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『勇者の祭典』 【投稿日 2006/08/24】

カテゴリー-現視研の日常


 天高く馬肥ゆる秋。椎応大学は大学祭の初日を迎えていた。
 毎年3日間開催される大学祭は椎応の学生ばかりでなく、近隣他大学の学生や中高生も覗きに来る大きなイベントだ。模擬店やフリーマーケット、アイドルやお笑い芸人のライブなど盛りだくさんで、この時期このキャンパスはお台場や浦安に負けないテーマパークになる。
 現視研の面々も今年は張り切っていた。まあ張り切らざるを得まい。会員数の減少が深刻なこのサークルは、次の春に新入会員を集めなければ存続の危機が訪れるのだ。この大学祭は、彼らの知名度を上げるラストチャンスというわけだった。
 斑目晴信が現視研の展示会場に姿をあらわしたのは昼を少し回った頃だった。会場入口に立っている笹原完士を見つけ、声をかけた。
「よう笹原。どうだ?入りのほう」
「ああ斑目さん、こんちわ。今日はスーツじゃないんスね」
「バカヤロ、祝日じゃねえか」
「あー。スーツで弁当食ってる絵ヅラしか浮かばないんですよね、斑目さんって」
「ハイハイ毎日部室に来てて悪うござんした」
 今年の展示は去年までのコスプレ撮影会と、数年振りに新たに書き起こしたパネル展示の二本立てだ。なるべく広い層に展示を見てもらい、在学生受験生にかかわらず来年へ向けての勧誘を図るのが今回の最大の目的だった。
 気合の入ったメンバーたちはそれぞれの持ち場で実力を遺憾なく発揮し、結果満足の行く展示物が大量に揃った。
 OBながら駆り出された久我山光紀は荻上千佳とともに大量のイラストやカットを描き上げ、高坂真琴はその神の手でもって各種ゲームの最速クリア動画、斑目も仕事中に会社のパソコンで力作の文書を叩き出した。
田中総市郎と大野加奈子のコスプレ班は例年にも増して気合の入ったクオリティと数量の衣装を制作し、自分もコスプレやりたいとゴネる朽木学をなだめすかしてMC役に徹させて、毎日3回それぞれ違ったテーマの撮影会を催す企画を立ち上げた。
そしてこれらを、笹原が修行中の編集技術と春日部咲の店舗ディスプレイノウハウでもってスタイリッシュな展示会場を作り上げたというわけだ。その成果はこれまでの現視研の展示とは明らかに一線を画す完成度を見せていた。
 会場に一歩足を踏み入れ、斑目は息を飲む。
「はー……すげえじゃん」

「よ、斑目。今来たの?」
 入口の内側の壁に寄りかかっていた咲が彼を見付け、挨拶する。隣にはいつものようにニコニコ笑う高坂の姿もあった。
「ああ、ちょっと漫研でヤナにつかまってた。……春日部さんの言ってた飾りつけ?これ」
 卒業後は自分で店を出すと言っている咲は、今回のディスプレイを自分から買って出ていた。彼女なりに試したい事があったのだと言う。
「うん。やっぱ洋服とは勝手が違うね、100%イメージ通りとは行かなかったけど、でもどう?」
「いやいやスゴイっすよ。手前から奥に向かってせり上がる感じ?あ、じゃなくて入口が球体の中心なのか」
 部屋は二つに仕切られている。入口側がパネル展示、奥の半分が撮影会場だ。
 入口に立ってみると、展示物がどう系統分けされているかが一目で判り、自分の興味のあるコーナーへ歩いて行けばいいようになっていた。
 入口側には既製のテーブルより低い展示台を作ってケースに入れたフィギュアやモニタが並び、奥側の壁や撮影ブースとのパーティションには巨大なポスターやタペストリーが天井まで貼られている。壁と床で切り取られた球体の内側に立っているように感じられる作りだった。
「解ってくれるねー。スペースの空きを丸く確保できるから意外と広く感じるし、あとこれはやってみて実感したけどオタグッズに包み込まれてる感じしない?」
「ん、それじゃ春日部さんには居心地悪いんじゃないの?」
「まーね、と言いたいとこだけど、そうでもないよ。コーサカに聞きながらあたしなりに『好きなものに囲まれてる空間』を演出してみたんだけど、うん、手直しすればいろいろ応用ききそう」
 確かに、過去やっていた迷路のようなパネル展示よりはるかに見やすいし、現に入口を通りかかる通行人が雰囲気に惹かれて中を覗いてゆく。入口脇にしつらえた受付テーブルから、人が切れたタイミングで千佳が歩み寄ってきた。
「こんにちわ、斑目先輩。これ完成品です」
「おー。これはなかなか」
 千佳が持ってきたのは入場者に無料配布しているサークル紹介誌だ。『現視研の歩きかた』と題された小冊子は千佳のアイデアで、過去のサークル誌からアピール度合いの強いページを抜き出して、端的に現視研を解ってもらおうという趣旨だった。

