荻上さん最強伝説 【投稿日 2006/02/25】

カテゴリー-現視研の日常


咲「よう荻上、大野も、ひさしぶり」
大「あっ、咲さん!!」
荻「お久しぶりです。」
 咲が久しぶりに部室に顔を出すと、大野と荻上がいた。
咲「(にやり)荻上~、なんかちょっとみない間に雰囲気変わったんじゃね~?」
荻「そうですか?」
咲「上はうすいピンクのパーカーに、下は巻きスカートかあ…ほーほー、笹やんはそういうのが好みなんだあ~?」
荻「ええまあ、そうです。でも私が着たかったから着てるんです」
 荻上が即答したので、咲と大野はびっくりする。
咲「へえ…いい傾向だね。そんな素直に答えるなんて。
ふーん、笹やんに愛されてるからかね~?」
荻「ええまあ、そうです。でも私のほうが、もっと好きです。」
咲と大「!!」
 思わずのけぞる咲と大野。
咲「すげ~!荻上がのろけてる!!」
大「あらあらあら、まあまあまあ」

咲「ところでさ…付き合う経過はどんなんだったか、聞かせてよ」
大「いいですね!私も聞きたいです!」
咲「お前、自分のときは恥ずかしがって教えなかったのに…」
大「まあまあ、そんな過去の話は流しちゃって、どんなんだったんですか!!荻上さん!」
咲「流すのかよ!」
荻「合宿の終わった次の日、笹原さんがうちに来たんです。私が呼んだんです。」
咲「ほうほうほう!」
大「それでそれで!?」
荻「笹原さんに、笹原さんと斑目さんをモデルにした801漫画やイラストを見せたんです。」
大「…ああ!アレですね?前にノートに描いてた…」
咲「…は?何それ??…801?笹原と斑目で??」
 まだよく分かってない咲。
荻「…あんなモンじゃないです。」
大「え?」
荻「もっとハードコアなのを、全部です。」
大「…え、それってまさか、夏コミに出した同人誌並みの…」
荻「あんなモンじゃないです。」
大「…………………」
 冷や汗だらだらでうつむく大野。

咲「…えーとそれは、笹原と斑目が…」
荻「つながってる絵です」
大「………………………………」
咲「…んん~?なんか、いまいちピンとこないんだけど。一回見せてよ」
大「さ、咲さんっ…」
(知らないって恐ろしい…)
荻「いま持ってきてないです。」
大「で、ですよね!!」
荻「けど、描こうと思えばすぐに描けます。」
咲「そうなの?じゃあ描いてみてよ、簡単に」
大「お、荻上さん!?」
 いうや否や、カバンをあけてノートを取り出し、ペン立てから鉛筆を抜くととものすごい速度で描き始める。
荻「いつどこで誰に描けと言われてもいいように、心の準備はしてあります。
…たいがい無駄ですが。今日は如何なく発揮させていただきます。」
 淡々とした口調とは裏腹に、手はものすごい速度で動いている。
 大野はその手の動きに既視感を覚えた。
(どこかで…あ、田中さんが衣装を縫ってるときの、ミシンの針の動きに似てる…)
 絵を描いている人を見て、普通、そんな感想は抱かない。

 どうやら1ページだけにおさまらないようで、どんどんページがふえていく。
荻「描きあがりました」
 荻上さんは疲れたような、しかしどこか達成感で満たされた顔で鉛筆を置いた。
大「で、できたんですか?」
咲「へえ…10ページもかいてるじゃん。漫画になってる。すごいな、この5分間で。」
大「ご、5分っ!!?」
大野は荻上のかいたノートを見る。鉛筆でやや荒い線ではあるが、とても5分でかいたとは思えない。
咲「プロの漫画家ってこんなに早く描けるの?」
大「…いや、荻上さんの速さは、珍しいと思います…」
咲「へー?…って、うわほんとにエロいな!」
大「そ、そうですね…」
咲「妙にきっちり描いてあるし…笹原かっこよすぎないかコレ!?
って、斑目女の子みたいだな!…ぶっ、あっははははは!!
言わねー!!!絶対そんなクサイ台詞言う奴いねーーー!!!!!」
 大爆笑する咲の隣で、大野さんは顔を赤くして黙って読んでいる。
(むむむ…これはこれで…)

荻「大野先輩?」
大「…えっ!?はい!なんでしょう!?」
荻「大野先輩は斑目さんのへたれ攻めがいいって言ってたんで、あんまり面白くないと思いますけど」
大「は!?いえ、そんな…」
咲「大野…お前もか…!!」
大「え、えーとえ-と、これはこれで…斑目さんの受けもアリかと…」

 そこへ、今まさに話題の渦中の人物が部室に顔を出した。
斑「や、こんちは。………どしたの?」
 斑目の登場に固まる三人。
咲「よ、よう、斑目」
斑「春日部さん、久しぶり」
大「………………………………」(////////)
荻「………………………………」(////////)

