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偽らざる者 【投稿日 2006/04/24】

カテゴリー-他漫画・アニメパロ


「…これから…どうなるんだろう。」
ここは椎応大学の屋上、彼女の――春日部咲の最もお気に入りの場所である。
(変わったよね…いつからだろう。『世界』が、『常識』が…こんなにも頼りなくなったのは。)
少し前から。今までの『世界』や『常識』は崩壊の一途をたどっていた。
続発する事件、暴走するかつての友。そして何より、漫画やゲームの中だけの話だったはずの超常的な力。
現実が夢に、妄想に、浸食されているのではないかという不安。そう、ほかでもない自分自身も――
春日部咲もまた、以前の日常からは考えられない非現実的な装いを身に纏っていた。
腰に下げた大剣、体を守る白銀の鎧、青いリボンで束ねられた美しい髪。
(私だって…いつのまにやらこんなんなっちゃうし…)
最後に以前の――退屈だが、穏やかな世界を体感したのはいつだったか。
記憶を辿り、咲は思い出を反芻する。傾き始めた太陽が、晴れの日の薄雲に陰り――

「はじめまして。春日部、さん…いや、『雷神』とお呼びした方がいいかな?」
「!!」
そこにいたのは黒衣の死神のような何か。全てを…ルージュまで黒で統一した奇妙な出で立ち。
傲岸さとそれを取り繕う華麗なる礼節と容姿、ある意味咲と似た天性のカリスマ。
そして何より――その瞳の裏に宿る根源的な優越感――他者への蔑視。
「…あんた――中島だね」
死神は肯定とも否定ともつかぬ左右非対称の笑みを浮かべ――
「…今は中島でねえ。オギーポップだ。」
「オギーポップ…?」
「世界の危機が迫っている…君の協力が欲しい」
「世界の――危機?」
中島――いや、オギーポップは黙ってサークル棟を指し示す。そこには――
朽木に絡まれる荻上の姿。それだけなら別にどうと言う事もないが――何か様子がおかしい。
「荻上!?」
「時間がねえ、一緒に来てくれねえか?」
「な…何だかわかんないけど…荻上が危ないんだな?」
オギーポップは薄く笑うと、返事をせず一方的に駆け出した。
「あーもう、説明ぐらいしてくれ!」

「ふっふふ、見つけましたよ荻上さん!」
「朽木さん?」
荻上は朽木が苦手である。いや、嫌悪と言った方が近いだろうか。
できればあまりお近づきになりたくない人種なのだが…。
「積年のうらみ思い知るがいい!」
「う…恨みって何ですか!」
「ふっふっふ、ワタクシ朽木にセプターとしての才能が眠っていた事には気付かなかったようですね!」
朽木は彼なりの『処世術』を捨て、一方的にまくしたてる。今や荻上への意趣返ししか頭に無いようだ。
力を得て気が大きくなったのだろうか。迷惑な話だ。

「沼/Swamp・水蓮の花びら/Lotus Petalをプレイ!黒2マナで暗黒の儀式/Dark Ritual!
朽ちゆくインプ/Putrid Impを召喚、朽ちゆくインプ/Putrid Impの能力により
荒廃の下僕/Minion of the Wastesを墓地に送る!黒檀の魔除け/Ebony Charmで1点ドレイン、
浅すぎる墓穴/Shallow Graveにより荒廃の下僕/Minion of the Wastesを場に出す!
19/19荒廃の下僕/Minion of the Wastes!ここに召!喚!」

「さあ!完成したカルドセプトの力を見せてやる!泣いたり笑ったりできなくしてやる!」

「カルドセプトじゃないじゃないですか!!!!」

荻上の突っ込み1つで、全てが凍りついた。

「え?これをもとにカルドセプトが作られたんじゃないんですか?」
「…『参考文献』ではありますけど、元ネタとは間違っても言えないですよ…本気で勘違いしてたんですか?」
「じゃ、じゃあワタクシのしたことは…」
朽木は何かを伺うように自らの召喚した怪物に近寄り、おずおずと…か細い声で切り出す…
「…あの、おとなしく帰っていただけると助かるのですが…」

「…こっちだ!」
オギーポップはまるであらかじめ分かっていたかのように咲を導く。
(…オギーポップ…何か…斑目たちがそんな名前のキャラのこと話してたような…何だっけ…)
咲は走りながらも、何とか状況を把握しようと頭を働かせる。
「…何か?」
「いや…別に」
その問いに結論が出る前に、2人は荻上たちの元にたどりつき――
「な…なんじゃこりゃあ!!」
「咲さん!?それにナカ…ジマ…」
そこにいたのは――荻上と朽木、そして屋上に届こうかというほど巨大化した怪物。
…朽木はどうにか帰ってもらおうとしているようだが、話しかけるたびに返って怒りを買い、
状況はあっという間に悪化。ついに怪物は朽木――荻上のいる方向へ逃げた朽木に向かって、
手に持つ巨大な短剣を振り下ろす――
「…荻上!」
瞬間、咲の持つ大剣が陽光を受け燦然と輝く!――約束された勝利の剣――!
「天の願いを胸に刻んで心頭滅却!聖光爆裂破!」
「今だ!」
咲の聖剣技が炸裂した刹那。オギーポップの放つ無数の鋼糸が怪物を切り刻んだ。

