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第零話・Before meeting you 【投稿日 2006/05/01】

第801小隊シリーズ


アキバコロニー。
宇宙に出来た三番目のコロニーであり、宇宙交通の要所である。
様々な人、文化が行き交うその巨大なコロニーでは、内部で様々な集落を生んだ。
皇国の独立宣言に伴い、地球圏への足がかりとなるこのコロニーにもその影響は及んだ。
コロニーの自治政府内部でもどちらに与するかで意見が割れ、内部抗争の発端となった。
チカ=オギウエはそんな不穏な空気の中、日々を過ごしていた。
「うあー、寝坊しちったー。」
いいながらオギウエはハイスクールへの道を駆ける。
あせりながらパンをくわえているその姿はお世辞にもおしとやかとはいえない。
時期は卒業。迎える彼女は、今後に対するそこはかとない不安を抱えてはいた。
しかし、学校での日々と仲間たちはその不安を拭ってくれていた。
「お、おはよー・・・。」
何とか間に合って教室へとついたオギウエを迎えたのはいつもの仲間。
「遅いよ、何やってんの。」
そういいながら笑う真向かいに座る少女に、オギウエはむくれる。
「・・・だってさ、軍人さんのデータ手に入ったから面白くて・・・。」
「それで遅くまで?・・・ありえないね。
 あんた、そんなものばっか読んでるから色気がないとか言われるんだよ。」
「うるさいな、ナカジマは。」
オギウエは軍人に対し物凄い興味を持つ少女であった。
その興味はなぜ起きたかというと、11歳の時九死に一生を軍人に助けられたことがあったからだ。
それがどこの人であったかは今わかることもないのだが、憧れは募る。
今では、軍人の追っかけに近いことをしていた。
「でも、それも戦争の飛び火がこっちに来たらそれ所じゃないよね。」
「うん・・・。なまじ詳しいから、不安になっちゃってさ・・・。」
「いやだね、戦争なんて。」
「あー・・・。卒業したらどうなるんだろ。」
今の抗争でどちらが勝利するかによって状況は変わる。
皇国は学徒動員を掲げており、そちら側についたら大学など進学どころではなくなりそうなのである。
かといって連盟についたとしても、その安全が保障されるわけではない。
「なるようになるしかないけどね・・・。うちの親父なんかは皇国の仕官だからさ。」
「あ、そうか。じゃあ、皇国側に付かないといけないんだね。」
「そういうことになるね。まあ、私がどうこう言うことでもないし。
 親父は親父でいろいろ悩んでるみたいだしね。」
「ふーん。」
そういって教室を眺めるオギウエ。その不安はどの生徒にも感じられた。
他の仲間も、口々に不安を述べる。
「愚痴るくらいしか、できることもないけどね。」
そういって皆で苦笑い。
「マキター、あれ、マジで皇国軍が欲しいって?」
その言葉を聞いて、少し気になったオギウエはその方向を見る。
「まあね。びっくりしたよ。僕みたいな学生が作ったものをよもやねえ・・・。」
マキタ、と呼ばれた青年と、坊主頭の青年が会話している。
「何の話してるのかね?」
「さあ?マキタのびっくりどっきりメカの話じゃない?」
ナカジマと他の仲間が会話している。
マキタは科学に精通し、その相棒である彼と共に様々なものを作っているというのは学内では有名な話だ。
「皇国軍に採用なんて、すごい話なんじゃないの?」
「かもねー。」
そういってまた違う話題に移る皆。オギウエはその後も視線を戻さずにマキタの方を見ていた。
マキタの視線がこちらを向く。視線が合う。微笑まれてしまった。
「────!!」
びっくりして視線をはずすオギウエ。
「どうかした?」
ナカジマに聞かれて、首を全開で振る。
「な、なんでもないよ。」
不思議なことにオギウエはマキタと視線がよく合う事が多かった。
だから驚いたわけなのだが。またか、と。
その最中である。

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!

