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GENSHIKEN vs LABUyan 【投稿日 2006/05/02~06】

カテゴリー-他漫画・アニメパロ


某月某日。
講談社に多数存在する会議室の一つ。
俺はそこで、一人の男と相対していた。

頭は1000円カット屋で刈ったようなザンギリ頭。
刈ったまま整髪料などまるで使った形跡は見られず、ボーボーのボサボサである。
そして特徴的な丸メガネ……良く見ると、レンズに傷が多数つき、曇ったようになっている。
レンズの端のほうは油染みたようになっており、異様な年季を感じさせる。
トドメは全身をうっすらと覆う「異臭」だ。
数日に一度しか風呂に入っていないのだろう、激臭とはでは行かないまでも
ザリガニが腐ったような感じの薄汚い匂いが10M近くはなれたココまで届いている。
おまけに、それに加えて加齢臭まで混ざっている。もう、彼も若くは無いのだ。


……しかしながら、首から下のその体はどうだ。
ジャスコで3枚3900円で売ってそーな安モンのトレーナーに包まれた肉体は、
筋肉で溢れてはちきれんばかりであり、服の上からでも筋肉の様子が見て取れるほどである。
ソコまでして鍛え上げられたその肉体は一種異様でさえあった。

そう、彼の名は、大森カズフサ。
講談社アフタヌーンで連載中の「ラブやん」の主人公である。
親愛なるアフタヌーン読者の諸君なら、彼のことはもちろん存じているだろうが、
ココはげんしけんスレ。単行本派など、ご存じない方のために彼―――カズフサ氏について説明しよう。

彼の持つ属性は、ロリ・オタ・プー! 今やニッポンのどこにでもいる典型的なニートである!
欲望をストレートに満たそうとした結果、警察のご厄介になることも度々であり、まさにダメ人間!
そんなこんなで活躍してきた彼もいよいよ29歳と8ヶ月! 大台の見えてきてしまった彼の未来はどっちだ?!

ところでこの「ラブやん」と言うマンガ、内容的には「N●Kへようこそ」など足元にも及ばない
No.1ニートまんがとして出版界に君臨しているのだが、人気の割にはどうにも単行本の売れ行きが芳しくない。
原因は、扱ってるネタが余りにも「アレ」なんで全メディアから黙殺されてしまっているからと言うことらしい。
……まー、オナホールの話題で一話丸々使っちゃうようなマンガだから、それも当然ッちゃ当然なのだが。

―――そこで、2004年下半期にやったように、書店への販促テコ入れとして
『げんしけん&ラブやん合同ポスター』ってのを、また作ろうって話になったらしい。
ラブやんだけのPOPでは書店はシカトこくかもしれないが、 
人 気 作 品 である俺達「げんしけん」と一緒の販促品なら、
そうそう無視も出来ないだろうって思ったんだろう。社のエラい人とかが。

そして俺も今日はその用事ではるばる音羽の講談社までやってきたと言うわけだ。
今日やるのは、撮影と……カズフサ氏との対談トークだっけ?
しょーじき「オタ系」ってだけのくくりで、あんな 変 態 漫 画 と、
一緒にされちゃ困るんだが、これも仕事だ仕方ない。

しっかし、流石は講談社。会議室一つが広い広い。今日この部屋使うのは撮影会場もかねているからだろうが。
この部屋に案内してくれた編集者さんは「大森さんってちょっとアブない人だから気を付けてね?」と、
言い残して去ってしまったが、それこそそんな 『アブない人』と二人きりにしてどうする気なんだか。
オタ同士親交を深めろってか? そんなのはゴメンこうむる。
とは言え、用事が終わらなきゃ、帰るものも帰れない。
ちゃちゃっと終わらして、今日もアキバめぐりと行こうじゃないか。

さて、部屋に入ってから、カズフサ氏をしげしげと眺めていたが、こうしていてもラチがあかない。
ま、とりあえず、挨拶かな?
カズフサ氏はニヤニヤウハウハしながら手元の漫画誌に夢中になっており、こっちが近づくのにも気づかない―――ってぇ! 
読んでるの『コミックL○』かよ!!(*注1)
スゲェ、想像以上だ。俺もエロゲ雑誌くらいなら人前でも余裕で読めるが、アレは読めねぇ。

すると、こっちの『ヒイた』雰囲気を察したのか、
ふと、カズフサ氏がこちらに目線を向けると「…あ、ども」と、挨拶してきた。
…で、挨拶してくれたのは良いんだが、その後が良ろしくない。
「えーと、今来るって事はげんしけんのヒト? 誰だっけ? 漫画にいたっけ君?」等と言い出しやがった。

しっつれーな!! 3巻から既に登場しとるわい!! 
なんだ? 向こうはこっちから誰が来るのか聞いてないのか?! 編集部の連絡ミスかよ、おい! 
ともあれ、名を聞かれて応えにゃ、男がすたる! 自己紹介してやろうじゃないか、最高にフレンドリイに!

「ハーイ、カズフサさん! はじめましてですにょー! 英語で言うとナーイストゥゥゥーミィィィィチュゥゥゥゥ!!
 ワタクシ、朽木学と申します! コンゴトモヨロシクぅ☆ ですが、マナブともクチキとも呼ばないで!!
 どうかワタクシ推奨の二つ名であるところの『クッチー』と、お呼び下さいませませませ!!」

―――決まった! ここまで気合の入った自己紹介を決めたのは現視研に出戻ったとき以来じゃなかろーか。

……ん? しかし、カズフサ氏、なんかヒイてるな? どっかマズったか?
「あー、うんうん朽木クンね。知ってる知ってる思い出した」と、言う表情もどっか硬い。
しかし、ココで弱みを見せちゃいけない。どっちが売れている漫画なんだか彼に教育してやらねば!
「朽木クンではなくてクッチーですクッチー。『クッ・チ・ィ』って言ってください、サン、ハイ、リピートアフターミィ!!」

「まーなんだ朽木クン」
ガン無視かよ。
立場の違いがわかってんのか?
本気でガン無視したままカズフサ氏は続ける、「スーたんや荻上たんと撮影会と聞いたんだが、彼女らはいつ来るんだね君ィ?」

………………は?
「えーと、その、スージー? 多分アメリカだと思いますがにょ?」
なんだ? どーゆー話になってる? 

