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その六 【投稿日 2005/11/12】

カテゴリー-1月号


大野や咲が、うまく笹荻をくっつけようと画策したパジャマ・パーティは、なかなかの
盛況を見せた。飲み会好きで、フツーにノリのいい恵子も雰囲気を盛り上げていたし、
女同士だと、やっぱり猥談も飛び出す。特にコーサカ、田中という実体験の対象がいる
咲と大野のきわどい話は、他の二人の興味をひくのに十分だった。
「・・・で、田中さんてば、わたしの胸で・・・・を・・・したいなんていうんですよ」
「うわ、すげ。ん~~今度コーサカにそれで迫ってみっかな。ヲタクはやっぱ好きなの、
そういうの?けっこうコーサカも、・・・の時は激しいんだよね」

「うわ、マジマジ?」かぶりつくような恵子
「・・・・・」真っ赤になって目をそらしながら、一言も聞き逃すまいと聞き耳を立てる荻上。
その様子に気付いた咲が、うまくパスを回す。
「んー、でも、話きくとやっぱオタク同士のカップルって幸せなのかね。なんかこっちゃ自信なくすわ。
でも、思い出すと田中は結局一歩踏み出すのが時間かかったよなあ」
「あ、そーだったの?」最初のいきさつをよくしらない恵子が意外だという顔を見せる。

「そうでしたねえ。サインは無くも無かったんですけどね。決定的なのはなくて、ちょっとこっちも
いらついて・・・。でも、わたしのほうだって少しは積極的に動いたんですよ。それがよかったんだと
思います。今年田中さんは大学出ちゃったんだし、いい人だったなー、素敵なとこあったなーって今
思ったとしても、進展のきっかけはなかったですからね。一緒の時間を共有できたから、想い出も
できたんですよ」
さりげなく、一面では大胆に話題をふる大野。
「ヒューヒュー、暑い熱い!で、積極的に動いたってどーいうのよ?」恵子が入る。
「コスプレとか、コスプレとか」
「んだよ、それかよ」咲が苦笑した。

「・・・・一緒の趣味だったから、接触多かったんじゃないですか・・・・同じとこにいたって、
そんなに普通はきっかけって無いですよ」ぽつりと、荻が独り言のようにつぶやいた。


「ん、それってこの間、うちのアニ」
(・・・・まだ早い!)と、咲がすかさずグッと肩を抑え、目で恵子を黙らせる。
視線をそらしていた荻上の目には、そのやり取りが入らなかったのは幸いだった。

あくまでも気付かないような、一般論で大野は進める。
「えーとえーと、そうですよね。でも、けっこういるのが、意識してるから逆にふつうの態度が
固くなって、誤解されるタイプ。とくに相手が恋愛経験豊富なら、それを見逃さないで押して
くるんでしょうけど、そうじゃないとねえ・・・あっちが『嫌われてるかな?』と思って、なんか
気まずい雰囲気が漂って、進展どころか後退しちゃうんですよねー」


「それは自分も悪いけんど・・・やっぱ男の人、優しいのもいいっねけんど、少し強引に迫って
ぐんねとダメだぁ。」酒も多少すすみ、ほんのり赤くなった顔で、つい荻が本音をのぞかせる。

そろそろだ。咲・大野のツートップが、偶然にもハモる。
「ササハ」

その時、隣室からの大声が聞こえてきた。
「あの娘の魅力が分からないようじゃ、ダメですよ!!」

「ん、アニキの声?」「何かあったの?」
思わず女性4人は、そっとふすまを、少しだけ開けて男人陣の様子をうかがった。

「いや、ワタクシとしましてはですね、巨乳がやはりいいしドジっ子のほうがツンデレより一日の
長があるのではないかとそう、原則論を展開させただけでして」

「だーめ、ツンデレでスラッとしたコの魅力を分かんないと一人前じゃないよ! 
俺も最近、それに気付いたんだ!」
なんと、朽木に笹原が口角泡を飛ばして議論している。珍しい光景といえばいえた。

「・・・・・どうやら、漫画キャラ論らしいですねえ」
「く~~~あいつら、人の苦労もしらないで。ササヤンもあれじゃあ、百年の恋もさめるわ」
咲が_| ̄|○という心境に陥る。
荻上は無表情で、その心は外からでは計り知れない。
しかし、一人恵子だけが、意外だという表情を見せる。
「アニキ、正月に実家に行けばそれなりに飲んでるけど、あんな感じになったことないよ?なんか変だな」

付き合いの長く、笹原の属性を知っている斑目が、軽く突っ込む。
「おんや?お姉さま・グラマー美女属性の笹原クンが転向して、拙者と同様のツルペタ主義になった
というのはいかなる心境の変化デスカノウ?」

フォローを頼まれていたはずの斑目だったが、その時点ではまったく忘れてて、ただのオタ話のノリw
しかし、それがホームランだった。
「それは最近、いろいろありましてね・・・でもツルペタはやめてくださいよ。
 荻 上 さ ん は、よく見ればけっこう魅力のあるカラダしてるじゃないですか!!」