千佳はこの本に表紙イラストと数ページの漫画を書き下ろしており、この学祭に関しての彼女の仕事量はサークル最大となっていた。
「いいじゃない、荻上さん。イラストとかものすごい量描いたんだよね、お疲れ」
「やおいじゃない絵こんなに描いたのはじめてですよ、はは……あ、久我山先輩もいらしてます」
 千佳のセリフと同時に、撮影会ブースの出入口から巨漢の影が現れた。タオル地のハンカチで汗を拭きながら、こちらへ歩いてくる。
「よ、よう斑目、久しぶり」
「おー久我山。仕事忙しいのか?」
「ま、毎日死んでるよ。見てくれよ、こんなに痩せちまった」
「……自分の体をジョークに使えるとは成長したな、お前。ちなみに俺が見る限りむしろデカくなってるぞ」
「ん……夏バテかな?」
「11月だぞ、おい」
 久我山の出てきた方から加奈子の大声が聞こえてきたのはその時だ。
「ええー!田中さんカウボーイハット置いてきちゃったんですかぁ?」
「しまった!こっちの箱明日のヤツだったのか」
「もうっ、ロープと帽子はデキシーのレゾンデートルなんですからねー」
 何事かと斑目たちが撮影会場のほうに移動すると、舞台袖の更衣室から田中が走り出てくるところだった。
「ごめんごめん、すぐ部室行ってくる」
「場所判りますかぁ?あ、キャ」
 カーテンの隙間から、加奈子が顔だけ出し、ギャラリーが増えているのに気付いて小さく声を上げた。斑目が声をかける。
「なにごと?大野さん」
「あ、こんにちわ斑目さん。いえ、衣装の取り違えがあって」
「え、大変じゃねーか」
 腕の時計を確認する。次回の撮影会まで20分くらいか。
「お前、衣装の着つけやってるんだろ、俺が代わりにとってこようか?」
 斑目の提案にしばし思案するが、田中は残念そうに首を振る。
「いや、説明してる時間が惜しいな。あ、春日部さんと荻上さん、すまないんだけど中で大野さん手伝ってもらってもいい?」
「ん、オッケ」
「あっはい」
 二人が更衣室に入ったのを見届け、田中は部室へ走っていった。