「フムゥ。ハリウッダー(*注2)な魅力を持つオレ様のカリスマを持ってしても、
 スーたんをニッポンに召喚することは適わなかったヨォだな。編集部も『呼べたら呼びます』としか言ってなかったしな」
なんだ?! 脳内設定か? 脳内設定なのか?! 

しかし、混乱する俺を無視してカズフサ氏はガンガンしゃべくる。
「…で? 荻上たんは? 彼女、年齢的にはもうオバサンでアウトだけど、外見的には少女子だからインだしネ!」
なんだよ、インとかアウトって。
……って、イカン! 向こうのペースに押されてる! いい加減、彼に、どっちが強い立場なのか教育してやらねば!!
「オギチンはアレです。春イベントのための腐女子本を描いてるはずですにょ。
 忙しくってこんな所に顔出してる暇はないと思うアルね!」

「え? なら、オレ的げんしけん最萌えメガネッ娘の北川さんは?!」
「人妻です。今頃、元・いいんちょさんにブッといお注射されちゃってるかも知れないナリねぇ~」

「じゃっ、じゃあ、ギリギリに妥協して、咲たんは?!」
「服のショップとかゆーのを設立するのに忙しいはずですにゃ。まあ3次元の服飾事情には詳しくないのですがにょ」

「いいよモウ。こないだ話して楽しかった斑目クンでガマンするよモウ」
「斑目先輩は有限会社 桜管工事工業でお仕事ですナ。本日は平日でアリマすし」

「ならエロフィギュア談義で盛り上がれそうな、田中クンは?!」
「本日は専門がっこーです。服飾系は課題が多くて大学の3倍は忙しいとおっしゃっておりましたナ」

「コーサカクンは?! 修正前のエロ原画こっそり持ってきてもらおうと頼みこむつもりなんダガネ!」
「ずーーーーっとエロゲ会社で泊り込みでしょうにゃ。ココ数ヶ月、まともに姿を見かけておりませんぞ」

「……じゃあ、嫌だけど『主人公対談』ってことで、笹原君を」
「さっき会ったでしょう? 笹原先輩はカズフサさんをこちらに連れてきた編集者さんナリよ。
 先輩は派遣の漫画編集として講談社でお仕事中でアリマスゆえ。あの後、別の漫画のお仕事のはずですな」

「ならば、オレは誰とおしゃべりしたり、写真を撮ったりして楽しく過ごせばいいというのカネ?!!」
「ワタクシです! 貴方の目の前にいるこの朽木学ことクッチーが本日の貴方のお相手でアリマス!!」
…………つ、疲れる。何だこのヒト。しかしやっとココまで話を持ってこれたわ。

……しかし、カズフサ氏の反応は俺の想像のさらに斜め上を行く。
「じゃあ何か?! 仮にも一国一漫画をあずかるラブやん主人公のこのオレがだ、
 貴様のヨォな不人気キャラと同列に扱われてポスターになるってか?!」

完全に向こうのペースだが、そうまで言われて黙ってられるか、乗ってやる!!
ああ、逆ギレ勝負なら負けたことねーよ!!!
「いい加減にしてくださいにょ、カズフサさん! 
 プーの貴方と違って、皆さんには修めるべき学業や、果たすべき勤めがあるのでアリマスよ!!
 本日げんしけんサイドで手が空いているのは、このワタクシ朽木と、大野会長くらいのものですナ。
 ワタクシだって暇では無いのでアリマすぞ!! 
 集めた二次エロ画像を属性ごとにフォルダに分類したり、積みエロゲーを崩したり、
 ネトゲでキャラを育てたりなど、時間はいくらあっても足りないのです! 
 プーの貴方の時間の使い方と一緒にしないでいただきたい!!」

「うわっ、うわ~~ん! 不人気がいじめてくるよドラブや~~ん!!」
一気にまくし立てると、それだけでカズフサ氏、マジ泣き。良い大人がある意味スゲェ。

……ったく、コイツは。今日ちょっと話しただけでも、ラブやんさんの苦労が忍ばれるわ。
「さっきから聞いていれば、不人気不人気と失敬な! 
 よろしいですか?! 『不人気』と呼ばれるたびに、真紅たんはその小さな胸を痛めてるんですにょ!(*注3)
 ワタクシも生きた人間! 同様に傷つくのでアリマすぞ!」

すると、メガネをクイッとかけ直したカズフサ氏は
「別に不人気なんて、どーでもイイよ。だってオレ、銀様派だモン。ボクもうお家かえゆー」(*注3)

―――お? 
言い方はムカつく言い方だが、ひょっとしたら俺との接点になりうるか?
それに『ボクもうお家かえゆー』されてしまっては俺の用事まで果たせない。
スンゲー嫌だが、ココはカズフサ氏を引き止めねばなるまい。
「……あ。実はその、ワタクシもメインで好きなのは銀様でアリマして」
こう言うと予想通りというかなんと言うか、メガネをギラリと光らせながらカズフサ氏が食いついてきた。
「ホホゥ。初めて意見が合いそうだねキミィ。やはり、ローゼンは水銀燈たんにかぎるヨネ!」