折り重なってすき間にへばりついていた女性4人は、いきなりの衝撃発言に体勢をくずし、ガタガタっと
音を立てた。一瞬慌てたものだが、上手いことに男性陣も笹原本人とウツラウツラしている高坂を除き、
同様にガタッとひっくり返っていたので、気付かれずに済んだ。

「いや、あのですね----ワタクシたちのさっきの話はくじアンでありまして」
朽木が言わでもの軌道修正を試みるが、笹原は、演説モードに入ってるようだ。

「こりゃあ、面白くなってきたわ。大野、そっちのすき間も開けて。恵子、座布団人数分もってきて。
そっちに二人、こっちに二人ね」。男子に聞き耳禁止令を出したはすの咲が、完全に自分たちは盗み聞き
モードに入った。

「たしかに私、笹原完士はグラマーな、お姉さま系が属性といえば属性です。
ですから大野さんや春日部さんは、そりゃ魅力的に感じますよ!」
「いや、聞いてないし」斑目の困惑は続く。

「でも二人とも、お似合いの相手がいるわけですからね!俺はそういう、幸せな人にはそもそも
変な感情は持たないですし、うまくいくよう応援するだけですよ!!」
ぐびグビッっと笹原は話を中断し、缶ビールを流しこむ。

「うん、とっちゃダメだよーーー」寝ていたはずの高坂が、笑顔で合いの手を入れた。またすぐ寝た。


女性部屋の四人は、集まってひそひそと批評していた。
「私たちにも話がくるとは思いませんでしたね。やっぱりああいう人だから、悪い気は全然しませんけれど」
「まー、酔って悪口出るより全然いいな。でもどうよ、ああ言われてちょっとでもドキっつーか、プラスも
マイナスもないってのは逆に男として足りないんじゃない?あれじゃ合コンでもアシスト専門要員よ?」
「ふがいねーアニキでスイマセン。」
「あ、んなことより前半だよ前半!『荻上さんのカラダ』って何よ?まさか?コラ逃げるな」
咲が荻上のちょんまげをつかむ。
「ひょっとして、あの時のことかしら・・・コスプレの」

「たしかに、荻上さんの胸は人並みよりちょと寂しいですよ!」
笹原の演説は再開された。荻の顔が見る見るこわばり、残り三人もちょっとひいた。
荻上は、ちらりと大野の湯上りのノーブラバストに目をやり、チッと舌打ちする。実は相当、
自分の胸にコンプレックスをもっていたことに、荻上も自分で気付いた。

「でもね、彼女のお尻と、足のライン・・・・。一度見たら、忘れられないっスよ!ほんとにキュッと
かわいくて、清潔感があって、それでけっこういやらしくて・・・コスプレの荻上さんの、お尻の部分は
ホントにいいんですってば!!わかりますか!」

「ああ、分かった、なんとなく想像つく・・・」
「想像しないでください!あげないですよ!」
「笹やんのですか。」
斑目はもう、果てなく続く笹の理不尽ボケと突っ込みを、俺が受けて転がすしかないと覚悟を決めていた。

ぐびぐびと笹原。

またもや対策会議の女性陣営。
咲「うわ、うわ、うわ!ササヤンの中の、オスの本性出てきたよ!しかしこのコの、コスプレなんか見たんだ」
大「ええまあ、いろいろありまして」
恵「同人誌とかエロ本だと、あんまり気にならないけど、実のアニキがエロっぽい話するの聞くってちょっと
ツライわー。あいつ高校でもオクテだったから、余計になあ・・・」
咲「なんだ、恵子もけっこうお兄ちゃんっ子じゃない。」
恵「へへへ・・・」
大「荻上さんの案外のライバルって恵子さんかも、ですね」
萩・恵「なっ、何を」

「しかしまぁ、よくも悪くもお騒がせなあのコを、笹ヤンが意識するきっかけって何よ?
やっぱりコスプレのエロス?」
斑目は、遅ればせながら、咲に根回しされた「二人の背中を押す」ことに、この酔っ払い
トークが役立つことに気付いたようだ。同時に、純粋に二人の経緯に興味があった。

「人聞きの悪いこと言わんでください(「いや、あんたが大声で言ってたんだって」:斑目)。
たしかに荻上さんで、俺は時々つーかしょっちゅういやらしい想像してます。ぶっちゃけ、
オカズにしたこともありマス! でも、でもね!」

「どんな想像なんかね。」「・・・・・とかでしょうか?」「想像しないでください!」
荻上の顔が、トマトのように赤かった。
「先輩が、わたしをオカズに?わたすの裸とか想像して○○ってるの? んでも、わたすも
2、3回、先輩と夢で・・・」

「夢は不可抗力だァ」自分に言い聞かせようとした言葉がつい声になり、回りに「?」という
雰囲気が流れたが、思わぬ見世物に夢中で深く意味を考えるものはなく、荻上はほっとした。


