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その三 飲み会の後 【投稿日 2005/11/01】

カテゴリー-1月号


斑「聞き耳立てるなって言ったってなー、あんなに大騒ぎじゃ聞くなって言われても聞こえちゃうよなあ、笹原」
笹「ええ、それも一番騒がしいのはうちの惠子ですし・・・。」
斑「まあ、俺らは俺らでゆっくりやろうぜ、朽木君も高坂も寝ちまってるし・・・」
笹「そうですね」
二人はテーブルに酒やつまみを広げて地味な酒盛りを始めた。
斑「・・・・でどうよ?(お約束をはずさない朽木君は寝てるし今度こそ邪魔は入らんだろ)」
笹「・・・どうって?」
斑「だからこの前のコミフェスでさ・・・荻上さんとは仲良くなったのか」
笹「ははっ、斑目さんまでどうしたんですか?どうもしやしないですよ、それどころかアレ以来荻上さんには避けられちゃってますし・・・全然会話もしてませんよ。」
斑「アレって、アレか?荻上さんの同人誌を見ちゃったとかいう件か?」
笹「ええ、わざとじゃ無かったんですけど、荻上さんわだかまりがあるみたいで、壁作っちゃってるってんですかねー。嫌われてんのかなあ」
斑「(うわーすっかり弱気だよ)いや!そんなことないだろ、もともと難しい子なんだよ!(汗)」
斑「・・・しかし何でかなあ、別に大野さんだってヤオイ趣味公言してるし、荻上さんだってなあ、別に俺ら今更どうも思わんよな。」
笹「ええ・・・」笹原の落ち込んだ様子に慌てて
斑「大丈夫!明日は皆でパーと遊びにいこう!なっ!そん時荻上さんとも仲直りすりゃいいって!」
斑「そうですね。田中さんは明日でしたよね?でもうちら場違いですよね。陸に上がった魚。何して遊びましょう?」
斑「ああ、なんでも田中、車借りてコスプレの衣装用意するって聞いたぞ。」
笹「(軽井沢まで来てコスプレ・・・)まっまあ、いいんじゃないですか!(汗)」

深夜一時。すっかり酔いつぶれた斑目はソファーで寝入っている。
笹原は斑目のメガネをずらして口を開けてヨダレをたらしてソファーにもたれかかって寝入っている姿をぼんやりと見て思った。
いい人だよな・・・。親身になって俺の事心配してくれて。先輩というより友人のような親しみで付き合ってくれた人だった。この人に会えて良かったと思う。
ああ、疲れてんだな・・・社会人は大変だよなあと笹原はメガネをはずしてやり、毛布をかけてやった。

その時、部屋の隅に誰かがいることに気付いて、笹原はビクッとした。相手も同様にビクッとして驚いた様子だった。
笹「荻上さん?びっくりしたよ、気付かなかった!いつからそこに?」
荻「いっいえ、ついさっき、トイレに起きて・・・」と顔を真っ赤にして立ちすくんでいた。
笹「ああ、そうだったの」
荻「何も見てませんから!私、何も・・・あっいえ!違うんです、そういう意味では!」
笹「へっ?えっ!いや!違うよ!」
荻「いやだ!何言ってんだろ・・・。ほだなこったから・・・」と半泣きになっている。
笹「!(ああ、そうかそうだったのか。そういうことなのか。そういうことなんだ。)」笹原は初めて荻上の心にたどり着いたような気がした。
笹「ああ、荻上さん!惠子たちはもう寝ちゃったの?」
荻「えっええ、散々大騒ぎして先に酔いつぶれちゃいました・・・」
笹「斑目さんもすっかり酔いつぶれちゃったよ!しょうがない先輩たちだね!」
荻「えっええそうですね・・・本当に・・・。」何事も無いような笹原の態度にほっとした表情を見せた。
笹「飲み会は楽しかった?うちの惠子うるさかったでしょ」
荻「ええ、いえ、でもまあ、色々話してすっきりしました。昔の事も何だかどうでもいい事だったような・・・。あっいえ別に何でも無いんですけどね。」
笹「・・・それは良かった。俺も眠いから先に寝るよ。じゃあ、お休み。トイレの場所は分かるよね?」
荻「ええ、大丈夫です。おやすみなさい。」

笹原は荻上に余計な気遣いさせぬよう毛布を頭からかぶって寝入った。そして思った。まあ、すべては明日だ。合宿は二泊三日あるんだし。嫌われているわけでは無いと知っただけでもとてもうれしい。とにかく明日だ・・・と自然に深い眠りについた。

荻上もトイレから部屋に戻り毛布をかぶった。感情の高ぶりが、静かな興奮を呼び、すぐに寝る事が出来なかった。隣では惠子がいびきをかいて寝入っている。
恥ずかしかった。自分の心をあんなに無用心に無様にさらけだして、涙を見せたことがとても恥ずかしい。
でも苦悩は無かった。むしろ感情の開放は荻上に穏やかな安心感と涼やかな爽快感と開放感を与えた。
覚醒したこの感覚はすぐに収まりはしなかった。寝なきゃだめだ。とにかく明日だ。
明日の新しい自分を迎え入れよう。そう荻上は思った。