フィッシュオーン! そうだよ、そう。やっぱオタなら同属性について語りゃ話は通じるんだよ。

「全くでアリマスな。他のドール達とは一味違う、あの気品! たまらんものがアリマすにゃー!」
さァ、乗って来い、カズフサ氏。こっちのエサは甘ぁいぞ!!
「ああ水銀燈たんの事を思うだけで、オレの暴れん棒も暴発寸前……
 ……理性を抑えるだなんてムリのムリムリさ……いっそブチ込んでやりてぇ!!」
あァ? 無理だろそれは。だって銀様は設定では……
「あのー、カズフサさん? 銀様は胴体無い筈でアリマすが……どちらにブチ込まれるので?」
「ウッソ、マッジ?! だってこないだネットで落とした同人だと陵辱シーンあったんダガネ!
 じゃあ、アレか、ウチに昔いたメイドロボのコレットみたいな感じか?!」
同人設定かよ! しかもDLしたことを悪びれず言うなよ!! あと、コレットとか嫌なもん思い出させんな。
……そういや、こないだのオナホールの回で、ラブやんさんに、わざわざビデオとテレビ借りて使ってたな。
つーことは、カズフサ氏は普段はアニメや映画見ないし、アニオタじゃないってことか。……正直、意外だ。
なら、銀様の胴体が無いのはアニメのみ設定だし、知らないのも仕方ないか。

などと、つらつら考えていると、属性話でテンション上がってきたカズフサ氏がしゃべりかけてくる。
「ンン~~? 何を考え込むことがあるんダネ、朽木クン? ちなみにオレは本編単行本6巻分も全部ネットで拾ったヨ。
 タダで手に入るものをワザワザ買うのはバカのやることダヨネ、HAHAHAHA!」
こ、こ、こ、こ、こ、こ、コイツ……ダメダメ人間だぁ~~~~ッ!!!
アフタの連載で見た感じ『カズフサの部屋、オタルームの割には随分小奇麗に片付いてんなぁ』とか思ってたが、
全部が全部『DLで済ましちゃう派』だったのか! そりゃ、あんまり部屋にオタアイテム無いはずだわ!!

いっそ、怒鳴りつけてやろうかとも思ったが、忍耐力と自制心にかけた29歳児に辛く当たると、
スネちゃって話にならないのは、さっき解った。
ここは現視研で社会的に揉まれ、大きく成長したこの朽木の度量の見せどころ!!
コイツにニッポンが生み出したリリンの文化の極みANIMEの素晴らしさを叩き込んでやらねば!
まずはジャブ代わりに挨拶だ!
「あーいやいや。特に何を考えていたという訳ではございませんにょ?
 ただ、カズフサさんはローゼンのアニメの方はご覧になって無いのかなー……などと思いましてにゃ」

するとカズフサ氏、プイスとむくれながらこんな事を言いやがる。
「だってアニメは容量デカイんだモン。アニメ一話を落とす時間があったら同人10冊落として
 日課に励むのが正しい男の在りざまだと思わないカネ、ハニバニ?」
もうヤダ。コイツと話すんの。何がハニバニだ。

しかし、ココで沈黙することは敗北を意味する。なんとしてでも一矢報いねば!!
「いややはり、ローゼンの真の魅力はアニメにアリマすぞ!! カズフサさんも是非とも見るべきですにょ!
 なかでも銀様は漫画原作者よりもむしろアニメスタッフに愛されておりますゆえ、アニメ版の美しさは三倍界王拳!(当社比)
 そして何より動いて喋る銀様の可愛さは華麗さは凶悪ナリ!! それも田中理恵女史の熱演あってのこそですがにょ!!」

「……いや、その。オレあんまアニメとか見ないから声優の話とかされても……」と、最後の方はなにやらブツブツ言うカズフサ氏。
ハ! りえりえくらい知ってろよ、この雑魚がァ!! 

しかし、行ける。この話題の路線なら行ける。カズフサ氏と相対して以来、こっちが押してる空気を初めて感じているっ!
ならばこのまま叩き込むのみっ! 愛だ! 俺の銀様に対する愛を語ってやらねば!!

「アニメはオリジナルストーリーが多いんですがにょ。銀様のツンデレッぷりはまた格別でアリマすぞ!!
 悪ぶりながらも、めぐを気遣い、めぐを守るために戦う姿にはただ、ナミダナミダの物語!
 ……しかしながらそのおココロは、がらんどうの体にも似て、寂しく、そして孤独に弱い!
 そんな銀様だからこそ! ワタクシがそばで支えてやらないと! ワタクシが守って差し上げないと!!」

おお、最高だぜ俺……輝いてるぜ俺……
俺が銀様を思うこの心は、必ずやカズフサ氏にも伝わったはず!!

―――しかし、運命があざ笑うかのような展開が俺を待ち受けていた。
この後カズフサ氏は信じがたい一言を口にしたのだ。




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    お 本 二  ≦     └; 〈  └; n│ __  ,.、
   ら 気 次  ≦        /∧〉  〈/〈/  フ ∠ ヽ>/>
    れ. に. 元  ≦      、-- 、ノレ'⌒Z   ̄ ̄  lニ/  />
   る な. キ  ≦     , -`       ̄`ヽ、          </ />
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       て. ラ  ≦   l' nVl_V _`Y´'_'_ハlハ ,〉       ◇
          に  ≦   ll lkj'j ヽ. ̄ 人  ̄丿ハj /
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洲            派    | l,ハ `l ゚    u,イ    ゝ
  洲州州州州派        lノ ヽ. l   門 リ  ∧/
                 ノ>- 、ヽ、 凵 /
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                /   ヽ         ヽ




―――――――――え? 

あれ?  このヒト今なんて言った? 
「ニジゲンキャラニホンキニナッテオラレル」って? 
うん。
そおだね。
本気だよ。
愛してるよ銀様。

いやいやいやいや、今問題にするべきは俺が銀様を愛してるとかどうとか言う話じゃなくて……カズフサの野郎の発言内容だ。
「二次元キャラに本気になっておられる」と、奴は言った。そして言いつつドン引きしてる。

つまり。
カズフサは。
二次元キャラを愛せないという事か?
まさか。
そんなバカな。
こんな極まった変態が?
ありえない。物理的にありえない。
じゃあ俺ってカズフサ以下?