「コスで忘れ物か。田中ともあろうヤツがなー」
「でも今回すごいんですよ、今日の3回戦で15ポーズって言ってましたし」
 斑目のつぶやきを笹原が隣で受ける。加奈子は午前中に『FFファウンデーション』と題した撮影会で、ファンタジーゲームがテーマのコスプレを、早変わり込みですでに5種類こなしていた。
「気合い入ってんなー。……あれ、受付いないんじゃないか?いま」
 ふと入口が気になる。撮影会の受付や展示物の番をしていた千佳が、加奈子の手伝いでカーテンの向こうに行ってしまっているのだ。これには久我山が軽く手を振ってそちらへ向かう。
「あー、じゃあ俺行ってるよ。立ってるの、疲れたし」
「あっ、久我山先輩すいませえん」
 更衣室の中から千佳が声を張り上げた。
「……なんか……活気あるな」
 感慨深げに斑目がもらす。
 確かにいつもの現視研らしからぬ活きのよさだ。いつもなら、単なるパネル展示や加奈子の撮影会をメリハリもなく行ない、適当に時間が来たら居酒屋で打ち上げをして終了する大学祭が、まるで違うもののように生き生きして見える。
「そうですね……俺たちってこんなにやる気ありましたっけ、はは」
 笹原も少し違う雰囲気に苦笑している。実際にはこのテンションを引っ張ってきたのは笹原と咲だったが、本人にもここまでの完成度は予想できていなかったようだ。
「でも、みんないい顔してるね。全員が主役って表情してる」
 高坂も満足げだ。
「僕たちも大学最後だし、いい感じじゃない。最後にみんなで、自分の趣味の集大成を出し切ったみたいでしょ」
 更衣室の中でも女子3人できゃあきゃあやっているが、あれはあれで同じように楽しんでいるのだろう。
「ところで」
 斑目が言った。

「この状況、去年のこと思いださないか?」
「去年?ああ、荻上さんのコス」
 去年の学祭で、ちょうど同じように加奈子の着替えを咲と千佳が手伝っていた。少し事情は違うが、あの時は咲のセールストークに乗せられた千佳が生涯初のコスプレを経験していたのである。
「蓮子コス、ちょっと見てみたかったなー」
「……そーっすね」
 遠い目で1年前に思いを馳せる二人に、高坂は笑いながら言った。
「でも笹原くん、これからは荻上さんにいっぱい見せてもらえるんじゃないの?」
「え……は?」
「コスプレ。お願いしたらいいじゃない」
「高坂君……きみ何言ってるの」
 赤くなる笹原、冷や汗が止まらない斑目。
「見たいんでしょ?コスプレ」
「う……いやまあ、その……」
 と、その時。
「ちょっと!どうしてまたこんな衣装が出てくるんですか!」
 更衣室の中からひときわ大きく聞こえてきたのは、千佳の声だった。
「えー、どうしてって言われてもー。だから田中さんの新作ですってば、荻上さん用の」
「たはは、お前らは毎年毎年」
 千佳の声にかぶせるように加奈子の声、そして咲の苦笑が続く。どうやら千佳は今年もコスプレの誘いを……いや、強要を受けているらしい。
「……うわー」
「あははは、まるで僕たちの声が聞こえてたみたいだねー」
「笑い事か?」

 カーテンの外のギャラリーをよそに、咲と加奈子の包囲網は徐々に狭まっているようだ。
「いいじゃんもう。荻上、お前すでに何回もコスプレやってるんだし」
「だっ、あれはそういうことじゃなくてぇ」
「そうですよ、ついこないだもベレッタやってくれたじゃないですかぁ」
「それとこれとは状況がちがいますっ!」
 なんと言っても2対1では分が悪い。加奈子は徐々にテンションが上がっているし、咲も自分に矛先が向かないように会話をコントロールしている。
「ちょっ、さ、笹原さんっ、そこにいるんなら大野さんなんとかしてくださいよっ!」
「あ……っ」
 たまりかねたのか笹原の名を呼ぶ。笹原もそれに反応するが、加奈子が着替え中の更衣室には近づきあぐねている。
「あ、あのー大野さん?時間もあるんだしその辺でー……」
「えっでも笹原さんも見たいですよねー?」
「う」
「んもおっ、黙んないで下さぁいっ!」
 恐る恐る声をかけても図星をさされる始末。そうこうするうちに加奈子はしびれを切らしたらしく、強硬手段に出たようだ。カーテンの内側の空気が変わった。
「そういえば咲さん、わたしコツつかんだんですよ。荻上さんはココをこう押さえてこう」
「やーっ?」
「おやま、大野あんた武術のエキスパートみたいな動きだね」
「今からの回は『ランブルロード・ラッシュ』ですからね。レイヤーはその時それぞれのキャラになり切るのが重要なんですふふふ。そーれぃ」
「ああッ!ちょっとやめてください大野さぁん」

