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せんこくげんしけん3 【投稿日 2006/03/02】

せんこくげんしけん


長い廊下を歩く荻上。
戻れるのかどうか分からない不安感や、この時代に生きていた当時の自分のことを思い出さないように、笹原のことだけを想った。
(今、笹原さんは私より年下でねが……キャー!)視線を明後日の方向に泳がせて、思わず想い人の名前が口にでそうになる。(まあいいよね。ここは2002年だし)と自分を納得させた上で、甘えた声を出してみた。

「笹原サン(はあと)」
「はい?」
「!!」

ありえない返事に我に帰る荻上。気が付いた時には、正面に見なれた顔があった。2002年当時の笹原は、ちょうど通り過ぎざまに、見ず知らずの女子に呼び止められた格好になった。

斑目05は、ぶらぶらと廊下の手前まで来ていたが、前方を歩いている後ろ姿を見て、笹原であると気付いた。廊下の角に隠れ、行ってしまうのを待つことにしたが、思わぬ事態が起きた。
「笹原サン」「はい?」
笹原が誰かに呼び止められた。しかもその声は斑目にも聞き覚えのあるものだった。(荻上……さん?)目を凝らして笹原の前に立つ女子の姿を見ると、メガネをかけて髪を下ろしているものの、どうも荻上さんっぽい。
斑目は物陰に隠れたまま様子を伺うことにした。

笹原02を前にして、荻上は口をパクパクさせるばかり。脳内では、さながらマシン語のように高速で思考が展開していた。
(ササササササササササハラサン!?ウワー!偶然?運命?コレって再会け?それとも初めての出会い?あーよく見ると線が細くて頼りねー感じがするー…って吟味してる場合じゃねー!そんなコト考えてる場合じゃねぇってば!あーもーどうすりゃいいかヴァカンネー!)
頭の中がグルグルしてくる。脈打つ心臓の鼓動は、緊張とはまた違った感情によって動かされ、顔が上気してきた。
(頼りなさそうだども……かっ……カワイイかも……)
胸の内が苦しくなってきた。


「?」いぶかしげに自分を見つめる笹原の視線を、荻上は直視できない。不安と寂しさに苛まれていただけに、次第に我慢ができなくなってきた。
(ああ、だめだ、とまんね……)
荻上は両手を伸ばし、笹原の頬に手を当てた。それでも、自分の顔とその表情だけは悟られまいと、グッとうつむく。一方の笹原02は状況が飲み込めないまま、目が泳いでいる。

荻上はうつむいたまま、手に伝わる感触に意識を集中した。
(出会うずっと前の、笹原さんに触れた……)
愛おしい想いがわき上がってきた。このまま首に両腕をきつく巻き付けて、その場で崩れ落ちたい。しかし、彼女は、耐えた。
「え……あの、これ、あれ?」笹原02のうろたえた声に、我に返った荻上は意を決してスゥと軽く息を吸い、強く言い放った。
「もっとしっかりしてください!」
「あ、っは……ハイ!」
意味も分からず返事する笹原、オタとしては(覚悟が必要だ)と思っている彼だが、男としての覚悟はわきまえてはいない。謎の少女に気圧されている。

これには廊下の角で様子をうがかう斑目も「?」と首を傾げた。彼はまだ笹原と荻上のカップル成立を知らない。

「あなたはもっとどっしり構えてていいんデス!」
この時期の笹原にそれを要求するのは酷だろう。
「今は無理でも、がんばってください……。そしてどうか……」

(……どうか、私を、救い上げてください)

最後の言葉は自分の心の中にだけ響かせた。
笹原02の頬に触れた手が離れる。離れぎわに荻上は、(いつかまた、会えますように)と、願った。

荻上は三歩、四歩と離れた。何が起こっているのか、まったく分からない笹原02。
「あ、あの……いつか、部室に包帯をした娘が現れたら……」
思わず口にした再会(?)予告。笹原02がようやく、「部室って? え? 包帯? あ、あの、君は……」と問いかけた時、荻上の後方から、田中の呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、笹原いいところにいたな。部室来ないか。“あおい”のガレキ買ったんだ見せてやるぞー」


