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妄想少年マダラメF91・2 【投稿日 2006/04/04】

妄想少年マダラメF91


……Why do I live my life alone with nothing at all.
  But when I dream, I dream of you,
  Maybe someday you will come true.……


【2005年9月24日13:50/大通り】
咲は、慣れない秋葉原での不安といら立ちからとはいえ斑目をKOし、あまつさえわがままをこねて困らせていた。
悪気があるわけではない。
「えー、俺がおごるの?」と渋る斑目に、「そんなんじゃないよ。私も出すし。ここが良く分かんないだけ」とぶっきらぼうに答える。
しかしその内心は、(せっかく知り合いに会ったんだから、一緒に行動したい……)と思っていた。
起業の準備に明け暮れていた日々に思わぬ時間の空きが出来て、心にポッカリと穴が開いたような気持ちになっていたのだ。
こういう時、一緒にいて心を満たしてくれるはずの高坂は、軽井沢の旅行以来再び忙しく働いており、会う機会がない。今まで忙しいからこそ、ここまでの寂しさも感じなかったのではないだろうか。

そんな思いを知ってか知らずか、「場違いな場所にきちゃったのがそもそも間違いじゃねーの。俺も忙しいの!」と言い放つ斑目。咲もついつい、「忙しいってぇ? どうせエロ本やエロゲー買いにきたんでしょ!」と毒づいてしまう。

「……」「……」にらみ合って沈黙する2人だが、斑目が矛を収めた。

「……しょ、しょーがねーな。俺も小腹が空いていたから、い、一緒に食う?」
落ち着きのない口調で咲に語り掛けた。小腹が空いているというのは嘘である。昼食を食べていなかった彼は、駅に着くなり駅構内のソバ屋でキツネソバを食べていた。
咲は、(気を使ってくれている)と気付き、「うん。ありがとう」と素直に答えることにした。

「……でも、私と一緒にいる間はエロ本購入なし!」

ガックリ肩を落とす斑目は、「俺のイメージはそれしかないのか?」と突っ込む。咲は腕組みをして、「私に買いに行かせたことだってあるじゃない。ここでは真っ当なところに案内してネ」とニカッと笑った。

【1991年9月21日13:50/中央通り】
少女は、初めて出会った斑目少年を、不安と勢いからとはいえKOし、あまつさえわがままをこねて困らせていた。
悪気があるわけではない。
「俺もこの街初めてなんだけど……。まあ、歩いているうちに友達も見つかるかもしれねーしな」と受け入れてくれる(実際は断りきれない)、人の良い斑目に甘えたくなっていた。
しかし、「ま、俺のバイオコンピュータで探せば、バーニヤ1つでも大丈夫」と、アゴに手を当て意味不明な自信を覗かせる少年を見て、(う……この人大丈夫かな?)と、やや不安になった。

「で……名前なんだけど……な、なんて言うの?」
斑目がちょっと緊張ぎみに尋ねてきた。女の子には慣れていない。胸についた名札に目をやった。「春日部」と書かれている。春日部咲はこの時、小学2年生だった。

だが斑目少年は名札の字を、見たまんま、「……ハルヒブ?」と読み上げた。
カチンときた咲は、相手の鼻先でリコーダーを振り回し、「ひどーい!……私の名前はネ……」と本名を言いかけたが、すぐに、「……そうだ。名前の字の一つをあだ名にしようよ!」と提案した。
彼女のクラスの女子の間では、「春」や「日」などの1字を可愛く呼び合うのが流行っていたのだ。
「えー、じゃあ……はる?」
斑目は単純に、名字の頭に付いた「春」の一字を取って、咲のことを「ハル」と呼んだ。
ハルも、「じゃあ、キミの名前もね」と、少年の胸に付いた名札をじいっと凝視する。斑目は思わず猫背の背を伸ばし、胸を張った。少し頬が赤くなっている。
名前を読み取ろうとした咲だが、小学2年生には、「斑」「目」「晴」「信」を組み合わせてどう読むのか分からない。
それどころか、(「斑」ってどう読むの? 「晴」って何だったっけ……)としばらくの間、やぶにらみで名札を見つめた後、顔を上げて口を開いた。

「……め……?」

ガックリ肩を落とす斑目は、「それしか読めんのか?」と突っ込む。ハルは、「しょうがないでしょ。分かんない字使ってるんだもん。メーくんで決まりね」とニパッと笑った。

【1991年9月21日14:00/外神田】
「ハル」は「メー」と一緒に、初めて訪れた町を散策することにした。中央通りから小道へと入ってみる。
通りは雑然としていた。ジャンク品やラジオの部品などを売る露店や、買い求める人たちのにぎわい。先に見える高架線を電車が通過する。小さな2人には空を埋め尽くされているように思えて、圧倒された。
「スゴイネ!」
目を輝かせるハル。メーも無言でうなずいた。
美少女と、ちょっとやぼったい男の子。不釣り合いな2人が並んで歩いている。

