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第九話・戦禍の村の伝説 【投稿日 2006/03/01】

第801小隊シリーズ


誰にだって触れられたくない物がある。
クチキ一等兵にとっての趣味は美しいものを撮影することだ。
戦場の殺伐とした中でも、自然は美しい。
沈みかける太陽、満天の星空、さざ波が寄せてくる砂浜。
さまざまな美しいものを集め、コレクトする。
その趣味は、時に許されない行動を伴うこともある。
しかし、それでも彼はそれを入手することを躊躇うことは無い。
なぜなら、それが美しい以上、残すことが使命だと感じている。
・・・あの人にあってから。

「にょ~~・・・。」
勢いで飛び出してきたものの、すでに心細くなっているクチキ。
今彼は密林の中を一人歩いていた。
とりあえずおなかが減っていたので、何かしら食べるものを求めていた。
「勢い込みすぎたにょ~。すぐに謝るでありますか・・・。」
自分が悪いことをしたと思い込みつつあるクチキは、
隊の皆に怒られることが怖いのであった。勝手にMSを動かし、隊を抜ける。
早い話が逃亡兵である。逃げた兵士がたどる末路は一つ。死刑。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・。」
銃で撃たれる自分を想像し、体を震わせるクチキ。
ジムキャノンは密林の奥に、木や草で隠してきた。発見されることはまず無いだろう。
「しかしながらどこまで行けば食事が表れますか・・・。」
何か食べられるものを探しているものの、動物の一匹も出てこない。
夜になって暗い密林の中を懐中電灯一つで進んでいく。
足元ではパキパキ枝の折れる音。
クチキは気付いていないほどの小さい音だが、これでは敏感な動物達は出てこないだろう。
「にょ?」
目の前に少し明かりが見える。
「み、密林の終わりにょ~~!!」
密林がなくなるということは、すなわち人工の道、もしくは村になっていることが多い。
星明りも見えない密林は真っ暗だが、そのさきは星の光の当たる開けた場所。
「にょ!にょ!」
喜びのあまりスキップしながらその光へと向かうクチキ。
どんどんと光は近づいてきて、ついにその中へとクチキは身を躍らせた。
「・・・にょ?」
気付くと、地面がなくなっていた。
「・・・にょ。」
下を確認するクチキ。そう、崖だったのである。
「にょ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
そのまま下へと落下していくクチキ。
地面に激突、「グキィ!」という音を聞き、痛みが走ったと思うと、意識が飛んだ。

暗い空間に朽木は一人立っていた。
目の前には一人の女性。軍服を着ているので、軍属なのもわかる。
「しょ、少将殿!少将殿ではありませんか!」
その女性はその声ににっこり笑うと体が透けていく。
「少将殿!待ってください!あなたには言いたいことが!」
しかし、その姿は完全に消えてしまった。
「少将殿ーーーー!!」
そこでぱちっ、と目がさめる。
「夢・・・。」
クチキはそういいながら体を起こす。周りは木で作られた家のようだ。
「にょ・・・?」
「あ、気付いたんですね!」
元気な女の子の声が掛かる。その方向を見ると確かに一人の少女。年の頃は14、5といった頃か。
かわいいみつあみが、話すたびに少しゆれている。
「あ、あの・・・。」
「あなた、崖の下で気絶してたんですよ!私が見つけて村の人に運んでもらったんです。」
元気は褐色の肌をした少女。元気なのは肌だけではないようだ。
「あ~、そうなんでございますか~。それはお世話様でした~。」
そういいながらぺこりと頭を下げるクチキ。
「でも、腕がぽっきり折れちゃったみたい・・・。」
「にょ!?」
確かに、腕には包帯。固定されており、指先しか動かせない。
「あの上から落ちてきたんですか?そうだとしたらものすごく軽症ですけど・・・。」
「にょ~。体の丈夫さだけには自信がありますです!」
そういってビッと敬礼するクチキ。
「あはは!面白い人ですね!」
満面の笑顔でクチキの言葉に笑い出す少女。
「そうだ、お腹すいてません?丁度ご飯にしようと思ってたんですよ~。」
その言葉に、とてもいいにおいがしていることに気付くクチキ。
ぐ~、とお腹がなる。その音に少女はさらに笑う。
「あははははは!じゃ、あっち行きましょう!」