さまざまな思いが浮かんでは消え、浮かんでは消え、そして俺の脳髄は一つの結論を導き出した。

裏切りだ!
裏切りだ! 裏切りだ! 裏切りだ! 裏切りだ! 裏切りだ!
いや、そもそも仲間ですらなかった!!
二次キャラを愛せない変態などただの変態、オタクではない!
奴を『オタク』と認識したのがそもそもの間違いだった!
敵だ!
こいつは敵だ!!
自分の欲望のみを追求し、オタ社会に益する事の無いコイツを敵として認識せねばならないッ!

いまや俺の意識は冴えに冴え、カズフサの毛穴の数までハッキリ見て取れる。
他人から見れば、俺の瞳孔は猫科動物のごとく拡大しているに違いない。
「―――二次元キャラに本気になれぬと申したか」
そんな気持ちからか、おもわず、時代がかった口調でカズフサに問い掛けてしまう。

「なんだソリャ、チュパ衛門の真似か……へぶっ!!」(*注4)
何か言いかけたカズフサのアゴに虎拳を一発。ちなみに虎拳とは手首を用いた当て技の事を虎眼流に置いてそう称する。
本気でぶん殴ったせいか、なんかカズフサの首がエラい曲ってる気がするが、
相手はギャグマンガキャラ、この程度の事で死にはしまい。

「い、いきなり何をするんだねキミィ! いくらチュパ衛門ごっこだからって……アロっ!!」
曲った方向とは逆方向で更に虎拳を一発。うむ。コレで真っ直ぐになった。

「あ、あ、あ、アノー、朽木……サン? セッシャがなにか悪いことしたと言うのですカネ?」
29歳児とは言え所詮は子供同然。やはり子供は叩くに限る。コレでやっと話が通じる状態になった。
「悪いこと……で、アリマスか? まー、アナタの様な方は存在そのものが『悪』だと言えるんですが……
 良く良く考えてみれば、アナタは今現在、悪いことをした訳ではありませんにゃ。
 ワタクシが勝手に暴走して、ワタクシが勝手に自爆しただけでアリマス。
 端から見れば『楽しく談笑していた2人の男のうち一人が、突然キレてぶん殴った』ようにしか見えないでしょうナ」

「ソウダヨ! オレは借りてきた子羊のように大人しい青年なのに、何の言いがかりで……ゴブァッ!!」
こっちが少しでも非を認めたが否や、鬼の首を取ったかのよーに食って掛かってくるカズフサ。
そこにパチキ(頭突き)一発かます俺。いつぞやのコス泥棒の時と違って打ち負けはしない。
何しろこーゆー時の為に鍛えておいた。しかし、こっちの頭も痛ぇ……

「何の言いがかりでもありませんな。カッとなってやりました。別に後悔などしておりませんが。
 ああ、そうですな、先に殴ったワタクシが悪うございますな……
 ……だからなんだ! それがどうした! 逆ギレ勝負なら負けたことねえよ!!」
ぶつけた額を押さえつつ。マジ切れして叫ぶ俺。うわーきまらねー。カッコわるぅ。

「スンマセン。なんかわからへんけどホンマスンマセン」
そして、コメツキバッタのごとくペコペコしながら謝りだすカズフサ。
はっきしゆって100パー俺が悪いんだが、雰囲気に飲まれて向こうが謝ってんなら押すべきだろう!

「あー、はいはい。二次キャラに本気になって悪うございましたにゃー
 こちとら真性二次元コンプレックスでアリマスゆえ……
 ……ですが! アナタのよーなオタクのフリした真性ロリコンが
 リアルワールドで事件を犯した時に、ワタシラ善良ないちオタクが
 どれだけ迷惑で肩身の狭い思いをしてんだかわかってんですかにょ?!!
 ワタクシ達二次オタは、現実社会に迷惑かかるよーなことはしていないというのにッ!!」

ついつい前々から思ってた事を一気に吐き出してしまう俺。
いやまー、カズフサ一人が悪いわけじゃないが、二次オタみんなの総意ではあるだろう、多分。

「イヤデスネ? ソノデスネ? その件に関してましてはこっちもお互い様と言うか、
 あんたら極まっちゃった二次オタがアキバ特集とかでテレビに映るたびに、
 ママンと一緒に食べているご飯がおいしくなくなると言うか何と言うか、
 オタクまで行かないちょっとした漫画好きエロゲ好きにとってはいい迷惑なんダガネ……げぼおっ!」

うっさいわ。分かってるわそんな事。今のは単にムカついたから殴った。

「偉そうなクチは、実際に偉くなってから叩いて欲しいもんですにゃ……この無職がァ!!
 悔しかったらげんしけんと同じくラブやんもアニメ化してみろってんですにょ!
 そんでワタクシみたく大御所声優つけてもらってみろや!! あァ!(声の出演:石田彰)」

―――そのとき。カズフサの体がピクリと震えた。そして血涙を流しつつ、一気にカズフサが吠え立てる!!
「クフゥ……黙って聞いておれば言いたい放題だなコゾウ。
 アニメ化がそんなに偉いんけ?! 偉いんけ?! 
 ゆっておくがな、ラブやんはアフタ本誌アンケートではかなり上位なんだぞ!!
 だのになんで、本誌人気では圧勝してる筈の『夢使い』が先にアニメ化しちゃうんダヨォッ!!」

しまった! 『アニメ化してみろ』はNGワードだったか!
これでカズフサにも俺と同じく『怒り』の感情がインストゥールされてしまった……
そしてこうなっては五分と五分……いや、体格の分だけ俺のほうがはるかに不利だ!!
だからって気圧されてたまるか!! ココから先はむしろ精神力の削りあい、押してナンボの勝負だ!!

