アルエ・第五話 【投稿日 2006/07/09】

アルエ


「何で春日部君が来ているんですか?」
ハルコは憔悴した顔で訊いた。
「ま~ね~。口出しした手前、ほったらかしってのも無責任だから、顔ぐらい出しとこうかな~と」
春日部がカッカと笑いながら返した。
「……ぶっ、あはははははーー! せくしーーー!」
「あ、ツボ入っちゃったよ……」
大笑いする春日部にハルコはいたたまれない様子で背中を丸めていた。
そりゃ、似合ってるとは思わないけど…。そんな爆笑することないじゃないの…。
「大丈夫ですよ、ハルコさん。とってもカワイイですから。もう食べちゃいたいぐらいですぅ~」
大野がテカテカした顔を全開の笑顔で彩ってハルコを励ました。
「私はむしろお前を食い千切りたいぐらいよ……」
ハルコは大野に精一杯の不快感を込めて眼光を放つが、眼鏡無しでボヤッとした影を睨んでも
ちっとも効果あるように思えず、逆に立腹が倍増された。
「いや~~ん。ハルコさん目がこわ~~い」
やっぱり全く効果が無い。
「お前の思考の方が兆倍怖いって……」
ハルコは小さく溜息をついた。もう何か疲れた。
実際、ブースに来てからずっと立ちっ放しだったので、ちょっと足が痺れてきていた。加えて精神的疲労…。
ハルコはブースの裏へ振り返る。
「ちょっと誰かこうたーい」
へっぴり腰で両手をバタバタさせてパイプ椅子を探る。
その、そこはかとなく愛らしい仕草に大野はまたも黄色い声をかけた。
「きゃああーー、かわいい! はいは~い、こっちですよ、ハルコたん」
「たんはやめろ」
不倶戴天の敵に手を引かれてハルコは椅子に腰を下ろした。
隣に座っているのは、どうも春日部君らしい。
「……へぇ」
春日部はまじまじとハルコを眺める。

「……何でショーカ?」
たとえ影の塊と言えども、それが春日部かと思うとハルコは直視できなかった。
ましてや自分はあられもない衣装を身に着けているわけで。
「どーせキモイとか言うつもりなんでしょ?」
憎まれ口を叩いて唇を尖らせていても、本当は春日部の次の言葉を知りたくて、
ハルコの意識は耳に集中していた。
「いーじゃん。似合ってんじゃね?」
ハルコの顔が一瞬で真っ赤に染まった。
「な、何か逆にヤだなーソレッ! これ似合ってるって微妙じゃない?!」
声を張り上げてハルコは気持ちを誤魔化した。実際は、ちょっとというか、かなり嬉しかったけれど。
ただ飄々とした春日部の口調だと、どこまで本気で言っているのか分からなくて、警戒してしまう。
「本当に思ってる? バカにしてない?」
「思ってる思ってる」
春日部はあははと笑って、ひょいと隣の真琴に顔を向けた。
「なー、似合ってるよなあ? 真琴もそー思だろ?」
「うん、ホント素敵ですよ」
真琴の天使のような笑みと揃えるように、春日部はハルコに笑顔を向けた。
「ほらー」
「ぇえーー?! もー真琴ちゃんも適当なこと言わないでよー!」
「本当ですよ」
真琴は赤面しているハルコに微笑む。
「ハルコ先輩、肌も真っ白で綺麗だし」
「いや~、生っちろいだけだってコレは…」
「足も細くて羨ましいなあ」
「痩せてるのと細いのは違うよ。私はただ貧相なだけだよ」
「そんなことないですよー。背ぇ高いし、スタイルいいですもん」
「もう! そんな心にもないおべっか言わなくていいんだって」
「違いますよ。ハルコ先輩は自分の魅力に気付いてないんです」
「ないない。魅力なんてないの」
「ありますあります」