「私ミヤっていうんです。」
「ボクチンはクチキ一等兵であります!」
食事をしながら自己紹介などを始める二人。
「ミヤは、一人なのかにょ?」
「うん・・・。お父さんは連盟の軍人さんだったの。でも、戦場で死んじゃった。
 勇敢で優しい人だったから、しょうがないよね。」
そういって三人並んだ写真に目をやるミヤ。そこには、笑顔で並ぶ家族。
今より少し幼いミヤと、優しそうな父親と母親。
「お母さんも一人で私を育ててくれてたんだけど・・・。」
そこで俯き、悲しそうな顔をするミヤ。クチキもその変化に少し動揺する。
「皇国のゲリラの作った罠に巻き込まれて・・・二ヶ月くらい前に死んじゃったんだ。」
「それはそれは・・・。」
こういうときどういう反応をしていいかいつも解らない。悲しみは伝わる。
しかし、それに対しどういう言葉、どういう行動をとればいいのかが見えてこないのである。
自分の引き出しの少なさに口をつむぐしかないクチキ。
「でもね、お母さんが言ってたんだ。もし一人になっても笑顔で生きなさいって!」
表情を笑顔に変えたミヤに、少し、無理をしている感じをクチキは得た。
「・・・なるほどにょ~。」
「クチキさんどうしてここに来たの?お父さんと同じ軍人さんでしょ?」
「・・・・・・それは・・・。」
逃げてきたとはいくらなんでも恥ずかしくて言えない。
それに、ミヤは軍人である父親を尊敬しているのだ。
「て、偵察にょ~。」
とっさについた嘘に、ミヤの顔がパァッ!と明るくなる。
「え、本当!?じゃ、この村のこと聞いてきてくれたんですか?」
「え、え、話が見えてこないのですがにょ・・・。」
「それじゃ、私達が入れた連絡で来てくれた訳じゃないんですか・・・。」
少し、意外そうな顔に変わるミヤに、この村に何かが起こっていることを察知するクチキ。
「・・・事情を聞かせてほしいにょ~。」

ジャングルの真っ只中にある昼過ぎの村に、三機のザクが現れた。
『おら、いつもどおり、食料用意できたんなろうな!』
乱暴ともいえる声がザクのスピーカーで村中に響き渡る。
マシンガンやマゼラトップを構えるザクに、村中の人たちは恐怖に慄く。
『よし、そこにまとめておいとけ。』
コンテナに集められた食料を担ぎ、外へ向かう。
『こいつは料金だ、取っておきな!』
そういうと、踵を返し、一軒の家に向かってマシンガンを放つ一機のザク。
マシンガンの銃声と共に、その家は崩れ落ちた。
悲鳴が飛び交う。中には人がいたのだろう。
『ひゃははははははは!じゃあ、明日は女もらいに来るからよ!』
そして、ジャングルの中へとザクたちは消えていった。
その様子を影から見ていたクチキとミヤは、その崩れた家に走っていく。
「だ、大丈夫ですかにょ~!」
「あ、ああ・・・。だけど、中には子供が・・・。」
一人の男性が悲しそうな顔をしながら瓦礫を前に呆然としている。
「早く助けなきゃ!」
「し、しかし・・・。どうすれば・・・。」
「こうするにょ!」
一本の鉄棒を持ってきたクチキは、瓦礫の隙間に入れ、てこの原理で動かしていく。
怪我をした片手ながらも、必死に、救出を行おうとする。
「・・・な、なるほど!」
「村の人たち集めてくるにょ!すぐに!」
「は、はい!」
ミヤに向かってそう叫ぶクチキ。ミヤはすぐに走っていく。
「絶対に助けるにょ~!」
そういいながら加勢したその家の主と共に瓦礫を動かしていく。
人がだんだん集まってくる。少しづつなくなる瓦礫。声が聞こえてくる。
「・・・助けて・・・。」
「生きてるにょ!」
そう叫ぶクチキの声に、村人達の動きはさらに元気になった。

