第十六話・蘇る悪夢 【投稿日 2006/05/31】
「やめろ!」
俺は叫ぶ。・・・いつもの悪夢だ。
「・・・ククク・・・。止めるなら、その引き金を引けばいいじゃないか。」
「う・・・うう・・・。」
銃口が震える。照準が定まらない。
妙な起動装置の前で、その爺さんは・・・何かをいじくっている。
また止められないのか。俺は何度この悪夢を繰り返せばいい?
「う・・・うわああああああ!!」
俺がようやく打つ決意を固め、銃をしっかりと構えなおした時。
「遅いわ!!」
光が迸る。何かが・・・動いた。
「外を見ろ!!綺麗だろう!!これが私の生み出した光の槍だ!!」
「う・・・うあ・・・。」
まさに、光の槍が連盟、皇国が戦う空間へと突き出していく。
小さな爆発が多数生じ・・・。宇宙には静寂がおとずれた。
「あはははははは!!ひゃはははははっはははは!!」
爺さんが狂気じみた笑い声を上げる。それを見ながら、俺はがっくりと膝を落とした。
「貴様も・・・共犯だな・・・。仲間も・・・殺した。」
爺さんが俺に呟く。いやな笑いを浮かべて。
そんなことはない。そんなことはない。
俺は俺は俺は俺は・・・・!!
「隊長、仲間を犠牲にするのはつらいですね。」
はっとして気付くと、目の前にはコーサカが居た。
「お前!」
「・・・大丈夫ですよ、僕は。サキちゃんを・・・お願いします。」
コーサカが消える。
「待て!待てよ!」
そこで、がばっと体を起こす。夢から覚めたようだ。
いつもの部屋のベッドの上。
「コーサカよう・・・。俺はどうすればいいよ?」
しかし、それに返ってくる言葉はない。
「・・・やるだけやるしかねえ、か・・・。」
『・・・というわけで、奴らの基地の活動は徐々に活発になってるわけよ・・・。』
少しけだるそうな話し方をするヤナ隊長。
ブリッジにて発見したヤナ隊と通信で会話する第801小隊メンバー。
「早く到着したがよさそうですね。」
『そうね。そうしてくれればこっちとしても助かるよ。』
ディスプレイにうつったヤナの顔が苦笑いする。
『俺達だけじゃ手に負えないのは分かってるんだけど・・・。
どうもうちの隊の面々は血の気が多くてね・・・。』
「そりゃ大変だな。」
マダラメが同じように苦笑いして返す。
『まあ・・・。もう少しでしょ?』
「ああ。あと5時間以内には確実に着く。」
『りょーかい。じゃあな。』
プツン、と通信が切れる、
「まあ・・・あの精神兵器だけなら何とかなるだろ。」
「ですね・・・。あとはどうやってオギウエさんを救出するか・・・。」
ササハラが送られてきた基地の画像を眺めながら呟く。
「ああ・・・。まあ、何とかなるだろ。」
「・・・はい。」
そこまで話してマダラメは少し間を置いたあと呟いた。
「あー・・・。ちょっとトイレ行くわ。」
「・・・はあ。」
そういって廊下の方へと出るマダラメ。
「隊長どうしたんでしょか?」
クチキがササハラに向って話す。
「・・・カスカベさんのところに行くのかな?」
「ああ・・・姉さん、沈んだままだね・・・。」
「・・・私たちが何言っても無駄って感じがします・・・。」
ケーコとオーノが口々に言葉を発した。
「・・・・・・あのコーサカがなぁ・・・。あそこまでするとは思ってなかったよ。」
タナカが少し悔しそうに呟いた。
一同、沈んだ顔をするしかなかった。
「カスカベさん、ちょっといいかな?」
「・・・いいよ。」
サキの部屋の前。マダラメは少々緊張しながら扉を開ける。
「あー・・・。食事くらいには来ようよ。」
「・・・ごめん。動けなかった。」
「あー・・・。」
かける言葉が出てこないとはまさにこういうことなんだろう。
戦闘でかける言葉ならいくらでも出てくるのに。
こういう状況に弱いことを自覚するマダラメだった。
サキがうずくまるベッドの縁に腰掛ける。
「・・・コーサカね、幸せに、って言ったんだ。」
「うん。」
「でもさ、私にとっての幸せって・・・。あいつと過ごす事になってた。
前は・・・仕事とかあったけど・・・。それも今またやろうと思えるようになったのは・・・。
あいつが・・・無駄にいつも笑ってくれてたおかげだって分かってるんだ・・・。」
