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終わらない夏 【投稿日 2006/08/22】

カテゴリー-現視研の日常


荻上会長の下、無事に終了したコミフェス後のこと、お盆も過ぎて
日暮れとともに涼しくなるかと思われたが、暑い日々が続いていた。

「予約していた9人っすけど……。あと、焼き網も2つお願いします。」
「お待ちしておりました、テーブルこちらになりますので、ご案内いたします。」
半袖カッターにネクタイを外した姿で、斑目を先頭にゾロゾロと歩いて
案内された席に向かうのだった。屋上にテーブルと椅子が並んだホールには
少し時間が早いのか、まだ斑目たち以外は2組ぐらいしかお客は来ていない。
荻上さんが斑目のすぐ後ろを付いていく。
「斑目さん、ココはよく来られるんですか?」
「あー、まぁ、先月会社で来てネ――。ところで笹原遅れるけど来れるって?」
「ええ、あと1時間ぐらいで来られるそうです。」
「集合時間を遅くしても良かったかねぇ。」
「いえ、仕事が終わる時間も確定して無かったそうですから。」
そんな斑目と、荻上さんの後ろから歩いてきてた春日部さんも話に入ってくる。
「平日の夜だし時間も早いし、最初に言い出したアタシの都合だかんねぇ。」
「俺はだいたい定時に帰るから良いけどサ。コーサカも休みだって?」
「遅い盆休みなんだよ。後ろで歩きながら寝てっけど(苦笑)。」
椎応大にほど近いデパートの屋上のビアガーデン。コミフェスで顔を
会わせたりしたが、飲み会では久しぶりに集まる現視研の旧メンバー達だった。

「お料理お飲み物、バイキング形式でセルフになっております。
 こちら焼き網になりますので、肉とお野菜もあちらにございます。
 それでは閉店22時まで飲み放題になりますので、ごゆっくりどうぞ。」
暑い中かっちりと洋食のウェイトレス姿をした店員の説明を受け、
各自まずは料理やビールを取りに行くのだった。
朽木はビールを皆の分まで注いできたが、泡が半分以上だったので
春日部さんは自分で注ぎ直しに行こうとしている。
「あぁ、俺が注いで来るよ。朽木君も教えてあげるからおいで。」
そう言って田中がビールサーバーの方へ向かった。
二人で運んできたジョッキには、綺麗な泡の比率が出来ていた。
「こういうサーバーだと本当はあんまり難しくないんだけどなぁ。」
「ありがとうございますっ!感謝感激にょ~。勉強になりました。」
そこへ大野さんと荻上さんがサラダや点心、焼き鳥などを。恵子と斑目が生肉を
持って戻ってきた。高坂は枝豆や刺身を確保していた。
2往復ぐらいでとりあえずは乾杯となる。

「ゴホ…、我々は一人の英雄を失った!―――。」
思わず左手を胸に当て、右手を掲げた演説ポーズを取りかける。
「おいおい!早くしないと呑めないぞー。」
田中から素早くツッコミが入る。
「いやいや、じゃなくって……(苦笑)。んじゃ、まぁ、
 OB会?の開催とお互いの残暑見舞いの為に、乾杯―――。」
「「「乾杯~~~。」」」
現会長の荻上ではなく、斑目の音頭でそれぞれジョッキを掲げるのだった。
カルビやハラミ、ウインナーやイカなども焼き始め、しばらくして肉の臭いと
煙が立ち昇ってきた。だんだんと周りの席も騒がしくなってきた。
「あー、今日は適当なシャツ着てきて良かったよ。なんか風向きで
 煙がこっち来るかんね。屋外だけど。」
「咲ちゃん、席変わろうか?」

そんな二人の様子を目の端に映しながら、荻上や恵子と話す斑目だった。
「で、最近どうなの?現視研は?俺はたまに昼休み行くのと
 朽木君や笹原から聞くぐらいなんだけど。」
「部員は2人入ってきましたけど、それよりもうすぐスーが来るのが
 心配というか、不安というか―――ですね。」
「アメリカの子だっけ?あたし初めてだけど、なんつーか 向こうにも
 オタクって居るんだねぇ。しかも女の子って…やっぱホモ好きなの?」
「なんでそこに直結するんですかっ!」
「えーーだってそうじゃん。あたしだって読むしさぁ。」
「スーが引っ越して来たら歓迎パーティーしましょうね!」
テーブルの向こうから大野が言ってくる。地獄耳か。
「ん?大野―――。その左手の包帯、どうした?」
「え?まあこれはおいおい話しますぅ。」
そう言ってジョッキを一気に空けるのだった。

しばらく呑み進み、焼き網に焼き過ぎた肉の成れの果てである炭の塊が
数個出来てきた頃になって、春日部さんが立ち上がって提案した。
「さてそれじゃあ、皆はコミフェス?行って会ってるだろうけど
 アタシは久しぶりだから、近況報告と暑気払いも兼ねて、最近有った
 涼しくなるような話か怪談でも一人ずつ言ってみようか?」
「はーーい、じゃあワタクシめが一番槍でっ!」
「あー、クッチー=(イコール)寒い芸風だもんねぇ。」
春日部さんのツッコミで既に出オチ状態だ。
「朽木学ことクッチー、現視研の風物詩と言いますか毎年恒例ですが
 また、就職が決まっておりませんっ!」