田中の言葉を合図に、荻上は弾かれたように廊下の向こうへと走り去った。
田中が笹原に歩み寄りながら尋ねる。
「誰? 知り合い?」
「いえ……なんだか分からないッス……包帯をした娘って何だ……」
「ホータイムスメ? エヴァか筋少の話か?」
「さぁ……。……包帯娘……」
荻上が走り去った廊下をいぶかしげに見つめた後、二人は部室へと向かった。

この出来事は笹原の中で、「変な人に会った」程度に思われ、記憶の中から次第に消し去られていった。しかし笹原は、2004年の冬コミ会場で、よく似た女性を見かけることになる。
「ん?」「んん?」
無意識に、変装した荻上に妙なひっかかりを感じたが、結局彼の中で、1年生のころの記憶と結びつくことはなかった。

2人の様子を廊下の角に身を潜めながら伺っていた斑目05は、あの女の子が自分の知る荻上千佳であることを確信した。
田中の登場とともに、荻上が駆け出した。
猛ダッシュで迫る荻上に気付いた斑目05は、「壁の掲示を見る学生」の振りをして、通り過ぎるのを見送った。2人を覗き見していた負い目がヘタレな行動に現れてしまったのだ。
(何やってんだ俺)あわてて荻上の後を追うが、もう立ち止まっていい距離なのに一向に止まる気配がない。斑目の方が先に息が上がってきた。

「お、荻上さんッ! ハァ ちょ と まった! ヒィ」
聞き覚えのある声に背後から呼び掛けられて、荻上は前につんのめりそうになりながら立ち止まった。
「斑目、さん?」一瞬体が硬直した。指先で眼鏡の奥をこすり、軽く鼻をすすり、アゴを引いて気丈に振り向く。
そこには、ヒイハアと息を切らせてガックリ肩を落とし、力なく手を振る斑目05の姿があった。
「なんで、“私のことを知ってる”んスか?」
荻上は、目の前にいるのは、この時代の斑目だと思っていた。
「やっぱりそうか……、僕の方も、入学もしていない荻上さんがなぜここにいるのかと思ったんだけど……」
荻上は安堵の表情を浮かべつつ、呼吸を整えた。


部室に到着した田中、笹原は、後に斑目02や久我山とともに、「第256回 今週のくじアン面白かった会議」で談笑。そこに咲が現れた。
咲は、コーサカの件を相談する前にメンバーの顔を見渡したが、斑目02と、少しばかりの間、視線を合わせた。斑目02は、2005年から来た自分の言動を思い起こして赤面した。

(確かによく見ればカワイイかも知れねー。でもこんな野蛮な女に俺の人生のエナジーを注ぎ込む訳にはいかんのだぁぁぁ! レジュメ通り、徹底して論破してやるっ!)
しかし斑目02は、咲相手に高らかに持論をぶちながらも、咲と高坂が「幼なじみ」であることに萌えた。そして、「チュー」に動揺した。05作のレジュメでは、その展開を明らかにしていなかったのだ。
斑目02は、斑目05の出現によって、否定しつつもすでに咲を意識しはじめていたのかも知れない。それは彼の、「(彼女が)ほしくなくはない」という言葉に表れていた。


斑目05と荻上は、サークル棟近くのベンチに並んで座り、これまで何が起きたのかを語り合った。
斑目05は、(荻上さんの言う怪しい男って、初代のことか?)と思う。自分が2002年に迷い込んだのも、初代に会ってからのことだ。
また2人は会話を通じて、(そういえば、この人と、今までこんなにしゃべったことないな……)と互いに感じていた。
荻上の場合は、笹原と結ばれたことで精神的な落ち着き、ゆとりが生まれたことに起因するかもしれない。