「バカ言ってんじゃありませんにょ!! エビとかオナホールとか言ってる漫画をアニメ化できるわけないでしょーが!!」

「コゾウ……貴様、闇の勢力の殺し屋か!! 言葉の暴力でオレを葬り去ろうとしてもそうはイカンぞ!!
 田丸漫画キャラの真骨頂は筋肉にあり! 見よ! カズフサ武装化現象(かずふさ・あーむど・ふぇのめのん)!!
 バルバルバルバルバルバルバルゥ!!」
どこかで聞いたようなセリフをカズフサが吐くと、それに伴い奴の筋肉が一気に膨れ上がり
奴の体を包む安物のトレーナーが筋力の内圧に負けて破れて吹き飛んでいく!! 
クソ、流石はギャグマンガキャラ! こーゆーところがハンパねぇ!!

――だが、俺も、別に少年まんがの悪役とゆーワケでは無い。お約束になどカマってられっか。
ならば行なう事は、ただ一つ。すなわち『変身中のヒーローへの直接打撃』である。

ゴシカァン。

平たく言うとカズフサがポージング決めてる最中に、手近なパイプ椅子ひっつかんで頭ぶん殴った。
ココが会議室でよかった。手ごろな武器が一杯あって。いやー、イイ音したなぁ、

…………って、いくら相手がギャグマンガキャラだからって、ちょっとやりすぎたか? 
ぶっ倒れたうえ、頭からドックドックすごい勢いで流血してるし……
いやー、ウチ(げんしけん)とかのシリアス漫画だったら絶対死んでるなぁ、コレ。

殺しちまっては寝覚めも悪い。警戒しながらも、とりあえずは倒れたカズフサに近づく。
「……あのー、カズフサさん? 大丈夫ですカナ? カナ?」まあ大丈夫な訳ねぇが……って、ヤベェ!!! 
カズフサの野郎、片手だけで上体を起こしたかと思うと、倒れたままの姿勢でパイプ椅子投げて来やがっ……ガガガッガッ!!
……クソ、被弾した。なんだよあの動き。テニスかなんかのギャグマンガか! 人間の動きじゃねえだろ!!
椅子は左肩をカスめただけだが、その肩がもー、しばらく使いモンにならんな……バカヂカラめ。
椅子の方は椅子の方で、壁に当たってバラバラになっちまった。あー、壊しちゃった。怒られるかなぁ。

そして、攻撃が十分効果をあげた事を確認するとカズフサはゆったりと起き上がった。
「クックックックッ……コロスつもりでなげたんダガネ。意外と丈夫アンド素早いじゃないかコゾウ!!」

「いえいえ、それはお互い様ですにょ。あそこから蘇るほどのカズフサさんのタフネス振りには感服するしかございませんナ。
 ……それに、春日部女史の鉄建制裁を毎日のよーに喰らってるワタクシからすれば、貴方の先ほどの攻撃など
 赤子が撫でたほどにも感じませんにょ!!」

強がりでしかないし、実際痛いが……自分で言ったとおりでもある。コイツ、春日部女史よりは多分弱い!!
それに、俺には日頃アキバ巡りで鍛えた足腰がある! 
時には十数kgのリュックを背負い、雑居ビルを上り下りし、日に寄っては数十kmを踏破するのだ!!
加えて、コミフェスでの開幕ダッシュの為に短距離走の訓練は欠かしていない!!
こんなビルダー的なお座敷筋肉で膨れ上がったマッチョデブに、素早さで負けるわけが無かろう!!

「クフゥ……ただのキモオタと思って見くびっていたが、意外とやるじゃないか。
 オレ様の敵手として十分な実力があると認めてやろう、クッチーよ!!」

……ほう。ようやく俺の事を『クッチー』と呼ぶ気になったか。
ならばオレも男として逃げる訳にも行くまい。全力でこいつに立ち向かい……そして打ち倒さねば!!
「キモオタにキモオタといわれるのは心外ですな、カズフサさん。アナタほどにはキモク無いと思っているんですがにょ!!」
そして俺もそう言いつつ、さっき壊れた椅子の部品を掴むと(足のパイプ部分だ)一気に殴りこむ!!

「鏡を良く見るんだな、コゾウ! 貴様ほどにはキモオタ面などしておらんわ!!」
パイプは腕に当たりはしたモノの、カズフサの分厚い筋肉にとめられてほとんどダメージが入った感触が無い。
そして返す拳でカズフサの豪腕がうなり……俺も何とかかんとかパイプを使ってそれをさばき直撃を避ける。

「そのセリフ、ソックリそのままお返しいたしますにょ。貴方の内面のキモさがそのまま表れたようなキモオタ面ではありませんか!!」
奴の攻撃をかわした勢いで、そのまま一旦間合いを外すため一歩下がる。こっちにゃ得物がある分リーチを取った方が得策だからだ。

「だまらっしゃい!! キモオタって言う方がキモオタなんじゃい!!」
そうはさせじと、追撃してくるカズフサ。突進する勢いで田丸先生が大好きな鉄山ナントカを決めてくる!
バカが、そんな大技いきなり出して当たるか……って、俺本体はギリギリかわしたもののパイプを弾かれた! 早ぇえ!!
「なら今アナタはキモオタって二回言いましたよね、このキモオタ!!」
言いつつ、鉄山ナントカの後の隙だらけの背中に肘をぶち込む……が、なんて硬い筋肉だ!! こりゃダメージねーぞ!
「ほ~らキモオタって言ったネ! 最初に言った方がキモオタなんデスぅ~~~!」
そしてうなるカズフサの豪腕。あわててガードは固めたもののガードの上からでも、重い。固い。痛い。
だからこそ、しかし、それで確信する。やっぱコイツの攻撃、春日部女史よりは弱い!!
なら……近距離の乱打戦で決着つけてやるわ!!
「じゃあ、やっぱりアンタがキモオタだ!! 最初に言ったのそっちじゃありませんかにょ!」
そう言いつつガッチリ構えると、こっちの意図を理解したのか、やはりカズフサも打ち合う姿勢に向き直る。
「いい加減黙れキモオタ!!」
殴り。殴られる。
「キモイんじゃキモオタ!!」
かわし、かわされる。
「往生せいやキモオタ!!」
蹴り、蹴られる。
「うっとしぃんじゃキモオタ!!」
パチキを二人同時に発動し、二人同時に頭を抱える。
「キモオタ!!」
もはや、どっちがどうなってんだか俺にはわからない。
「キモオタ!!」
カズフサだってそうだろう。
「キモオタ!!」
既に二人とも顔はボッコボコで、この後の撮影なんて絶対不可能だろう。
「キモオタ!!」
止めて欲しい、でももうドチラかが倒れるまで止まらない。
「キモオタ!!」
コレもカズフサも同じ思いだろう。