「・・・うん。」
「勝手だよ・・・。あいつ勝手だよ・・・。」
涙をこぼすサキに、少しの静寂が訪れる。
「それはあいつにとってもそうだったんだろうなあ・・・。」
マダラメがぼそりといった言葉にサキははっとする。
「だから、少しでも安全な策をとりたかった。安全度はこっちの方が明らかに高いからな。」
「・・・でも・・・。」
「ササハラに罪滅ぼしなんていってたらしいが・・・。
俺たちゃ・・・何も責める事なんて考えていなかったのにな・・・。」
「・・・。」
「それに・・・。よっと。コーサカが死んだとは限らん。
それなら・・・俺らが生き残らなきゃ生きてあいつに合わす顔がねえだろ。まさにな。」
立ち上がりながら話すマダラメのその言葉に、サキがプッと噴出す。
「・・・何いってんのよ、こんな時に。」
「その顔。その顔でいねえと。生き残れねえって。」
「・・・ありがと。」
その言葉に、マダラメは胸に熱いものがこみ上げる・・・が、それを必死に抑えた。
「・・・ごめん。」
「サキさん、大丈夫なんですか。」
何時間かぶりにようやく出てきたサキを、オーノが心配する。
ブリッジは、少しの安息がおとずれる。
「ああ・・・。生きて合わす顔がなくなっちゃうからね。」
そういって、満面の笑顔で通信席に座る。
「・・・?でも、元気になってよかったです。」
「よし、第801小隊!いくぞ!もうすぐ敵の制宙圏だ!
MS隊はコクピットについとけ!!」
マダラメの掛け声と共に、パイロットメンバーが立ち上がる。
「「「了解!!」」」
アンジェラ、スー、ササハラ、そしてマダラメがMS格納庫へと向う。
『よーし、早く来い!今回のチューンは完璧だ!』
通信から聞こえるタナカの声が響く。
「クチキ君、十分注意してね。」
「了解であります!」
操舵を握るクチキの手に汗が滲む。
「ミノフスキー粒子、散布。敵はもう一個厄介なものを抱えてる。
重々注意するよう。
・・・これは僕らのケジメでもあるんだよ・・・マダラメ君。頑張ってくれ。」
大隊長はぼそりと呟く。その声を捕らえられたものは居なかった。
「敵基地がレーダーに映ったよ!目的地まであと1時間!」
ケーコの声が響く。
「・・・コーサカ、生きてるんだろ?だから、私も生きるよ。
・・・・・・生きて帰れたら、また一緒にご飯食べよ。とびっきりの作ってやるからさ。」
サキの目に光が宿る。皆の緊張が徐々に高まっていく。
誰がどう考えても最後の戦い。そして、今迄で一番つらい戦い。
いままでのように艦船に攻撃が及ばないことはないだろう。
「・・・・・・大丈夫。我々には女神がついている。
第100特殊部隊に居たあの女神がね・・・。」
大隊長のメガネがきらりと光った。
第801小隊の艦船は、敵基地へ全速力で向っていた。
『ササハラ・・・緊張してるか?』
マダラメの声が聞こえる。
「当然でしょう。・・・正直どうなるか分からないんですから・・・。」
『ははっ、まあそうだよなあ。』
まだ発信の合図が出ない格納庫で皆静かに時を待つ。
「隊長も、緊張してるんでしょう?」
『まあなあ。・・・なんかいやな予感もするしな。』
「いやな予感?」
ディスプレイに映っているマダラメの顔が少し沈む。
『・・・ここんとこ昔の夢をよく見るんだよ。』
「昔?」
『隊長さん、昔何かあったの?』
そこにアンジェラが割って入る。
『・・・・・・前よ、俺がいた隊の話は聞いたろ?』
「・・・ええ、あの大量虐殺の起こった・・・。」
『あの時な、俺はその兵器の起動室にいた。』
「ええ!!?」
驚きを隠せないササハラ。
『俺はまだ入隊したばかりで血の気も多くてな。
任務でその兵器に攻撃を仕掛けてたんだが、一人で単身突入した。
MSから降りて、起動室を発見したまさにその時。
起動しようとしている瞬間だった。』
遠い目をして思い出すように話すマダラメ。
『妙なじいさんがな、なんかいじくってるわけよ。
俺は銃をかまえて撃とうとした・・・だが撃てなかった。
直接人を殺す度胸がなかったんだな。MSではいくらでも出来てたっていうのにな。
結果、そいつは起動し・・・多くの人命が失われた。』