 更衣室の外では聞こえる声に笹原がハラハラしている。
「いいのか笹原、助けに行かなくて?」
「あああ、斑目さん俺どうしたら」
「俺に聞くな」
「う……そりゃそうですよね」
「やんっ、ちょ、ちょっとそこは……っ……きゃっ、笹原さぁんっ!」
 中からふたたび、千佳の叫び声。
「……よしっ」
 笹原は意を決し、立ち上がった。つかつかと歩を進めながら着ていたジャケットを脱ぎ、薄紅色のカーテンをオーバーにくぐり抜ける。中の三人に目をつぶっているところをアピールする。
「ちょっとごめんね!」
「キャッ」
「わ、笹原?」
 流れるような体の動きでもう一歩踏み込み、仕切りの中心で棒立ちになっている千佳にジャケットをかぶせた。
 実は入りしなに薄目で確認していたが、幸い千佳はまだ上着を脱がされ、ブラウスのボタンが外された程度で、ほとんど服を着た状態だった。内心胸をなでおろしながら彼女の肩から下を上着で覆うと、彼はそこで目を開いた。加奈子が頬を染めてガウンの前をかき合わせる。
「あ……ごめん」
「いっ、いえ」
「大野さん春日部さん、ホントごめん!今日のところはカンベンしてね」
 返事も聞かず、千佳の肩を抱いて脱出する。千佳はあっけに取られたまま、笹原のエスコートに従っている。仕切りの内側の二人も、鳩が豆鉄砲といった風情で笹原たちを見送るばかりだった。

「荻上さん、とりあえず服直してもらっていいかな?」
「あ……はっはい」
 壁に向かって立たせた千佳に笑いかけ、さらに今帰ってきたらしい田中のほうに視線を向ける。
「田中さん、そろそろ準備しないと」
「あ、おう、そうだな」
 更衣室の方に走る田中と入れ違いに、頭をかきながら咲が出てくる。斑目はその光景を、ぽかんと口を開けて見ていた。
「(うあー笹原……かっこえー)」
 服を整えた千佳が返してきたジャケットを羽織り、笹原はようやくひと息ついた。
「……ふぃ~。ドキドキしたぁ」
「ドキドキしたのはこっちのほうですよ!大野先輩ガウン一枚だったんですからね!」
 千佳も落ち着きを取り戻したようで、いつもの口調で笹原を叱責する。
「うひゃー、ヤバかったー。場合によっては俺ノゾキ大魔王じゃん」
「ノゾキどころか突入してきたじゃないですか……でも……あ、ありがとうございました」
「とか言いながら、ササヤン」
 近寄ってきた咲が笹原の肩に手をかける。
「あんた実は薄目あけてたんじゃないのかぁ?」
「え!いや、いやいやいやそんなっ」
「まあいーか、今日のところは。さっきのナイトっぷりが見事だったから突っ込まないでいてやる。やるじゃん笹原」
「いやほら、大野さん常々言ってたじゃん?嫌がる人に無理やりコスやらせるのは邪道だって。俺は大野さんが悪の道に染まったら田中さんが悲しむと思ってね」
「いーからいーから。荻上、いーなお前の彼氏カッコよくて」
「えっ、いえ、そんな……っ」
「あたしなんか同じ状況でコーサカに助けを求めたら『コスやらなきゃダメ』って言われたからね」
「それは同じ状況じゃなかったでしょ、咲ちゃん」

