シンデレラ 【投稿日 2005/10/27】

カテゴリー-童話パロ


      シンデレラ 荻上千佳
      王子    笹原完士
      魔法使い  笹原恵子
      姉1    大野加奈子
      姉2    田中総一郎
      姉3    斑目晴信
      付き人   高坂真琴
      ナレーター 春日部咲

 むかしむかし、あるところにシンデレラという女の子がいました。女の子は三人の姉と一緒に
暮らしていました。ところが、この姉達というのがとても意地悪で有名だったのです。
「シンデレラさん、今日はこのコスプレをしてもらいますからね」
(ちょっ……大野先輩! いきなり台本と違う事言わないで下さいよ!)
(いいじゃないですか荻上さん。私的にはこの方が萌えるんです)
(よくありません! 絶対嫌ですからね!)
(あっ! ちょっと逃げないで下さいー)
 ……。えーと、シンデレラは姉の強引な行為から逃げ出す毎日でした。
(田中、今日の打ち上げ場所どこだっけ?)
(駅前の○民、予約してるけど)
(そうなんだ、あそこの食い物まずくね?)
(でもそのぶん安いからなー)
(確かに。ところでさーあの大野さんも、やっぱありなわけ?)
(そりゃあ、ありでしょ)
 こらこら、そこの女装オタク二人組。ひそひそ話さない。
『好きでこんな格好してるんじゃないわ!』

 シンデレラは姉に言われ、せっせと衣装の仮縫いをしていました。当の姉達はというと、お城
で開かれているパーティに出かけていたのです。
 一人取り残されたシンデレラは、それでも懸命に働いていました。
 やがて一段落すると、シンデレラは呟きました。
「あーあ、わたすもパーティ、行きたかったなぁ」
「その願い、あたしがかなえてあげようか?」
 シンデレラは驚いて声のした方へ目を向けるとそこには、とても奇抜な格好をした女性が立っ
ていました。
「あなたは誰ですか?」
「あたしはねぇ、魔法使いやってるんだけど。アンタの願いかなえてあげよっか」
「……いいです、遠慮します」
「ちょっとぉ! それはないでしょ? 願いかなえさせてよー」
「わ、わかりましたから、筆を掴むのはやめて下さい!」
「よーし。それじゃ、まずはその服ね」
 魔法使いは呪文を唱えると、シンデレラのボロ服がドレスに、皮の履物がガラスの靴に変わり
ました。
「す、すごい」
「じゃあ次は移動手段ね」
 また呪文を唱えると、今度はかぼちゃが、……馬車に、ねずみが御者に変わりました。
「さあ、この馬車に乗ってお城まで行ってきなよ」
「ヒ、ヒヒーン」
(……あのー、これって久我山先輩ですよね)
「馬車よ」
(いや、だから)
「早く乗りなよ」
 オギーあきらめな。恵子の奴、目がマジだ。
(絶対乗りませんよ!)
 仕方がないなぁ。クガピー、オギーを担いでっちゃって。
(へ、へーい)
(ちょ、ちょっと! おろして下さい! おろしてー!)
 シンデレラはかぼちゃの馬車に乗り、お城に向かいました。
 お城では、たくさんの人達が参加していました。何故ならば王子様の目に留まるかも知れない
からです。
 そんな中にシンデレラは人々の目を引きながら、入ってきました。
「可愛い人ね」「綺麗なドレス」「あの筆は……いいものだ……」
 そう人々は口々に囁いていました。
 そうこうしている内に、ダンスタイムになりました。パートナーと踊っているもの、相手を探
しているもの、色々な人がいました。そして、シンデレラはと言うと、
「もしよろしければ、俺と踊ってもらえませんか?」
 誘われていました。周りの人達は驚いた様子でその人を見ています。
 それもそのはず、その人は王子様だったのです。
 シンデレラは王子に誘われ、ダンスを踊りました。
(なんか荻上さん、静かすぎないか?)
(なんか、春日部さんに睡眠薬飲まされて眠っているらしい)
(あー、どうりで笹原も踊りづらそうなわけだ)
 そこの厚化粧の女装二人組! 余計な事言わない!
(は、はい)
(あ、荻上さんが目覚めた)
(あれ、わたし一体どうして……。! 笹原さん!? 何? 一体どうなって!?)
(あ、荻上さん目覚めた? 今、王子とのダンスシーンらしいから、よろしくね)
(へ……いや、よろしくたって……)
 やっばぁー、顔真っ赤だよあの子。あーあ、ついに逃げ出しちゃった。……あ、転んだ。大丈
夫かなぁ、思いっきり顔打ってたけど。

 翌日、シンデレラは家でまた姉達にいじめられていました。
「今日はこのコスプレしてもらいますからねー」
「嫌です! よらないで下さい!」
「そんな事言わないで、着るだけじゃないですか」
「そんな、いやらしいの着れるわけないじゃないですか!」
 そこに、誰かが尋ねて来ました。
「すいませーん」
「はい、どちら様ですか?」
 姉三が出ると、そこには王子の付き人が立っていました。
(姉三って、俺ら名前すらないんかい)
 付き人は四人に向かって言いました。
「先日のパーティで王子に見初められた人をさがしています。この中にこの靴が履ける人はいま
すか?」
 付き人は、ガラスの靴を取り出しました。そう、シンデレラがあの日落としたあの靴だったの
です。
(正確には転んだ時、脱げただけだけどな)
 ガッ!!
 ……。
 ……。
 まずは長女が挑戦しましたがダメでした。次に次女も挑戦しましたが、やはりダメでした。三
女は挑戦するまでもなく、気を失っていました。
 次はシンデレラの番です。シンデレラが靴に足を通すと、すっと入りました。
「おお! あなたでしたか。王子! 王子!」
 付き人が呼ぶと、外にある馬車から王子様が降りてきました。

「あなたでしたか、もしよろしければ僕チンと結婚して欲しいにょー」
 ……。
 ……。
 笹原は?
(何か、急に仕事入っちゃったらしくて帰っちゃった)
 ……。コーサカじゃダメだったの?
(それでもよかったんだけど、どうしてもやりたかったんだって彼)
 ……。あーそう。
「さあ! 僕と結婚するにょー!」
「いやー!!! よらないで!!!」
 と、とにかく。シンデレラは王子と一緒に幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。
「ぜんっぜん! めでたくありません!!!」
 おしまい。
最終更新:2005年12月20日 03:27