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Zせんこくげんしけん3 【投稿日 2006/03/16】

せんこくげんしけん


斑目とスージーが囮になっている間に、笹原は荻上を連れて廊下をひた走り、息を切らせて漫研部室前にたどり着いていた。

荻上は、スーが着ていたひざ丈の短いワンピースを身にまとっている。(恥ずかしい…)スーと服を取り替えてトイレから出て来た時も、笹原の視線を受けるのがつらくて仕方がなかった。
一方の笹原も、普段は見ることのないその姿に思わず見とれてしまう。淡い青のワンピース。スカートから伸びた足は、夏の陽差しをほとんど受けることなく過ごしてきただけに、白く透き通って見えた。
ドアを叩きつつ、「結構似合うんじゃないかな……それ」と思わず口にする笹原に、荻上は「そんな事絶対ありません!」と、裾を両手で抑えながら真っ赤になって否定した。

漫研には既に、咲と恵子が逃げ込んできていた。笑顔で迎えられた荻上はホッとしたものの、「ご迷惑かけまシタ……」と小さく呟き、なかなか顔を上げることができなかった。

【8月9日/15:50】
荻上は、高柳に礼を述べている笹原の姿を目で追いつつ、部屋の隅、つまり窓際で両膝を抱えてうずくまっていた。1年生の春、口論の末に自分が飛び下りた場所だ。記憶がよみがえり、震えた。
(結局、自分のせいで皆に迷惑がかかったんじゃないのか? この漫研から出て行って、現視研もなくなって、皆に迷惑かけて…)自分を責める言葉が心の中で反芻された。
その時、「荻上…」と聞き覚えのある声に呼ばれて、体がビクッと反応する。漫研の女子2人が目の前に立っていた。

(結局逃げたところで、ここも私にとっては敵地じゃないか…)緊張する荻上に掛けられた言葉は意外なものだった。
「ハラグーロに負けちゃだめよ。現視研はあんたに合った場所なんだろうからさ」「せっかく納得して描きたいと思ったんなら、頑張んなさいよ」

共通の“敵”がいることもあって、言葉には優しさも感じられた。荻上は目を合わせられないものの、うつむいて、「ハイ…」とだけ答えた。
漫研女子らが「偵察」のために出て行った後、大野が荻上の傍らに腰掛け、「良かったですね」と声を掛けた。

「私いつか、言いましたよね。“全員が仲良くできるわけじゃない”でも“全員をひとくくりにして嫌うことはできない”って」
「……」
「こうして、対立してた人だって心を開いてくれることもあるんですから……。かたくなにならずに、私たちにもっと甘えたっていいんですよ」
わだかまりがほんの少し解けた荻上は、涙ぐんで小さく震える。大野は笑顔で荻上の肩を抱きしめた。

その様子を遠目に眺めていた高柳は、笹原に向き直り、「大野さんは優しいねぇ…。いや~最初は押し付けるようにしてお願いしちゃったけど、荻上さんを現視研に入れてもらって良かったよ~」と笑った。

【8月9日/16:00】
児文研部室で監視体制に入っている朽木から、笹原の携帯にメールで入電があった。
“所属不明の乗用車西門から接近デアリマス”
西側を守る新現視研派の無線が、パニック状態を伝えているという。西門に立っていたマスク男達の静止を振り切り、軽乗用車が大学内に侵入。サークル棟に向かって暴走しているというのだ。

笹原は、周囲の皆に、「何かがこっちに向かってきてるみたい」と伝えた。「来た!」と大野が叫び、隣の荻上が転がらんばかりの勢いで立ち上がる。
反撃が始まろうとしていた。