警報が鳴って、すでに二時間が経った。
どうやらこの付近で軍事衝突が起こったらしい。
学校の指示の元、オギウエたちはまとまって避難していた。
向かっているのは宇宙港。
「船に乗るってことは・・・。疎開かあ・・・。」
誰かがそうぼやいた。
このコロニーが要所であるだけにこうなるかもしれないというのは誰しもが覚悟していたことだ。
避難船に乗り、皆は一応落ち着いて席に座っていた。
「みんな・・・大丈夫かな・・・。」
オギウエは家族のことを考えてそう呟く。
「あ・・・そうだ。」
携帯を取り出し、連絡が取れないかを確認する。
船が出港する。振動が響く。

プルル、プルル、プルル・・・。

『あ、チカ?大丈夫なの?』
「お母さんこそ大丈夫だった?」
宇宙でもつながる通信装置を使っているため、すでに船は宇宙にありつつも繋がった。
『うん。いまね、船に向かってるわ。他の皆もそうしてるって。』
「そう・・・。よかった。」
『あんたはもう宇宙?それなら・・・。』

ドグワアアアアアアン!!

携帯の向こうから大きな衝撃音が聞こえた。
「お母さん!?お母さん!?」
『・・・わ、分からないけど、大きな爆発があったみたい・・・。』
少し不安になる。なにか、いやな予感が・・・。
『大丈夫よ、もうすぐ船につくんだか』

ツーツーツー

通信が途絶えた。呆然とするオギウエ、そして周りからどよめきが起こる。
その方向を向くと・・・。
「・・・コロニーが・・・。」
コロニーは燃えていた。大きな炎と、光を撒き散らしながら。
一瞬、その光が収まったかと思った。
すると、そのすぐ後に、大きな光が宇宙空間に広がった。
目が眩むほどの大きな光。皆が一瞬コロニーの姿を見失った。
そして、皆の目が元に戻り、そのコロニーがあったはずの方向を見ると。
そこにあるはずの大きな機械の塊がなくなっていた。
「・・・え?」
誰がもらしたかもわからないその言葉。
誰もが呆然とした。誰もがなにが起こったのかわからなかった。
その日、一つのコロニーが消滅した。

落ち込み、誰もが言葉を発しなかった。
沈痛な空気が立ち込める中、船は皇国軍の基地へと到着する。
「諸君らには非常に悲しいお知らせだが・・・。」
そう、船の乗員であるハイスクールの生徒に向けて話す皇国軍士官。
「アキバコロニーは午前10時未明、連盟の兵器によって消滅した。」
その言葉に、分かってはいたのだろうが彼らの感情があふれ出す。
泣き喚く生徒、大声で叫ぶ生徒。大きく地面をけり、落ち込むようにしゃがむ生徒。
「生き残った船はこれとあと一船のみ。おそらく諸君らの家族は・・・。」
そういって沈痛な面持ちの仕官。
「諸君らは当面、我々が保護する。当面の生活は保障しよう。
 その上で問いたい。この非道な行いを許せるものはいるか?
 ・・・いやしないだろう。それならばその手助けを我々はしようかとも思う。
 我が軍で共に戦おうという志のものがいれば名乗り出て欲しい。」
その言葉に、共鳴し、叫ぶ生徒たち。
その姿に口の端をニヤリとゆがめる仕官。
それを眺めていたオギウエは、なんとも言い知れぬ寒気が走り抜けた。
そして同時に、いままで感じたことのない強い昂ぶり・・・もまた感じていた。

「・・・皆、やるの?」
そういったオギウエは仲間たちが皆軍隊へ参加する意向であることに驚いていた。
「そりゃそうさ!家族は連盟に殺されたんだよ!?黙って大人しくしてろっていうの?」
口々にそういう仲間やクラスメート達。
「・・・オギウエもやろう。」
ナカジマの言葉に、怖さを感じつつも、自分も許せないことは同じだった。
憎い。
自分の中にこんなにも強い憎悪というものが生まれるのだろうか。
気付けば、あの最後の母親の声が頭の中でリフレインしていた。
「分かった・・・。」
オギウエは大きく頷いた。

彼女らはその後、まとまって軍事訓練を受けることになった。
目的が目的であるため、彼女らは非常に優秀に育っていった。
時に互いに励ましあい、時に互いを鼓舞しながら。
憎しみを互いに語り合うことで、彼女らにはさらに強い繋がりも生まれていた。
そして、半年の歳月が流れた────。

