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妄想少年マダラメF91・3 【投稿日 2006/04/13】

妄想少年マダラメF91


……Time Passed by.
  You unpick the hairstyle and turn around.
  Your how with a smile is also different now.
  Far away. It grows up by “the magic at time”.
  Fairy,Please do not become more beautiful than it.
  I' waiting for you, look into my eyes.……


【1991年9月21日14:35/ファストフード店前】
「メーくんの買い物も付き合うよ」
「あー、いいよ別に」
そっけないメーに、ハルは、「ムムー? 女の子に何かプレゼントでも買いにきたのか?」と、ニヤニヤしながら尋ねる。
真っ赤になって否定するメー。初めての女の子へのプレゼントは、すでにハルの頭の上でかわいく揺れているのだ。
メーは、「まーまー、そんな話はひとまず置いといてね、何か食べよう!」と目の前の店に駆け込み、ハンバーガーとコーラを買ってきた。2人の子どもは店のそばのベンチにちょこんと座る。

メーは、隣で目を輝かせておしゃべりする少女に見とれていた。
彼は、女子とは必要最低限しか話をしたことがない。女の子を前にすると赤面してしまうことを小馬鹿にされ、自分も距離を置いていた。まあ、クラスの女子との関係は、周りに配慮しない彼の言動のせいでもあるが……。
しかし、ハルとは自然と語らい、笑い合うことができた。

(あいつらとは大違いだよ。ハルはこのままどんどん可愛くキレイになっていくんだろうな……)
「……ずっと見守っていたいなぁ……」
「え、何?」
「いやいや何でもない(汗」

遠くに目を移したハルが何かに気付き、「アレレ?」と呟いた。メーが視線をたどると、ボーズ頭の男の子こちらへ手を振っている。
ハルは大声で叫びながら駆け出した。

「“マーくん”どこにいたのよ!」
駆け寄っていったハルは、両の拳でボーズ頭のこめかみをグリグリといたぶる。男の子は痛いはずなのに、ニコニコと笑顔を絶やさない。
「なにやってたのよ~」「あ~ごめんごめん!」
じゃれ合う2人の姿を遠目に見ながら、メーは置いてけぼりになったような寂しさを感じていた。

【2005年9月24日14:35/軽食店前】
「斑目の買い物も付き合うよ」
「あー、いいよ別に」
そっけなく答える斑目に、咲は、「あー……そうだったね……」と、何かを悟る。
斑目は濁った空気を振払うように、「まーまー、そんなコトはひとまず置いといてね、小腹を埋めますか!」と歩き出した。
2人は、この界隈では割と洒落た雰囲気の店に入る。
「うぉ、ネットやってるよー」と驚く咲。店内では無線LANを使い、手持ちのパソコンでネットを楽しむ客が大勢いた。
咲は、「ホントはメイド喫茶に連れて行かれるんじゃないかと思ってたよ」と笑う。
「そんな所行ったら速攻で帰るでしょ」
「ご明察~! でもまあまあ雰囲気いいんじゃない?」
「春日部さんにそう言っていただければ重畳デスヨ」

斑目は、2人だけでも自然に会話ができていることに自分で感動した。いつもなら頬が紅潮してしまい言葉を選んで黙ってしまうのに。
しかし今日は違う。「自分の領域」である秋葉原にいることもあるのだろうか。
斑目はこの機会に、少しだけの勇気を出そうと思っていた。(どこかで、いいタイミングを……)自分のカバンの中に手を入れ、小さな紙袋を確認した。

軽い食事を終えて、咲は店の外を歩く人たちの姿を見ている。斑目は、その横顔を見ながらカップを口に運んだ。
遠くを見つめる咲の顔は、店外からの明かりを受けて肌が透き通って見える。
その姿を、ずうっと見つめていたくなる。このままこの店で、日が暮れるまで過ごしていたい。移り変わる陽射しに照らされた瞳と横顔を、何時間でも眺めていられる気がした。

(もうこれ以上、奇麗にならないでくれ……)
「……なーんて、言える立場じゃあないけどねー」
「え、何?」
「いやいや何でもないですよ(汗」

再び窓の外へ目を移した咲が何かに気付き、「何アレ?」と呟いた。
斑目が視線をたどると、着ぐるみが外からこちらへと何度も手を振っている。メイド服で、頭の大きな萌えキャラの着ぐるみだ。
着ぐるみはおもむろに自分の頭を抱え、その頭部パーツを脱いだ。

「コーサカ!」
店内にいた2人は思わず大声でハモってしまう。
咲がパッと明るい表情を浮かべた。それを見た斑目は、自分が必要とされる時間の終わりと、「タイミング」を失ったことを残念に思った。