「助かりました・・・。」
夜の村。家がなくなったその主と、息子は、人の少ないミヤの家に来ていた。
「ありがとう・・・。」
「当然のことをした前でにょ!」
少し、誇らしげに胸を張るクチキ。
「さすがね、クチキさん!軍人さんはやっぱり頼りになる!」
食事を持ってきたミヤは、とても嬉しそうに話す。
「・・・しかし、あいつら何者なんですかにょ~?」
「・・・・・・はぐれ皇国軍ですよ。
 宇宙へ皇国が帰還したとき、ゲリラ活動をしてて見捨てられた者達です。
 ある意味、かわいそうな連中なのかもしれませんが・・・。」
そう語る男性に、ミヤは憤りながら叫んだ。
「だからと言ってああいうことしていい訳じゃないでしょう!」
「それはもちろんそうだ・・・。」
少しそれにびっくりしながら男性は答える。
「数日前から現れて、MSで脅かしながらさまざまな要求をしてくるのです。
 初めは食料でしたが、女性も要求し始めてきました。
 別に食事を分けるぐらいはなんでもないのですが・・・ああも高圧的だと・・・。」
なるほど・・・と合点がいったクチキ。食うに困り、山賊化したのだろう。
「・・・・・・連盟の方には連絡はしたんですにょ?」
「ええ、それはもちろん。ですが、到着は数日後と・・・。」
「だからですか、ミヤがそう勘違いしたのは・・・。」
「そう。でも、連絡無しできたクチキさんは勇者さまみたいね!」
食事を口に運んでいたクチキの手がそこで止まる。
「にょ?」
言ってる意味の解らないクチキに対し、男性が補足する。
「ははは・・・、村に伝わる伝説ですよ。
 村、悲劇に見舞われしとき、手負いの英雄現れ、民を救い、悪意を断つ。
 もう、何千年前からも伝わる伝承です。」
歴史の長そうな村ではあった。外には不思議なモニュメントなどもあった。
美しい概観、風景をしたこの村に、クチキは感動をしていた。

「そう、その勇者様!崖で見たとき、私ピンと来たんだから!」
そういいながら興奮してフォークを持ち上げるミヤ。
「クチキさんならあいつらやっつけてくれるよ!」
「おいおい・・・、伝説は伝説だろう。それに、腕の折れてるクチキさんがどうやって・・・。」
痛々しそうなクチキの手を見ながら男性は呟く。
「・・・・・・それはそうだけど・・・。」
ぷぅ、と頬を膨らませるミヤに、苦笑いの男性。
「・・・私のほうからも自分の部隊に呼びかけてみますにょ。
 いま少し離れていますが、今来ている部隊よりも近いかもしれませんにょ。」
「そうしてくれるとありがたいです!早い方が、被害も少なく・・・。」
「解りましたにょ・・・。」
そうはいったものの、実は連絡手段など持っていなかった。
偵察といった以上は、言わなければならない言葉ではあったのだ。
「連絡を入れた部隊が来るのが明日の午後。しかし、やつらは昼には来てしまいます。
 その前にやつらを何とか止められれば・・・。」
安心したような顔をする男性やミヤを前に、あせるクチキ。
しかし、先ほど言ったように、クチキには連絡手段がない。
「・・・わ、解りましたにょ・・・。」
そう繰り返すしかクチキには出来なかった。そして、一つ心の中で決心をした。