「ナカジマ、どうしてるかな?」
訓練の大半が終了し、仲間と今後どこに配属されるかを話していた荻上たち。
ナカジマは、三ヶ月が経った頃に、一人違う訓練を受けることになった。
親が軍の仕官であるため、その後継としての訓練を受けているらしい。
「分からないけど、いつかまた会えるでしょ。じゃね!」
そういって仲間たちは別れる。
一人、訓練施設を歩いていると。
「・・・君がオギウエさんだね?」
「・・・はあ、そうですけど。」
初老の男性に声をかけられたオギウエはキョトンとした。
「会わせたい方がいるのだが、来て頂けるかね?」
「・・・はあ。」
その男性に連れられて、ある部屋へと進む。
そして、その部屋の中で出会ったのは、懐かしい顔であった。

「・・・久しぶりだね。」
「ナカジマ・・・!!」
その中には、仕官、いわゆる少尉以上の軍服を着たナカジマが立っていた。
「ふふ。オギウエ、あんたは私の部隊の所属することになったから。皆もね。」
「え・・・!?本当!」
「皆でね、連盟のやつらを倒そう。」
「・・・うん!」
再会の喜びに加え、今後の自分が息のあった仲間たちと共に過ごせることが嬉しかった。
「私の配属先は、地球。最前線だよ。」

やってきた地上は物凄い環境であった。荒野である。
コロニーや訓練施設とは違い、空気は洗浄されておらず、周囲も砂や埃が舞う環境である。
地球とはこんな酷い所なのか・・・とスペースノイドである彼女らを苦しめた。
しかし、そのあたりは訓練を受けてきた軍人である。
目的成就のために日々、懸命に働いていた。

「オギウエさん・・・?」
基地に来て一週間、声に呼び止められて振り返ると、そこにはマキタ。
「ま、マキタ君・・・。訓練で見かけなかったからてっきり・・・。」
戦わずして逃げたのだと思っていた。
「はは。僕はね、科学者として登用されたから。学校で作ってたシステムの転用でね。」
「そうなんだ。じゃあ、ここで研究を続けてるってこと?」
「もう少しで完成する。そうしたら、皆の助けになるんじゃないかなあ・・・。」
「・・・楽しみにしてるね。じゃ。」
「ああ。それじゃ。」
そういって離れる二人。
少しだけ、嬉しかった。また会えたことが、嬉しかった。
「マキタ君・・・。いたんだなあ・・・。」
そう呟くと、自然と顔が綻んだ。この半年、消え去っていた感情。温かい何か。
自然とオギウエの歩調は軽やかになっていた。

「・・・というわけで、この兵器は使用者を限定します。その選別を・・・。」
基地に兵が集められ、マキタが前で言葉を紡いでいた。
どうやらその兵器は周囲に精神障害をもたらす兵器であるとのこと。
使用者には、それに対する耐性がついてなければならないこと。
「・・・。」
ついに完成した兵器に、オギウエは期待する。
これで勝てる。敵を討てる。
その威力の説明を聞き、自然と高揚感も高まる。
その高揚感に多少の違和感を感じつつも、それはすぐに立ち消えた。
そして、その適正試験が行われた。
次々と仲間が脱落していく中、オギウエは残っていた。
生まれ持ってミノフスキー粒子からの干渉性が低かったらしい。
そして、そのパイロットへと、選ばれたのである。
決意を固めるため、髪を後ろで縛るのではなく・・・。頭頂で縛り付けた。

「・・・オギウエ、これから先、あの兵器を使うための耐性強化を行う。
 そのために、色々と不都合が出ることもあるらしいが・・・。それでもいいのか?」
ナカジマはあえていつもの口調でなく上司として話しているのが分かった。
「・・・かまいません。私が一番よいのならば、望むところです。」
オギウエははっきりとした強い口調で言う。
その姿を見たナカジマはオギウエに近づき、抱きつく。
「・・・・・・ごめん。」
「何で謝るのさ。」
「私、オギウエのためなら何でもするよ。」
「なーにいってるの。私の望みは連盟を討つ事。それだけだよ。」
「・・・・・・わかった。絶対に叶えてみせるから。」
そういったあと、二人は笑った。

実験が始まった。マキタの指導の下、ミノフスキー粒子への耐性強化の実験である。
神経を強化するために様々な刺激を与えていく実験だ。
あらゆる実験に、オギウエは耐えた。まるで、死をも恐れないかのように。