「あはは。……荻上ゴメンなー。ちょっと熱が入っちまった。大野もたぶん気合入りすぎただけだから許してな」
 すまなそうに千佳に詫びる。
「だっ大丈夫です、解ってますから」
「笹原も、ごめん」
「うわ、よしてよ春日部さん」
「あんたのこと試したつもりはなかったけど、上出来だったよ。あんなんされたらあたしでも惚れるね」
「もうしないでください。オネガイシマス」
 そうこうするうちにコスチュームに着替えた加奈子も現れた。一着目はデキシーのようだ。カウボーイをアレンジした白いウェアが眩しい。
「荻上さぁん、ごめんなさい。わたしったらちょっと興奮してしまって」
両手を合わせ、平謝りする。
「もういいですから。みんなしてそんなに謝らないで下さい」
「笹原さんも」
「いいって、ほんとに。俺こそ着替え中にごめんね。荻上さんのことにしたってちょっと無粋だったかなって思うし」
「でも、荻上さん奪って行った時の笹原さん、素敵でしたよぉ」
 恐縮する彼に賞賛の言葉を重ねる。
「あはは。俺でよければ埋め合わせはするからさ」
「あ!笹原さん、そんなこと言ったら……」
 照れて言う笹原の言葉に、加奈子の瞳が輝いた。それに気づいた千佳が慌てるが、もう遅い。
「ありがとうございますっ!では早速」
「えっ?って?うわぁっ!」
 礼を言うや否や加奈子は笹原の背後に回った。猫科の動物を思わせるしなやかな体さばきで彼の両腕をがっちり極めると、そのまま更衣室へと引きずっていく。
「ああっ!ささはらさーん!」
「耐えろ荻上。あの自己犠牲の精神まで含めて、ヤツは立派な勇者だったよ」
 千佳が助けに行かないように肩をつかみ、咲が言う。
「って過去形で言わないでくださいよっ!」

 ****
 ステージの脇に持ち込んだ大型のスピーカーから、心臓を揺さぶるような重低音の入場テーマが流れ始める。
「ウェールカーァムッ、トゥ・ザ、ルルルァーンンブル・ロオオオードォォォッ!」
 色とりどりのスポットライトが踊りまわる中、撮影会が始まった。
 この回のテーマは女子プロレスのゲームだ。すでに続編の発売も決まっているこのゲームの売りは美しくリアルに躍動する女子レスラーの肉体美であり、コスプレイヤー神無月曜湖、すなわち加奈子を知る撮影会参加者の期待も最高潮に達していた。
「イン・ザ・レェェェッドコーナァァァ! フロォム、アンメェリカァァ、デーェェェクスィ、クゥゥレメーッッッツ!」
 Wooooooo!
 派手な巻き舌の入場コールとともに加奈子が登場した。投げ縄を肩に担いでカウボーイハットを観客に振ると、ノリのいいカメラマンたちが一斉に大きな歓声を上げる。そしてコールは次の選手の入場を告げる。
「イン・ザ・ブルゥゥゥーコーナァァァ! フロォム、ジャパーァァァンン、ベェェェ・ニィィィ・カァァァ・ゲーェェィッ!」
 どこで練習したのか二連の前方伸身宙返りで登場してきたのは、黒い鎖帷子の忍者装束に身を包んだ……朽木学だった。
「ボクチンの時代がやって来たにょ~~~!」
 Booooooo!
 本人は感無量でポーズを取るが、観客からは怒涛のブーイングが沸き起こる。入場をコールしたレフェリー姿の笹原も、困り顔で冷や汗をたらしていた。
「あああ、私のせいで笹原さんがあんな姿に~」
「いいじゃんかあのくらい。てゆーかレニーハートのモノマネかます余裕すらあるんじゃねーか」
 おろおろする千佳をとりなす咲。高坂はいつもの調子で笑っている。斑目は様子をのぞきに来た久我山と顔を見合わせていた。
「な、なんか現視研、ヘンな方向に進んでない?」
「やっぱそう思うか」
 後日、参加者によるアンケートで上位の人気を獲得してしまった現視研に、自治委員会からの魔の手やら学生プロレス研究会によるヘッドハンティングやらが忍び寄ることとなる。ともあれ、今年の大学祭は無事に幕を閉じたのだった。


おわり。


その晩。
「うわっ」
「笹原さん?どうしたんですか?」
「大野さんから『お詫びだ』って渡されたんだけど……中身、相原誠のコスチュームだ」
「もうっ!なに貰ってきてるんですかぁ!」
「でも……俺もちょっと見たいかも……」
「!?」
「あ、ってうそうそ、ごめんね」
「……昼間の……」
「ん?」
「昼間のコール……やってくれたら、ちょっとだけなら着てもいいですよ?」


ほんとにおわり。