「どこか面白そうなところないかな……あそこに入ってみようよ!」
「え?」
ハルはニヤリと笑うと、アニメ絵の看板がかかっている雑居ビルへと入り、階段を駆け上がる。メーが慌てて追いかけた。
上りきったところには、ガレージキットやアニメグッズを売るショップがあった。2人はおそるおそる入って行く。
「うおーすごーい!」
店内のガラスケースには、精巧な造形のアニメキャラや特撮キャラの塗装済みガレージキットが並んでいた。
精巧なガンガルの塗装済みキットを見て、メーが、「これ俺も持ってるよ」と語った。
ハルに、「メーくんもこんなの作れるの?」と聞かれた斑目は、「ハハハ、まあねー」と頭をかく。実は、小遣いをはたいて通信販売で取り寄せたものの、作れずに涙を飲んでいる。そんな裏事情はハルには分からない。
ハルは別の一角に視線を移して、「これ知ってる!」と駆け寄った。マネキンに黒いワンピースの衣装と、赤い大きなリボンがつけられていた。数年前に公開された映画「魔女の○急便」のコスプレ衣装だ。

しかし、はしゃぎ回る2人は店員ににらまれ、ハルはそそくさと退散した。狭い階段を急いで降りて外へ出るなり、ハルは、「あはははっ」と笑った。
ところがメーがなかなか降りてこない。「怒られてるのかな」と心配してビルの階段を覗き込むと、ようやく遅れて降りて来た。ハルは、「おそいよー」と声を掛けた。

メーは、先ほどの赤いリボンが処分価格になっていたのを見て、一念発起して買ってきたのだ。
「ええー、いいよぉ」と遠慮するハル。メーはドキドキしながら髪に触れ、ワンタッチ式のリボンをつけてあげた。
照れくさそうに笑うハル。赤い大きなリボンは、弾むような歩みに合わせてゆらゆらと揺れた。

【2005年9月24日14:00/外神田】
咲は斑目と一緒に秋葉原を散策することにした。「大通りしか歩いたことがない」という咲に、斑目は中央通りから小道へと案内した。
通りは雑然としていた。パソコン部品やジャンク品などを売る露店や、買い求める人たちのにぎわい。変なチラシを配る人。先に見える高架線を電車が通過する。
咲は「ん?」と上を見上げたまま立ち止まる。

視線に気付いて、「あ、何でも無い。……これが斑目の生息域かぁ」と見渡す。
「なんだか人聞き悪いな」
「でも面白そうだよね。ヌルい活気というか……」
「ヌルい活気って、意味わかんねー」
斑目はブツブツ文句を言いながらも笑顔になる。こぎれいな女性と疲れたリーマン。不釣り合いな2人が並んで歩いている。
咲は、そばに誰かがいて、屈託なく笑えるのが楽しかった。最近の忙しさ、寂しさを忘れさせてくれる。
「ねえ斑目。食べる前に、ココの雰囲気を味わってみたいな」
「え?」
咲はニヤリと笑うと、すぐ側にある、無難そうに見える雑居ビルへと入り、階段を駆け上がる。斑目が慌てて追いかけた。
「うわ何だこりゃ」
階段の壁にはパウチされた極彩色の広告が所狭しと貼られている。機種表示の英数字や値段表示に、咲はカルチャーショックを感じた。
店はパソコン周辺の小物を扱っていて、倉庫のように商品がひしめいている。かわいいマスコットのグッズも売られていた。アスキーアートと言われてもピンとこないが、マスコットを手にして、「高坂、こういうのも好きかなあ」とこぼした。
気を取り直し、「ここまで雑然としてても成り立つんだー」と唸る。店の雰囲気は興味深かった。
「春日部さんの思う店とは違うからね。俺はこっちの方が落ち着くよ」
「キモオタ向きの空間だ!」

声が大きかった。店員ににらまれ、咲はそそくさと退散した。狭い階段を急いで降りて外へ出るなり、咲は、「あはははっ」と笑った。
ところが斑目がなかなか降りてこない。心配してビルの階段を覗き込むと、ようやく遅れて降りて来た。咲は、「おそいよー、どうしたの?」と声を掛けた。

