百合の花が咲く 【投稿日 2006/03/11】

カテゴリー-現視研の日常



「ちーす。お、荻上一人か?」
 咲が部室に入ると、部室には荻上一人だけだった。荻上はいつものように、原稿を描いていた。
「なーに描いてんの? …って、またやおいとかいうヤツでしょ?」
「違います。今回はきちんと男と女でノーマルです」
「へぇ」
 咲は荻上の後ろから原稿を覗き込む。
「…け、結構激しいデスネ」
「そうですか?」
 荻上は気にすることなくペンを進める。見られるのが嫌だった原稿も、今では嫌じゃなくなった。もっとも、やおいは男子には見せないが…。
 咲もじっと原稿を見ていた。最初の内は嫌がっていたのに、今ではこうやって普通に見せてくれる。そのことが咲にはとても嬉しかった。
「……あの、さすがにそんな見られると描きにくいんですけど…」
 荻上が振り向くと、咲は疑問を口にした。
「ねぇ、こういうのってさ、経験が無くても描けるもんなの?」
「!? な、なななな何を…」
「いや、前から気になっててさ」
「そ、そんなの、同人誌を見てれば分かりますっ」
「……それは違うと思うぞ」
 咲は少し考えると、荻上の肩に手を置いた。
「…じゃあさ、私が教えてあげよっか?」
「は?」
 咲はそう言うと、荻上の頬に手を添え、唇を重ねた。
「!!!?」
 あまりにも突然のことに、荻上は目を白黒させる。
「ふふっ、かわいーね、荻上」

 咲は悪戯っぽく微笑む。そしてまた唇を重ね、頬、耳、首筋へと舌を這わせた。
「やめ…んっ! 女同士で、こんな…あっ!」
「こういうの、百合って言うんでしょ? 高坂の部屋にもあったよ」
「だっ…誰かが…入って…んぅ! きちゃいますよ…あんっ!」
「大丈夫。鍵かけといたから」
「そん…」
「かわいーよ、荻上…」
「やぁ…っ! そん…なところぉ…ふぁあっ!」





「ど、ど、どうかな?」
 久我山は部室で斑目と笹原にノートに描いた作品を見せていた。内容は咲×荻という百合ものになっている。
「いいぞ! 久我山、いいぞ! 見直した!」
「ホント凄いですね。俺、百合はあんまり得意じゃないんですけど、これだったら…」
 正直な感想を言う斑目と笹原。しかし心の中では。
(か、春日部さん…ハァハァ)
(お、荻上さんがこんなに乱れて…ハァハァ)
 しかし三人は気が付かなかった。背後に迫る咲の存在に…。
「よし。お前ら表に出ろ。久しぶりに…キレちまった」



  完
最終更新:2006年03月12日 02:23