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第十五話・贖罪 【投稿日 2006/05/24】

第801小隊シリーズ


その日、マコト=コーサカは、ふとした違和感に気付いた。
皆の輪から外れ、一人MS格納庫のササハラと話をしに行こうとしていた矢先である。
テンプルナイツとの小規模な激突から約3日が経っていた。
遡ること3日前、丁度その戦闘が終了した矢先、一つの連絡が入った。
それは、マダラメらの過去の戦友、ヤナギサワ大尉からもたらされたものであった。
それらしい基地が発見され、地球圏により近い破棄された人工衛星群に紛れるように存在し、
今まさに活動をしようと活発に物資が運び込まれているという。
そこに目的の兵器、そして目的の人物がいる可能性が100%とはいえないが、
それしか手がかりがない以上、彼らは進路をそこに進めるしかなかった。
その行程は順調であり、特に問題もなかった。
ササハラはよく一人で訓練(正確にはシミュレート)を行っていたが、
マダラメは副官席で眠るフリをしていたり、
スーは一人様々な場所に出没しては人を驚かせたり。
サキやオーノ、タナカ、アンジェラ、ケーコなどは、
緊張感を紛らわすかのようによく談笑をしていた。
コーサカも、その輪の中によくいた。
緊張感が取れないのは誰もが同じであった。
その解決法が、人によって違うだけで。
このまま進めばあと24時間以内にはそこに到着するだろう。
徐々に高まる緊張感と高揚感。
そのためだろうか。
いつもより勘の冴えていたコーサカは、それに気付いた。
変哲もない、移動用ベルトのある廊下。
そこに、扉が隠されていることに気付いたのである。
だが、それが何なのかまでは掴めなかった。
彼は持ち前の好奇心と物怖じしない性格から、その扉を開けた。
その先には、彼が思いもしない光景が広がっていた。
扉を開けるまでは、彼自身思っていなかっただろう。
・・・・・・運命とは、ちょっとしたきっかけで変わるもの。
彼は、一つの決心をすることになるのである。

「・・・ここは?」
コーサカは始めて見る情報集積回路に驚いていた。
「ここまでのものがこの船に・・・?」
自分が働いていたあの最先端のドッグにも、ここまでのものはなかった。
一面見渡す限りの機械群。それが、暗がりの中不気味に光を放っていた。
「・・・何のために・・・。」
疑問は尽きない。とりあえず、奥へと進む。
そこで見たのは大きなディスプレイであった。
地球を中心に、周囲のコロニーの所在、それに加え・・・。
「連盟、皇国の軍隊配備が全て載っている!?」
ディスプレイの前のマウスを操作し、カーソルを合わせると、細かな情報も現れた。
自分らのいる辺りには、『the 801st platoon(第801小隊)』の文字が現れていた。
「・・・これか。大隊長の情報源は。」
おそらく、あの基地にも存在していたのだろう。
正確には、存在していたものを積んでいるのであろう。
どういうルートでかは分からないが、あらゆる情報を収集していたのだ。
大隊長が、なぜああも自由に行動できたのかを理解した。
そのまま、情報の探索に移る。
ヤナギサワ隊のいる位置、そして、その近くにある基地の規模。
さらに、そこにある兵力の大きさ。
「・・・これは・・・!」
顔をしかめるコーサカ。
「・・・これは廃棄されたはずだったのでは・・・。」
予想だにしていなかった情報を得たのか。その顔は冴えない。
「・・・!これは!」
またもコーサカ驚愕の表情を浮かべる。
「まさか、ここまでの兵力を向わせているなんて・・・。」
「そうだね。」
コーサカがその声に振り向くと、そこには大隊長が立っていた。
暗がりの中、いつもと変わらない表情を浮かべながら。
「大隊長・・・。この機械群は・・・。いや、今はそんなことどうでもいい。
 この情報は確かなんですか!?」