などという女子同士のキャッキャウフフな様子をまったりと春日部は見物している。
(ん?)
ふと笹原を見ると、何やら様子がおかしい。
笹原の目は妙に泳ぎまくりで、視線はわざとらしいぐらいに目の前のハルコから逸れている。
それでいてちょいちょい目線のヒットアンドアウェイをハルコに対して繰り返しているのだ。
(ん~~~~~~?)
春日部は、笹原の顔を見て、ニヤリと笑った。
「ササヤンはどーお?」
「はひ?」
笹原はおもむろに面食らった顔を春日部に向けた。
「いんや、似合ってると思うかい? ハルコさんのコスプレ」
「やー…、それはー…」
笹原は何でもない風に手にしていたペットボトルの蓋を開けながら、視線をあさってに向けた。
「似合ってんじゃないですか…、まあ…、ヘンじゃないですよ…」
笹原は一瞬だけハルコに目を向けて、そして天を仰ぐようにお茶を一口、喉へ流し込んだ。
(ほほう…)
春日部はまたニヤリと笑って、キラリと目を光らせた。
隣で真琴が柔らかく微笑んでいる。

ハルコは春日部たちの表情は当然分からず、
「あーもう、暑っついわー! 皆が下らないこと言うから暑くなってきた!」
大野がコスプレとセットで用意した祭り手拭いで、しきりに汗を拭いていた。
それから、大野の背中をツンツンと突付いた。
「何ですか?」
「眼鏡返して。ジュース買いに行く」
大野の眉根を寄せて、語気を強めた。
「ダメです。ジュースは荻上さんが買ってきますから」
「勝手にパシリにしないで下さい」
今度は荻上が顔をしかめた。
「まあ、別にいいっすけど」
頑張っているハルコにジュースを買ってくるのはいいのだが、大野にパシられるのは嫌らしい。

「いいって、自分で行くから。それにトイレも行っときたいから。ほら、眼鏡を出しなさい」
「むむう、そう言われては出さざるを得ませんね…」
大野は観念してカバンからティッシュに包んだ眼鏡を取り出し、ハルコに渡した。
漸く帰ってきた眼鏡をハルコは掛ける。
暫くぶりだからか、何だか異様に良く見える気がする。気がするだけだろうけど。
「おー、見える見え…」
自分の格好もよく見えた。
着替えの時は真っ先に眼鏡を盗られたので、実際に自分の姿は見ていなかった。
もちろん、頭では自分の纏っている衣装は分かっているのだが、現実に目にしてみると、

大赤面!

「てめ、大野ォォオオ!! なんちゅーもの着せてんのよっ!!!」
ハルコは大野に詰める。
が、大野は視線を逸らせて開き直った。
「おほほほほほほ。今更文句を言っても遅いのです。もう皆にばっちり見られたという事実は消せないのですよ、ハルコさん!」
などとうそぶいていやがる。
「貴様の血の色は何色だ、大野!」
「赤に決まってるじゃないですか~~、やだなあ~~。ささ、早くジュースでも何でも買いに行っては如何です? 行けるものならばね!」
くぬのうぅぅ…コスプレ魔人があああ!
と、罵ったところで最早手遅れ。客にも現視研の皆にも、春日部君にも見られていたのである。
とほほ…。
「あら、行かないんですか? うふふふ……。行かないなら、荻上さんにお願いしますけど?」
「………行くわよぅ、ちくしょゥ…。どーせアタシは汚れちまったのよ…」
「そこまで言わんでも……」
春日部の突っ込みに苦笑いしてフラフラと歩き出した。
か細い声で何事か呟いている。
「コスプレ潔癖症はね~、辛いわよ~。オタクの間で生きていくのが~。汚れたと感じたとき分かるわ~。それが~」
「エヴァですか…」
もやは笹原の声も届いていないかに思われたが、ピタリとハルコが立ち止まった。

見ている。周りの目がこっちを。
ガン見でなく、あくまでさりげなーく見てる。チラ見している。なんてゆーか、逆にこれは想像以上に…。

再び大赤面!

