斑目放浪記軽井沢編 【投稿日 2006/09/16】

斑目放浪記


 朝の光がカーテンの隙間から差し込むと、彼はゆっくりと目を開けた。ゆうべの乱痴気騒ぎの余韻が体に残っている。もう無理のきく年齢ではない。枕元から眼鏡を探し出し、上半身裸のままベッドから起き出した。
 高原の貸し別荘は静かで、まるでこの世に彼と、隣でまだ寝息を立てているひとの二人だけしかいないような錯覚を呼び起こす。
 酔っ払ったまま人の布団にもぐりこみやがって。ばっちり目ェ覚まさせてやる。彼は……高柳は、眼下の人物に呼びかけた。
「おい、起きろ、斑目。いい天気だぞ」
「ん……」
 むっくりと身を起こした斑目はしょぼつく裸眼で声のしたほうを向く。
「なあ斑目よ」
「うー、なんだよ、ヤナ」
「なぜ俺はこんなところにいるんだろうな」
 ……斑目の血圧が一気に上がった。
「お前が来たいと言ったんだろうがああっ!」
「起き抜けに急に怒るなよ、そんなに。ちょっとしたモーニングコールだ」
 高柳は口の端で笑うと、自分の荷物からタオルを探し出した。
「先にフロ行くな。今夜は他人のベッドで酔い潰れるなよ」
「あー行け行け。俺はお前に襲われてないかチェックしなきゃならん」
「襲わねーよキモチワリイ。大野さんや荻上さんの妄想に付き合い過ぎなんじゃないか?」
「バカ、冗談だ」
 9月なかばの火曜日の朝。二人はゆうべからここに……かつて現視研の合宿でも使用したコテージに宿泊していた。
 斑目もゆっくりした動きでベッドから降りる。彼もジーンズしか身に着けていなかった。
「ご覧のとおりズボンはいてるし、ケツも痛くねーよ」
「そいつはよかったな。ああ、斑目」
 高柳は屋外の風呂への扉を開け放ち、部屋の中でチノパンを脱ぎ始める。
「ん、どうした?」
「痛くないからって油断すんなよ。クチの中、ヘンな味残ってないか?」
「!……おっお前……まさか」
「ウソに決まってんだろう。わはは」
 まんまとからかわれた斑目を残して楽しそうな笑い声を響かせ、高柳は扉の向こうに消えた。
 取り残されたほうはイラつきを抑えながらベッドにどっかりと座りなおし、ひとつため息をついてつぶやいた。
「……『なぜ俺はこんなトコにいる』?こっちのセリフだっつうの!」

 ****
 斑目が高柳から呼びだされたのは先週の日曜日のことだった。池袋で即売会があったのでそこで落ちあい、その後居酒屋であれこれとくだらない話をした。話が一段落した頃、漫研が合宿をするので現視研の去年の合宿場所を紹介しろと相談を受けたのだ。
「てゆーかお前OBだろうが。なんでそんなことやってんだ?」
「アンオフィシャルな話なんでな。加藤さん、知ってるだろ?」
「ああ、貞子ねえちゃん」
「……お前それ絶対本人に言うなよ、命ねえぞ。合宿とは言っても、彼女が気心の知れた数人で遊びに行きたいっていう話なんだ。で、お前たちが去年行った軽井沢のコテージ、第一候補に上がってるんだと」
「はあ」
「大野さん卒業だし、荻上さんはちょっと学内ではコミュニケーション取りづらいしで、俺がお前から情報集めようって話になってな」
「まだ朽木君だって……ああいや、なんでもない。それにしてもお前がなんで加藤さんのパシリやってんだよ」
「うーん、お前を漫研の力関係に深入りさせるのも忍びないんで聞かんでくれ」
 高柳は困ったように腕を組んだ。漫研は人間関係が複雑で、現在サークルとして機能しているのが不思議なくらいの状態なのだという。
「説明できる範囲で言えば、加藤さんには漫研の安定運営に尽力してもらってるんだ。元会長として頼られたら協力してやりたいんだよ」
「あーそうかい。まあいい、お前さんがそういう言い方をするんなら評価に足る人物なんだな、彼女は」
「そうだ。それも相当にな」
 高柳は斑目が大学に入学してから知り合った人物だが、在学中の4年間で長く深くツルんできた。もともと属性の似たサークルにいたことや、同時期にそれぞれが会長職を務めたこと、実践経験の浅い理論派同士であることなどから互いに互いを学内の一番の友人と思っていた。
 高柳が加藤という人物を評価しているように、斑目も高柳になにか頼まれたら断る気は毛頭なかった。