軽乗用車は久我山の会社の営業車だった。
久我山の隣には、コスプレ衣装を持参した田中が乗っている。斑目の求めに応じて、OBが立ち上がったのだ。
「むむ 無茶だよこんなの~」ハンドルを握りながらも泣き言が出る久我山。車内のカーステレオからは、「サンバ・テンペラード」(by大野雄二.カリ城)がけたたましく鳴り響いている。
車はあり得ない動きで大学内の階段を上り、マスクの男達の静止を振り切って、サークル棟入り口まで突入した。
ほとんど激突しそうな勢いで、入り口の階段前に急停車したクガピーカー。これ以上は車では進めない。周りからはどんどん緑マスクの男達が駆け寄ってきた。

携帯で「すす スミマセン納品は ああ、ら 来週に~」と泣きを入れる久我山。田中は車を降り、目前の階段に飛び移るように駆け出した。
小さな車に男達が飛びかかり、久我山は早速取り押さえられた。
「久我山ッ!」田中は一目だけ振り向くと、後は必死で2階まで駆け上がり、漫研の部室にたどり着いた。
田中を受け入れ、ドアが閉められた直後、部室の前には追っ手が迫っていた。

「開けなさい!」「開けろ!」「自治会からキー借りてこい!」
怒号が飛び交う漫研部室前。騒然とする中、コスプレカップルが向き合った。
息を切らしながら田中が、「おれたちも何かやらないとな……、大野さん達だけに無理はさせられないよ……な、会長」と声を掛ける。
「ありがとうございます!」
大野は感極まって田中に抱きついた。
2人の抱擁を目の当たりにして、赤面する笹原と高柳。
高柳「あぁ~、短い夢だったなァ…」
笹原「高柳さん?」
大野「あの~、窓のカーテンで仕切りを作ってくれませんか」
高柳&笹原「仕切り?」

【8月9日/16:05】
漫研部室のカーテンが取り外され、両端を咲と恵子が持って間仕切りをした。大野はその奥で、田中が持って来たコスチュームに着替えはじめた。
荻上はさすがに立ち上がって、「こんな時にもコスプレですか!」と声をあげたが、カーテンの向こうからは、「こんな時だからです!」と強い語気が返ってきた。
「こんなことくらいしか出来ないけれど、私なりに囮にでも何でもなるつもりです。私、会長ですもの!」
ほどなく、裾や袖を短かく切り詰め、肩も露わな和装の大野、いや、くじアンの如月副会長の決戦仕様が姿を現した。
大野は、「おお~っ」とどよめく周囲には目もくれずに、いつもの黒大野マスクを口元に着用する。まるで“ギンッ!”という効果音が入ったかのように劇的に目が据わってきた。

高柳「大野さんのコスプレ見られたのはいいんだけど、あのマスク何なの?」
笹「ははは…(汗)

「咲さんにも会長用を持って来てますよ!さあ!さあ!さあ!」
大野の圧力に青ざめる咲。「イヤ私ガ着ル必然性ナイシ…」
「そんなこと言わずに。気持ちが乗ってくるって!」と語る田中も、すでに「英国与太郎哀歌」なるホラー漫画の主人公のコスチュームに着替えていた。
真夏だというのに血のように真っ赤なロングコートを羽織り、丸ブチのメガネをかけ、意味不明の紋章が入った白手袋をして、馬鹿でかいモデルガンを手にしている。
田中はニコニコとしながら、大野の対となる「会長コスチューム」を広げてみせた。
「田中テメエ…!」
しかし咲は、田中の足もとに置いてあった会長コスの“一部”に目をとめた。
(これ、前にも付けたやつだ…)アニ研主催のコンテストで着用したことのあるヘルメットと手甲だ。(これなら…!)
咲は周りに、「これだけだよ!“実用的”だから!」としつこいほど伝えた後、(実用、実用…)と自分に言い聞かせて手甲を装着。さらにヘルメットを深々とかぶった。
「せっ…先輩っ」と驚く荻上に、咲は「あー見るな見るな!」と叫んだ。

「Is there my costume?」
「アタシもなんか着たい~」
さしもの田中も、アンジェラと恵子のコスまでは想定していなかった。
「何だよツマンネ~ッ!」
この恵子の言葉と同時に、「ドドンッ!」と漫研部室のドアが破られた。

