今でも変わらない。言い寄ってくる男との付き合いにもどこか心を開く事が出来なかった。

(いい年して馬鹿みたいよね、でもこの『使命』が終わったら、何か変わるかしら・・・)

当ての無い期待を密かに抱いてアンジェラは日本に来た。

そして二人は数年ぶりで再会した・・・。


○邂逅

アンジェラが部室の扉を開けて、最初に目にしたのは昔とさっぱり変わらない部室の様子、
そして驚きと好奇の目でアンジェラを見る学生たちの表情であった。
だが知っている顔はもういない・・・。いや・・・一人いた。そう、『ソーウケ』のマダラメ。

変わらないまん丸眼鏡の奥から、目を白黒させて相変わらずオロオロとしてキョトンとした表情。
アンジェラは可笑しさと同時に何かホッとした気持ちになった。

「マダラメ、嫌だ、あなたまだ学生やってたの?」とアンジェラは流暢な日本語で喋った。スーの影響で、
この数年ですっかり日本語も覚えた。

「な、なわけ無いだろう!! 後輩たちの面倒を・・・、ってアンジェラ、日本語上手くなったよな。」と斑目は
驚いた表情で訪ねた。

「まっ斑目さん!! こっこの巨乳の美人!! だっ誰ですか? まさか斑目さんの・・・」

「違うわい!!」

後輩たちが色めきだつ。そんな学生たちの様子に頓着せず、腕組みしながらアンジェラはニコニコ
しながら辺りを見回す。
「変わらないね。あれ・・・このゲーム・・・」とアンジェラはテーブルに無造作に置いてあるエロゲーを手に
取ろうとした。

「わわわわ」 学生たちは慌ててその手のゲームやら雑誌やらを片付け始めた。

「フフフ、気にする事無いのに。」

「急にどうしたんだい?」と斑目はアンジェラに尋ねた。

「スーは? ここじゃないの? 携帯電話、あの子通じないのよね。」

「ああ、きっと研究室の方だろう。何の研究か知らないけど、あそこ携帯電話とか使用禁止なんだよね。
案内するよ。」と斑目は咳き込みながら、細い肩を揺らしながら言った。
「うれしい。優しくなったのね。意地悪な人って聞いていたけど。」とその様子を見つめながらアンジェラは
答えた。
「誰がそんな事を・・・。そんな事を言うのは・・・」と斑目は眉間にしわを寄せた。

「フフ、蛇ですものね、前世は。」

「かっ勘弁してくれよ、もう・・・」と斑目は顔を真っ赤にして答えた。
二人は部室を出て、スーのいる研究室の方に向かった。

アンジェラは斑目をからかいながら心が浮き立つ自分に気付いた。こんな事は久しぶりだった。
(楽しい・・・からかい甲斐があるんだもの・・・。)

そう思いながらアンジェラは斑目の横顔を見つめている。斑目はその視線に気付かないフリをして顔を
こわばらせた。その様子がまた不自然でアンジェラには滑稽に見えた。

(俺の顔・・・。何かついてるのか? )とドギマギしながら適当な会話をして、その場をごまかしていた。
アンジェラはその話を聞きながら静かに相槌を打っている。自分でも何喋ってるか分からない話題にだ。
「少し雰囲気変わった?」
「そうかあ?」
二人はそんな会話を交わしながら並んでキャンパスを歩いていた。


○違和感

二人はスーの研究室の前についた

「つっ着いたよ!! たぶんここにいると思うよ。俺は退散するね。ここの担当教授、俺のゼミ担当だったんよ。
卒業してからもウロウロしている所見られたら、嫌な顔されるからね。」

「そう・・・ありがとう。」
アンジェラの表情が何か言いたげだった。

「何? まだ何かある? 」と斑目はつっけんどんに言った。

「いえ・・・」

「じゃじゃあ、これで!! また機会あったら!! あの二人にもよろしくね!!」
間の悪さに耐え切れず斑目はそそくさと退散した。
(何している? いい大人が!! 自意識過剰もはなはだしい。)
斑目は自己嫌悪に近い感情に襲われながら立ち去った。

斑目は部室に置いてきた弁当に気が付いた。腕時計に目をやると十二時四十分を過ぎていた。

(駄目だ・・・。部室に戻って昼飯を食う時間は無いな・・・。しょうがない、会社に戻るか・・・。弁当はあいつら
にくれてやろう。)