『それ、まさか、カリフォルニア・コロニー宙域の・・・!!』
アンジェラの顔が変わる。スーも、めったに変えない顔が変わる。
『・・・そうだ。あのコロニーの被害もそれが原因だよ。
多くの人が死んだ。皇国も連盟も関係なくな。
・・・・・・俺はそれを手伝っちまったようなもんだ。』
沈黙が続く。
「そのときの夢を・・・見るって事ですか?」
『ああ・・・。それ以来、俺は人を殺すことに抵抗が出来た。
あの時出来なくてなぜ今出来る?ってな・・・。』
宇宙に来てから特に酷くなった。あの夢が。
何か警告を与えるように・・・。
『状況が似てるせいかも知れない・・・な。』
宇宙。大量殺戮兵器。そこへ攻撃を仕掛ける隊。
『・・・隊長さん、それは違うよ。』
アンジェラが声をかける。
『違う?』
『あんたは何も悪くない。撃てなかったのは・・・後悔するべきかもしれないけど。
やっぱり、作って使った奴が悪いのさ。手伝ったなんて、言わないでよ。』
「その通りですよ。・・・隊長。今回は、同じようにはなりませんよ。」
『・・・大丈夫、貴男なら出来るわ。』
スーがぼそりと呟く。
『・・・そうだな。』
ふう、と溜息をつき、席にもたれ、目を瞑る。
「隊長・・・。」
『だから、これはけじめになるかもしれん。俺の、過去へのな。』
目を見開き、ニヤリと笑うマダラメ。
『それでこそ隊長さん。頑張りましょう!』
『やるのだ!我々の手で!』
「・・・そろそろですね。」
ササハラも目を見開き、システムを起動させる。
『・・・いよいよですね。』
「・・・はい。何か、感じますか。」
『・・・・・・今は何も。もう少し近付かないと・・・・・・。』
時は迫る。緊張が高まる。
『・・・よし。基地が目の前だ!!』
マダラメのこれが響く。
『第801小隊、出撃する!全員、生きて帰れ!これで・・・最後だ!』
「お嬢・・・いや、ナカジマ大佐。あの兵器を利用すると?」
荒野の鬼はナカジマに向って尋ねる。
「ああ・・・。だが目的は連盟の部隊殲滅ではない。
それだけなら、ミノフスキーウェーブで十分だ。」
「・・・では、なぜ。」
ナカジマはニヤリと笑うと、親指を立て、下に向けた。
「・・・地球を燃やすのさ。奴らの故郷を、無くしてやる。」
「馬鹿な!!そんな事!!」
荒野の鬼は目をかっと見開き、狼狽する。
「なぜ、悪い?奴らは私達の故郷を消滅させたんだぞ?」
「・・・それは・・・。」
「コロニーも地球もない。やられたらやり返す。それだけさ。」
そういって、笑うナカジマに、荒野の鬼は下唇を噛み、震える。
(私がいけないのか・・・。私が望むままに・・・。)
「ナカジマ大佐、準備できましたぞ、ほっ、ほっ。」
一人の老人がそこに現れる。
「おお、博士。完璧か?」
「もちろんでございますよ。射出量もカリフォルニアのときの3倍。
ここまでの支援、ありがたく感じます。」
そういってお辞儀をする老人。
「・・・お前を宇宙でかくまったことに恩義を感じているのなら当然だ。」
「私としても、この兵器の完成が夢でございますからなあ・・・。」
ニヤニヤ笑いながら言葉を続ける老人。
ブーブーブーブー・・・。
そこに警報が入る。荒野の鬼は、部屋の外に出て行く。
『連盟の部隊が攻撃を仕掛けてきました!』
「・・・爺、頼むぞ。オギウエと共に出てくれ。二つの兵器だけは守らねばならん。」
「・・・・・・了解しました。」
背中でその声を受けながら、歩を進める荒野の鬼。その姿が闇に消えた。
『オギウエ、準備はいいか。』
「もちろんだ。・・・連盟軍は皆殺しだ。」
そういいながらコクピットでディスプレイに映る荒野の鬼を見る。
『・・・まあ、無理はするなよ。貴様の乗ってるMAには大切な兵器が積んであるんだ。』
「なに、これを使えば動けなくなる。無理のしようもないさ。」
そういいながら、操縦桿を握る荻上。生まれる感情は憎悪と怒り。
心が冷えているように感じる。
しかし、その時無重力の中で、ペンダントが浮かび上がる。
「・・・これ・・・なんなんだ・・・。」
捨てようとしても捨てられない。見ると何かが疼く。
中には覚えのない女性。しかし、何かが・・・。
『オギウエ?』