「まあよかろう。俺んちに資料一式残ってると思うんで、お前にやるよ。使った身からするといいところだぜ」
「そうか、助かるよ」
「部屋から行ける露天風呂があってな、コレが笑えるんだ。できることなら先にいっぺん行って欲しいくらいだ」
「そうなのか」
「請け合うぜ。絶対楽しい」
 彼はちょっと考え、テーブルから乗り出して口を開いた。
「……なあ斑目、お前平日に休み取れるか?」
「ハイ?」
「実は俺、今月中に休み5日間取らなきゃならないんだ」
 高柳は大学を卒業後、都内の印刷会社に就職した。印刷業界は休日があってないような業種で、特に彼のように中小零細に分類される会社の社員は勤務日数が1週間に8日とも9日とも言われている。
「労基署の立ち入りがあってな、簡単に言うと過剰労働がバレたんでつじつまを合わせることになったんだ」
「……ひでえ会社だな」
「このご時世、むしろ正々堂々と休めるんだから御の字だ。まあ加藤さんの旅行の計画も9月だからそっちに二日当てるつもりなんだが」
「お前も呼ばれてるのかよ!それでそんなに一生懸命」
「まだ三日余る。来週にでも覗きに行くってコトをいま思いついたんだが、どうだ斑目?高級別荘地でオタ話して飲み明かすってプランに魅力を感じないか?」
 休み明けに斑目が会社に交渉してみたところ、連休は無理だったが単発の有給休暇を1日取得することには成功した。高柳と打ち合わせ、月曜の夕方に東京を出て火曜の夜に帰宅する『一泊1.5日』の旅行計画とあいなったのである。

 ****
「ずいぶんゆっくりだったな」
 相方に続いて朝風呂を使って戻ってきた斑目に、高柳が声をかけた。もう着替え終わり、出掛ける気まんまんと言った風情だ。
「朝っぱらから素敵なモーニングジョークで起こされる方の身にもなれ。酒だって残ってるってのに」
「そんなもんは水を飲め水を。早く着替えて出掛けようぜ。俺、軽井沢初めてなんだよ」
 バッグを探り、着替えのポロシャツを引っ張り出す。
「俺も去年そんな話をしていたような気がする。ま、オタクには縁遠い地であることは確かだな。俺たちが落ち着ける場所はないぞ」
「そうか?俺、古月堂には行っときたいんだが」
 高柳から出た店名を聞き、斑目は意外そうな顔をする。以前、漫画のモデルになったこともある喫茶店だ。
「『か・ぐら』かよ。……あれ?お前『軽井沢症候群』ダメダメだって言ってたじゃんか」
「ダメなのは『STRIPE』の方だけだ。つうか、無印の方に惚れ直した。盆に郷里に帰ったときに親父のコレクションを見つけてな。二人で話もせずに読みふけってたらお袋に揃って文句言われたよ、この年になって」
「え、親父さんオタクじゃないだろ」
「クルマがらみで目に止まって連載追ってたらしい。そうとう好きだったんだな、あの時期の単行本全部あったよ」
「そいつはすごい」
「もっとすごいことを教えてやる。なにを間違ったか『すくらっち・バッグ』も全巻揃ってた。照れ隠しかもしれんが、キャラクターが同い年だったんで思い入れがあるんだとよ」
「わはは、兄貴の方の漫画じゃねえか。読んだことないが」
「チャンスがあったら読んでみろ。けっこうキュンとくる」
「読んだんかい!」
 一般人が聞いても符丁にしか聞こえない会話をしながら、まもなく出掛ける準備が整った。