斑目は後輩たちに電話しようと携帯電話を手に取った。その時、ふとキャンパスの影にスーがいるのに
気付いた。研究室にはいなかったのだ。アンジェラが来たことを教えてやろうと声をかけようとした。
だが建物の物陰に誰かいる事に気付いて、声をかけるのをためらった。
その人物は斑目の所属ゼミの担当教授だった。
(まずいな・・・。あの人、口うるさいんだよな・・・。)

斑目はその教授が苦手であった。だからその場を立ち去ろうとした。
しかし教授の表情に驚いて足を止めた。主に喋っていたのは教授の方だったが、
その顔は普段の嫌みったらしい人ではなく、まるで・・・そう・・・恋する少年のような表情だったのだ。

『本当にあなたはお変わりない・・・。それに比べて私は・・・世故に長けているだけのつまらない大人に
なりました・・・。』
『そんなことはないよ・・・。』
スージーは建物の白い壁に寄りかかりながら、頬を赤く染めて、はにかみながら、うつむいていた。
『前任者との引継ぎは? 資料の方は私が管理保管しております。あなたの在学に関する手続き等も
問題ありません。すべて私の方で手配済みです。』

二人の会話はすべて英語で交わされていたので、斑目には二人の会話の内容が分からなかった。
しかし二人の様子には何か違和感を感じた。その時、斑目の存在に教授の方が気付いて、
ぎょっとした表情を浮かべた。そしていつもの嫌味な教授の顔に戻った。

「君は確かずいぶん前に私のゼミにいた卒業生の・・・。OBとはいえ気軽に大学の構内を
ウロウロするのは・・・」
「すっすいません。あ、スー!! アンジェラが君を訪ねてきているよ!!」
説教が長くなりそうだったので慌てて斑目は、スージーにアンジェラの来訪だけ伝えて、
その場を立ち去った。

(いけねえ いけねえ)

斑目は慌てて駆け出した。そろそろ昼休みが終わる。その時、校門の後ろから聞き覚えのある声に
声をかけられた。

「よう、斑目!! 久しぶりだな!! 」

(原口!! 今日は嫌なやつに二人も出会ったよ・・・)
しばらく消息もしれなかったが、最近、はぶりのいい様子で斑目たちの前に現れる事があった。
何をしているかは分からなかったが、高級時計や似合いもしないブランドに身を包んでは自慢げにして、
周囲に不快感をばら撒いていた。

「あいかわらず・・・しけてるな・・・。世の中、要領よく立ち回らないと駄目だぜ。」
ニヤニヤしながら原口は斑目の野暮ったい姿をジロジロ見ていた。

「ははっ、そうですね・・・。今日はすいません、会社の休憩時間が終わっちゃいそうなんで!!」
斑目はそう言ってそそくさと立ち去った。
(相変わらず、嫌な奴だ・・・。だが何か印象が変わったような・・・)


○契約

『やっと会えた。携帯も通じないし・・・。研究室閉まってるじゃない!!』 とアンジェラは言った。

『うん・・・S教授と「例の件」について相談してたから。』とスージーはぶっきらぼうに言いながら、
研究室のドアの鍵を開けた。

アンジェラはひんやりとした研究室の中に入り、あたりを見回しながら呟いた。
『そうなの・・・マダラメに案内してもらったわ。』
『私も会った。アンの事聞いた。』

『そっそう!! 彼に世話になったのに礼もろくに言ってなかったわ!! お礼言わなくちゃ!!
スーは彼の携帯電話知ってるわよね?』
マダラメの名を口にして自分がドギマギしている事に気付いた。

『? もちろん。でもその前に・・・』
『ええ、分かっているわ!! 間違いないのね。前任者の目をくぐり抜けて、一体いつ入れ替わったのかしら?』
『たぶん、前任者の引退の前後に・・・。今も大学に来ている・・・。向こうも私に気付いた。』