それでも、いつもの自分であろうと思い、冷静さを崩さない荻上の様子に、斑目05は、「強いなあ、荻上さんは」と感心する。
「そんなこと ないデス」
孤立無援の中で仲間に会えたのだ。抱え込んでいた不安感、緊張感がほぐされてきて、ほんの少し、声が震えた。
「ホントに……会えてよかったですよ」
その瞳が泣いているのか、分厚い眼鏡に隠れて見ることはできないが、肩が小刻みに震える荻上の様子に、斑目05は動揺した。


沈黙が続いた。
(な、なんとかこの場を切り抜けないと士気に関わる)と思う斑目05。何の士気か自分でもよく分かっていないが、場を和ませるつもりで話を切り替えた。
「あー、このまま帰れなかったら、実家に帰って“生き別れの双子”ですって自己紹介して家に入れてもらうかなぁ~」
いきあたりばったりに語りながら(ヤベー、全然フォローになってネエよ。逆効果じゃねーのか)と後悔する。
荻上の動きが一瞬止まる。
ボソッと、「もともと親が生んでるンだから、説明不可能スよ」と突っ込まれた。馬鹿な発言に呆れて軽くため息をつき、落ち着いてきたようだ。
「あれっ、そーだねー、そーそーアハハ……」斑目05は、荻上のフォローに成功したような、失敗したような、微妙な気持ちで愛想よく笑った。

「おっ、いた! おい2005!」
斑目05と荻上のもとに、何と、「第4回コーサカはオタクじゃねーんじゃねーか会議」を早々に切り上げた斑目02が駆け寄ってきた。02は、驚きの表情を見せる荻上には目もくれない。
02「あんなことになるなんて一言も書いてなかったじゃないか!」
05「成功したんじゃないのか?」
02「成功したさ、お前の予定通りにな。でも何だこの妙な敗北感はー!お前のせいなんダヨォーコノヤロー!」
どうも、結局自分が2人を結びつけるピエロに成り下がっていたことが気に入らず腹が立ってきたらしい。「自分が腹立たしくなった」02は、手っ取り早く「近くにいる自分」に怒りをぶつけにきたのだ。

02「(あいつらは)チューでカップル成立だ! コノヤロー」
思わず斑目05のネクタイを掴んで引っ張る斑目02。
「ネクタイ」「チュー!」「カップリング」
3つの力が1つになって、傍観していた荻上の妄想に変なスイッチを入れた! 今が非常時だというのに、もつれ合う2人の斑目05を見つめながらワープが始まった。
(夢のカップリング「斑×斑」!)
(しかも斑目さん、過去の自分に対しても受けなんですね……)
(ああ、ここで強気に目覚めた若き笹原さんが現れて2人を○※△$~!!!!)


斑目02は、「キサマー、屋上まで来い! 暗黒流れ星で道連れだ!」と勢い良くタンカを切った直後、「あれ?……あの娘……」と荻上に気付いた。
すでに荻上は、過度の疲労と緊張感にさらされただけでなく、異常なカップリングを目の当たりにし、さらに妄想を果てしなく展開させて心がオーバーヒート。すでに目を回して倒れていた。

事情を飲み込めない斑目2人は、口論そっちのけで慌てる。
「おい、2002年バージョン、人呼んで来い!」
「誰を!? 現視研の奴ぁ呼べないぞ、説明ができん!」
「えー、あー、うー! サークル自治室にだれか居るだろ! 校外の人間が倒れてるって言えよ!」
「わ、分かった。そこに居ろよ!」
ホッとする斑目05。しかし、いざ自治会の人間が来た時に、どう説明するのかは全く頭になかった。