「ゴメン何でもない……何笑ってるの?」と斑目。咲は、「お店を冷やかして逃げるなんて、子どもみたいだよねー」と笑顔を見せた。
笑いながら咲は、(……昔、こんなことがあったような……)と思った。

【1991年9月21日14:20/電気店】
様々な電気製品が並ぶ大きな店に入ったハルとメー。品物を選ぶわけではないけれど、店内を歩き回るだけでもとても楽しかった。
時折、メーがハルに手招きをして、2人でショーケースのかげに隠れた。棚の間から覗くと、メーと同じ名札を付けた子どもの姿が見えた。メーはハルのことを友達に見せたくないらしい。
ハルはワクワクしながら周りを見回し、(かくれんぼみたいだ!)と喜んだ。

店内で、ふとハルが立ち止まる。視線の先に、黒髪を束ねた女の子が「あ~う~」と、一生懸命に電子辞書をいじっては首をかしげていた。
ハルは駆け寄って、「どうしたの?」と尋ねる。すぐにメーの方に振り返って、「ねえメーくん! 凄いよこの子、私と同い年なのに、もう英語の勉強するって!」と大きな声で叫んだ。
傍らで黒髪の子が、「メー?」と首をかしげる。
「一緒にいいのを探してあげるよ!」と目を輝かせるハルに、黒髪の子は、「そんな大げさなことじゃないよぉ」と、翻弄されて慌てた。

ハルが、「よくここに来るの?」と尋ねると、黒髪の子は首を横に振った。
「お引っ越しの準備でお買い物。私来年から……」
その時、レジの方から、「カナちゃん、変圧器買ったから次に行くわよー。いらっしゃい」と呼ぶ大人の声がした。
「あ、ごめん。行くね……どうもありがと。お兄さんもありがとう……」
黒髪の子は、手を振って駆け出して行く。その先には荷物を抱えた親らしき人の姿が見られた。
ハルは手を振りながら、(お兄さんかー、そう見えるよね)と、自分よりちょっと背の高いメーを見上げた。

親切なお兄さんに甘え、楽しいひとときを満喫してはいるが、ふと、(コーサカ、何やってるんだろ……)と思った。

【2005年9月24日14:20/中古ソフト店】
様々な中古DVDやCDが並ぶ店に入った咲と斑目。咲はCDを買い求めたが、斑目は店内を歩き回っては、時折、咲の物色する品にコメントする。
「あー、その歌手、去年アニメの主題歌を歌ってたよ」
「ゲゲッ、そうなの?」
「ソ○ーとか、アニメ主題歌で歌手を売り出すからな。アニソンにはアニソンの良さがあるのに、面白くもない歌が増えて許せんのよまったく!」
熱く語る斑目。いつもの咲なら無視して終わるところだが、今日のところは話に合わせて軽くうなずいていた。
こんな姿は一般人の友達には見せたくない。咲は周囲が気になって周りを見回し、(ちょっと隠れたいかな)と思った。

「あれー、咲さん?」
自分を呼ぶ声にビクッと反応する咲。キョロキョロと声の出所を探す。視線の先には大野が立っていた。店内に入りつつ手を振っている。
黒髪が揺れる。その後ろから、荷物を両手に抱え、汗をかきつつ田中がついてきた。
コスプレ用の素材の買い出しを兼ねたデートらしい。意外な場所で出会ったことを喜ぶ大野の脇で、斑目と田中は、「よう……」「田中、大変だな……」とあいさつを交わす。

咲が、「生地もアキバで買うの?」と尋ねると、田中が首を横に振り、「いや、特殊なものだけ。生地は西日暮里で買うさ」と答えた。
大野は、「珍しい所に珍しい組み合わせですね」と笑う。
ため息を一つついた咲は、「話すと長くなるけど、一言で言い表すと、地獄に仏というべき状況かな」と返し、「それよか一緒に何か食べていかない?」と誘ったが、コスプレカップルはこれから西日暮里だという。
大野はあっけらかんとしていて、咲と斑目の仲を疑う様子は全くなかった。咲は大野たちとの別れて際、ふと(私ら、ほかの客からは、どんな関係に見えるのかね……)と考え、自分より頭一つ背の高い斑目の横顔を見上げた。

斑目を従え、楽しいひとときを満喫してはいるが、ふと、高坂の顔が浮かんだ。斑目と高坂を比べてしまっている自分に驚き、(コーサカ……いまどこにいるのよ~)と心の中で叫びつつ、ブルブルッとがぶりを振った。


……なぜ私は孤独で何も無い人生をおくっているのでしょうか。
  だけど、夢を見れば、あなたの夢を見れば、
  いつの日か本当にあなたに会える……

(つづく)