 ****
 チェックアウトしようとコテージを管理しているホテルに連絡を入れると、次の予約が入っていないので荷物を置いておいてもかまわないという。これさいわいと手ぶらで町に散策に出ることにした。
「そういえばチェックインのときは怪しまれたよなー」
「オタ二人旅だもんなあ。ガリメガネとデブメガネが女も連れずにコテージを借り切りゃあ怪しむか、いくら値段一緒だって」
「しかも予約してたとはいえ到着が夜遅くだぜ。心中すると思われたんじゃないか」
「生きててよかったな、お互い」
 とりあえず軽井沢駅前まで出て、オタク的に有名な喫茶店へ入店する。
「軽井沢が舞台の漫画やらアニメって少ねーんだよな、確かに」
「しっかり描いてるのは田神兄弟ぐらいだからだな。最近では『ミリまて』の軽井沢編と近所が舞台の『おねT』シリーズ、他もせいぜい旅行に来るってパターンに陥りがちだ」
「まあ去年も思ったけどな、やっぱり避暑地でしかないんだよ、ことさらオタにとっては。季節限定でストーリーを構築するしかないから1エピソードしか展開できない」
「夏場はドラマ的に盛り上がりがあるが、冬はこの辺も閉ざされ気味だもんな。スキーをネタにするならはじめから苗場やら有名な場所が山ほどある」
「劇空間としての閉鎖性も挙げられるぜ、たとえば海に行く手は使えないし、遊び場も限られてる。それこそ軽ショーみたいに『気軽に東京に足を伸ばせるキャラクター設定』が必要で、もうその時点で学生を主人公にするのは厳しい」
 古びた喫茶店のテーブル席で特大パフェをおのおの一つづつ味わいながら明らかに一般向けでない話をする二人のメガネ男に、周囲の客も恐る恐るの視線を送ってはそらすことを繰り返している。もっとも当人たちは気づいていない。

「さて、それでどうする?これから」
 話題も一段落したところで、高柳が聞く。斑目から引き継いだガイドブックをポケットから取り出し、赤ペンを持ってやる気まんまんだ。
「むしろこっちが聞きたいところだよ。ヤナお前、加藤さんたちから下調べとか仰せつかってないのか?」
「彼女らも詳しいわけじゃないみたいでなあ。現視研ではどんなとこ回ったんだ?」
「んー、俺たちは森ん中ぶらぶらしたり、最終日はこの近所でショッピングかな。ああ、非オタ組がアウトレットモールまで買い物に行ってたぞ」
「へえ、どこにあるんだ?……駅の向こう側なのか、ウチには春日部さんみたいなのはいないけど、わりと普通のカッコする子もいるからな、参考にしとくわ」
「それから田中と大野さんはコスプレ撮影。コレだ、竜返しの滝って言ってた」
「ふむふむ」
「なあヤナ。ちょっと聞きたいんだが」
「ん?」
「その旅行、もしや男はお前だけなのか?」
「ぶっ!?なんてこと聞きやがる、もう一人後輩が来るよ」
「ああそうか、すまんな、お前以外全部女性のハーレム旅行かと思って」
「そいつはなんていうエロゲだ?」
「ハハ」
 斑目はなにか言いかけて、やめた。高柳は気づかなかったようだ。
「よっしゃ、じゃあ民間人用の観光ルート案内と行こう。駅前に戻って、新軽・旧軽歩いて昼飯。別荘地散策したらコテージ戻って荷物取って帰ろうぜ」
 軽井沢は新旧のメインストリート沿いに観光ルートができており、歩き始めてしまえば誰もが同じ動きをする。まるで駅前から動く歩道がつながっているかのように、多彩な人々が単調な道すじをたどってゆく。