【1991年9月21日14:55/神田青果市場跡地前】
ハルに、「どうしてここが分かったの?」と聞かれた“マーくん”は、「カン」とだけ簡潔に答えた。
そしてメーに向き直ると、「サッちゃんがお世話になってすみません」と、ぺこりと頭を下げた。メーは、(これもあだ名かな?)と思いつつ、ぎこちなく笑う。
ハルの友達。自分の知らない男の子との日常。メーは距離感を感じていた。

ハルが、「この子がマーくん。マコトだからマーくんだよ」と紹介して、「メーくん今日は本当にありがとう!」とニッコリ笑った。
「いいってば……」
「メーくん、お兄ちゃんみたいだった。ワタシお兄ちゃんが欲しかったからうれしかったんだー」
メーは、胸の奥がズキンと疼くのを感じた。

3人は、駅前の青物市場の跡地まで一緒に歩いた。市場は2年ほど前に移転している。
駅の入口で、「私たち帰るね。ありがとう、メーお兄ちゃん!」とハルが手を振る。隣でマーくんが頭を下げた。
メーは、改札を抜けて行く2人に笑顔で手を振ったが、ふと、(名前……本当の名前を聞かなきゃ!)と気付いた。どこに住んでいるのか知りたい。またいつか一緒に遊びたい。そう思い立ったメーは、ハルに向かって叫ぼうとした。

その時、「斑目、班で行動しろと言っただろ! もう集合時間だぞ!」と、後ろから担任の先生に襟を掴まれてしまった。
ホームへ向かう人の波の中に、手をつないだハルとマーくんの後姿が飲み込まれていく。弾むように揺れる赤いリボンも、見えなくなった。
(もう、会えない……)
先生の小言も耳に入らず、ハルを見失った場所をうつろに見つめるメー。深いため息をついた時、「メー」はもう「斑目晴信少年」に戻っていた。

斑目少年はようやく、集合場所へと歩き出した。
トランジスタや電飾類を売る店が、ぎっしりと軒を連ねる通りを抜けていく。店先のラジオの音が耳に入ってきた。
『先日ニューアルバムを出したT○ネットワークことT○N。このバラードは5年も前の曲になるんですね~』

……Far away,君が変わってゆく全てを 見つめていたいから
  Fairy,それ以上離れていかないで
  I' waiting for you, look into my eyes.……

斑目少年はゆっくりと歩いていく。やがてその姿は、通りを埋める雑踏の中へと消えて行った。

【2005年9月24日14:55/クロスフィールド新ビル前】
着ぐるみを着てエロゲーのプロモーションにかり出されていた高坂は、近くのゲーム販売店で私服に着替えて出てきた。

「今日はもう終わっていいって!」
高坂はいつもの笑顔で、「斑目さん、咲ちゃんがお世話になっちゃってすみません」と、ぺこりと頭を下げた。
「いやー、たまたま時間が空いてたからハハハ……」
斑目はぎこちなく笑う。咲と2人で座っている姿を見られて、少しばかりの背徳感があった。
高坂の隣に落ち着いた咲は、笑顔で斑目に向き直り、「今日はごめんねー、バカな腹いせにつきあってもらっちゃって」と手を合わせた。
「いいってば……」
「あとは気兼ねなく“買い物”して頂戴!」
「ダカライイッテ……(汗」

青物市場跡地の広場は今、「クロスフィールド」と呼ばれる施設へと整備されている。その横を抜けて、3人は駅まで一緒に歩いた。
駅の入口で、「じゃあ、私たち帰るわ。サンキューね」と咲が手を振る。高坂も軽く頭を下げた。
斑目は、改札を抜けて行く2人に笑顔で手を振った。その姿が見えなくなると、「ふぅ」と、一つため息をつく。
彼のカバンの中には、咲と最初に入った店で買ったアスキーアートのマスコットが2体、包装されて入っていた。

『高坂、こういうのも好きかなあ』

この呟きを聞いた斑目は、咲が店を出た後に思わずマスコットを買い求めていたのだ。しかも、「自分と咲」のものではない。結局、渡すことはできなかった。
斑目は踵を返し、中央通りに向けて歩きはじめた。

斑目は歩きながら、(あー……、昔もこんなことがあったような……)と思う。
次第に思い出しつつある過去の記憶。可愛いリボンと、きれいな髪、屈託のない笑顔……。
(中学になる前だっけかな。あの子と友達になってたら、女の子にも慣れて、春日部さんと積極的に話せるようになっていたかな)
「そういや名前も聞かなかった……いや、読めなかったんだよな」
バカだなあと自嘲した時、その子の「読めなかった」名札が、うっすらと記憶の霧の中から現れてきた。
ピンクのチューリップをかたどった名札。クラス名の下に書かれた文字は確か、……春…………日……部……。