「・・・なんでもない。いくぞ。」
『・・・了解。MS隊出るぞ。一機たりとも近づけさせるな!!』
「あれは・・・!?」
廃棄衛星を利用して作られた基地の横には、見た覚えのある巨大な射出装置。
体に震えがこみ上げる。その形、大きさ、全てが悪夢の再現のように・・・。
「・・・・・・あんなもの蘇らせやがったのかよ・・・。」
『隊長、あれは?』
宇宙で併走する4機のMS。ササハラから通信が入る。
「さっき話した奴だよ・・・。」
『まさか!!?』
『とんでもない隠し玉だね!また!!』
『・・・くやしいけど、これが戦争なのよね・・・。』
マダラメは震える体を強引にいきり立たせる。そして、一つの事実に気付く。
「あの兵器・・・射出方向を地球に向けてる!?」
『狙いは・・・地球なのか!!?』
ササハラが驚愕の声を上げる。
『その通りだ。皆、奴らの狙いは連盟軍の殲滅だけでない。地球そのものだ。』
大隊長から連絡が入る。その言葉に、誰も声が出なかった。
『全く・・・冗談じゃねえぞ・・・。』
ようやくマダラメは呟く。
『隊長・・・どうする?』
『・・・くそ、敵さんがきやがった。』
アンジェラの問いにマダラメが答えるに早く、敵が現れた。
黄色いゲルググを中心に、リック・ドムによる編隊である。
そして、一機、大きなMAが後ろに続いていた。
「・・・まさかあれに?」
『・・・いやっ!』
ササハラの頭に、会長の声が響く。
「どうしました!!?」
『強烈な悪意と・・・憎悪・・・なんてつめたい意識・・・。
でも・・・あれがあなたの大切な人・・・。』
MAを指差す会長のイメージ。同時に、スーが声を上げた。
『・・・感じる・・・。感じる・・・。あの大きいのに私に似た人がいる・・・。』
NTという存在をようやく信じ始めていたマダラメは、
スーの言葉から、ひとつのことを察知した。
『そういうことか!・・・ササハラ、お前の役目は、分かるな。』
「・・・いいんですか、隊長。」
ササハラが、マダラメに申し訳なさそうに尋ねる。
『馬鹿野郎。別に気遣って言ってるわけじゃねえ。
精神攻撃を止められりゃ、ヤナ隊だって動けるんだ。
お前の役目はあれを止めて来ることだ。いいな!』
「了解!」
言うが早く、ササハラは宇宙を駆ける。
『よし、俺らはササハラを援護するぞ!
・・・あの黄色いのは借りがある。俺がやる。
あとの雑魚は任せた、二人なら大丈夫だ!』
『・・・ふふ、了解!任せてよ!』
『・・・・・・出てこなければやられなかったのに・・・。』
スーがビットを大量に放出させていく。
それが敵編隊に降り注ぐ。戦闘開始の合図となった。
ビットの強襲に、編隊を乱すリック・ドム部隊。
「く、玉遊びなぞに!!」
叫ぶが早く、荒野の鬼は敵を認識する。
「・・・きたか、あの赤いのだな!!」
急速接近するマダラメのゲルググ。
『借りを・・・返させて貰うぜ・・・荒野の鬼さんよ!!』
両手のナギナタを振り回しつつ、突撃をするマダラメ。
「なにを!・・・性能は互角か!」
それを間一髪で交わすが、そこにビットが降り注ぐ。
「くそ!邪魔だ!」
ビットを切り払いつつ、サーベルを振り回す鬼のゲルググ。
『・・・お前ら、何を企んでやがる・・・。
地球を火の海にでもするつもりか!!?』
「その通りだ!」
叫びながらぶつかり合う二機のMS。
『そんなことをすれば・・・!!皇国だって地球を支配したいんだろうが!』
「そんなことは関係ない!!私はただお嬢様の意志を貫かせる手伝いをするだけだ!!」
ライフルがマダラメを狙う。それをかわしながら、再びマダラメは接近する。
『てめえ、それでも!』
「私には守らなければならない存在がいる!」
再び切り結ぶ二機。火花が散るのが見える。
『・・・それは俺だって同じだ!大切な・・・大切な仲間がなあ!!』
再び離れる二機。少し牽制するように動きが止まる。
「・・・止めたければ私を倒せばいい!」
『そうさせてもらうわ!・・・今回はあんなことにはならねえからよ!』
再び戦闘体制に入る二機。
宇宙を自由に駆けながら、一進一退の攻防は続いた。
『お嬢さまだかなんだか知らねえが、俺らは生きる為に、自分の為に戦ってんだ!
