斑目と恵子? 【投稿日 2006/02/21】

カテゴリー-斑目せつねえ


管理人注:タイトルはつけさせていただきました。管理に必要なもので・・・。


あれから一週間が経った。今日も土曜日だ。退社する斑目。やはり定時。
(あれから一週間かー……)(あれから昼にも部室に顔出してないし……)
(どーしちゃったんだろ、俺……)

扉絵

何とか部室に足を向けようとする斑目
(今日行けば……えーと……笹原妹いるかも……)(いるから何なんだろう……)
(いや、何を怖がってんだか俺)(いつも通りに部室に行けばいいんじゃん)
とりとめない事を考えているうちに部室棟の下に着く。部室には明かりが付いている。
(…………)部室の扉を開ける斑目。

「おっ」
部長席で少女マンガを読んでいる恵子が声をあげる。
(…………本当にいた)呆ける斑目。
「やーマダラメさーん」「今仕事上がり?」ぴっ。手刀で挨拶をする恵子。
「……ああ、そうだけど……」
「もー、相変わらず暗いねー!」「……って、まぁ無理も無いか、アハハハ」
(…………)無反応の斑目

「おや、珍しい組み合わせだこと」
(うおっ!)
不意に声をかけてきたのは、片手にノートパソコンを持った春日部さんだった。
「ねーさんこそ、こんな時間に珍しいじゃん」
「あーまーね、ショップ開店準備で忙しくてさぁ……」相当疲れている感じだ

「コーサカさんは?」
「……仕事」
「ふーん!!」(ニコニコ)
「……何が言いたい?」
「ぶぇ~つにィ~~」
「ま、いいけどね」斑目を横を素通りして恵子の隣に座る咲
「あんたらこそ何してんの?」「って斑目も来たばっかりか」
「えー、いや、ちょっといろいろあってねー!」
立ち上がって斑目の方に歩いていく恵子。

「ねー、斑目先輩っ!」斑目に抱きつく恵子
斑目(!!)
「…………」「えー」「なに」「あんたら……そうなの?」ぼんやり呟く咲
「えっ、いや、ちがっ……」顔真っ赤の斑目
「へへー!どーでしょーね!」嬉しそうな恵子
「やめろよ!」恵子の肩を小突いて押しのける斑目
ハッとした表情の恵子、斑目。やっぱりぼんやりの咲

「なんだよー!」「あたしとねーさんのどっちがいいんだよー!」
目をつぶって怒鳴る恵子。我に返って斑目と咲の顔を見る。
(しまった)という顔を見せて、部室から走り出る。
残った斑目と咲。
「斑目」
「え?」
「正直よくわかんないけど」「追いかけた方がいいと思う」「行ってやんな」
「あ」「ん……」
部室の外に出る斑目
背中を視線だけで追いかける咲
(なんだありゃ)(わけわかんねー)

ぐったり疲れて、ため息をついて椅子の背もたれに全体重をあずける咲。
ふと天井を見上げると、そこには人の顔が。
『やあ春日部さん久しぶり』

「はうあ゛――――!!」(4倍角)