「……オタ的には物足りんよな、やはりこの王道ルートのみというのは」
「ないんだよ他の選択肢が。ヤナお前原宿行った事あるか?」
「なぜ答えのわかってる質問をする」
「すまん、昔行った事があってココとまったく同じ印象を受けた街だ。観光客にとっては水族館の順路と変わりはないんだよ、この辺はつまるところ、俺たちのような人種には向かない」
「順路を外れると知ってる人しか知らない町になるってわけだな。住めばいいのかもしれんが、にわか仕込みはちょっとキツいな」
「ま、そんなとこだ。逆に開き直れば、ほんの数キロの道のりを把握してしまえば案内人がこなせるってことだ。今回お前はその役目なわけだから、まあ丸暗記しとくんだな」
「ハイハイ斑目先生様」
「春日部さんからの受け売りをしておいてやろう。観光地のご他聞に漏れずここらのメシ屋でまともな店は少ない。そこの『ポモドーロ』かあっち側の奥の『三笠会館』、ちょっと離れるが『メリメロ』あたりがお勧めだ。安くはないみたいだが知ってりゃ自慢できるぞ」
「なるほど、春日部さんさすがだな」
「もう一つ得意になれる情報だが、あのコテージ以外にも実は入れる温泉がある」
「軽井沢にか?」
「竜返しの滝の手前なんだが、ココな。こっちの古い方は外来謝絶だが、ここは予約をすれば日帰り入浴ができる。混浴とは行かないが、女性は喜ぶんじゃないか」
「おー、すばらしい」
 軽井沢に来たことがないオタクへの、軽井沢に1回来ただけのオタクによる観光レクチャーは続く。どう見ても周囲から浮いている男二人旅はやがて別荘の建ち並ぶ雑木林を抜け、午後にさしかかる頃にはコテージまで戻ってきた。
「いやー、勉強になったよ。すまんな斑目、いろいろと」
「まーいいって。ただまあ慣れてないコトはするもんじゃないな、結構疲れたよ」
「俺もこころえとくさ。来週は俺の番だからな」
「よっしゃ、荷物まとめたら帰ろーぜ、俺たちの落ち着ける消費至上主義の街へ」
「そうするか。おい、そのカーテン閉めてくれるか?」
「ああ。……お前こんなの気にするヤツだったか?」
「知らなかったのか?まあ、立つ鳥なんとやらだ」
 斑目が半開きになっていたカーテンを締め切り、二人はコテージをあとにした。

 ****
 二人が東京に戻ったのは5時を回った頃だった。八王子まで帰る斑目は本当なら大宮あたりで乗り換えるほうが楽だったが、現在は都心のアパートに住む高柳と夕食がてらの酒盛りをしてから帰ることにしたのだ。
 車中でもオタ話で盛り上がっていたが、この二人が話を始めると際限がない。帰るのに互いに都合がいい新宿の居酒屋でも大量の酒とツマミを消費しながら、消費至上主義社会における映像メディアのあり方を延々語り続けていた。
「まあそうは言いながらだ、結局アイテムが売れなければ作品として意図を語り得ないというジレンマに陥っているのも事実なワケで」
「だからっつってライダーまで二段変身するってのはどうかと思うがね、俺は」
「昔だっていたろう、バイオとロボとか」
「認めん、認めんよ俺は」
 要はテレビ番組がおもちゃ優先になっているのが気に食わないと斑目は言い、高柳は、現代の子供たちのゴッコ遊びにイマジネーションの補助となるおもちゃは欠かせないと主張しているのだ。
 もっともこの手の議論は彼らの呼吸のようなもので、二人がこれに結論を求めるつもりがないのも明白だった。数時間にわたる言わば『深呼吸』の末、ようやく東京に戻ってきた気分になったところで彼らの旅行はお開きとなった。
「斑目、本当に悪かったな、無理に休みまで取らせて」
「いつまでも気にすんな。日々のつまらん生活ではここまで深い話をする相手がいないんだ。部室行っても大して面白くないし」
「おいおい、お前らしくもない」
「酔ってるだけだよ。言うまでもなく俺だって楽しくなきゃこんな旅行に付き合わねーよ。お前と二人旅なんてのも初めてじゃねーか」
「そうだな。またどっか行くかい?」
「よし、次の労基署のガサ入れがあったら教えてくれ」
「あはは、そうするわ。じゃ俺こっちだから」
「おう。……なあヤナ」
 手を振り歩き出す高柳に、斑目は声をかけた。
「ん?」
「頑張れよ」
「おう。お前もな。それから」
「どうした?」
「お前がそんなこと言うの、気持ちわりいぞ」
「ほっとけ!」