【8月9日/16:30】
漫研部室にマスク男が侵入した。廊下に2人控えている。黒のマスクに黒のアマレス姿。最初に現視研部室に乱入した「黒い三年生」だ。
入り口に一番近い位置にいるのは大野だった。「?」対峙しているのがコスプレ女とあって、侵入者の動きが止まる。

「田中さんッ、残雪ッ!」
阿吽の呼吸で田中が投げ入れた日本刀「残雪(模造)」を手にした大野。黒マスクは思わず後ずさりする。
大野は普段から心掛けている“キャラの内面を再現する”意識を極限まで高めていく。荻上も思わず立ち上がり、笹原の後ろへ身を隠すほど、周囲の空気が変わってきた。
鞘に納めたままの残雪を腰に据え、膝にタメをつくり、姿勢を低くして、いつでも抜刀できる姿勢になる。長髪と風邪マスクの間からわずかにのぞく瞳は、いつ人を斬り殺してもおかしくない殺気をみなぎらせている。

もちろん実際の殺傷力は皆無に等しい。目的は威嚇だ。
緊張感が張りつめたところに、大野の後方から田中のハンドガンが火を噴く。「バッ!」と白い粉が舞い、黒マスクがうずくまった。目つぶしだ。
「腹くくるかッ!」
咲がうずくまる男の背中を蹴り越え、廊下に飛び出した。黒マスクがお約束を叫ぶ。
「俺を踏み台にし……」次の瞬間、恵子、笹原、高柳が黒マスクを取り押さえた。

咲はタイトなスカートもあらわに跳躍して廊下の黒マスクの目前に着地した。
ビビって先手を仕損じた相手の目前で舞うように身体を反転させ、体重を乗せた裏拳で殴りつける。手甲がヒットして2、3歩引き下がったところに、「腕が伸びて見える」「斑目を幸せな気分にさせた」グーパンチを叩き込んだ。
慌てるもう1人に、田中が再び「目つぶし」を当てて動きを封じた。「ぅわはははははははッ!」攻撃を加えながら、爽快感に思わず笑いが出てしまう咲。大野&田中はドン引きだ。アンジェラは観戦に徹して呑気にはしゃいでいる。

荻上「何かヤなことでもあったんでしょうか?」
笹原「あー…。最近忙しそうだからね、ストレスが……」
「これはたまらん!」黒い三年生が思わず引き下がる、笹原らに捕らえられた一人も後ろ手に縛られたまま放り出された。
しかし、廊下の向こうのからは新手のマスク男が集まりつつあった。

新手のマスク男たちは、「あ゛~~~~」「う゛~~~~」と低いうなり声を上げながら、ゆっくりと、不規則な足取りで歩いてくる。
腕は力がなく垂れ下がり、マスクの下は普段着だが、みな浮浪者のように薄汚い。
彼等は「ジョージ・A・ロメロ版リビングデッド研究会」、通称「ゾンビ研」だ。力は無いが数は多い。このままでは数に飲み込まれてしまう。
大野「こんなサークルあるの?(汗」
咲「今度のはキモイな……表出るよ!」
咲の号令で、田中がゾンビ研の群れに向かって目つぶしを乱射。続いて恵子が廊下の消化器を発射し煙幕を作った。

【8月9日/16:40】
大野を旗頭に反撃が開始されたことは、現視研部室のトランシーバーから伝えられ、原口と沢崎はかじりつくように聞いていた。
荻上の原稿自体は、ミナミ印刷からキャンセルとして騙し取ってある。すぐにでも印刷にまわせばいい。
「しかし、今後必要なのは“作家”荻上千佳を確保することなんだよ」と、珍しく原口が焦りを見せた。