『……そんなに驚かなくても』
「いや絶対に驚きますって!! 会長!!」(ドキドキドキドキ)
咲の傍らに初代会長が立っていた。
『だから会長じゃないってば』
「……卒業したんじゃなかったんですか!!」
『んー、ちょっと顔出したら、なんかすごい事になってたんで陰で覗てたんだよ』
「……本当ですか?」
『……どう思う?』
「……信用する他ないじゃないですか……」
『どうだろうねぇ』『それより、「あれ」はどういう状況なのかな?』
「え……『あれ』って……」「今のですか?」
『春日部さんに何か心当たりは?』
「さぁ……斑目の反応はともかく、恵子の方がわかんないかな」
『そうだねぇ、恵子くんの方がちょっと変だったねぇ』
「え、会長、アイツと会った事……無いですよね?」
『いや、笹原くんから話は聞いててね』『前から興味深く思ってたんだ』
「……そういう事にしておきます」
『それでどうかな』『長くなるかもしれないけど、僕の話聞いてみない?』
「会長のお話とあらば、聞きましょうか」
『だから会長じゃないってば』『ただ、そうだねぇ、どこから話そうかねぇ』
『……そうだな、前に聞いたけど、笹原くんのご両親ってのが放任主義らしいんだよね』
「あー……そういえばどっかで聞いた気が……」
『そうか……春日部さんは覚えてないんだ』
「は?」
『いやこっちの話』
『それでひとまず、子供の頃にご両親の愛情が足りなかったから
 恵子くんはあの通りになってしまったという仮定をしよう』
「えー、心理的に充足されてないから依存に走るなんて」「なんかありがちな話ですねー」
『蓋を開けてみれば単純な話かもしれないよ?』
『それはそうと荻上くんの件ではご苦労様だったねぇ』
「えー、いや、あれはほとんど笹ヤンと大野が……」
『合宿で二人をくっつけちゃおうと最初に考えたのは春日部さんでしょ』
『まそれはともかく、荻上くんの場合は原因はとてもはっきりしているんだけど、
 笹原くんたちの場合は、ご両親も普通にご健在だし、
 笹原くんも東京で一人暮らし、恵子くんもあっさり専門学校に入学するし、
 笹原くんのウチも経済的には恵まれていると言っていいだろうね』
『どう見たって親御さんには大事にされているとしか見えないし、親も本人もそう思っているだろうしね、
 ただしそれがこの問題を目立ちにくくさせているとしたら?』
「…………」
『親御さんは放任主義で笹原くんたちに自由とお金を使わせているけど、
 親の愛情ってそれだけじゃ足りないしね』
「えー、でも、恵子があんなに染まっちゃう程なら、笹ヤンは何で……まぁ、普通なんですか?」
『程度の問題かな、2つ考えられる』
『1つは笹原くんが第一子だったからかな、その分第二子の恵子くんよりは大事にされただろうしね』
『それに二人に3年の年齢差がある』
『ある時期から母親も不在がちになったとして、
 笹原くんの方が3年は長く母親と接していたのかもしれないよ?』
「うーん……」
『ご両親が不在がちなら、笹原兄妹が子供の頃にべったりな兄妹だったかもしれないよね』
「……でもあの二人の仲の良さは、喧嘩しすぎなように見えますけど……」
『でも最近はどっかでお互い信頼しているでしょ』
「……否定はしません」
『だから僕はあの二人の間に何か事件があったんじゃないかと思ってるんだよねぇ』
『昔の二人の態度からすると、笹原くんに何かの原因があったんじゃないかなぁ?』
「原因てなんなんですか?」
『さぁ、校内の事じゃないからそこまでは知らないよ?』
「……校内の事だったら何でも知ってるみたいですね」
『さぁどうかなぁ』
「…………」
『もう1つ違いがある』
『笹原くん、高校時代はオタク趣味を隠していて、友達いなかったって、
 春日部さん、そう言ってたよね?』
「ええ、そうですね」
『一方恵子くんは中学時代から遊び歩いていて、友人や彼氏もいっぱいいたみたいだ』
『でも僕が見る限りでも、笹原くんの方が一見危なげなく育っている』
「言われてみれば……」
『恵子くんは他人に家族を求めて、笹原くんは脳内に家族を創ったんじゃないかな』
「は?」
『いやわからなくてもいいけど、恵子くんはご家族が与えてくれなかった愛情を
 他人に求めたのさ、一見当然の選択だけど、友達も彼氏ももちろん家族じゃないから、
 恵子くんが本当に欲しかった物は得られなかったと思うよ』
『笹原くんの場合、現視研に入る以前からアニメやゲームに没頭していたわけだ、
 もちろんくじアンも含めてね、彼の入学当時の事を思い出すなぁ、
 あの業の深さは「ヌルいオタ」どころの話じゃないよ?』
『高校時代友達はいなかったけど、アニメやゲームで出会ったキャラクターで
 理想の家族を脳内で構築して、それを実際の家族の代わりにしていたとしたら?』
「ありえるんですかそんな事」
『人間はフィクションの物語に感動したり泣いたりするんだよ? ちょっとした想像力と
 それを求める心理があれば可能さ。フランス兵の捕虜収容所の話って聞いた事無い?
 「脳内共同ガールフレンド」で検索してみるといいよ。』
『そう言えば笹原くんの大好きな「くじアン」だけど、春日部さんは読んだことある?』
「ええまぁ……コスプレさせられた後に一応……」