「………名前とあだ名の『こと』の前後が逆じゃねぇか?」
「彼の中ではクッチーが真の名なんですよ、きっと(笑)。」
「勝手に風物詩にしないで欲しいですね。人聞きの悪い。」
「うーん、なんかキレが無くなったような気がするね。最近どうなの?」
「知りませんよ。私も最近会ってませんでしたから。」
数秒の沈黙の後、皆口々に就職出来ていないことそのもの以外について
批評し始める。すごい滑りっぷりだ。
(うわーーー僕チンの心はブリザードですぅ~~~。)
一応、クッチー自身の納涼は果たされたようだ。
その後、春日部さんが近くの峠の古寺に深夜ドライブに行って
一人減った話や、恵子がトンネルでの人柱と血の手形の話など、
生暖かい夜の風と焼肉の中、屋上ということで少し雰囲気が
有るような無いような感じで、定番の怪談を披露した。
そしてビールや黒ビール、酎ハイなど呑み進み、だんだんと一同ともに
酔いが回ってきた。

斑目の寒い話もダブルオチが効いている。朽木に負けていない。
「えー。ネタがマジで何もアリマセン………。」
「うそー?」
「空気読めよ。」
「で、オチは?」
皆のツッコミの冷たさもかなりのものだ。
「あ、そういえば、誰も久我山呼んでねえの?俺も忘れてたけど………。」
その斑目の一言で、予定調和的な滑り芸の域を一気にブッチギリだ。
どうやら今日は本当に誰も久我山に連絡してなかったようである。
斑目は灰になったジョーのようにテーブルの端の席に座ってしまい、
横目で少し心配そうに荻上さんがチラ見している。

そこへ田中が話し始める。
「あー、じゃ、じゃあ次は俺ね。洋裁でミシンを使ってるとね、色々と―――。」
「ストップ!!もうオチは判ったから!」
今日も春日部さんはツッコミに大忙しだ。
「ん?俺はわからねぇけど?」
「ほらほら、聞きたがってるよ。えー、指の爪をね…。」
「だからヤメロつってんだろ!」
立ち上がって春日部さんのチョップが炸裂する。
「おおーーっ、久しぶりに見たっ。」
男子諸氏の歓声が上がる。
「あつつ。こういうのって斑目や朽木君の役回りじゃないか?」
「俺かよ!しかしお前の話もう俺もわかったぜ。痛い話はゾクっとするからなぁ。」
「おい、斑目。なんか羨ましそうじゃないか?」
「馬鹿かおめーわ!俺がドMみたいな事言うんじゃねーよ!」
そして殴られた田中をジト目で眺めていた大野さんが立ち上がった。
「では私の話を。コミフェスのあと、山に撮影に行ったんですけど
 田中さんたら『クヌギの樹液の匂いがする』とか言い出して、
 どんどん林に入っていったんですよ。それで本当にクワガタを
 見つけたのは良いんですけどね―――。」
話が始まるやいなや、田中は新たにビールを注ぎに席を離脱してしまった。
「私は知らなかったんですけど、樹液ってスズメバチも居るんですね。
 それで何故か私だけ襲われて…。それでこの左手ですよっ!
 あとから『黒いものが襲われるから』とか 『香水の匂いに寄るらしいよ』
 とか、知ってるなら先に言って下さいって話ですよ!」
そこへ冷や汗なのか暑さなのか、汗を流して田中が戻ってきた。
「だから埋め合わせはするって―――。ま、まあ呑んでよ。
 ハーフ&ハーフ作ってきたからサ。」
そう言われて田中からジョッキを受け取ると、グビっと呑んで座る大野さんだった。
「あうー。そう言ってから何日経つんですかぁ。」
「……なんだこの夫婦漫才。」
今日、何回目かわからないツッコミを入れる春日部さんだった。

そこへ遅れてやってきた男が登場した。
「お待たせ―――。荻上さんに、みんなも。しかし暑いねぇ。」
「あぁ、笹やん久しぶり。」
「えーと、春日部さんだけ久しぶりかな。こないだコミフェス有ったから。」
当然のように荻上さんの横の席に移動するかと思いきや、まず田中の方へ
歩いていく笹原だった。荻上さんだけが少し不思議がる。
「田中さん、この荷物ですか?例の。やー楽しみですね。
 俺も少し恥ずかしいですけど―――。」
「任せてよ。これは俺自身の為でもあるからな。」
「「何の話をしているんですか??」」
大野さんと荻上さんがハモって疑問を投げかける。
「え?俺が蛍野先輩のコスプレしたら、荻上さんが鍬形ハサミの
 コスプレしてくれるって聞いて来たんだけど。」
「言ってません!!!」
0.5秒で否定する荻上さん。
「いえ、是非やってください!田中さんGJ!」
その否定に0.5秒で被っていく大野さんだった。
「えーーもう、早く二次会のカラオケボックスで披露しましょうよ~。」
ジョッキを空けながら笹原は少しのんびりしている。
「もうちょっと呑んで食べて良い?俺まだ腹ペコなんだけど。」
「あーもう、笹原さん弱スギ!!そんなの一気に詰め込んでください!
 それよりも荻上さんをもっと詰めて下さいよ!見たくないんですか!」
「え―――?『きっと可愛いヨー。俺も見たいなー。』こんな感じ?」
相変わらずのヘタレっぷりが健在なようで、それを見て少しホッとする
斑目と朽木であった。希望の星でありながら身近な存在であって欲しい。
複雑な男心とともに、残暑の夜は更けていくのであった。