いつもの笑顔はすでにない。コーサカは少し語気を荒げながら話す。
「・・・確かだ。紛れもない、ね。」
「・・・どうするつもりですか。」
視線を離さず、コーサカは少し興奮している様子だ。
「・・・正直、どうしようか迷っていた。」
「迷う?」
「方法はある。これを切り抜けるためのね。・・・だが、それは痛みを伴う。コーサカ君・・・。」
「・・・なるほど。」
1を聞いて10を理解した、と言う様子でコーサカは視線を落とす。
大隊長の調子は相変わらずだ。
「・・・君が決めるといい。この方法は、君の意思によるんだ。」
「・・・・・・はは。選択権はないじゃないですか。」
「そんなことはない。皆で戦えばそれでも道は開けるかもしれない。」
「・・・そうですが・・・。それでも、おそらくそれよりは、今考えてる方法のほうが・・・。」
「その通りだ。だから、君が決めていい。」
静寂が訪れる。少しの間。機械の音が静かに鳴り響く。
コーサカは決心したように視線を上げる。
「やります。」
「・・・本当にいいんだね?」
「ええ。僕には・・・。罪があります。皆さんを欺いた罪が。」
「・・・知っていたよ。」
「もちろん、大隊長さんは・・・。」
「僕だけじゃない。マダラメ君も、タナカ君も、クガヤマ君も。
 ササハラ君や、ケーコ君ぐらいだろう、気付いていないのは。」
「!!そんな・・・。」
「・・・彼らはね、それでも、君を信用したんだ。」
「・・・それなら、尚更です。」
「そうか・・・。」
「では、行って参ります!」
そういいながらコーサカはいつもの笑顔を取り戻し、外へ駆けていく。
「・・・すまん。無事を祈る。」
大隊長は寂しそうな顔をして、その後姿に敬礼を送った。

廊下を急ぐコーサカ。
「・・・急がなくちゃ。確か・・・。」
ブツブツ呟きながら移動するコーサカの前に、マダラメとサキが現れる。
「おう、どうしたよ、コーサカ。」
「・・・ええ、ちょっと。二人は?」
「え?いつもの検診さ。それよりも・・・なに、隠し事?」
言葉の詰まるコーサカに、怪訝な表情を浮かべる二人。
いつもならさらっとかわしそうなコーサカが、少し動揺している。
「・・・なんだ。なんか重要なことじゃねえだろうなあ?」
「いえ、何でもありませんよ。ちょっとササハラ君に呼び出されまして。
 MS格納庫のほうに。」
とっさについた嘘。しかしもっともらしい内容だ。
「ふー・・・ん。でも、おかしくねえか?」
「何がですか?」
相変わらず怪訝な表情のマダラメは言葉を続けた。
「ササハラ、俺の事呼んでんだよ。『二人でシミュレートしましょう』って。」
その言葉に表情を少し変えるコーサカ。
「おい、本当に何でもねえのか?はっきりしろ。」
「ははは、何でもありませんよ、本当に。」
どうしてか、マダラメは妙に引っ掛かりを感じていた。
いつもと違うコーサカの雰囲気に気付いたのだろうか。
サキも、その雰囲気に気付いている様子だ。
「・・・おい、話せねえのか。」
「・・・何でもありませんから。」
そういいながら、立ちふさがるマダラメの横に移動する。
「・・・おい!コっ・・・。」
ドンッ!コーサカがマダラメのボディに拳を入れる。
「・・・すいません。・・・サキちゃんをよろしくお願いします。」
「・・・っな・・・、おま・・・。」
その耳元にコーサカが呟いた。そのまま落ちるマダラメ。
無重力のため、マダラメの体が宙に浮く。

「!!なにを!!」
そのコーサカの行動にサキは驚き、詰め寄る。
「何してんのさ!!」
コーサカの胸倉を掴む。
「・・・ごめん。こうするしかなかった。
 隊長、変なところで勘がいいからさ。」
「何を言って・・・。」
「・・・サキちゃん、僕らがここに来た理由、覚えてる?」
「・・・・・・何をいまさら・・・。」
その言葉に顔を曇らせるサキ。
「・・・やっぱりサキちゃんがいってたことは間違いじゃなかったよ。
 人を実験に使うなんて、まともじゃない。」
「でも、それは!」
サキが何かをいおうとするのを手で制し、首を振るコーサカ。
「うん。結果は良かった。でも、僕には罪がある。」
「それは私だって一緒だ!」
叫ぶサキ。しかし、コーサカは優しく微笑んだままサキを抱きしめる。
「サキちゃん。君がいてくれてよかった。」
「・・・なに、お別れみたいなこと言ってんのさ・・・。」
「君と再会できて、あの事件があって、この隊に来れて・・・。
 もちろん、この隊の皆にも感謝はしてる。
 だけど・・・。僕を一番助けてくれたのはやっぱりサキちゃんだ。」
そして、肩を持ち距離を置くと、そのままキスをした。
顔を離すと、コーサカはまた言葉を続けた。
「・・・きっと戻ってこれるとは思う。けど・・・、もしも・・・。」
「もしもってなんだよ!いつも勝手に話を進めて!
 小さい頃からいつもそうだ!勝手だよ、勝手だよあんた!」
気付けばサキは泣いていた。
「・・・ごめん。幸せになってね、サキちゃん。」
コーサカはそういうと、サキの首に手刀を入れ、気絶させる。
「・・・バ・・・カ・・・。」