「ハル!?」

斑目は雑踏の中で立ち止まって駅のホームを見上げた。
2人を乗せているであろう電車は、ゆっくりと加速しホームを離れつつあった。
「まさかな……ありえない……」
斑目は、「秋葉原は大通りしか歩いたことがない」と話していた咲の言葉を思い起こした。
深いため息をついて空を見上げると、抜けるような青空に、突き刺すようにそびえたつ新しいビルが視界に入った。少しばかり傾いてきた陽に照らされて、キラキラと光を反射させている。

斑目は再び、ゆっくりと中央通りへと歩み始めた。やがてその姿は雑踏の中へと消えて行った。


【2005年9月24日15:00/秋葉原駅発山手線車内】
咲と高坂は、電車に乗り込んだ。
ドアのそばに寄り添って立つ。窓からは今まで歩き回った秋葉原の街が見渡せた。
高坂のイヤホンから流れてくる音声に気付いた咲は、「コーサカ、何聞いてるの?」と尋ねる。
「ネットラジオの番組落としてきたんだよ」
「また声優?」
「これはちがうよー。咲ちゃんも聞いてみる?」
高坂はイヤホンの片耳を咲に渡して左右を分け合った。咲は、子どもみたいな高坂の行為に微笑みながら、“繋がっている”喜びを感じた。
ホームに発車を告げる音楽が鳴り響いてドアが閉まり、ゆっくりと電車が加速した。

窓に映る秋葉原の街並み。咲は、動き始めた景色にふと懐かしさを感じた。(あー……、昔もこんなことがあったような……)と思う。
何気なく高坂に、「私たち、一緒に秋葉原に来たのは初めてよね?」と尋ねる咲。
高坂は、「小学生の時にも来たことあるよー。2年か3年の時だったかな? 神田から万世橋まで一緒に歩いてたのに、咲ちゃんは秋葉原まで行っちゃたよ」と、サラリと答えた。
「?」
咲は、忘れていた出来事を、記憶の棚の奥底から引っ張り出されたような気がした。
高架線を通る電車……、赤いリボン……、親切だった丸メガネの男の子……。
そこに重なる、あのひとの姿……。

「メーくん!?」

咲はドアに張り付くようにして、窓から秋葉原の街並と、眼下を歩いているであろう「メー」の姿を捜そうとした。
しかし、通りはすでに彼方へと過ぎて、次々と流れてくる景色の向こうに霞んでいる。遠くなっていく高層ビルが、少しばかり傾いてきた陽に照らされて、キラキラと輝いて見えた。
「どうしたの?」
高坂が声を掛ける。咲は外を見つめながら、「まさかね……ありえないよ……」と呟いた。
(斑目があの子だったら、あの日のことを憶えていないわけがない……)

一つため息をつくと、咲は高坂に向き直った。
「何でもないよ」と笑顔を見せる。気を使っているのではなくて、心からの笑顔だ。
そう、今日は高坂が一緒にいる。自分の心を満たしてくれている。今はその幸せに浸ろうと思った。

片方だけのイヤホンからは、ネットラジオのパーソナリティーの声が聞こえてくる。
『T○Nがこの曲を出して、もう20年になるんですね~。もはや懐メロの域ですね……』
ガタンゴトンと揺られつつ、咲は高坂に体をあずけた。彼のぬくもりを感じて安堵の表情を浮かべ、ゆっくりと目を閉じた。


……Time Passed by
  髪をほどいて振り返る
  君は今 ほほえみ方も違う
  Far away
  時の魔法にかけられて 大人になってゆく
  Fairy,それ以上奇麗にならないで
  I' waiting for you, look into my eyes.……

【1996年/エピローグ】
秋葉原駅。電気街口から次々と、紙袋を手に持った男達の群れが吐き出されては、ラジオ会館や大通りの方へと消えて行く。
パソコンが普及してから、マニアックな人種が増えてきたという。
そんな秋葉原駅の改札から、一人の少年が出てきた。

「秋葉原よ、私は帰って来た!」

改札で絶叫して周囲のヒンシュクを買った少年は、えりあしを少し伸ばし、顔の輪郭に比べて大きめの丸メガネをかけていた。
ひょろりとした長身にリュックを背負っている。
どこにでもいる男の子。
彼の名は斑目晴信。この時、中学2年生。今日は久しぶりに秋葉原に足を運んだ。

この日、彼は悩みに悩んだ末、晴れて初めての「18禁同人誌」を買う。←若すぎです。
悩んだ末……ではあるが、彼の好み自体はハッキリとしていた。
「ツルぺタでロリ」
その原点が、小学生の時にこの街で出会った少女・ハルかどうかは定かではない。
しかし、その影響を感じさせる発言がある。
彼は後年、大学の後輩にこう告げているのだ。

「血のつながった妹なんて、要るわけないじゃないか」と。


<完>