「くっ・・・・・・、ううっ!!」
電流が迸る。苦悶の表情を浮かべつつも、必死に耐えるオギウエ。
「・・・。」
それを苦い表情で、ガラス越しに見つめるマキタ。
「・・・ここまでにしよう。」
そういって装置を切る。
「はぁ、はぁ、まだ!まだ大丈夫だから!」
「だめだよ。これ以上は命に関わる。」
「でも!」
「・・・だめだよ。」
そう呟いて、マキタは席を離れ、オギウエに近づく。
「これをつけておけば少しは楽になるから・・・。」
そういって、青い、透き通ったペンダントを渡された。
そのプレゼントに、少し嬉しさがこみ上げるが、すぐに立ち消えた。
感情が、何かおかしくなっていることに気付いた。しかし、それも感情の昂ぶりの中で立ち消えた。

「やめろっていうの?」
マキタと二人で食事をしていたとき、マキタがオギウエに実験をやめるよう言った。
「ああ・・・。これ以上は体が・・・。」
「大丈夫だって言ってるでしょう!?」
「でも・・・。・・・君には人殺しはしてほしくないんだ・・・。」
「いまさらなにを・・・!!」
そういって激怒したオギウエは席を立ち去っていった。
「・・・してほしくないんだ・・・。」
マキタはその姿を後ろから見つめるしかなかった。

徐々に、感情が昂ぶっていくのが分かる。
抑えられないほど攻撃的になっていくのが分かる。
嫌なのに。自分がそうなっていくのが嫌なのに。
それでも、心に憎しみが消えないんだ。

私の心は、どうなってしまうんだろう?

「やっぱり・・・君が適格者だったとはね・・・。」
MAから出てきたオギウエを待っていたマキタはそう呟いた。
冷たい目をしたオギウエ。マキタは、実験が成功したことが分かった。
兵器の運用しても、オギウエの体調に変化は見られなかったのである。
自嘲めいた笑いをして、首を振る。
「こんなこと・・・。」
「・・・マキタ君。MAのこと、お願いするね・・・。」
それだけを言い、外へと出て行った。
「・・・だめだ。やっぱりこんな事。やめに・・・。しなきゃ・・・。」
そういって何かを決意した表情でマキタも外へと出て行った。
その姿を、ナカジマが見ていたことを二人とも気付かなかった。

「・・・この機体は破棄するよ。これ以上戦争を大きくしたくない・・・。
 あいつも、納得してくれたしね。」
二週間がたった頃、研究室にてそうオギウエに伝えるマキタ。
MAの起動準備が出来たと聞いて来たオギウエに、マキタはそう告げた。
「あいつも、ここまで一緒にやってきたけど、同じ意見だった。」
苦笑いすると、オギウエを見つめた。
「だから、オギウエさんももういいんだ。」
「・・・マキタ君。そこまで・・・。でも・・・。」
「・・・これで仕上げだ・・・。この二週間で・・・。準備は出来た・・・。」
そういうとマキタは指を目の前に出すと、左右に振る。
視線が左右に振れ、意識が飛ぶ。
「・・・『いってらっしゃい、チカ』。」
そのまま、ぼうっとしているオギウエを、マキタは座らせる。
意識が遠のいたのか、眠りに落ちてしまう。
「マキタ博士。少しきてもらおうか・・・。」
その声にマキタが振り向くと、そこにはナカジマと、何人かの兵士がいた。
「・・・わかった。オギウエさんは疲れているみたいだからそのまま寝かせてあげてくれ。」
「ああ。わかった。」
そういったナカジマは、オギウエの顔を慈しむように見た。

司令室にて後ろ手に縛られたマキタは、ナカジマを睨む。
少しの間。
「・・・僕をどうするつもりだ・・・?」
口を開いたのはマキタだった。
「死んでもらう。お前の行動は全て調べさせてもらった。
 これは立派な反逆罪だ。」
ナカジマと対峙していたマキタに、銃口が向けられる。
「何で・・・。そこまでして戦争がしたんだ・・・。」
「オギウエの望みだからだ。お前には解らないかもしれないが。」
「違う!そんなこと望んじゃいない!」
叫ぶマキタに対し、ナカジマは意に介せずニヤリと笑う。
「なんとでも言え。お前は邪魔だ。あの子を惑わせる。」
「くっ・・・。」
「相棒とあの世で仲良くな。」
その言葉に顔の血の気が引くマキタ。
「まさか・・・。あいつも・・・。」
「ああ。問い詰めたら戦争なんてするもんじゃないとか言い出す始末・・・。
 軍人としては失格だな。」
「ナカジマ・・・。どうしちゃったんだ・・・。お前そんなやつじゃなかっただろ・・・。」
「・・・私は私だ。何も変わっちゃいない。」
「・・・もういいさ。殺せ。」
「言われるまでもなく。あの兵器は十分に活用させてもらうよ。」
そういわれて引き金を引くナカジマ。しかし、マキタはその瞬間に笑顔を見せた。