サキはコーサカの思い、そしてこの先するであろう行動に気付いたのだろう。
「・・・本当に、ごめんね・・・。」
優しくサキを横にすると、コーサカは再びMS格納庫へと進む。
「・・・馬鹿・・・。」
寝言だろうか。サキの呟きが聞こえた。

「まだかな、隊長・・・。」
いつものように、MS格納庫横の整備室にてシミュレーターをいじくるササハラ。
「一人で続けるのも限界あるしなあ・・・。
 これにどの程度効果があるかもわかんないけど・・・。」
そろそろ来るはずなのに、来ないマダラメに、怪訝な表情をする。
「どうかしたのかな・・・。」
もう一度呼びにいこうとササハラが立ち上がると、コーサカが入ってきた。
「?コーサカ君?どうかした?」
「・・・いやなんでもないよ。マダラメ隊長待ってるんでしょ?」
「・・・まあ、そうだけど・・・。来るまで、ちょっとやらない?」
そういってシミュレーターを指差すササハラ。
「・・・いや、僕はちょっとMSに用事があってね。」
「そうなんだ。もうちょっと待てば来るかな?」
「うん、来るよ。」
そういって、笑顔を向けたままMS格納庫へ入っていくコーサカ。
そこで、ササハラは違和感に気付く。
「・・・なんでノーマルスーツ着てるんだ?」
ばっ、と格納庫のほうを見ると、
コーサカがガンダムに乗り込み、兵装を確認している。
「・・・な、なにしてるんだ、コーサカ君。」
そして、ササハラは気付いた。
この艦に搭載されている最強の兵器であるメガランチャー二門を、
コーサカのガンダムが担いでいることに。
そして、手動で宇宙への扉を開けていることに。その行動の意味を。
「・・・まさか!」
コーサカの行動に、ササハラは、自分もノーマルスーツを着込むために部屋を出た。

ガンダムは宇宙へ降り立った。目標は、この艦を後ろから狙っている一個大隊。
「・・・どこまでやれるかな・・・。」
用意したのはメガランチャー二門と、エネルギータンク一個。
そこに、近づく一機のMS・・・。
「ササハラ君・・・。」
「何をしてるんだよ!勝手に出撃だなんて!」
通信を通して、お互いの顔を確認する二人。
「・・・これは僕の罪滅ぼしなんだよ。」
「・・・・・・何を言ってるのか分からないよ!」
叫ぶササハラ。
「君は、僕がなぜこの部隊に来ることになったのか・・・分かるかい?」
「・・・いや・・・。」
少し、コーサカは微笑むと、言葉を続けた。
「君と離れた後、僕もある部隊へと配属された。
 そこでちょっと戦果を挙げすぎてね。NTじゃないか、と噂になった。
 軍は、僕をあの研究所に送ったんだよ。サキちゃんと再会したのもそこだ。
 NTの実験と称して様々なことをされた。」
遠い目をするコーサカ。
「サキちゃん、乱暴なように見えて面倒見いいから、よく助けてくれたよ。
 彼女の実験も手伝ったりしたこともあったな・・・。それなりにうまくやっていたんだ。
 だけど・・・。僕は根っから束縛が嫌いみたいで。そこから出たくて仕方がなかった。
 そしてある日、事件が起こった。
 NTを模したOSシステムの開発。その実験の最中、あるNTの少女が意識を失った。」
ササハラはその言葉にはっとする。
「まさか・・・。」
「そう、君の使っているそのシステム。それだよ。
 その少女がその場に居合わせたのは全くの偶然だった。
 しかも、その子は軍幹部の娘さんだった・・・。」
顔を伏せるコーサカに、ササハラは言葉が見つからない。
「その子の意識を戻す方法が見つかった。
 それはシステムを限界まで使い、使用者と完全に同調させること。
 しかし、それには研究室の実験では無理だった。」