『キャラクターの設定覚えてる?』
「……いやそこまで覚えてないですよ……」
『「片親か両親が不在」って設定のキャラ多かったね』
「…………」
『主人公からしてそうだったかな』
『恵子くんに読ませると意外とハマるかもしれないよ?』
「……だから笹ヤンが『くじアン』好きだって言うんですか?」
『本人がどこまで意識しているかはわからないけど、そういう可能性だってあるって話さ』
『それにこれは恵子くんにも言えるよ』
「え?」
『笹原くんが言ってたけど、恵子くんが「けっこうハマったゲーム」って言ってたのが
 「ドラクエV」なんだってさ、プレステもあるのにスーファミのゲームだよ?』
「いや、アタシはやってないんで知らないですけど…」「それがどうかしたんですか?」
『「ドラクエV」のテーマの1つが「家族の絆」なんだよね』
「…………」
『もちろんそうだと書いてあるわけじゃないけど、歴代ドラクエシリーズや、数多あるRPGの中でも
 家族がプッシュされている作品で最も有名なのが「ドラクエV」なんじゃないかな、
 「MOTHER」シリーズも捨てがたいけどね』
『僕としては笹原くんがこの道に踏み込むきっかけになった
 作品を教えて貰いたいと思うけどね、ひょっとしたらくじアンかもしれないなぁ、
 千尋を見て「これは俺だ」とか思ったのかもしれないよ?』
『そういえば千尋の姉妹は外面(そとづら)はよくて、自宅では自堕落なお姉さんだったっけね、
 彼女の友達や彼氏付き合いの良さと、兄妹関係のギャップという観点はどうかな』
「……………」
『笹原くんの「お色気系好き」も、甘える事のできる母親か姉を求めている、
 って事で一応の説明は付くよね』
『そのまんまだけど、大きな胸は母性の象徴だしね』
「……でもそれなら大野が入学した時、何か反応があってもおかしくなかったんじゃないですか?」
『だって大野くんは現実だもの、笹原くんが求めているのは理想の母親像だよ?』
『でも海水浴行った時、大野くんの水着が見られなくて残念がってたね、彼にしては珍しかったな』
「じゃあなんでオギーには……」
『笹原くんが荻上くんを気にし始めたきっかけって知ってる?』
「……部室だったんですか?」
『いや大野くんから聞いたんだけどね、大野くんが荻上さんにちょっと大胆なコスプレさせたんだって』
『時期的にあれがきっかけだって大野くんは言うんだけど、そうだとすると笹原くんはコスプレを見て
 「現実にも想像と同じように興奮できるものがある」というのに初めて気づいたんじゃないかなぁ』
『他にも荻上くんに構いたいという気持ちもあったのかもね』
「と言うと?」
『笹原くんの場合は、自分が得られなかった愛情を、
 自分が誰かに与えることで充足させようとしたんじゃないかな』
『一見、守るまでもない頑なさ持った女の子が、実は脆い存在で、
 そんな子を自分が守ってあげられる……とまで言い切るのは無粋だけどね』
「……はぁ……」
『恵子くんが現視研部室に入り浸るようになったのも説明できるかもしれないな』
「そうなんですか?」
『これはさえないジョークだと思って聞いて欲しいんだけど』
「はい?」
『春日部さんに母親を見たのかもしれないよ?』
「ぶはっ!」「え――それはないですよ――!」
『だからさえないジョークだってば』
『恵子くんがコーサカくんにちょっかいを出すのも、
 最初はコーサカくんの外見が目当てだったかもしれないけど、
 目的が変化しているようにも見えるんだよね』
「どう変わったって言うんですか?」
『コーサカくんにちょっかいを出すと春日部さんがかまってくれるからじゃない?』
「……んなバカな……」
『だからさえないジョークだってば』『本気にしないでほしいなあ』
「……本気になんかしてませんよ」
『なんだったら春日部さんの感想も言ってあげようか?』
「……遠慮しておきます」
『コーサカくんもあれが天然じゃなくて抑圧の結果という事も考えられるし……』
「……いやホントマジでやめて下さいってば」
『……聞きたくなったらいつでも呼んでね』
「……覚えておきます」
『ちょっと話しすぎたかな』
「……そういえば斑目……」「いないし」
ぐったり疲れて、ため息をついて背もたれに全体重をあずける春日部さん。
何故か、久しぶりに煙草を吸いたくなった気がした。

斑目、恵子を見つける。
人気の無い場所で、斑目に背を向けて立っている恵子。
斑目が恵子に語りかける
「一体どういうつもりだよ……」

自分に納得の行く展開を思いついたら続く
ただしどっちに続くかわからん

Q&Aコーナー

Q:これってSSなんですか?
A:体裁はそうです
Q:本当は何なんですか?
A:げんしけん作品分析論です。でもマジに書いて本スレに投下してもキチガイ扱いされそうなので
  SSっぽくしてみました。SSスレならなんでもアリだろうし
Q:ネタは本気ですか?
A:本気です
Q:なんて途中からページ数構成やめたんですか?
A:途中まで普通のSSと思わせるための罠です
Q:続き書くんですか?
A:春日部&初代問答ならすぐにでも書けます、斑恵は正直難しいです

参考資料
岸田秀「ものぐさ精神分析」
本田透「電波男」
最終更新:2006年02月25日 01:28