オギーポップは振り返らない。後ろの――荻上を、畏れるように。
「…中島…」
「…今はオギーポップだ。中島とは…意思を共有していない。」
「さて……」
オギーポップは朽木の髪を掻き分け、額を日の光のもとに晒す――
「…これだ」
謎の…生物のようなものが朽木に憑り付いていた。
「肉の芽…他人を支配するための…小型洗脳装置のようなものだ。」
「…朽木を?何の為に?まさか荻上を狙ってってわけでもないだろうし…」
「さあ…僕には判らないけど。…一応、これ友達…なんだよね?」
「ええ…うざいしエロいしキモイオタクですけど、一応…げんしけんの仲間です。」
「そう?…それじゃ、これを取ってあげたほうがいいかな。」
「…取ってもうざいしエロいしキモイのは変わらないですけど。その方がいいと思います。」
「ま、うざいしエロいしキモイとはいえ、仲間を襲ったりはしないだろうしね」
「そうだな。さっさとうざいしエロいしキモイだけの無害な朽木に戻してやろう。」
オギーポップから伸びた鋼糸が正確に肉の芽を固定し、引き抜き、痕をふさぐ――

「さあ!これでワタクシ肉の芽が抜けてにくめないクッチーになったわけですが!」
「…最低のギャグセンスだね。彼、いつもこうなの?」
「ええ。…いつもはこんなもんじゃないですよ。」
「…こんな『もん』じゃないの?」
「ええ。『もんじゃない』…です。」
「クッチーウゼー。」
「ノォーー!その言葉一つ一つがワタクシを責め苛む!イイ!すごくイイ!!」
「…なあ、殴っていいか?」
「…殴って治るならとっくにそうしてますよ」
「…それもそうか。」
「ンッン~!素直になれない女心!わかります、わかりますとも!」
「さあ!遠慮なくデレモード突入して良いのですよ!?クッチーの胸に飛び込んでおいで~!!」
その言葉に反応したのか?オギーポップは無造作に朽木に近寄り…
「オオ~!どなたかは存じませんがその素晴らしい容姿!クッチーは素直クールも守備範囲で…」
胸倉を掴み、まるで歩道を走れと命じた悪のカリスマのような圧倒的な威圧感で宣下する…
「…僕は君のジョークに価値を見出すほど落ちぶれてはいない…それより話してもらいたいことがあるんだけど。」
「な、なにを言って…」
「朽木君。」
オギーポップはただ朽木を見つめ、しばらくして――わずかな笑みを浮かべた。
…全てが凍りつくような、天性の氷の微笑――
「は、はいい!!恥ずかしながら朽木全面的に協力します!!なんなりとご命令を!!」
「…何か喜んでない?」
「…あまりその辺りに踏み込みたくないんですが…」
「じゃ、話してもらおうかな。君に『力』をくれた人のことなんだけど…」
「ええ!ええ!クッチー全て見せちゃいます!何ならこの体もォォ!!」
「それはいらない」

朽木の口から出てきた人物は、やはりというか納得と言うか…
「…また原口か…」
「懲りない人ですね…」
「…ワタクシが再会した時には、『優秀なるオタク人種』がどうとか…演説を行ってまして…」
「…は?」
「優秀なるオタク人種…ですか?」
「まるでどこかの独裁者のコスプレのような服を着て…」
「…そういう…何ていうか徒党を組むタイプだったか?あいつ。」
「マー、ワタクシはその思想よりオマケの香港19××(純正品)に惹かれまして、つい…」
「…で、あんなものを埋め込まれて何も憶えてはいない、と。」
「はい、その通りで何とも、まあ面目次第もない所なのではありますが…」
オギーポップはしばらく何かを考えるような仕草を見せたが、
皆の注目に気付くとそれを放棄して場の空気を変えた。
「まあ…もう少し調べないとなんとも言えねえ…かな。朽木君、片付けは任せたよ」
「イエス、サー!」
朽木は嬉々として(今度はちゃんとカルドセプトのクリーチャーを)召喚し、
後始末を始める。八つ裂きの怪物にたかるグレムリン、そして輝く夕日――何かを感じさせる風景ではあった。
その光景を惜しみつつ…か、オギーポップは名残惜しそうにどこかに向けて…歩き出した。
「…中島…いや、オギーポップ。…どこに?」
「…僕はどこにでもいるし、どこにもいない。世界の危機さ迫ってる時――その時には必ず現れる。」
「僕はハアまんず自動的(ずどうてぎ)だがら~。」
「そ、そうなんだ…」
オギーポップはゆっくり歩を進め、夕日の差す街の中に消えた―――

次回予告
「…斑目…さん?」
「…言うな…いや!言いたい事は分かるが!これは体質と言うか能力であって!」
椎応大学に謎の魔法少女を見た!
「キバヤ…いや小野寺さん、これは…!!」
「イケ…いや笹原、俺達はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない…」
伝説の特捜班が、今、動き出す…!?
次回「斑目さん、マジカルシャワーはきついです」
このままでは人類は滅亡する!!