そこまで聞いて、ササハラもようやく理解した。
「つまり・・・。実戦を用いた実験だったってこと?」
「そう・・・。不完全なシステムを、使ったね。
 危険性も把握した上で、僕はこの機会を利用し、自由になることを考えた。
 ・・・その部隊へ赴き、システムの運用を見守ること。
 それが僕らの目的だったんだよ。」
「でも!」
ササハラは叫ぶ。コーサカがこの後言うであろう言葉を感じて。
「・・・そう、うまくいった。
 よもや君がパイロットに選ばれてるとは思ってなかったけどね。驚いたよ。
 NTでは反発が起こるだろうから、よほどそれらしくない人を選んだんだろうけど・・・。」
そういって、コーサカは少し笑う。
「ひどいなあ・・・。」
「ごめん。でも、NTなんていいことないよ。僕はそれを知った。
 そのために他人を犠牲にしようと考えていたんだ・・・。
 僕はその罪を償わなければならない。」
コーサカの顔が引き締まる。
「この隊にこれてよかった。戦争で戦う事や、自分がNTである意義・・・。
 そういうものを、初めて肯定できた気がした。
 だから・・・。君達には生き残って欲しいんだ。」
「まさか、コーサカ君!」
「僕らの艦を、後ろから一個大隊が狙っている。
 それを・・・僕が抑えてくる。」
ササハラの顔が青ざめる。一個大隊といったら、艦船は5隻以上だ。
MSの数もゆうに20機は越えるだろう。
「無理だ!せめて、俺だけでも!」
「君にはやらなければならないことがあるでしょ?」
コーサカはにっこり笑う。
「でも!!」
「・・・早く戻るんだ。追いつけなくなるよ?」

「・・・力づくでも止める!!」
「・・・そういうと思ったよ。君は昔から変わらないね・・・。」
「コーサカ君もさ。覚えてる?学校の時の・・・。」
「覚えてるよ。先輩に仲間がいじめられた時に、一人僕は仕返しに行こうとした。」
「・・・それを僕は止めた。一人で行っても駄目だって・・・。」
二人は懐かしそうに遠くを見つめる。
「あの時は僕が勝ったんだよね。」
「・・・うん。それで先輩やっつけてたけどね・・・。」
「・・・あの時と、違うかな?」
「・・・・・・ああはうまくいかないよ!止めて見せる!」
ササハラのジムが動く。軌道をこまめにかえ、予測をさせないように。
「・・・うまいね!」
コーサカのガンダムは煙幕をまく。白い煙が一面にたちこめる。
「・・・なんの!会長!!」
『・・・相手は・・・?何故?』
「一人で・・・無茶しようとしてるので!」
『止めるわけですね!』
会長はササハラとの同調で思考を読めるまでになっていた。
同調率が上がる。煙幕の中でも、ガンダムが見える。
「見える!!」
叫ぶササハラ。ガンダムに向って、サーベルを振るう。目標は腕と足。
戦闘力さえ剥げば、向わないだろうという判断からだ。
「当たらないよ!」
コーサカは、すぐさまかわす。こちらも見えている。
「くそ!」
「こっちの番だね!」
そういうと、コーサカはいつものチェーンを繰り出す。
「当たるもんか!」
コーサカのガンダムにどこまでギミックがあるのかは知らないが、
チェーンの使い道は知っている。伸びてくるチェーン。
回転し絡み付こうとするチェーンをかわしたと思ったのだが・・・。
ガチィン!

「!?」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
チェーンが、なぜかジムの横腹に引っ付いている。
「・・・なんで!?」
「あの、密林のときのザクが使ってたものを参考にしてみたんだ。」
思い出がまざまざと蘇る。
「く、こんなもの!」
言うが早く、ジムが引きちぎろうと動く。
しかし、コーサカはすでに次の行動に移っていた。
「少し苦しいけど、ごめんね!」
チェーンをもったままガンダムを回転させ始めるコーサカ。
「なっ!」
驚いて一瞬の躊躇がいけなかった。回転が軌道に乗ってしまった。
ウォン!ウォン!
回転音がコクピットに響く。遠心力が体に響く。
「ウ・・・ぐぁあああ!!」
宇宙には重力がないため、遠心力がモロに横に掛かる。
そのG(重力単位)は壮絶な値にまで上昇する。
ササハラはコクピットに押されたまま、息が出来なくなる。
「くっ、はぁっ!くそぉおおお!!」
叫びが木霊する。ササハラはそのまま意識を失った。
「ごめん・・・。」
ササハラが気絶したのを見定め、コーサカは回転を止めた。
「・・・頑張ってね。」
そういうと、コーサカはチェーンを外し、艦の進行方向の逆へ踵を返した。

『・・・さん!サ・・ハラ・・ん!ササハラさん!』
会長の声で、意識を戻すササハラ。目を見開き、宇宙を見渡す。
「・・・コーサカ君は!」
しかし、視界にはただ宇宙が広がるのみ。椅子に力なくもたれ呟いた。
「・・・また負けた・・・か・・・。」

