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恵子と斑目 【投稿日 2006/03/25】

カテゴリー-斑目せつねえ


会社の飲み会を終えて、斑目は自宅へ向かっていた。
酔った体に冷たい空気が心地よい。
年の瀬を控えて、町も慌しさを加えている。
そんな中、飲み屋街の一角にあるコンビニの駐車場に、見知った顔を見つけた。
彼女は駐車場の車止めに座って、缶ビールを飲んでいる。
「恵子くん?」
斑目の声に、恵子はちらりと視線を向けるが、すぐに視線を外して新たな缶ビールに手をかける。
周りを見渡すと、あちこちにビールの空き缶が転がっている。
「えーと、何をしてるのかな?」
「見りゃわかるだろ」
間抜けな質問に、ぶっきらぼうに返す。
「あ、あー、もしかしてデートの待ち合わせ、とか…?」
「逆だバカ。置いてかれたんだよ」
恵子の声に怒りと苛立ちが混じる。

(しまった、地雷踏んだ。ここは何とか回避しなくては!)
アルコールの染みた脳みそをフル回転させる。
「あー、訳とか聞いてもいいかな?」
「ハァ?アンタ人の色恋に口を出す気?サイテーだな」
恵子は斑目を睨みつける。
(間違えたー!フォローしないと!)
脳みそは熱暴走一歩手前。
「なんなら送ってやるけど…」
「うるさいな!アンタにゃ関係ないだろ!!」
斑目に怒鳴りつけると、恵子は勢い良く立ち上がる。
酔いと立ちくらみが恵子の足元をふらつかせ、バランスを崩した体はある方向へ倒れこみ、その先には偶然斑目が居た。
恵子は斑目に抱きかかえられる形になった。
「お、おい。大丈夫か?」


38 :恵子と斑目 :2006/03/25(土) 08:48:01 ID:???
斑目の脳内は沸騰している。恵子の体からは酒と香水と、女の匂いがして。
恵子は斑目の安物のスーツにしがみつく。
そして。
「うぷ」
「?」
「げろげろげろげろ…」

~~少々お待ちください~~

(…人間は想定を大きく外れる出来事に出会うと、かえって冷静になるもんだな)
斑目は現状を酷く冷静に、あるいは他人事のように分析していた。
生暖かいスーツの汚れを無視して、恵子の背中をさすってやる。
「…気持ち悪い…」
「ずいぶんと飲んでたみたいだからな」

「…水…」
「ちょっと待ってろ」
傍の自動販売機から、ミネラルウオーター買って渡す。
恵子は口をゆすいだ後、二口ほど飲むと、今まで閉じていた目を開ける。

目の前には腹から腿にかけて、べったりとくっついた、ソレが。
恵子にも現状がわかってきた。
「ああ!ごめん!!えっと、どうしよー!?えーと、えーと…」
青くなってパニックを起こす。あたふたと周りを見渡す。もちろん手を貸すような酔狂な人間などいない。
(昔の大野さんを見ているみたいだな…)
どこまでも他人事な斑目。
恵子はふと何かを見つけたように固まる。斑目がその視線を追うと、そこにはいわゆる『ラブホテル』が。

恵子は斑目の腕を抱き、強引に歩き出す。行き先はもちろん『ラブホテル』だ。
「ちょっと、一体何…?」
斑目の質問に答えることなく、駆け込む。
手際よく受付を済ませ、目的の部屋の前まで移動し、ドアを開け、部屋に入る。
(いったいワタシはナニをしているのでショウ?)
恵子に引きずりまわされながら、斑目はのんきな事を考えていた。

「脱いで」
部屋に入るやいなや、恵子は斑目に告げる。
現状を理解できていない斑目がぼんやり立っていると、苛立たしげに歩み寄り、服を脱がせ始める。
「ちょっ、ちょっと待って?一体何がなんだかさっぱり分からないのデスガ?」
斑目の質問を無視して、黙々と脱がせていく。
気が付けば上半身はシャツ一枚。
恵子はベルトを引き抜くとズボンの前を開ける。

「わーっ!!待った!タイム!そこはダメ!」
叫びながら斑目はあとずさる。そこにはベッドがあって、足を引っ掛けた斑目は後ろへ倒れこむ。
両足が地面から離れる。瞬間、恵子は靴を脱がせ、斑目が体を起こすより早くズボンを引き抜いた。
斑目がずり下がったトランクスを引き上げながら起き上がる。
恵子は脱がせた服をハンガーにかけると、バスルームに入り、湯の入った洗面器とタオルその他を持って出てくる。
やはりぼんやりとそれを眺めていた斑目にタオルとバスローブが手渡される。
「風呂、入ってきな。脱いだ奴は籠に入れとけよ」
「いや、あの、ワタシ状況が全くわからないのデスガ?」
「…脱がすよ?」
「ワカリマシタ」
とりあえず言われるままに風呂に入る。
(…一体ワタシはココでナニをしているのでショウ?ええと、もしかしてフラグが立ったとかいう奴デスカ?いやでも彼女は後輩の妹であって自分には想う相手がいてでも彼女は好きな人がいてこっちの気持ちには全然気付いてなくてだから清く正しく美しい交際を…)
のぼせたのか、だんだん訳のわからない考えになってくる。
「とりあえず、あがるか…」