ダッシュで現視研のブースまで戻ると、荻上の手を掴んだ。
「は? 何すか?」
「頼む、荻上! 一緒に来て!」
「はい? ちょ、ちょっとまってくだっ、そんな引っ張らねーで…」
「いいから!」
ハルコは荻上の手を引っ張ってブリザードに立ち向かうような姿勢で出発した。
そして蹴つまずきそうになっている荻上とともに人ごみの彼方に消えていったのだった。
あははははは、と春日部が再び爆笑している。
「いやー、面白いなあ、今日のハルコさんは」
「本人は災難だろうけどね…」
笹原は緊張が解けたのか、ふっと息をついた。あの格好で傍に居られると、心臓に悪い。
お茶を飲み、笹原は渇いた喉を潤した。
その横顔を春日部が企むような笑みを浮かべて見ていた。
「ほーほーほー」
「ん…、なに?」
「いやあ、何でもないよぉ」
「??」
キョトンとしている笹原を尻目に、春日部はクスクスと声を立てて笑った。
「まったく、今日の大野がいい仕事したなあ」

行列する女子トイレを横目に、荻上は通路の柱にもたれ掛かっている。
こういうイベントごとの常であるが、女子トイレはいつだって混雑しているものだ。
まだ特にトイレに用事の無かった荻上は、一人ハルコが出てくるのを待っていた。
手にはゴーグルと捻り鉢巻を預かっている。
ハルコは下駄も交換して欲しそうだったけれど、荻上とは靴のサイズが違ったのでハルコは下駄のまま行列に加わった。
女子だけに囲まれて、ハルコは少しほっとしてるように見えた。
「じゃあ、先にジュース買って待ってますから。何がいいすか?」
「あー、う~ん。緑茶系で。別に何でもいいから」
「わかりました」
自販機から帰ってくると、列にハルコの姿はなかった。
もうトイレ内には進んでいるのなら、もう少し待てば出てくるだろう。
荻上は自分用に買ったスポーツドリンクの蓋を開け、一息ついた。
通路は人でごった返している。
わいわいがやがやという人の声が密閉されたホールに響いて耳鳴りのように響く。
人が多すぎて、酸素濃度が低いんじゃないというほど、何だか息苦しい。
通路の先から外へ出て、ちょっと新鮮な空気でも吸ってこようか?
ハルコ先輩が戻ったら、風に当たって一休みするのも悪くないかもしんね。
喫煙所の付近は中より人は少ねーし、ハルコ先輩のストレスになんないだろう。
と荻上はぼんやりと考えていた。
「ねー、あれ見た? 現視研のブース」
一際甲高い声が、聞こえてきた。どこかで聞いたことのある声だ。
「あー見た見た。あれでしょ? コスプレ」
「あん? また大野が巨乳コスしてんの? アイツよく恥かしくねーよなー」
侮蔑の篭った三つの声が重なり合って響いた。
その神経にくる笑い声を、荻上は思い出した。あれは今年の4月。
「ちげーって。大野のコスなんて今更珍しくないっしょ?」
「じゃー誰よ? あ、もしかして荻上?」
「うはは。違う違う。まあーアイツがやってても、それはそれでウケるけどさあ」
漫研の女子会員の声だ。
荻上は表情を強張らせた。