―――そして、幸か不幸か、一人の闖入者によってこの乱戦は止まる事となった。

カチャリ。

会議室のドアの開く音が聞こえた。
ヤバイ! 誰か入ってきた!! こんな大暴れしてる所見られたら、何の言い訳も出来なさ過ぎる!!
だがドアは俺のちょうど真後ろ。死角になっていて誰が入ってきたんだかサッパリ分からない。
だからって、確認しようと後ろを向いた瞬間、カズフサの超必殺技が俺にヒットし、
リタイア& To Be Continuedになってしまうこと間違いなし!

そうこう俺が混乱してると、突如、侵入者が口を開き、更なる混乱を巻き起こした。

「ダイジョウブだよ オレ トーチャンの トモダチだから」
「ウソだ! トーチャンのトモダチは ジャンボだけだ!!」
「はいらせてください」
「ダメです」

……は? このセリフは確か……でもなんで今このタイミングで聞こえてくる。後ろから?
見れば、オレの眼前のカズフサはポカンと闖入者の方を見ている。なんだ、どうした?

「アメいる?」
「いる」「あ」
「おじゃましまーす」

うん、やっぱアレだ。ついこないだ5巻が出たアレ。(*注5)

そして「はいんな!!」と、いう声とともに―――

「ギャーーーーッ!!」
―――俺の背中にごっつい衝撃がはしってブッ倒れた。ちなみにギャーって言ったのも俺。
マズイ、起きなきゃカズフサの攻撃が来る……と、思ったが、
当のカズフサは放心したかのように俺の後ろを見つめ、そしてポツリとこう言った。

「スーたんだ」

は? スー? スーってスージー? ジョセフの嫁さんじゃないほう?
俺もくるりと後ろを向き、確認する。
不機嫌そーな面、ひくいかるいうすいな体つき、そして特徴的なツインテール。
スーだ。うん。確かにスーだ。ウチの。
表情からは分かりにくいがどうやらご機嫌らしく、手にはアレの5巻を持って眺めている。
「はいんな! はいんなー!」
うん、そーゆーことね。スーが朗読してた、と。はいはい理解理解。カタコトさが抜けて日本語上手くなったなぁ。


………………じゃねーよ!! わかんねーよ!! 何でスーがここにいるんだよ!! 今アメリカじゃねーのかよ!!
一方カズフサを見ると、なんかもー、感極まったらしく、今にもスーに飛び掛りそうに

「うわーん、スーたーん!!」あ、飛び掛った。
止めようとも思うが間に合わない。と、言うかもうそんな体力無い。

メゴッ。

しかし、そんなカズフサとスーの間に割って入り、カズフサの顔面に鉄建制裁を食らわしたのは……春日部女史だった。
「あっちゃ~、バレちゃったかぁ。どうするよ、ササヤン?」
バレるも何も、なに言ってんだかサッパリ分からない。そもそも春日部女史は仕事じゃなかったっけ?

「あー、ホントどうしましょうかねぇ」と、言いつつ笹原先輩までもが室内に入ってくる。
俺だってホントどうしたら良いんだかわかんねーよ。なんだよ、このシチュエーション。

……ふと、横を見ると、春日部女史にブチのされたカズフサが、女性に助け起こされていた。
「Are you all right? humm...Kazufusa?」
「アア、まったく、ヒドイ目にアッタヨ……って! グボァ!! 
 う、う、ウブ毛ザラザラの金雌(ブロンダー)が、セッシャの純潔を犯さんと欲して寄ってくるっ?!
 そ、その、胸のぶよぶよの二つの脂肪の塊を近づけるなぁーーー……バァァァァァッ!!」
カズフサを助けおこしていたのはアンジェラ。
そして失礼な事を口走ったカズフサは再び春日部女史の鉄拳で眠りに付く事になった。
あー、今の喰らったらしばらく起きねーなー。

「最初に聞いた時は冗談かとも思いましたが、本当に朽木センパイ以上のサイテー男ですね、このひと」
笹原先輩の後ろから、なにげにひどい事言ってるコイツは……やっぱオギチンか。
おまえ男できてから態度でけーんだよ。

そして。
「……だよなぁ、荻上。コイツがカズフサか。話には聞いてたけど噂以上だわ、こりゃ。クッチー、お疲れさん」
そうお言葉をくださる春日部女史に「はぁ、実際疲れましたにゃ……」と、しか言えない俺。もうボロボロだし。

「ホントたいしたもんダワ。ウチのカズフサとやりあってコレだけ持つだなんて、ゴクロウサン」
そしてコレまた、いつの間にか俺の隣にいた女性が労いの声をかけてくる。結構美人だ。
……えーと、このヒトはウチの面子じゃ無いな……って「ラブやんさんですかにょ?!」
「アラ、わたしのことをご存知カシラ? フウ、アタイの美貌は作品間を超えて伝わってるってコトね!」
うん、天使と言うだけあって、美人は美人だ、喋らなきゃ千倍良い。口を利いたらむしろ女カズフサ。