大した忠誠心かも知れねえけどな、そんな奴に負けるもんかよ!』
「うるさい!貴様に私の何が分かる!」
『分からないね!分かりたくもねえよ!』
アンジェラは、一機のドムを落としていた。
「まったくわらわらと出てきて・・・!」
しかし、妙なほど数のいるドムに、後手後手に回ってしまう。
『アンジェラ、あせらない!ササハラがあのMA止めるまでの辛抱だよ!』
サキから檄が飛ぶ。
「サキ、OKだよ!」
その声に笑顔で答え、ジムを動かす。
「避けるだけなら・・・!!」
ドムの編隊からビーム・キャノンが一斉放射される。
「くっ!」
それを体を回転させながらかわす。
そこにドムからの追撃が入る。上からビームサーベルがアンジェラを狙う。
「ちぃ!」
かわしようがなくなったアンジェラを、スーのビットが助ける。
ドムがビットの直撃を受け、姿勢を崩す。
「そこだね!」
バズーカ砲がドムを直撃する。
「スー、サンキュ!」
『・・・遊びでやってんじゃないんだよ。』
しかし、そのスーを、ドムが狙う。ビーム・バズーカがスーを照準に入れる。
「スー!」
だがスーはそれを予想していたようにあっさりかわす。
『・・・・・・見える。』
その様子を見て胸をなでおろすアンジェラ。
スーを狙っていたドムを、粒子砲の光が包む。
『スー、アンジェラ、気をつけて!』
艦船からの支援攻撃であった。
「・・・ササハラ君。早く。君に掛かっているんだ・・・。」
大隊長が呟く。目の前で手を組み、上目遣いにディスプレイを見る。
「大隊長!ドムがこちらにも!!」
「弾幕を広げるんだ。オートで動くようにしてある。・・・ここが堪えどころだ。」
ササハラは一直線にMAに接近する。
途中邪魔をするドムを二機ほど撃墜しながらである。
自分でも、不思議なほどMSの扱いがうまくなっている事に気付く。
「・・・これも会長との同調率が上がっている証拠なのか?」
『ええ。貴方の見ている世界がよく分かります。』
「俺もですよ!」
叫びながら、もう一機、ドムを切り払う。
「出てくるからっ!」
爆発を背に感じながら、ササハラは進む。
「死にたくなければ出てくるな!!・・・あまり殺したくはないんだ!!」
叫ぶササハラのMSから、光が発せられ始めていた。
『来ますよ!本命のお出ましです!』
会長の声と共に、目の前にMAが現れた。
中心にメガ粒子砲を装備し、左右と上にアンテナを装備している。
「・・・オギウエさん!!」
『・・・なんでここまで・・・。心を操作されている可能性があります・・・。』
感じる冷たい思念波に、会長は少し震える。
「そんな!」
メガ粒子砲がササハラのジムを襲う。
「くっ!分からないのか!?俺だよ!」
通信をつなげようとするが、繋がらない。
『来る!』
「くそ!近寄るしかない・・・けど!」
しかし、MAからの砲撃がやまない。周辺をドムが囲み、自由に動けない。
「どうすれば・・・どうすればいいんだ!」
『・・・答えて!答えて!』
会長は叫ぶ。オギウエに向って、思念を飛ばす。
「・・・くそ!」
襲ってきたドムを切り払う。
四面楚歌の状態になりつつ、ササハラはそれでも希望を捨てていない。
「・・・まだだ、まだいける!」
「・・・え?」
声が聞こえた気がする。
聞き覚えがある・・・優しい声・・・。
しかし、それを思う出そうとすると、頭が痛む。
「原因は貴様かああ!!」
目の前にいるジムに向って、激昂するオギウエ。
照準をつけ、メガ粒子砲を放つ。・・・が、かわされる。
「なら!これを起動させるまでだ!・・・動けなくなれえ!!」
ミノフスキーウェーブが起動する。見えない振動が宇宙に広がる。
・・・戦いは激化していく。
次回予告
出会ったのが悪かったのか。
出会わなければよかったのか。
無常の宇宙で、彼らの思いはすれ違う。
・・・どこで狂ってしまったのだろうか。
でも。それなら。
元に戻せばいい。
そう信じて。
次回
『シンデレラ・チカ』
お楽しみに
最終更新:2006年06月03日 00:47