深夜。クチキはミヤの家から出て行く。ジムキャノンのところへ向かうのである。
ああいってしまった手前、やるしかないだろう。
一機のジムキャノン、そして自分の腕前でどこまで戦えるか不安はあった。
しかし。自分にやれることはやらなければならない。ジャングルへと戻るクチキ。
最初に所属した部隊で、直属の上司だった少将殿の顔が浮かぶ。
夢で見たせいだろうか、苦い過去を思い出し、重いものが心を埋める。
新人である自分を助けるために戦火に飛び込み、行方知れずになった少将殿。
彼女のいつも言っていた言葉。今でも共感するすばらしい言葉。
『私は軍のためじゃなくて、美しいものを守るために戦っているんですわ・・・。』
おっとりしていながら、その中に強いものを持っていた少将殿。
今でも、クチキの心の師でもあり、尊敬すべき人なのである。
今は美しいこの村、村に生きる人々を救うことが、彼にとってのリスペクトなのだ。

村の昼にて。朝、クチキがいなくなったことで、あわてていたミヤ。
今は少し落ち着きを取り戻し、クチキが来るのを待っていた。
自分の部隊を連れて来ていると信じて。しかし、クチキが現れる前に、やつらはやってきた。
『お~い、来てやったぞ、ははははは!』
相変わらず品性の欠片も感じられないような言葉を出すザク。
三機ともいまだに健在のようだ。
「クチキさん・・・まだ・・・?」
ミヤが集められた村人の中で、祈るように胸の前に手を組んでいた。
『よ~し、それじゃあな~、そこの女、みつあみの、お前、来い!』
そういって、指をさしてきた。その先にいたのは、ミヤ。
「・・・!!」
驚きのあまり、ミヤは声も出ない。
「いや・・・っ!」
その大きな叫びは、ザクに登場している男にも聞こえたようだ。
『おいおい・・・いいのか~?村がどうなってもしらねーぞー?』
ひゃはは、と言う笑い声が続けて聞こえてきた。
ザクたちの構える銃が村のモニュメントや、家のほうに向く。
「・・・うう!」
少しづつ、ザクへと近寄るミヤに、村人達は手出しを出来ない。
『あははははは!いい子だ!』
ザクとミヤの距離が後少しといったところまで来た。
(クチキさん・・・!)
ここに来ても、ミヤはクチキを信じていた。
そこに、大きな砲弾の音が聞こえた。
ド・・ド・・ン!!
一体のザクに二つの砲弾が命中した。そのまま勢いで近くにあった家に倒れこむ。
「も、もしかして!」
ミヤがその砲弾のほうに向くと、そこには一機のジムキャノンがいた。

『な、な、連盟軍か!く、来るの早すぎじゃねえかあ!』
一応、連盟軍への報告は覚悟していたのだろう。
しかし、予想より早い到着に、動揺を隠せないリーダー。
『村の皆さん、一固まりになって安全なところに早く逃げてくださいにょ~!』
クチキの声がスピーカーから響く。その声に反応した村人達は、一斉に逃げ出した。
「ほら、早くミヤも!」
「で、でも・・・。」
昨日の男性がミヤの手を引く。しかし、ミヤは一機しかいないクチキに不安感を得た。
しかも、彼は手を骨折しているのである。
『て、てめえ・・・!』
ザクは、そのマシンガンを構え、ジムキャノンへと向ける。
ドダダダダダダダダダ!!
よけたジムキャノンの後ろにあった家に命中する銃撃。
「にょ~~~~!!」
ジムのコクピットで叫ぶクチキ。痛みはあるが、腕は動かなくもない。
再び240mm砲を構え、一体のザクを狙う。
ドン・ドン!
しかし、一発は命中し、腕を落とすが、ザクは反撃に移ってくる。
マゼラトップ砲から発射される砲弾。
「キョオ~~~!」
奇声と共によけようとするが、痛みの反射から、行動が遅れる。
直撃する砲弾。衝撃で後ろに倒れ、クチキは体を打ちつける。
「うぐおお~~~っ!」
痛みに気を失いそうになるが、立ち上がり、片手のザクに向かってビームライフルを放つ。
すぐに反撃を受けると思ってなかったそのザクは、その一撃を足に受け、倒れる。
そして、そこにクチキは続けざまに砲弾を撃ち込み、そのザクは沈黙した。
「こ、これで二機・・・。」
予想よりもうまくいった作戦に、口が思わずにやけるクチキ。
隠れてまず一機。あと二体は気合で。作戦のような、なんでも無いようなものだが。
しかし、気付くと残りの一機がいない。ディスプレイを見渡すクチキ。
「ど、どこにいったかにょ~~~??」