電子音のような不快さを持った彼女達の声が宙を跳ね回り続けている。
「斑目だよ。アイツまたコスプレしてんの。しかも今回もエロいの着てた」
うはー、という嘲笑が聞こえた。
「ぐえーマジでー? どんなんだった?」
「くじアンのいづみ」
「うわー。自虐的ですなー。貧乳ネタかよ」
「しかもしかもぉ、何か巻末でチラッと出てたテキ屋のコスだよ。もーヘソとか腿とか丸出し」
「イタターーって感じだった。何を勘違いしてんだテメーって言いそうになっちゃったよ」
「あー、それアタシも思った」
荻上は口の中で、うっせーと呟いた。
「何アイツ? 自分でスタイルいいとか思ってんの? ガリガリなだけじゃん」
「だよなー? 誰か注意してやるヤツいないのかネー?」
「何か足とか細すぎてマジキモイの。色白なのも不健康なだけって感じだったし」
「おばちゃんのくせに汚い肌を晒すなっての。誰も見たくねーよ」
「おばちゃん、病弱キャラ作ってんじゃねーの?」
「原口の元カノじゃ、説得力ねーー」
言えてるー、というユニゾンが聞こえたところで、荻上は舌打ちした。
彼女達には聞こえちゃいないだろうが。
「もー、マジで何とかしてほしいわ。元カレ共々どっか行けよ」
「コスプレで売ろうってのが、どーにもなあ~。脱力だわ」
「醜い肌晒してまで売りたいかねー。まあ、じゃなきゃ売れやしないんだろうけどさあ」
きゃはははと彼女達は笑っている。
荻上は気分が悪くなった。自分の過去が脳裏に甦って吐き気がした。
彼女は柱の影で、じっと彼女達の声が聞こえなくなるのを待っていた。
ふと気配を感じて顔を上げると、ハルコが立っていた。
「ごめん。行こっか?」
「あ…、はい…」
ハルコは笑っていたが、その笑顔は少し辛そうだった。
出来るだけ自分の表情を悟らせないように、荻上の前に立って足早に歩いていく。
ピンと背筋を伸ばしているはずなのに、悲しいそうに荻上には見えた。

「うわ。あれ斑目じゃん?」
後ろから漫研女子の声が聞こえた。
「え…、わー、ホントだ。やば…、今の聞かれてた?」
「ダイジョブじゃない? つーか聞かれても別にいーし」
「あははは、それもそっかー」
甲高いざわめきが、背中の神経を突付く。荻上は眉間にシワを刻んで、必死に振り返りたい衝動を我慢した。
ハルコはただ前だけ向いて歩いている。半纏の前を固く合わせて。
会場の高い天井と人ごみの中を二人は無言で進んでいく。ずんずんと。
「ね、荻上」
ハルコが肩越しに振り向いた。
「さっきの聞いたことだけどさ…。大野には言わないでよ」
「……はぁ、まぁ……いいすけど……。むしろ言ったほうが良いような気もしますけど…」
荻上の表情は険しいままだ。
「大野先輩、今日はちょっとやり過ぎだと思います」
「ははは、それはそーかもね…」
ハルコは笑顔は優しそうで、荻上は胸が痛くなった。
それを誤魔化すように、荻上はまた顔を強張らせる。
「はっきり言わないと、大野先輩は分かりませんよ」
「う~ん…………、でもなぁ……」
ハルコは少し見上げて、小さく笑った。
「大野も何とか成功させようって一生懸命なんだろうからなぁ…。私もこんくらいしか出来ることないしなぁ…。
笹原は会長として頑張ってて、久我山と荻上は苦労してちゃんと本作って、大野と田中はコスプレで、
真琴ちゃんも売り場で戦力になってて、朽木君は汚れ役として奮闘してて、春日部君は崖っぷちから立て直してくれて…。
私だけ何もしないわけにいかんからネ…」
はははと、乾いた声でハルコは笑った。
「恥ぐらいかかにゃー役に立たんのよ、私」
「でも……、嫌じゃないんですか?」
荻上はハルコの顔を見上げた。

あの手の女の陰口は、荻上も経験があった。
中学時代、高校時代、彼女自身が俎上に載せられてきた。
じかに耳にする機会こそ稀だったが、女子グループの自分を見る目を見ればどんなことを言われているか、おおよそ想像はつく。
彼女はその度に軽蔑の視線を作って、針のような気配を纏わせて、独りぼっちで過ごしてきた。
荻上には他人事とは思えなかった。
「原口さんの…っていうのも嘘なんでしょ?」
「こっちが何したって、悪口言うヤツは言うんだもん…。もう言われ慣れちゃったぁ…。」
その横顔は笑っているけど、それはいつもの笑顔とは全然違っていたから、ハルコは慣れてなんかいないんだと荻上は思った。
それなのに、ハルコは笑っているから、荻上はハルコの笑顔を見ているのが辛かった。
「ぜんぜん平気ヘーキ。私は平気だから、大野には黙っといてね」
「はい……」
荻上は小さく頷いた。
ハルコの背中を荻上は見つめる。荻上は思った。
誰か、この人を守ってくれたらいいのに。