コーサカは、一人宇宙を駆けていた。そして、ある位置で停止した。
メガランチャー二門を抱え、一つの方向に狙いを定める。
「情報によれば全部で八隻・・・これで四隻落とせれば勝機はある・・・!!」
その方向には、皇国の一個大隊が進軍しているである。
ランチャーから粒子砲が放たれる。宇宙に、光がきらめいた。
メガランチャーを手放すと、エネルギータンクを接続する。
二発分のエネルギーが元に戻り、ガンダムは息を吹き返す。
「・・・孫子、拙速を尊ぶ・・・。ここが勝機だ。いくぞ!」
ガンダムのテールランプが宇宙に閃いた。

『三隻大破!二隻が中破・・・。』
「何が起こっているんだ!」
コージ=イバト少将は困惑していた。
一隻の艦を後方から攻める任務、簡単なものと安心していたのだ。
旧知の仲である男からの依頼、特にする任務もなかった彼は、
二つ返事で引き受けていた。この事態は予想だにしていなかった。
「気をつけろ・・・とはいわれていたがな・・・。
 ・・・しかし、まだMSは15機以上残っているのだ・・・!
 すぐに追撃が来る!MS隊出撃せよ!」
叫ぶが早く、周囲にはリック・ドムの部隊が出動する。
少し沈黙が続く。イバトがふと目を横のドムに写す。
「・・・なんだ!!」
その瞬間、一機のドムが大破する。目に見えぬ何かに壊されたかのように・・・。

この後の様子を後にイバト少将はこう語っている。
『黒い何かに、次々とMSが壊されていくんだ・・・。
 体中から何かが飛び出してきて・・・。翻弄されてるうちに・・・。
 もちろん、奴にダメージを与えられなかったわけじゃない・・・。
 ・・・私たちは全滅した。私は・・・。何とか逃げ出すのがやっとだった。
 ・・・あれはまるで悪魔だった。黒い、悪魔だった。
 ・・・気付くとその姿は無くなっていた・・・。
 あれがなんだったのか、いまだによく分からないんだ・・・。』

艦がササハラを拾い・・・気付いたマダラメとサキに状況を説明した後・・・。
一人笹原はコクピットでうなだれていた。
「・・・止められなかった・・・。」
もちろん、止めれば危険は増したかもしれない。
だから、こうなった以上はこのまま進む以外にない。
時間はない。それは、大隊長も言っていたことだ。
「だけど・・・。」
納得は出来なかった。戦争に犠牲はつき物だ。
しかし、コーサカの場合は、何とかならなかったんだろうか。
『ササハラさん・・・。』
「え!?」
スイッチは切っているはずだった。しかし、声が聞こえた。
『徐々に・・・。覚醒しているみたいです。
 スイッチが入ってないときでも、意識を外に出すことが出来るようになりました』
「・・・そうですか・・・。」
『コーサカさんが・・・。私に話しかけてくれました。』
「え?」
意外な言葉に、体を起こすササハラ。
『あの後・・・。私はコーサカさんに呼びかけました。彼はこう答えました。
 多分、あと少しであなたも解放されます。
 もうすぐ自由になれますが、もう少しだけお願いしますね、と。
 そして、私の本名を教えてくださいました。』
そこで一旦会長は言葉を切る。
ササハラは言葉を待つ。
『最後に・・・、ササハラ君に、ありがとうと伝えてください、と。』
 そういって、あの方は去ってしまいました・・・。』
「・・・コーサカ君。」
『ササハラさん。あなたの目的がなされるまでは共にいます。
 ・・・コーサカさんの、願いでもありますから。』
「はい・・・。会長、お願いします・・・。」
拳を握り締めたササハラの目に、再び意思が宿った。

「全滅だと!」
召喚した一個大隊の全滅を聞き、声を荒げる荒野の鬼。
「・・・くそう・・・。なんなんだ・・・。奴らは・・・。」
苦虫を噛み潰したような顔をする男に、女が近づく。
「・・・中佐、ナカジマが呼んでる。」
「オギウエか・・・。」
その言葉に、怪訝な顔をしつつも、鬼はオギウエと共に移動する。
「・・・何をつけている?」
オギウエの胸にぶら下がっているペンダントに興味を持つ鬼。
触ろうとするが、手を強くはじかれる。
「触るな!」
「・・・何なのだ、それは。」
「・・・分からない・・・。けど・・・。うぅ・・・。」
頭を抱えるオギウエに、
「・・・まあ、いい。」
二人はそのまま廊下を進み、どこかの部屋へと消えた。


次回予告

大きな犠牲を払い基地へとたどり着いた第801小隊。
そこで彼らが見たのは巨大なレーザー砲だった。
マダラメは呟く。昔見た光景を思い出すように声を震わせながら。
「あんなもの蘇らせやがったのかよ・・・。」
第801小隊は大量の虐殺を止める事が出来るのか。

次回「蘇る悪夢」