すると、敵影が目の前に現れた。
「にょにょにょ~~~!!」
ドン、という衝撃音とともに、後ろにはじかれるジムキャノン。
蹴りを入れたザクは、悠々と倒れたジムキャノンへと近づく。
『やってくれたじゃねえかあ・・・・。』
怒り心頭、といった様子の声である。
接近戦では武器が使えないジムキャノンにとって、この距離は危険だ。
しかし、簡単に相手が距離を取らしてくれはしない。
『ちょ、ちょっと待ちなさい。後で、連盟の本隊が到着するでありますよ!
 そうしたら、どっちにしろあんたら負けですから!残念!』
『うるせえ!仲間やりやがって!!』
『あんなことするあんたらが悪いんでしょうが!』
『なにいってやがる、それは関係ねーだろう!』
『おや、逆ギレですか、あーそうですか。
 ・・・・・・・逆ギレ勝負なら負けたことねーよ!!』
叫びがスピーカーから響くと、ジムキャノンは、その体勢から思いっきり跳ね上がり、
体ごとザクへとぶつかって行った。そのまま、ザクは後ろへ飛ばされ、倒れる。
『ちょ、てめ・・・え!?』
ザクが声を出そうとした瞬間に、クチキはすでに近づいていた。
そのまま、ザクを抱えると、思いっきり高く持ち上げた。
「にょ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」
叫ぶと、ザクを放り投げるクチキ。
綺麗な弧を描きながらザクは近くにあった家へと落下する。
ドシン・・・・!
家を破壊しながら落下したザクは、もはや動かなくなっていた。
「はぁ、はぁ・・・。」
荒く息をするクチキ。そこに、村人の歓声が上がっていた。
MSを停止して、降りるクチキ。
そこに駆け寄るミヤ。

「すまないにょ・・・。村ボロボロにしちゃったにょ・・・。」
しょんぼりするクチキに、ミヤは顔を振り、答える。
「ううん。物はまた直せばいいから。私、クチキさんに助けられました。
 やっぱり、あなたは勇者様だったんですね。」
笑顔で言われて照れるクチキ。村人も、みなクチキへと賞賛を浴びせる。
「にょ~、にょ~、恥ずかしいにょ~。」
そこに、一機の輸送船が現れた。連盟のものである。
「お、来たようだ。予定よりも早かったようですな。」
昨日の男性がクチキに向かって言う。
降りてきた輸送船から、兵が四人降りてきて、ザクの方へと向かう。
そして、最後に出てきたのは。
「少将殿!」
クチキは叫ぶと、降りてきた女性、少将の方へと向かう。
敬礼をするクチキ。微笑む少将。
「クチキ二等兵・・・今は一等兵でいらしたんですっけ?」
「そ、そうであります!少将殿こそ・・・。」
「あらあら。死んだと思っていたのですか?あの後、記憶を少々失いましてね。
 最近ようやく原隊に復帰出来たのですよ。クチキ二等兵も元気そうで・・・。
 あ、一等兵でしたね、すみませんねぇ。」
「い、いえ、恐縮であります!」
尊敬する人物の元気な姿に、涙を流すクチキ。よもや、こんな再会を果たすとは・・・。
「あらあら。・・・しかし、一等兵、頑張りましたね。一人でこの三機を倒したのでしょう?」
村人へと事情を聞いて回ったほかの兵が、少将へと報告に来た。
「あらあら・・・。素晴らしいじゃない。被害を最小限に留められましたね・・・。
 しかし、あなたの隊はいま、皇国軍の兵器を追ってるんじゃなくって?
 あなたの隊の大隊長から聞いてますよ?」
「そ、それは・・・。」
「うふふ。安心なさい。隊の方々はあなたを探しおられるようですよ。
 連絡機、お渡ししますから、隊へ復帰なさい。」
微笑む少将に対し、もはやクチキは言葉もない。
「あ、ありがとうございます・・・。」
今までした中でいちばんの敬礼を少将へと向けた。

