こんな夢を見た 【投稿日 2006/03/04】

カテゴリー-斑目せつねえ


初斑目話。やっつけ風味。たぶんエンドレス。と、いうことで。

「♪~」
鼻歌を歌いながら斑目は現視研の部室へ向かう。手にはコンビニの弁当。いつも通りの日常…になるはずだった。
くい。
サークル棟の入り口をくぐったとき、何かにすそを引かれた。振り返る。誰も居ない。
くいくい。
また引かれる。視線を下げると、そこにはかわいらしい少女がいて、こちらを見上げている。どこか見覚えのある顔。
そしてその少女は満面の笑みを浮かべると、こう言った。
「お父さん♪」

「ちーす」
疲れきった顔の斑目が部室のドアを開ける。珍しい事にフルメンバー揃っている。
もの言いたげな視線をあえて無視して、無言のままパイプ椅子を引くと深深と腰掛ける。
「お父さん、だっこ」「はいよ」
少女をひざの上仁抱き上げる。少女の満面の笑み。精魂尽き果てたような斑目。沈黙が流れ、そして沸騰した。
「「「「「「犯罪だーーーーー!!!!」」」」」」
少女はきょとんとしている。斑目の返事は無い。ただのしかばねのようだ。

とりあえず、少女を女性陣にまかせて、斑目を詰問する。
「誰なんですか、あの子?」
「知らん。むしろ教えてくれ」
「そんな無責任な」
「あのな、俺が全く何もしなかったと思うのか?」
「警察呼びましょう」
「笹原…お前が普段俺をどんな目で見ているか、よくわかったよ」
「違うでしょ。まずは彼女の両親を探さないと…朽木くん、こっちに来て」
「!…ハイ…」
密かに少女の方に移動していた朽木。
一方、少女の方は…
「えっと、お名前教えてくれるかな~」
「まだらめ よーこです」
「何歳ですか?」
片手を広げて差し出す。
「お父さんとお母さんの名前は?」
「え~と、はる、の、ぶ、おとうさんと、さきおかあさん!」
「へ?」
呆ける咲。そんな彼女の顔をまじまじと見て、少女は言う。
「あ、お母さんだ」

「…つまり、あの子は私とあんたの子供、というわけね」
「…」
「あんたの子供を産んだ記憶なんて全く無いんだけど」
「こっちもねーよ」
疲れきって、半分魂の抜けた様子で会話する斑目と咲。
少女は他の4人と遊んでいる。朽木は撮影中。少女がこちらを向いて手を振る。2人は思わず手を振り返す。
「高坂が子供好きとは知らなかったな…」
「…」
咲はまっすぐに高坂を見つめている。その姿は酷くきれいで、残酷だった。

「まったく、何なんだよ、これは…」
「夢だよ」
斑目の呟きに答えが返る。時が止まる。世界が凍る。
「これは、ただの夢。ありえた世界とのありえない交差。そこには何の意味もない」
振り返ると初代会長がたっていた。
「人は選ぶ事、選ばない事で人生を築いていく。選ぶ事は何かを得て、何かを失う事。選ばない事は何も失わず、何も得られない事。選択肢は多数あって、可能性は限りなくて、時間だけが有限」
「いったい、何を言って…」
「君は何を望むのかな?…」
世界が溶ける。混ざり合ってぐるぐるまわって一つになって…消えた。

「って夢オチかよ!!」
叫びながら斑目は跳ね起きる。カーテンの隙間から差し込む朝の光。昨日と同じままの自分の部屋。
「なんか変な夢をみたような…寝る前に読んだ本が悪かったか?」
枕もとの本に目を向ける。
「まあ、いいか」
呟くと、大きく伸びをして立ち上がる。カーテンを開ける。ついでに窓も開けてみる。
朝の冷たい空気を吸い込み、斑目は決意する。
「よし、今日も弁当もって部室に行こう!」
最終更新:2006年03月06日 06:52