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ガンバレあたし! 【投稿日 2006/06/17】

カテゴリー-現視研の日常


「もう完全に怒った!だってそんじゃいつ会えるって言うのよ!」

そう愚痴りながら咲は大学への道を歩いていた。
高坂が朝は数少ない睡眠をとり、夜は会社に詰めていて、
直接には全然会えない日が続いていたからだ。

(もう完全に夜行性になってるしさあ、電話だって躊躇うっちゅーの)
訂正。直接ではなく電話ですら会えない日が続いたようだ。

彼女の研究室のゼミは三時から。それなのになぜこんな昼ごろに来てしまったかと言うと、
「怒りのせいでゆっくりしてもいられなかった」と言うのが正解らしい。

「はぁ…」
咲の足は、自然と部室棟へと向いていた。
万が一にでも高坂に会えるかも。
あるいは誰か怒りを誤魔化せる話を出来る相手が居るかも知れない。
その辺に当たりを付けたのか、それとも単なる習慣なのか。

「よぉ」
居たのは斑目だった。

眉毛がピクリと動く。
(はぁ…コイツか…まぁ良いけどね。高坂が本当に居るとは思ってなかったし。)

「ん…?どうした?
…ああ、高坂なら今日は…いや今日もか。来てないぞ。」
尋ねてもいないのに答えられる。

「そっか…まぁそうだよな。納期がどうとか言ってたしな…
今のコーサカは、こんなオタサークルで時間の無駄遣いなんてしないよなあ。」
「…それは社会人の俺に対する挑戦か?
そりゃー事務は暇ですけど~今居るのは昼休みだからだ。」
半分は嘘だ。割と無理やりに時間を作ってきている日もある。
理由は…まあ言うまでもないだろうが。今日はその意味で斑目にとってはラッキーデイだ。

「会えないのよ。」
はぁ~と息を吐き出す。

「誰と?ああ、高坂とか。いいじゃん、家にでも会いにでも行けば。
流石に予め約束しとけば、来られる事を嫌がるような奴じゃないだろ。」
今日の斑目の弁当は鮭弁。ふたを開けて先ずは鮭を一切れ箸で食べる。
「んー、まぁそうなんだけどね。」

……

「そりゃそれは思ったけどさ。
最近コーサカ寝てないのよ。仕事が詰まっててさ。
学生でまだ本式に勤めてないんだから、そんなに詰めなくても良いと思うんだけど。」
すっと顔を下に向ける。
「数少ないフリーな時間は、せめて寝かせてあげたい…とか思うのよ。」
「はぁ。」
しかし、再び顔を上げると、どデカイ怒筋付きで声を張り上げた。
「でもさ!私に会いたいとか思わないの?!一緒に居たいとか思わないの?!あのバカは!」

…なんか咲は自分で言っていて、凄い矛盾しているような気がしてきた。
『会いたい』『寝かせてあげたい』
どこまでがわがままで、どこからがそうでないのかも全然分かんない位には。

そこで斑目にキュピーンと効果音が入った。…ような気がした。
「そっかー。つまりだ。春日部さんはこう思っているわけだ。
『自分のやりたいことはやっててもらいたい。
だってそうじゃないと高坂らしくないから。
でも会えないことは不満。っていうかナイガシロにされて居るようで納得がいかない。』
それを高坂じゃなくて俺にぶつける辺り、春日部さんらしいよなあ…」
(それだけ信頼されているのは嬉しいやらなにやら…)
自然と顔がにやける。
(しかしやっぱり高坂が一なんだろうな…)
とは思ったが。

しかし咲はやや三白眼気味になる。
「あぁ?だれが冷静に私の性格を分析してくれなんか頼んだよ!?
つーかニヤニヤすんな!」
斑目の襟を引っ掴んだ。
しかもそれが当たっているだけに余計に腹が立つ。

斑目は少しキョドった…が、そこは開き直った。
というかいまさら引けないと言うべきか。
冷や汗を一筋たらしながら…

「『「会いたい」「気を使いたい」「両方」やんなくっちゃあならないってのが「彼女」のつらいところだな。』」
決まった。…少なくとも斑目的には。

「はぁ?何それ?
…あ、ひょっとしてまたオタワード?」
咲の目が元に戻り、手が少し緩んだ。
そしてゆっくり手が襟から離れた。

「あ、ああ、漫画…「ダダ」ってやつの五部…」
開放された斑目はカラカラになった喉を午後ティーで潤す。

……
また少し間があいた。

「あのさ斑目…」
「?」

「…もしかして…いやもしかしなくてもさ…」
「??」
「今の私って凄いブス?」

(は?何を言っているんだこの人はそんな口説いてるみたいなこと俺に言うってことは俺の気持ちを知っているのか
ひょっとして脈でも有るって事なのかいやしかし高坂が居るからそれはないだろうっていうかあったらむしろ困るつーか
なんだこのシチュエーションはありえねーだろってこういう痴話喧嘩って普通恋人同士とかでやるもんだろ普通はそうだ
だったら高坂とっとと来て俺と代われというかいやむしろ代わらなくても良い俺的にはある意味おいしいし)
冷や汗がさっきの当社比2.5倍位だらだら流れる。

夏にそんなに汗を流すと脱水症状になるぞ斑目よ。

咲は座席の上の荷物を持って立ち上がり、ドアの方へ立ち上った。
そしてぼそりと。
「ゴメン。」

半分空の鮭弁と赤い缶の前で固まっている斑目を放置して、ドアは閉まった。

(ふぅ…なんか言うだけ言ったらスッキリした。
でもアイツの言っているように押しかけてみるってのもありかも。)

「うし、ガンバレあたし!」
小声で自分に言い聞かせるように咲は呟いた。

おわり。