ドンッ・・・。

「ぐっ・・・。」
膝から堕ちる。
あんなもの作った罰だったのかな・・・。
それでも・・・彼女だけは・・・。
あのMAに仕掛けた仕組みがうまくいけば・・・。
そう考えながら、マキタの意識は遠のいていった。

銃声が聞こえたような気がして、オギウエは目を覚ました。
・・・自分がなぜここにいるのかがわからなくなっていた。
私は何をしていたんだっけ?
ボーっとする頭の中で、自分のするべきことを思い出そうとしていた。
ん・・・。何だったっけ・・・。
思い出せるのは、私が軍隊に入って・・・。
憎くて憎くてたまらなかったんだ。
でも、怖かった。
憎しみに心が満たされるのが怖かったんだ。
あの時感じた悪寒は、きっとそのことを感じてた。
それでも私は・・・。
・・・だからかな・・・。いつからか・・・。
死にたい。
そう思うようになっていた。
心が、憎しみに埋め尽くされる前に。

「どうされました、お嬢様。」
通路を歩きながら、司令室へと向っている二人。
初老の男性が、ナカジマに向かって語りかける。
「お嬢様はやめろといってるだろう?じい。」
「ふふっ、あなたもその呼び方を変えるのではなかったのですかな?」
「・・・っ!まあ、いい・・・。」
少し恥ずかしそうに顔を不意と横に向けるナカジマ。
「博士の・・・。最後の顔だ。・・・まさか!」
ナカジマがはっとして駆け出す。
丁度目の前に来ていた司令室に入り、ナカジマは叫ぶ。
「MAは!?大丈夫か?」
「?順調に調整中です・・・。このあと試験に入ろうかと思っていますが・・・。」
「そうか・・・。取り越し苦労か・・・。」
ナカジマは、ふう、と息を吐く。
「・・・私は寝る。少々疲れた。オギウエには細心の注意を。」
「了解。」

オギウエは整備場にいた。
眼前に見えるのはあの兵器の搭載された不思議な形のMA。
丸く、上部に太いアンテナ、左右に細いアンテナがある。
皇国ならではのモノアイも、非常に大きなものを使用してある。
ここに、なぜか足が自然と向かっていた。
まるで、何かに誘われるように・・・。
その最中、先ほどたどり着いた自分の結論に納得していた。
思えば実験でも無理をしていた。皆は頑張りすぎって言ってたけど・・・。
あれは・・・。きっと死んでも構わないと思ってただけなんだ。
「おい!何をやってる!」
「・・・試験だ・・・。」
口が自然と言葉を紡ぐ。それに納得したように整備士は引き下がった。
乗り込んだMAの起動を始める。
『だれだ?勝手に起動させているのは!!?』
通信が入るが答える気が起きない。
何かに操られるように・・・。オギウエは操作パネルに触れる。
なぜか、操作法を知っている。
起動する。そのまま、機体は出発する。
整備室の扉を壊しながら、MAは飛び出す。
『パイロット!!止まれ!まだ実験は始まってないぞ!!』
もはや、その声に、何も感じられない。
『その先は連盟の領土だぞ!くそっ!』
どんどん、加速していく。
頭の中が真っ白になっていく。
どんどん・・・。どんどん・・・。
ボンッ!
大きな音がしたかと思うと、機体が揺らぐ。
「!?」
そのまま、機体は地上へと落下していく。
「・・・よかった。ようやく、私死ねる。」

「え?皇国のMAですか?」
ここは第801番地区防衛基地、通称第801小隊の基地である。
夕方、当直をしていたマダラメとササハラ、クチキに入ってきた情報。
「うん。周囲の住民が伝えてくれてね。」
大隊長がやってきて伝えてきた。
「はあ・・・。」
「・・・あの地域って誰か住んでましたっけ?」
「そこは流せ。・・・じゃあ、いくか。第801小隊、出撃!」
マダラメが大きな声でそういうと、三人は立ち上がった。
ササハラは、久々の大事件に、緊張感と共に不思議な高揚感を感じた。
何かが起こりそうな・・・。
そんな予感。

これは、ササハラとオギウエが出会う前の物語である。