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空と雲 【投稿日 2006/08/24】

カテゴリー-その他


今日はすごくいい天気で嬉しいなあ。
朝起きた直後は、ウチで昨日の格ゲーの続きをしたいなと思ってたんだけど、
(ふと思いついた連携技をためしてみたくなったから)
咲ちゃんに「外へいこうよーーー!ていうか朝からゲームはやめよう。マジで。ホント。おねがい」
って泣きつかれたので、こうして外に出てきたんだ。

で、改めて、今日は外に出て良かったと思ったんだ。すごく気持ちいいから。
ふわふわの形のいい雲が空にたくさん浮かんでる。
全く雲のない快晴より、僕はこういう空のほうが好きだなあ。

僕が空を眺めていると、咲ちゃんは「どーしたの?」と不思議そうに聞いた。
「うん、今日はいい天気だなあーと思って」
僕がそう言うと、「そうだねー。昨日は雨降ったじゃん。雨だと靴が濡れるからヤなんだよね」と言った。
「うーん、でも明日はまた雨降るよ」
「え。そうなの?…何でわかるの?」
「何となく。雲の流れ方とか?」
「は?……そんなんでわかんの?あ、でもコーサカ、前にも明日の天気当てたことあるよね。あのときはびっくりしたよ。天気予報では晴れって言ってたのにさ、ちゃんと雨降ったし」
「天気予報は大雑把だからねえ。全国の天気を予想しないといけないし。大変だよねえ」
「…はあ。」
咲ちゃんは眉間にシワを寄せて考え込んでいる。
公園のベンチで、さっきからずっとこうして咲ちゃんと座ってるんだ。空を見ながら。
頭の上の木がわずかに揺れる。気持ちのいい秋風がふく。

今日はすごくいい天気だなあ。

僕は変わり者らしい。
夏に、内定の決まっている会社で泊り込みで手伝いをやったときに、同じ職場の人に言われたんだ。

うーーん、自分ではそんなに変わってると思ってないんだけどなあ。
というか、そんなコト言ってたら、世の中変わった人だらけだよ。
みんな色んな個性があって、性格があって、思想があって、主義主張があって、一人として同じ人なんていないじゃない。
そしてそれは、すごく素敵なことじゃない。楽しいじゃない。
だから僕は、「変わり者」って、誉め言葉だと思っているんだ。

マイペースだよねって、よく咲ちゃんに言われるんだ。
でも自分のペースを保つのって大事じゃないかな?
ていうか自分のペースを保っていかないと、無理すると、結局どこかで疲れちゃうと思うんだ。
そうすると結局、人に合わせられなくなると思うんだ。人に合わせる余裕がなくなってしまうと思うんだ。
だから僕は、自分のペースを保とうと思うんだ。

好きなことをずっとしている間が一番楽しい。
ゲームをやってて、ここはもっとこうすれば時間短縮になるかな?とか、こうすればカッコいいかな?って、どんどん思いついてくるんだ。
それを納得いくまで練習して、自分の思ったとおりに出来たときが一番楽しい。
…出来たときのことを想像するのが楽しい。

よく、「何でそんなにゲームうまいの?」って聞かれるんだけど、何でと言われても、「うまくなるのが楽しいから」としか答えられないんだ。

何であれ楽しいのが一番じゃない。ねえ?

…ちょっとの間考え込んでいたようで、気がつくと咲ちゃんに肩をつつかれていた。
「ちょっと、コーサカ。さっきから呼んでるんだけど」
「…ん?あ、ごめん。」
「さっきからずっと空見てるけど、そんなに空見るのが好き?」
「え?ああ、僕空のほう見てたんだ?」
「って、今見てたじゃん」
「でもあまり見てた覚えはないんだよねー(ニッコリ)」
「………コーサカ?」
「あ、でも空見るのは好きだよ」
「…はあ。」
咲ちゃんはまた考え込んでいる。

咲ちゃんは、僕のことをもっと分かろう、理解しようとしてこんなに考えてくれてるみたいだけど、それってそんなに大事なことなのかなあ?
もちろんある程度は大事だと思うけど、全部が全部理解しあうのなんて無理だと思うんだけどなあ。

でももちろん、共感しあえる部分もあって、互いの円と円が重なる部分があって、そんなときには嬉しいと思う。
でも、全部重ならないと一緒にいられないかっていうとそんな事ないでしょ。
こうして今まで4年も一緒にいるんだし。

それでも咲ちゃんは考える。こうして考えて、分かろうとするのが咲ちゃんなんだ。
だから、それはそれでいいんだ。咲ちゃんらしいんだ。
らしさ、ってすごく大事だよね。

考え込みすぎてパンクしかけてるときは、ちゃんと助けるよ。
できる限りのことはするよ。

「咲ちゃん」
「んー?」
「ちょっと歩こうよ」
「ん。そだね。そろそろお腹空いたし、ちょっと歩いたらどっかのお店にでも入る?」
「そうだねえ。それがいいねえ」
僕らはベンチから立ち上がって歩き始めた。
落ち葉が道に散らばって、歩くたびにカサカサと音をたてる。

「秋だねえ……」
咲ちゃんはのんびりと言った。
「秋は涼しくて、過ごしやすくていいねえ。」
「そだね。まぁ私は春の方が好きなんだけどねー」
「昔からそうだよねー、咲ちゃんは。春が好きだよねえ」

こうしてとりとめのない会話をしながら、ゆっくりと歩き続ける。
あと半年。冬がきて春が来たら、卒業だ。

「こうしてのんびりできるのは今の間くらいかなー…」
咲ちゃんはそう言った。今、同じことを考えてたんだなあ。

「そうだねえー」
「仕事始めたらこうしてゆっくりする時間も少なくなるんだろうね…。会う時間もさ…」
「んー、そうだねえー」

「コーサカ」
咲ちゃんは僕の手を少し強めに握った。
「…店、ちゃんとやってけんのかな…。今さら不安になってきてさー…」
「咲ちゃんなら何とかやれると思うよ」
「……私らのこともさー…」

僕は咲ちゃんの目を見た。
「大丈夫だよ。」


「…うん、コーサカがそう言うんなら」
咲ちゃんが笑顔になった。僕の手を握っていた力が、少しだけ抜けた。

大丈夫って言い続けて、実際に大丈夫になるよう頑張ったら、本当にその通りになると思うんだ。
だからきっと大丈夫。


まだ未来のことはわからないけど。

好きって思い続けて、実際に付き合い続けられるよう頑張ったら、本当にその通りになると思うんだ。
だからきっと大丈夫。


今日は本当にいい天気だなあ……。

                          END