続けて「ダメでしょスー! 勝手にうろちょろしちゃ!」とかナントカ言いつつ大野会長までもがこの部屋に来る。
なにやらスーと英語でぽそぽそ話してるが、大まかに内容はわかった。
『この部屋から大声&破壊音が聞こえてきたんで、ついつい興味を惹かれて入ってきた』と。
更には『知ってる人がいたからじゃれ付いてきた』とも。
……ああ俺、一応『知ってる人』に分類されてたんだ。それはちょっと嬉しいかもしれない。
そんで、消えたスーを求めてこのパーティメンバー全員でこのフロアを探し回っていた……と、まあそんなとこだろう。
でも日本にスーがいる理由には全然なってねぇ。

「いやもー、なにがどーなってんですかにょ? ワタクシサッパリわからないの事アルネ?」
しっかし、ナンボ考えてたって判らんもんはわからん。とりあえず、説明を求める事にする。

……すると、この場の全員が(日本語わからない2名は除く)、
田丸的擬音で言うと『プイス』って感じで俺から目をそらし始めた。
……なんだ? そんな後ろ暗い話なのか?
しばらく『誰が言うんだ?』的な空気がその場に流れていたが、最初に動いたのは春日部女史だった。
しかし、自分で事実を伝えるつもりはないらしく、「ほら、ササヤン、責任者でしょ?」などと言いつつ
笹原先輩を前に押し出し、ぐいぐい俺のほーへ押し付けてくる。

そして押し付けられた笹原先輩は最初明らかにキョドっていたが、観念したのか重々しく口を開いた。
「えーと、その、朽木君。お疲れさま」
「はぁ、実際疲れましたにゃ……」このセリフ本日二回目だけど、いや実際。
しかし仕事を頼まれた上に、大失敗。オマケにこの部屋の惨状と来たら……まあ、謝るしかないか。
「ところで、笹原先輩。実に申し訳ないことでアリマスが、
 椅子は壊れるわ、壁は歪むは床は凹むわ、などなど、ご覧のアリサマでアリマして……」
「あー、良いんだよ朽木君。このくらいの被害ならむしろ想定内だからさ」

……へ? なんだそりゃ?
「あの、その、それはどういう……?」
「うん……実はね、大森さんがワガママ言って暴れだすのは考えられた事だったから……
 ……まあ、なんて言うか『暴れてもいい部屋』なんだよね、ココってさ」
だからなんでそーゆー部屋を選ぶか。まだ話が見えん。

「ところで話は変わるけど、朽木君『大合作』って知ってる? 実は今日の仕事ってそれだったんだけど」
知ってる。アフタヌーンがたまーにやる企画で(可能な限りの)全掲載作品のクロスオーバーを行なう無茶な企画だ。
最近のは表紙だけとか、PC用の壁紙だけとか、漫画一本作ってた昔に比べりゃしょっぱい仕事なんだが。
「はあ、存じております。まさか、ソレ用のフィルムを作るためにカズフサ氏とワタクシは隠し撮りされていた……と?」

「……あ、いやゴメン違うんだ。実は今回、朽木君の出番ってないんだよ」
「ハァァァ?! なんだとフザケンな!」
……イカン、今日は暴力ワールドに長く浸かり過ぎたせいか素が出た。いや、でも、マジふざけんな。

「お、落ち着いて落ち着いて朽木君! 実は俺の出番も無いし大森さんの出番も今回はないんだよ!」
おかしな話だな。一時期空気キャラになってたとは言え、仮にも笹原先輩はアフタの看板『げんしけん』の主人公だろう。
一方カズフサもそこそこ以上に人気のある『ラブやん』の主人公だ、コイツがはずされるってのも、まあ、無い話だ。

「ソリャまた面妖な話でアリマスな。いったいどうしてまたそんな変な事に?」
「うーんとね、今、アフタヌーンがって言うか、講談社全体が萌え傾向なんだよね」
「そーですにゃ、おかげで見るもの読むものにも困らないんでありがたいことですがにょ」
一般読者はどう思ってるかしらんが、少なくとも俺の本音だ。萌え漫画やアニメが増えるのは素直に嬉しい。

「でね? 今年はアフタヌーンコミックスの販促ポスターに、大合作を使おうって話になってるんだ。
 ……ただし、萌え化のアオリで出演するのは女性キャラ限定って話で……ね」
ありそーな話だ。しっかし、ちょっとそこまで露骨に萌え路線だと、流石の俺でもちょっと引くなぁ。

「と、ゆー事は我等げんしけんの女性陣も出演されるということなのですカナ? カナ?」
「スケジュールの都合も各連載の皆さん方で色々違いがあるから一度に撮影できないんだけど、
 とりあえず、今日の撮りの予定はウチ……げんしけんと、ラブやんさん、ガンスミスキャッツさん、
 しおんの王さんって、ところかな?」

な、なんですとぉーー?! ヤッベ、紫苑たん大ファンだよ俺!
「し、し、しおんの王の女性キャラって事は紫苑たんがコチラにいらっしゃってると言う訳でアリマすかーーッ?!」

「ガンスミですと?! メイたん! 永遠のロリータにして、セッシャの右手の恋人メイたんドコー?!」
…………そして、自分に都合のいい情報を聞くと一発で蘇生するカズフサ。流石だ。

「……あ、いや、今日の分の撮影は全部終って皆さんもう帰られま   」
「バカな!? 帰ったですと?! どーしてそーゆー大事なイベントデーがあることを
 事前にワタクシに教えていただけないのでアリマスかにょー!!」
あまりの出来事に笹原センパイが全て喋り終わる前に、怒鳴りつけてしまう。

「ソウダヨ! せっかくミニー・メイたんを眺めたり触ったり舐めたりするチャンスだというノニ!」
そして俺に続けて叫ぶカズフサ。
しかし、ソレを聞いたとたん、笹原先輩は再び黙り込んでしまう。