庭の長椅子に座り、荻上の頭を自分のひざに乗せて見守る斑目05。顔中汗をかき、うろたえていた。
「おいおい、どうしちゃったんだよ荻上さん」……よもや自分×2でホモ妄想されていたとは夢にも思わない。
それどころか介抱するためとはいえ、女性を自分のひざに乗せていることに緊張してきた。
(笹原ぁ、スマン……)
その時、斑目05の背中に聞き覚えのある声が投げかけられた。

「大丈夫かい、斑目君」
初代会長だ。振り返って驚く斑目をしり目に、彼の隣に座って言葉を続けた。
「今日はいろいろと大変だったね」
「!?」
「時には辛かったり、耐えなきゃいけない事もあると思うけど、その経験があるからこそ、後々素晴らしい出会いや、幸せな未来につながることもある……」
初代は、気を失っている荻上に視線を向けた。
「……彼女が、そうであるようにね」
「初代……?」
「こういう経験の積み重ねで、より良い未来は創られると思うよ?」
斑目は考える。2002年に飛ばされた事態が全て、より良い未来とやらにするために仕組まれたことだとしたら……。

「もうじき自治会の委員長もくるだろう。じゃあ」
斑目は手を伸ばした。「待って下さい初代! 話はまだ半分……!」その瞬間、視界は再びブラックアウトした……。


約10分後のサークル自治会室。
委員長が浮かない表情で戻ってきた。書類をまとめていた北川副委員長が迎える。

「どうしました? 急病人が出たとか聞きましたけど……」
「いや、それが、いなくなっちゃったんだ」
「はぁ……。でも誰か付いてあげてたんでしょう?」
「うん、呼びに来た現視研の斑目君は、“あれ、俺がいない”とか、“帰っちゃったのか?”とか訳の分からんことをブツブツ言っててね……」委員長は状況を理解できぬまま、斑目02と分かれて帰ってきたというのだ。

北川は、ちょうど水虫がムズムズして苛立っており、攻撃的になっていた。
「委員長、この際、泡沫サークルは一斉に整理しましょう! 委員長に……いや、自治会に虚偽でメーワクかけるようなサークルなんて処分するべきです」
「いや、そんな急に……」
「やりましょうっ! 早速、各サークルを内定調査させます!」
「あ……うん」
北川さん主導によるサークルの取り潰し騒動が起きたのは、この後のことだった。


サークル棟の外で初代を呼び止めたはずの斑目05は、気が付くと現視研部室のドア前に立っていた。
ハッとして周りを見回す。
サークル棟の廊下は見なれた風景に戻っていた。ドア前の「ナ○ルル」のピンナップもない。腕時計に目を落とすと、部室で弁当を食べていた時間だった。
「夢か、夢だったのか……ハハハッ! 長ぇー夢だったなぁ。しかも立ったまま!」自分に言い聞かせるように笑い、ふと真顔になって「帰ろ」と、部室のドアを開いた。

「……夢、じゃなかったのか?」
部室のテーブル上には、ノートや雑誌を払いのけるように荻上の体が横たわっていた。気を失ったままの荻上は、メガネが外れ、髪が乱れて頬にかかるなど、何だか艶かしい。
斑目は動揺した。「今、部室のお昼の顔と言えば俺だよなぁ。このまま帰っちゃったら、俺すげー多方面から疑われそう……」もはや彼にとって、謎の真相よりも自己の保全が大きな問題になっていた。

(何とか、フツーに近付けよう)
斑目は、荻上の横顔に手を合わせて詫びた上で、バッグの中からメガネケースを取り出し、ド近眼メガネをしまう。続けてヘアゴムを探したが見つからないので、自分のコンビニ袋から輪ゴムを取り出して筆頭の復元に取り組んだ。
何度か目を覚まそうとする荻上にビビリつつ、作業を終えた斑目。
(荻上さんには合宿以来会わなかった事にしておこう)と思いつつ、いそいそと部室を出て行った。