風呂から上がり、さっきまで着ていた下着を探す。見当たらない。仕方無しにバスローブを羽織ると、妙に丈が短い。裾を引っ張りながら前かがみに歩く。
部屋では恵子がハンガーにさっきまで斑目の着ていた下着を乾している。
「あの~、上がりましたが…」
「あ、そう?こっちも一段落ついたし、アタシも入らせてもらうかな」
そう言うとまっすぐにバスルームへ向かう。
斑目はハンガーにかかったスーツに近寄る。
きれいに、とはいかないが、目立たない程度にはなっている。
(へー、たいしたもんだ。しかし下着を洗われたのは困ったな…乾くまで帰れんじゃないか)
そんな事を思いながら、とりあえずベッドに横になる。ぼんやりと天井を見つめる。
ふと自分の格好に気付く。このままで居ると、バスルームから出てきた恵子に自分の”その”部分が見えて…
斑目は大慌てでシーツにもぐりこむ。

「何やってんの、アンタ?」
ちょうどよく恵子がバスルームから出てくる。そのままベッドの反対側に腰を下ろす。
「あー、恵子クン?ちょっと説明してくれるとありがたいのだが…」
シーツから頭だけ出して、斑目が尋ねる。
「何を?」
恵子はベッドの上で体の向きを変える。化粧を落とした所為か、妙に幼く見える。しかしバスローブ一枚羽織っただけの体は、十分に成熟していて。
斑目の位置からは胸の谷間や、神秘の場所が見えそうで、思わず顔を真っ赤にして背を向ける。
「いや!今の状況を!ですが!」
恥ずかしさと後ろめたさを隠すため、声を荒げる。
恵子はクスクスと笑ったあと、斑目に這い寄り、耳元に囁く。
「ス・ケ・ベ♪」
「どうか説明してください。おねがいします…」
斑目の声は半泣きだった。

「別にそんな深い理由があるわけじゃないよ。あのままじゃタクシーも使えないだろうし、歩かせる訳にもいかないと思っただけ」
「…」
斑目はすねている。
「ああ、一応朝まで部屋を取ってるから、泊まっていってもいいよ」
「…」
まだすねている。
「あ~…なんかアタシも帰るの面倒になってきたな…うん。アタシも泊まるから。よろしく」
恵子はそう宣言すると、斑目の隣に潜り込む。
「~~~!!」
斑目は無言で悲鳴をあげると、ベッドから転げ落ちる。
「あのね!恵子クン!年頃の無関係な男女が一つのベッドで眠るなんて、そんなはしたない事は…!」
「…何言ってんの?」
「だから!俺が襲い掛かったりしたら!困るでしょ!」
「別にいいよ?」
思いもかけない答えに斑目が凍る。再起動。
「…ハイ?」
「だから別にいいってば。今回はこっちが悪いんだし、一回くらいならいいよ?」
斑目はぽかんと口を開けている。なぜか怒りが込み上げる。
「…ふざけんな」

「え?」
「ふざけんなよ!そんな簡単にするだの何だの言うんじゃねーよ!」
「…もしかして、童貞?それとも心に決めた人でも居るとか?」
「!」
図星を指されて沈黙する。
「あ、そう…そういう考えなのか…ごめん、からかい過ぎた。そういうのもありだよね…」
恵子の声に影が差す。
「じゃあ、お互いに手はださない、と言う約束で…一緒に寝よ?」
「帰る」
「今から家に帰って、明日間に合うの?…それにそのスーツ一張羅でしょ?」
「ぐ…」
「あきらめてアタシと一緒に寝なさい」
斑目は大きなため息をつく。
「…なんで俺なんかと一緒に寝たいんだ?」
「…誰でもいいの。一人になりたくないだけ」
そう言うと恵子は顔を背けた。
その様子に斑目は不安を感じ、時計を見て明日の仕事を思い、仕事と一連の騒動の疲れを感じ…受け入れた。

「わかった。一緒に寝る。…ただし、エッチは無しだ!」
「エッチって…」
恵子は笑いをかみ殺そうとして、耐え切れずに笑い出す。だんだん声が大きくなり、最後には叫ぶように笑う。頬を涙が流れる。
「ハァ…おやすみ」
最後にそう言って黙り込んだ。
部屋の明かりが消える。
斑目も急に眠気が押し寄せる。
眠りに落ちる寸前、「ありがと」と聞こえたような気がした。

翌朝、斑目が自分の腕枕で寝ている恵子に大慌てしたり、うっかり着替えを覗いてしまって怒られたり、ホテルを出る際、自分の手を引いて歩く斑目に、恵子がちょっと感動したりしたのは、また、別の機会に。