―――再び沈黙が訪れたが、その沈黙を破ったのは意外にもオギチンだった。
「……だって、教えたら来るじゃないですか。朽木センパイも。そこの大森さんも」


――――――あ、わかった。わかってしまった。
俺と同じ立場の筈のカズフサを見ると、キョトンとした顔をして指をくわえている。ダメだバカだコイツ。
ひっじょーに嫌な話だが、仮説が正しい事を確かめる為、俺もついには口を開く。

「つまり。我々は。ワタクシとカズフサさんは……本日のイベントを円滑に進めるため
 問題児同士で『隔離』されていたと言う訳でアリマスな?!!」

この場の誰もが否定しない。つまりそーゆー事だということだ。
「な、なんだってぇ~~?!」そして一人驚くカズフサ。いい加減テンポずれてんの戻してくれ。

黙っているのが我慢ならない。俺は思い浮かんだ仮説を次々喋り散らかしていく。 
「なるほどなるほど。ワタクシやカズフサさんのよーな人間はハブられてる空気に敏感でアリマスからナ……
 こういうイベントがあることを黙っていると、むしろ敏感に察知されてしまう……
 よって、イベント情報を嗅ぎ付けられてしまうくらいなら、いっそニセ情報を流して、
 一箇所にまとめて管理してしまった方が楽……と、まあこんな所ですカナ? カナ?」

またも沈黙。つまりは肯定だ。

そして今回沈黙を破ったのは春日部女史だった。

「いやほらクッチー、元気だしなよ。私も撮影は断ったから出番ないし。おんなじおんなじ、ネ☆」
最高にカワイ子ぶったレア表情で言われても、全然フォローになってないです、春日部センパイ。
って言うかアンタ、オタまんが雑誌の広告になんかなりたくないだけだろ?! 興味半分で見に来ただけか!

更にフォローのつもりかラブやんさんが口を開く。
「ちなみに、ガンスミとかげんしけんアメリカチームをココまで連れてきたのはこのアタシ!
 ラブ穴通って一発デシテヨ? ドオカシラ、アタシのあまりの有能っぷりに濡れちゃったんじゃなくって?!」
濡れねーよ。ついでに言うと勃たねーよ。

「そのね、朽木君? 隔離って言うか、似たもの同士仲良くしてもらおうと思っただけで……」
そして今更の様にそんな事を言い出す笹原先輩。フォロー遅いなー。コレで編集とか言って大丈夫か?
あと失礼な事抜かすな、誰が誰と似たもの同士だ。

「かみもキンイロになって! アメリカじんになっちゃうの?!」
更には春日部女史に取りすがりつつアレのセリフを棒読みするスーに至っては、もー何がなんだか。

騙されていた事に当然怒りの感情はあるのだが、しかしソレをどうしたら良いのかわからない。
そんな俺の肩にポン、と、手が置かれた。その手は大きく、そして暖かい。カズフサの手だ。
見れば、カズフサの顔には『田丸チックな満面の笑み』が浮かべられている。

オレは今どんな顔をしてるんだろう?
わからない。わからないが……カズフサのおかげで救われた気がする。

そしてカズフサと目と目が通じ合った。言葉など要らなかった。
拳を交えた漢同士のみに通じる、真の魂の交流がそこにあった。
カズフサは拳を握り締め、親指を立てると、その親指で喉を掻っ切る仕草をし、
そしてその親指を責任をなすりあって、わいわい騒ぎ続ける女性陣(+野郎一名)に向けた。

―――殺っちゃおうぜ、クッチー。こいつら二人で殺っちゃおうぜ。
―――ええ、カズフサさん。キルゼムオール or 鏖 or ジェーノサーイドでアリマスな。

俺が叫び。

「あっはははははは、皆さん! よくもワタクシをココまでコケにしてくれましたねぇ……絶対に許さんぞ虫けら共ーーーッ!」

カズフサも叫ぶ。

「コムスメども! 貴様らには二つの選ぶべき道があるっ!!
 レイプしてSATSUGAIか、SATSUGAIしてレイプか好きな方を選べぇい!!」(*注6)

そしてオレ達二人は、勝ち目のない戦いへと突っ込んだ。もはや体力などない。しかしやるだけやるのみだ。
特攻の瞬間、限りない喪失感とともに、俺の心は無となり、空となった。そして俺は全てを失うとともに全てを得た。
もはや、俺の心を縛る者は何も無い。俺は限りなく自由であり、そして―――大暴れを開始した。



<劇終>


(*注1)『コミックL○』:茜新社が発行する「ちっちゃい女の子が大好きなおっきいオトモダチ」向け漫画雑誌。一部伏字にしました。
(*注2)ハリウッダー:カズフサ語。「ハリウッド俳優的な」とかそんな感じの意味らしい。
(*注3)「銀様」「真紅たん」:人気アニメ/漫画『ローゼンメイデン』の主要登場人物。生きた人形。ちなみにコレを書いた中の人は作内カズフサと同じくらいの知識しかないので、 内容に誤りがあるならガンガンつっこんでください。
(*注4)「チュパ衛門」:残酷無残時代劇漫画『シグルイ』の登場人物「山崎九郎右衛門」の通称。特技は一人フェラチオ。「ちゅぱっちゅぱっ」と言うその擬音からこの通称が名づけられた。
(*注5)アレ:アレと言ったらアレ。横隔膜と言いつつ、みぞおちドツく漫画と作者が同じアレ。
(*注6)SATSUGAI:「SATUGAI」ではない。クラウザーさんには『さん』を付けろ。ジャギ様には「様」付けろ。

この作品はフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係ありません。
特に講談社が大合作ポスター作ってるなんてのは妄想以外の何者でも無いので
講談社に問い合わせたりしないよーにしてください。