その時ガチャリと、部室のドアが開き、ゆら~りと朽木が姿を現した。
「!!」驚く原口「どうやってここに!?」
朽木「ふふふ、我輩は実体を見せずに忍び寄る白い影」
沢崎「いや見せてるし」
漫研前の戦線が中庭へと移っていく中で、見張りも参戦&野次馬で居なくなっていた。朽木は軽々と児文研部室から現視研部室までやってきたのだ。

朽木は異様に鼻息が荒い。乱闘という「お祭り」が眼下で始まったというのに、自分だけ盗聴や後方撹乱ばかりやっているのが耐えられなかったのだ。

「ワタクシのテンションは今ッ! アニ研を抜けて現視研に入部した時代に戻っているッ!女に手を挙げ、盗撮もやってのけたあの当時にだッ! 無遠慮!不道徳!そのワタクシが貴様を倒すニョーッ!」 と威嚇する。
呆れる原口は、「沢崎くんたのむよ」と後ずさりする。
ゆらりと立ち上がり、朽木の前に立つ沢崎、背後の原口に視線を向けて、「……彼はココの入会テストのゲームでも、俺に頼りっぱなしでしたからね。負けはしません」と余裕を見せた。
にらみ合う“同期”の2人。朽木は部室のゲーム機を目で差した。
2人の思い出のゲーム、現視研初入部時にプレイした「ドラキュリーナハンター」での勝負が始まった。

【8月9日/16:42】
斑目は、顔を赤らめながらサークル棟へと走ってきた。囮となって走り、『もう歩けない』などとゴネるスージーをお姫様ダッコで連れて来たのだ。
サークル棟に近づいた時、中庭の乱闘に出くわした。「うわ、凄いことになってるな」と呆気にとられた。
ゾンビ研を相手に、咲を中心にして田中や大野が暴れている。恵子まで角材を持って立ち回っているではないか。
(笹原の妹だけはシャレにならん気がする)

スーが斑目のもとから飛び降りると、サークル棟に向けて手を振っていた。
斑目が視線を移すと、アンジェラが陽気に手を振りかえしてる。高見の見物を決め込んでいるようだ。
「なんなんだこの外人は?」
しかし斑目を最も驚かせたのは咲の格好だ。咲は“律子・キューベル・ケッテンクラート”会長のヘルメットをかぶって乱闘しているのだ。
斑目が憧れ、大事にしている「最後の砦」が、今、目の前で躍動していた。
「かっ…かっ、春日部さんっ!?」思わず声が出る。
呼びかけに気付いて振り返った咲は、「あ、斑目、ちょっ!見るな!」と動揺する。

次の瞬間、咲は死角から竹刀による“突き”をヘルメットに受けた。同調サークルの剣道マスク男が増援に駆けつけたのだ。ヘルメットが飛んだ。
それでも咲は続くゾンビ研を2、3人殴り倒すが、剣道マスク男と対峙しつば迫り合いの要領で突き倒された。
「げっ!何しやがる!」
斑目は思わずゾンビ研の群れや竹刀をくぐり抜け、咲の所へと向かう。咲の手を取って引き起こそうとする時、「邪魔だ」とばかりに背中に竹刀の一閃を受けた。
「!」驚く咲。

「アンタ喧嘩できないんだから、見てればいいのに!」
「イテテ、女を前線に出して見てるわけにゃいかんでしょ」
「また、オタクくさいことを」

咲が気が付くと、田中、大野、恵子も包囲されている。
斑目は何とか咲の縦になろうと前に立つが、何とも頼りない。
「もういい加減にしろよ現視研ッ!」苛立ちのこもった竹刀が咲と斑目めがけて振り上げられる。思わず目をつぶる咲。
バシィッ!と激しい打撃音が響いたが、痛みは無い。目を開けると、剣道マスク男と自分達の間には、ポスターケースで竹刀を受け止めている高坂が立っていた。
瞬間「1stガンガルの予告編BGM」が高らかに流れはじめる斑目の脳内。オタクらしい連想は悲しい性だ。