 いつものニヤニヤ笑いを残して人ごみに消えてゆく高柳を見送り、斑目は先週のことを思い出していた。
 二人旅が決定した後、いつものようにコンビニ弁当を持って現視研の部室へ向かう途中のことだ。卒業間近の大野さんと、くだんの加藤さんがなにやら熱心に話をしているのを見かけたのだ。彼女らはこちらに気づかずに駅へ歩いていった。
「(あれ?ようやく打ち合わせができたのかな?)」
 高柳の言葉を思い出してその場は納得したが、あとになって少し違和感を覚えた。確かに大野さんは9月末で卒業だが、考えてみるとそれだからといって忙しいわけではない。笹原や高坂のように卒業前から仕事をさせられる業種ではないし、むしろヒマと言っていい。
 それに、旅行の資料集めくらい電話でもメールでもできるではないか。斑目は確信した。
「(なにか……たくらんでやがる)」
 田中にも電話をかけてみたが、結局詳しいことは判らなかった。あの時見かけた大野さんの楽しそうな表情(さいわいにもマスクも未装着だった)と、派閥抗争がある漫研で計画された『派閥内旅行』であるという点で、高柳に悪いことは起きないだろうと判断した。
 まあ、サプライズで彼の慰労パーティでもやるのだろう。本人が忙しい方が周囲が足場を固めやすいわけだし。
「……さて、俺も帰るか」
 きびすを返して、デパートの中にある改札口へ向かう。
 何のことはない。会社で目立たない社員をやり、部室に行っても今やツッコミ役がいない斑目は、「遊ばれている」高柳が少しうらやましいだけなのだ。
「(そうは言っても……)」
 斑目は思った。
 これでまた奴とバカ話をするネタができたわけだ。まだまだツルむ口実は尽きない。
 10月に入ったら連絡してやるか。
 そんなことを考えながら、足取りも軽やかに帰ってゆく彼なのであった。


【おまけ】

「ここにいたかオギウエぇ!」
「ひゃっ?や、薮崎さんどうして私がここにいると?じゃなくてここ図書館ですから!静かに!」
「あ、ああそやった。おもろいこと聞いたで」
「なんですかもう」
「加藤さんから聞いたんやけどな、うちの高柳先輩とオマエんとこの斑目さん、二人っきりで軽井沢旅行行ったらしいで、こないだ」
「えええっ?」
「声大きいわアホ」
「あわっ」
「どや、なかなかイマジネーション湧くと思わんか?両方とも受け属性のメガネくんや」
「たっ……確かに(ごくり)」
「きっと初夜はなぁ、まず斑目さんが高柳先輩に優しく言い寄ってやな」
「違いますよ!最初は高柳さんが攻めでしょう?で後半斑×柳ですよ」
「いやいや、逆やと思うで。あの高柳さんのモチ肌、解るやろ?」
「いーえ譲れません。高柳さんのあの包容力から考えてもますます斑目さんは受けから入らないと。なにより斑目さんはスロースターターなんですから」
「う、トップギアまでのタイムラグか、それは考えに入れとらんかった」
「でしょう?」
「なるほどなるほど……ん?ちょっと荻上、その左手見せ」
「わ!……え、なっなんですか?なんにもありませんよ?……あいたたっ」
「つべこべ言うなっちゅうねん(グイ)……って指輪?……え?」
「(しまった……部室にも行くつもりなかったし誰にも会わないと思ったのに……////)」
「……え、プ、プレゼント?あの人?笹原さんから?」
「……なんですか。なにが言いたいんですかそうですよそれがどうかしたんですか!」
「勝ったと思うなーっ!」

司書「……きみたち、出てってくれるかな?」



おわり。
最終更新:2006年10月27日 05:05