「あっ、久我山さん」
「遅かったですね先生!」
「え、ま、斑目……。が、頑張ってるね……」
「にゃはははは……」
タオル装備の久我山がやっとブースに姿を見せた。
「ちゃーす。じゃ、そっち回って入って来て下さいよ」
「お……おう」
久我山は席に着くと、ふぅーと汗を拭った。
笹原が声を掛ける。
「けっこう売れてますよー」
「あ、そ、そう?」
久我山の目が売り場の二人に向いた。
「で……でもそれは、あの二人のおかげなのでは?」
「ま……、否定はしません」
笹原は苦笑いで応えた。二人が到着してからの経過をみると、確かに否定できない。
「これです、本」
「おお~~……」
感嘆の溜息を漏らし、久我山はパラパラと本をめくる。
「う、うん」
「え、それだけすか」
「いやー……。は、恥ずいよね……」
「自分が描いたエロ本だもんね~」
春日部は快活に笑いながらちゃちゃを入れた。
「あ、後でちびちび見るよ」
「そーすか」
笹原にも、久我山の気持ちは何となく分かる。
自分の性癖を晒すようなものだから、それはそれは恥かしいだろう。

「ありがとうございましたー」
ハルコの声が響く。幾分、戻ってきてからの方が言い方に気持ちが篭ってるような気がして、少しほっとした。
流石にちょっと罪悪感があったので、ハルコが乗り気になってくれたのは単純に嬉しい。
さて、と呟いて、笹原はパンと太腿を叩いた。
気持ちが軽くなったところで、あれを処理しておくか。
「俺、ちょっと原口さん関係の後始末に行って来ますんで、こっちお願いします」
「はーい」
誰とも無しに返事をして、笹原はブースを出ようとする。
と、その時、春日部が腕組みをしながらニヤリと笑った。
「ハルコさんも一緒に行ったら?」
「え?」
言ったのは笹原だ。春日部の発言に面食らっている。
「ハルコさんもその辺回りたいだろ? ついでに行って来くればいいんじゃない?」
「あぁー…、まぁ……、そうだけど……。でも……」
ハルコは自分の姿を一瞥して、
「この格好じゃ……」
「そーですよね……」
「大野さん、服出してあげれば? あと靴も。上から羽織るものとかあれば大丈夫でしょ?
真琴が大野のカバンを抱えてパイプ椅子の上にドンと載せた。
「う~ん。私としてはそのままの方がよいと思うんですけどねぇ…」
「ダメです!」
荻上が噛み付いた。

「ちゃんとした格好じゃないと可哀想です」
荻上の剣幕に意表を突かれたのか、大野はしぶじぶハルコの衣服と靴の返還に応じた。
女子が壁を作る形でハルコを取り囲み、ハルコは半纏を脱いでシャツを羽織った。
下駄も朝に履いてきた靴に履き替える。ゴーグルと鉢巻も外した。
「あー、ちょっと解放されたぁ~」
ハルコが安心した顔を見せたことに荻上は小さくはにかんだ。
でも、笹原さんは照れ臭そうにしてる。
「それじゃ、ちょっと行って来ます」
「うぃ~~す」
春日部に手を振られて、笹原はちょっと妙な顔をした。
うーん、なんだろ、これ?
ハルコさんは、コスプレから解き放たれて嬉しそうだけど。
二人はブースを後にする。
「まずどっから行くの?」
「あー…。一番近いところは…、伊鳩コージさんですね」
「うわ、いきなりビッグネーム!」
とか何とか言いながら。
春日部が終始薄気味悪い笑顔でオタクの群れに紛れる二人の姿を見守っていた。


つづく
最終更新:2006年07月30日 02:29