「遅くなったね、咲ちゃん」
コスプレカップルを追撃していた剣道マスクも加わり3対1となるが、高坂はバッグをシールド代わりに巧みに竹刀を受け、かわす。
決して攻撃は加えないが、動き回って軽くいなすうちにマスク男の息が上がって来た。
そのうち、「げ、現視研の新手は化け物か!」と肩で息をし、その場にひざまづいた。
田中は、「相手は慣れないマスクを防具の下に着用している。呼吸が苦しく、しかもこの猛暑だからスタミナの消耗は激しい。しかし徹夜作業を経てこの運動量とは……」と、この手の展開にありがちな解説役になっている。
その隣で恵子はウットリと高坂を見つめていた。

【8月9日/16:47】
乱闘騒ぎのざわめきが外から聞こえてくる中、屋内はカチャカチャカチャカチャという操作音が支配している。
男2人が黙々と画面に見入っている。余裕があったはずの沢崎だが、次第に表情が曇りはじめた。

「ば、ばかな……」沢崎はついに3連敗で朽木に惨敗した。
現視研で時折、高坂らに揉まれてきた朽木の経験値が、ただ破れ去っただけの沢崎との差になって現れたのだ。
無言でがっくりとうなだれ、ふらふらと部室から出て行く沢崎。
原口「あ、沢崎くん? おーい…」
よほどショックだったのか、原口の呼びかけにも反応せず、沢崎の姿はドアの向こうに消えた。
朽木「沢チン、僕と一緒に現視研に戻っていれば、こんな事にはならなかったのに……」

【8月9日/16:50】
沢崎は、朽木に破れ、フラフラと階段前のテラスまで来ていた。まだ中庭の乱闘は終わりそうにない。しかし、沢崎の戦いは一足先に終わった。
(負けた。またも部室を追われてしまった)
敗北感に打ちのめされ、テラスのイスに腰掛けてうなだれていた。

「沢崎君……」
目の前に誰かが立っている。沢崎は、蚊の鳴くような声で、「ほっといて下さい……」と呟く。
「アニ研に帰らないのかい?」
沢崎が見上げると、赤いマスクをかぶった「メキシコ文化研究会」の男が立っていた。
「アニ研も裏切って原口さんについた僕に、居場所はないんです……ん?」沢崎は途中で何かに気付いた。赤い男はしゃがれた声色をやめていた。

赤い男は、不自然に身ぶり手ぶりを加えて、上手く伝えられない自分の気持ちを語りはじめた。
「えーと、“あの時”は、俺に力がなかったんだ……。こんなことを人と話すなんてあまり無いから、何と言ったらいいのか分かんないけど。ともかく……君を守って引き止められなくて、ゴメン」
「ああ……、やっぱり“会長”でしたか……」
「もう、二代も前の“元会長”だけどね」
赤い男は話を続ける。
「でも、どうか春日部さんを恨むのはやめてくれ。彼女は昔とは違うんだ。俺らのことをある程度は理解して、朽木君みたいなキャラでも受け入れる心の広さがあるんだ……優しい人なんだよ……」
沢崎は、「好きなんですね」とポツリ呟いた。赤いマスクがさらに赤く染まったように見えた。

「俺なんかに言えることじゃないけど……。居場所ができなかったことをいつまでも悔やむより、新しい居場所を切り開いていってくれ……」
赤い男に、沢崎は、「あなたは……どうなんですか?」と尋ねた。“彼”だって前向きとは思えないのだ。会社からいつも部室に来ては入り浸っているではないか。
赤い男は、「あ、俺?……そうねえ。いつもと変わらないけど、“自分で切り開く”ってことは、ほんの少し分かってきた気がする」と答えた。

「そうすか……。あ、近藤さんはアニ研の部室に閉じ込められています。助けてやってください」と語り、沢崎はゆっくり立ち上がった。
そして赤い男に頭を下げて、再び顔を上げたとき、「あなたがそうなら、俺も、ちょっと頑張ってみます」と微かに笑った。