 女三人の焦る心のうちなど知る由もない斑目は、のんきに、
(今日は春日部さんの顔を見れたな…いい日だ)
などと思っていたらしい。

斑「ん?なに読んでんの?」
 春日部さんの持っているノートに興味を示す。
咲「ああ、荻上の描いた漫画」
斑「へ~~~」
咲「はい」
 あろうことか、そのノートを斑目に渡す咲。
大野と荻上が止めるひまもなくノートをひらく斑目。
大「!!!」
荻「!!!!!!!!」



「……………」
「…………………」
「………………………………………」


今度は斑目が固まる番だった。


(………………………………
801漫画…………だよな。うん。
………………なんか誰かに似てる気がするんだけど…………。
うん、いや、ひとコマ目に「笹原」「斑目さん」って呼び合ってるし。うん。
ほら、801漫画って実在の人物もネタにするらしいし。
荻上さんは、生粋の801書きだからな!
………って、俺かコレ?なんか可愛すぎないか!?
はあ……ていうか、不思議な世界だな………………。
なんかすげえからまってるんですけど……………………………


………………………ま、内容はともかくとしてだ。

問題は春日部さんもコレを見たってことだ。
なんか好きな人に、イメージとはいえ自分のアレなアレを見られたということに問題があるような。
それって、きっと、すごく…………


うわああああああああああああああ○△×※□!!!!!!!!)


 完全に固まる斑目に、かける言葉も思いつかない。
荻上は下を向いて冷や汗を流している。
大野は、つい萌えてしまったことに後ろめたさを感じて顔を赤くしている。

斑「あ、あの」
荻上と大野、ビクッとする。
咲「ん?何」
斑「…か、春日部さんも読んだの?」
咲「うん、まあね」
 (うわあ……………)
咲「でもさ、全然別物だよね」
斑「え?」
咲「読んだけどさ、本人とかけ離れてるじゃん。イメージをちょっと借りただけの別物。
そう思わなかった?斑目は」
 (あっ…そうか。だから春日部さんは俺に…)
斑「そ、そーだな!俺、こんなに可愛くないしな!ていうかこんなに美化されたら照れるよね、なんか」
あはははと笑う斑目。
本当は笑っている場合じゃないのだが、春日部さんが『全然別物』と言ってくれたので、とりあえず安心する。
 (そうか。荻上さんの為に、あえて俺に見せたんだな)


 一方、咲は内心冷や汗をかいていた。
(うわ、あぶねー!!もう少しで荻上のトラウマ再びになるとこだった…)
斑目の反応を見てほっとする荻上。
それを見てほっとする咲。
(結果オーライってことで…斑目が空気呼んでくれて助かったよ…)

荻「すいません、勝手にこんなの描いちまって…」
斑「いや、別に、大丈夫よ?気にしないでも。
あ、でも今度描くときはカッコいいのも描いてネ…ハハ……」
荻「あの…実は他にもあるんですけど」
荻上はカバンからもうひとつ、ノートを取り出す。
荻「こんなのも描いたんですけど。801じゃないジャンルで」
斑「へー!どんな話?ラブコメ?ファンタジー?」
そう聞くと、荻上さんはこう言った。

荻「大野先輩×春日部先輩の百合モノです。
温泉のときのことを思い出してつい、合宿帰ってきてから描いてしまいました」


大・咲「!!!!!!!!!!!!!」
戦慄する大野と咲。

一方斑目は、
(み………………………………………

   見   て   えーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!)


斑「え、見ていいの?」
と聞くと返事を待たずに荻上さんの手からノートを抜きとる。
そしてノートを開き、1ページめが視界に飛び込んでくる直前。

咲「見るなーーーーーーーーーー!!!!!」
今までで最大級のグー突っ込みが炸裂、吹っ飛ぶ斑目と百合本ノート。

斑目は床に転がり、百合本は見開きのまま宙を舞い、いま部室に入ってきたばかりの笹原の顔に見事に着地した。
笹「うわっぷ!!」
大「ひゃあああっ!!!」
大野さん、慌てて笹原の顔からノートを奪い、しっかりと腕に抱きかかえる。

大「…見ました?」
笹「へっ!?ななななにが!?見てない!なんにも見てないよ!!」
大「こっち向いてください!見ましたね!?
記憶消してください!今すぐ初期化してください!!」

向こうでは斑目と咲が喧嘩している。
斑「いてーな!今のはマジ痛かったぞ!」
咲「見ようとするからだろーが!このムッツリ!!
荻上、描いたのまでは許してやる。妄想は誰にも止められないし!
だけどいますぐシュレッダーにかけろ!!」
斑「うわ、ズリー!!人のは見たくせに!」
咲「本物見たわけじゃねーだろ!!」
斑「あの本だって『イメージ借りただけの別物』だろーがよ!」
咲「うわ、ああ言えばこう言う。このへ理屈!」
斑「どっちが!!」
咲「オタク!!」
斑「それ関係ねーだろ!!」

大野につめ寄られた笹原、荻上に助けを求める。
笹「お、荻上さ~ん…なんで百合なんか…妄想進化してない…??」
荻「今は反省している。」

                  OWARI
最終更新:2006年03月01日 04:30