『そっそう・・・。間違いないのね・・・。』
さっきの心浮き立つ心境から一転して、暗澹たる心境に変化した。

『では・・・貴方は貴方の義務を果たしなさい。』
急にスージーの口調が一変して厳格な口調に変わったことに、アンジェラは気付きハッとした。

スージーは厳かに言った。

『父祖から引き継がれし血の誓約を汝は今ここに遂行せよ。』

『わが主、わが牧者、血の誓約に従い貴方の命に服します。』
アンジェラは慌てて跪き、スージーの白い手を取り、接吻した。

『ここは「問おう。貴方が私のマスターか?」って言ってくれなきゃ!!』とスージーは口を尖らしてぼやいた。
『スー・・・あのねえ・・・』
その口を尖らせたふくれっ面は少女のようであった。紛れも無くその容姿は少女そのものであったのだ。
見かけと内面とのギャップにアンジェラは可笑しくなった。

『例の「物」はもう日本に?』とスージーはアンジェラに尋ねた。
『ええ、抜かりは無いわ。空軍経由で空輸して、今日の夕刻までには「処理班」が私たちの所に
届けてくれる。』
アンジェラは頷きながら答えた。
『では、それを回収次第、作戦開始ね。それまでここで作戦の細部を検討しましょう。』とスージーは言った。
『そうね・・・。』


○追跡

空が禍々しい赤色に染まり、ビルの壁の影がゆっくりと濃くなっていく頃、「それ」は動き出した。
「それ」はその大きな体をユサユサと揺らしながら、あたりの様子を窺うようにキョロキョロとした。
そして「地下鉄」へと降りていった。

『尾行に気付いているのかしら。』とアンジェラはスージーに尋ねた。
『気付いているでしょ。私が「ヤツ」に気付いているように。』とスージーは素っ気無く答えた。
二人は「それ」の十数メートル離れた後方から「それ」の様子を窺っていた。
冷たい風がビルの谷間から吹きつける。二人は行きかう人々と同様に身を縮まらせて震えた。
厚着しているとはいえこの寒さは堪えた。アンジェラは中型のアタッシュケースを手に持ち、
細長い筒状のケースを背負っている。

『ねえ、スー! 何で私だけ荷物持ってるわけ!? 重い~』
『いいでしょ、アン、力持ちなんだから。』
『都合のいいときだけ、か弱いふりするんだから、もう!! あ、地下鉄に降りちゃう。急がなきゃ!!』

二人は駆け足で地下鉄の階段を降りていった。改札口を抜けてホームに出ると、
ちょうど地下鉄が入ってきて、「それ」が乗り込むところだった。

二人も慌てて地下鉄に乗り込む。息を弾ませながら、二人は隣の車両の「それ」の様子を窺う。
「それ」は大股で席に座っている。混雑時にもかかわらず、周囲にお構いなしにスナック菓子を
ボリボリ食べ始め、小さな丸めがねの下から、周囲をジロジロと覗き込んでいる。

『わざとかな、それとも地でやってるのかな?』とアンジェラは「それ」の横柄で不快な態度に目を
向けながら、スージーに聞いた。
『たぶん、両方。』
『ああ、なるほどね。格好の社会的擬態の対象を見つけたというわけね。』

「それ」は急に地下鉄から降りて、郊外に向かう路線に乗り換えた。二人も尾行を継続して「それ」に
ついていく。外は薄暗くなり怪しさを深めていった。

『誘ってるのかしら?』とやはりアンジェラはスージーに聞いた。
『それもおそらく。自分の正体がばれて、擬態の社会的地位を無くすのが嫌なんでしょ。
人気の無いところまで、私たちを誘導するつもり・・・』
『それは・・・私たちにも都合がいいけど・・・罠じゃ? GPSで追跡している処理班と私たちを引き離すのが
目的なんでしょうし。』とアンジェラは不安そうにスージーに向かって囁いた。

『仲間がいると? それは無いでしょう。もう最後の世代の感染、増殖力は低下してます。
バイオセーフティーレベルからすれば、レベル3程度です。あれがおそらく最後の残党・・・』
とスージーは言った。
『だといいんだけど・・・。最後の第一世代「始祖」はベトナム戦争期以来発見されていないんでしょう?』
『そう・・・あれが最後のバイオハザード。私たちの最強の「誓約者」が倒した。
「誓約者」も私たちで最後・・・。』とスージーは寂しそうな表情を浮かべた。

その表情をアンジェラは見つめた。そう「仲間」はもういないのだ・・・。

そうした会話を交わしながら追跡していくうちに、「それ」は人気の無い廃屋に入っていった。

『とうとう着いたね。ここがヤツの狩場・・・。』
二人はその不気味な廃屋を見上げた。