「いっちゃうんですね・・・。」
次の日。輸送船に搭載されていた作業用MSが村を直している最中。
ジムキャノンに乗り込もうとするクチキに、ミヤは寂しそうな顔を向けた。
「・・・今のままじゃ、また同じことが起こるかもにょ。
 戦争を終わらして、早くこんなこと無くして来るにょ。
 ミヤのお父さんも、きっと同じ事を考えて戦場へと向かったにょ・・・。」
「・・・そうですよね。でも、クチキさん、ひとつ、約束してください。」
「にょ?」
小指を立てて、クチキへと向けるミヤ。
「死なないで下さい。あと、戦争終わったらまた村に遊びに来てください。」
「・・・わかったにょ。」
死ぬな。マダラメ隊長がいつも言っている言葉。
これほど重く、大切に感じたのは今回がはじめてであった。
同じように小指を立てミヤと指切りをする。
クチキはそのままMSの乗り込み、コクピットから手を振る。
同様に手を振り返すミヤ。ジムキャノンは皇国から接収されたドダイにのって、
空へと上っていく。ミヤはその姿を見上げながら、涙を流した。
「あらあら・・・。」
その姿を見ていた少将が、ミヤへと近づいてくる。
「大丈夫よ、ミヤさん。一等兵は強くなったわ、私と一緒の頃より。
 いい隊に所属しているんでしょうねぇ。きっと、無事にまた会えるわ。
 さっき、ザクのデータから基地一覧が見つかってねぇ。彼の隊の使命も果たせそうよ。」
「はい・・・。」
クチキが去った後も、その空を、ミヤはいつまでも見つめていた・・・。

「ごめんなさい・・・。」
オギウエに謝られ、きょどるクチキ。
隊に戻ってきたクチキに浴びせられたのは、謝罪。
「ごめんな、クッチー。オギウエが持ってたよ、ペンダント。」
「ごめんなさいね・・・。」
「ごめん!」
口々に女性軍から謝られ、動揺するクチキ。
「・・・いえ、ボクチンも大人気なかったといいますか・・・。」
「・・・とまあ、謝ったんで、この件はOK?」
そういった咲の顔が引きつりだした。
「・・・まあ、OKですが、・・・なんですにょ?」
「・・・あなたのデジカメ、見せていただきました・・・。」
ビクッ!顔から異常なほどの冷や汗が流れてくるのが解る。
「・・・・・・隠し撮りとはねえ・・・・・。」
「え、え、どういうこと?」
一緒にその場に立ちあっていたササハラが、不思議がる。
「・・・・・・こいつね、あの水浴びのとき隠し撮りしてたんだよ・・・。」
「ええ・・・?!」
すぐさま逃げようと走り出すクチキ。
「ああ!!まて!てめえ!」
ケーコ、サキ、オーノがそれを追いかけていく。
走るクチキの手から金庫がこぼれる。落下して中の写真がこぼれる。
飛び散る水浴び写真。それが丁度歩いてきたマダラメの目に止まる。
「なんだこりゃ・・・。」
拾い上げたマダラメはびっくりする。そこにあったのはサキの水浴び。
「うぉおおおお!!?」
「コラ!マダラメ見るな!」
叫ぶサキに、動揺を隠せないマダラメ。
クチキは走る。美しいものを守るため。女体は世界の神秘だと心で叫びながら。
時には、盗撮もする。それも、美しいものを守るためならいたしかたない事なのだ。

次回予告
送られてきたデータからついに目的の基地へと到着した第801小隊。
初めてこちら側からの襲撃となり、少し戸惑いも感じる面々。
しかし、敵軍の新兵器の威力によって動けなくなる出撃隊。
そのピンチに、オギウエは自らMSに乗り込む。
次回、「オギウエ出撃」
お楽しみに。