しばらく後、テーブル上の荻上は、ボンヤリとした視界の中で目を覚ました。
ボーッと「あれ? 夢だったのか……コンタクトは……?」と呟く。気を失う前の記憶をまさぐろうとしていた時、部室のドアがガチャリと開いた。
誰が来たのかも分からなかったが、「荻上! 何してんのお前?」との一言で、咲であることが分かった。
「え、いや……寝てたみたいで……」
「大胆になってきたねぇアンタも」と呆れた口調だった咲は、ふと荻上を凝視し、次の瞬間「ぶひゃひゃはひゃやぁぁあ!」と爆笑した。

「なっ、何ですか?」
「だってお前、その頭……」

荻上の「筆」は、頭の右側に偏ってまとめられ、先っぽが花のように開いていた。しかも左右の耳にかかる「ブレードアンテナ」の髪は、両方とも2本に増えていたのだ。女の髪にまともに触ったことのない斑目では、完璧な荻上ヘアの再現など出来るわけがなかったのだ。
咲はもう一度じっくり荻上の頭を鑑賞する。
「パチモンみてー! 腹イテェー! タスケテェー!」
腹を抱えて笑う。ボー然とする荻上。

しかし、しばらく笑った咲は、ちょっと考え込んだ後、真顔で荻上に訪ねた。
「アンタのその乱れ方、ササヤンと……まさかココで!?」
「な、んな訳ないデスヨ! サササハラさんは研修です」
「サが一つ多いって。でも、まあ気をつけなよ……」
咲は近眼の荻上にも表情がハッキリ分かるほど顔を近付けた。荻上は思わず頬を赤くする。
「ひょっとすると、まだ“見ている”かもしれないからね……」
「???」
荻上には、何が何だか分からなかったが、悪い夢から現実に戻って来ていることが、ただただ嬉しかった。

しばらくして咲が、荻上が、部室を出た。
先刻(せんこく)までの喧噪が嘘のように、部室はひっそりと静まり返っている。
明日、また誰かが部室のドアを開く時、また新しい現視研の歴史が積み重ねられていくことだろう。


【エピローグ】

何日かが過ぎた休日。

荻上のアパートに、研修を終えた笹原が遊びにやってきた。
荻上は玄関のドアを開いて笹原を迎え入れた。
ドアが閉められる。荻上は玄関に立ったまま、2002年にくらべて少し背が高くなっていた恋人の頬に、両手を伸ばした。

「何? どうしたの?」
「何でもないデス。じっとしていてください」

目を閉じて、しばらく「3年越し」の感触を、かみしめた。

「“やっと会えた”」
「そんな大げさな……」

ゆっくりと目を開けて、そこに確かに立っている「今の笹原」を見つめて微笑む。笹原は意味が分からないなりに、いつもの優しい笑顔を返した。
やはり、愛おしくてたまらない。
今度こそ荻上は、笹原の頬に当てていた手を、その首に巻き付けた。

「お、荻上さんッ?」
「ここで……いいですから、一緒に居てください」

2人は玄関のフローリングの上にゆっくり崩れ落ちた。


<完>


【もう一つのエピローグ】

いつの時代かは分からない。

そこが今もサークル棟として役割を果たしているのかも、分からない。
ただ、その中は昼なお暗く、物音一つしない。
304号室、「現代視覚文化研究会」とプレートが貼られたドアの前に立つ人物がいた。猫背でなで肩、メガネの奥の瞳が黒く輝く。

「新しい未来がより良いものになるのなら、僕は協力を惜しまないつもりだよ……」

男はドアに向かって語り掛ける。手を伸ばすが、彼とドアとの間には、大きな板材が十字に打ちつけられ、封印されていた。

「……その未来が来れば、このドアも開かれると思うから」

ザアァァァァァァァーッ!……外の木立が風に吹かれて葉を揺らす。
「また、風が吹くな……」

ドアの前に立っていたはずの初代会長の姿は、すでになかった。

<完>