「結局、荻上さんを、一人にしておけないんですよ!彼女の、寂しさを消したいんですよ!!」
テンションはやはり高いものの口調が、明らかに変わった。笹原は、どさっと椅子に腰を下ろす。
「荻上さんは、大学に入る前の俺ですよ。自分のこと、自分の趣味に自信がなくて、好きなものが
あるのに、それを好きな自分が好きになれない。いろんな可能性があるのに、あったのに、臆病で
飛び込めない・・・。少しずつ、それでも変わっていってますよね。」

「ああ、お前さんの力でな」

「んなことないですよ。春日部さんや、大野さんがやっぱり同じ女性だから、うまくフォローして
くれたんですよ。ウチの妹だけは役に立たないようだけど」

「なんだと!このサル!!」恵子が叫びそうになったが、咲が睨みつけて収めた。


「俺、会長でもあったのに、ほんとに力及ばずで・・・でも、接してればわかりますよ。彼女が
ホントに純粋なんだって。夢も、悩みも、希望も・・・彼女を守りたいっていうには俺はダメダメ
すぎるけど、せめて、一緒に悩みたい。いろんな思いを共有したい。エゴだけど、その役目は俺、
誰にも譲りたくないんです」

朽木もとっくに酔いつぶれている。高坂もまたふたたび寝息を立てている。笹原の宣言を聞いたのは
斑目と、ふすまごしの4人だけだ。
その中で、咲はかつて似顔絵を見て誤解したときの、大野は荻上の買い込んだ同人誌をチェックした
時の、ともに悪辣顔でからかう気満々でオギーを見たのだが・・・・

彼女は、「同人誌できてねえよ会議」の時のように、表情を変えないまま、ぽろぽろと涙をこぼしていた。
自分が泣いていることに、気付いてないようだ。
意外にも恵子が、すっとハンカチを取り出した。
「あ・・・・・・あれ・・・・・・・・・・・・・・。」荻上が、ようやく自分の涙に気付き、とまどう。

「あんなアニキだけど、よろしく」と恵子は言おうとしたが、自分も言葉がでなかった。
残り二人も、黒モードは消え、微笑で眺めている。
そんなみんなを見て、荻上の心の中にじんわりと温かいものが広がった。
「先輩------」そうつぶやくと、その響きが、美しい音楽のように感じられた。

「ククククッ・・・圧倒的じゃないか!笹原軍は・・・」
これだけのノロケは斑目にとっては本来、一種の「逆境」だが、さすがに少しは人間的に成長し、
ガンダムネタで切り返す(それ、成長してるのか?)。自分の、ほろ苦い結末に終わった部室内の
人間ドラマも思い出した。だからこそ、この後輩には、うまくいってほしかった。



   だ  が。

「でも、それって荻上さんには言ってないよね!言わないと、伝わらないよね!!」
寝ていたはずの高坂が突然、いつもとまったく変わらない態度でさらりと突っ込んだ。

さっきまで強気の姿勢だった笹原が、見る見るトーンを落として、_| ̄|○状態になる。

「いえる訳ないじゃないかぁぁぁぁぁぁぁ。」
「なんで?」高坂が、たった3文字で、残酷なクリティカルヒットを与える。

斑目が、割って入った。
「まてまてコーサカ、ここは一つ古典に学び、先人の知恵を借りよう。二人とも当然、『めろん一国』を
しっているであろうな?あの一巻に・・・」
「酔っ払って、『すきじゃあ』と叫ぶアレですね」とコーサカ。

「うむ。効果がどうなるかしらんが、ここまでくれば最後まで行ってしまえ。笹原、お前は酒が足りんのだ。
主人公にならってもっと酔っ払い、そして大声で思いを叫ぶのだ!」

「分かりました!まず日本酒を!」笹原は一気に紙パックをコップにそそぐと、ぐっと飲み干した。

そして、きっと顔を引きしめる。
「私、笹原完士は!、荻上さんのことを!」

ふすま越しの荻上が、同じぐらいどきどきしている。のこりはワクワクしている。

「おい、このパック焼酎じゃねえか?」斑目が言ったのと同時に

「好・・・すアsdfghjklzxcvbんm、。」ごぼごぼごぼごぼ。
如才ない高坂が、とっさに入浴につかった洗面器でフォローし、被害は無しで済んだ。
そしてそのまま、笹原の意識は暗闇へと引きずりこまれた。


「・・・・・・はあ、だめだわアイツ。もうヲタクとかヘタレ以前の問題!!」
「少し、神様が考え直すチャンスを与えてくれたのもしれないですね」
「あいつと同じ血が流れてるなんて、ほんっとサイアク!!あーっ、もう、のみなおそ!!」
期待が裏切られた反動で、この部屋での笹原はボロクソだった。

荻上は「すいません、疲れたのでお先に横になります」というと、3人は申し訳無さそうに、
「そうだね、少し休んだほうがいいよ」と促してくれた。
その後、3人の、酒を飲みながらの笹原批判を聞くとも無く聞いていたが、荻上はまどろむ中で
つぶやいた。「私たち、自分のペースで、ゴールできますよね。・・・先輩」



おしまい。