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第八話・ペンダント 【投稿日 2006/02/20】

第801小隊シリーズ


「・・・君には人殺しはしてほしくないんだ・・・。」
誰だろう?私はこの人を知っているはずなのに、思い出すことが出来ない。
とても、悲しそうな顔をしている。
とても、つらそうな顔をしている。
場面が変わる。何か大きな機体の前に私とその人は立っている。
「・・・君が適格者だったとはね・・・。」
諦めのような、自嘲のような笑みを浮かべるその人。
その人のことを、大切に思っていたはずなのに。
私はどうしてこの人を思い出せないのだろう。
頭が痛い。割れるような痛みが走る。
大切な何かを、忘れている。
また場面が変わる。研究室のようなところ。
「・・・この機体は破棄するよ。これ以上戦争を大きくしたくない・・・。
 あいつも、納得してくれたしね。」
にっこり笑うその人。
ああ、そうかこの人は・・・。
そこまで出掛かってきたところでまた痛みが走る。
また場面が変わる。一人、私は研究室にいる。
急に大きな黒いものに覆われたかと思うと、意識が沈んでいった。
凍えるような思いを心に広げながら。

「・・・夢?」
オギウエはそう呟きながら目を覚ます。
自分が泣いていることに気付き、驚く。
「なんで泣いているんだろう。・・・思い出せない。」
さっきまで見ていたはずの夢が思い出せない。
体を起こすと、腕で涙を拭く。
「・・・昨日、あのペンダント見つめてたからかな・・・。」
ベッドの横にある棚の上に、淡いブルーの宝石が付いたペンダントが置かれている。
「基地で起きたときには持ってたものだけど・・・。
 これがなんなのかさっぱり思い出せないんだよなあ・・・。」
今までの記憶がないわけではない。
コロニー爆破事件で親を亡くしたこと。
皇国軍に入り、半年ほど訓練をしたこと。
一緒にコロニーで過ごしていた学友も、復讐のためにと共に入った。
・・・あれ?
「・・・なにか、ぽっかり開いている気がする・・・。」
思い出の中に、大きな空白。それを思い出そうとしても、出てこない。
一人分開いている。それが誰なのか、思い出そうとする。
「う・・・。」
吐き気をもよおしそうなほどの頭の痛み。
何かで記憶がシャットダウンされているかのような。
さっきの夢に関係があるような気もするのだが、頭痛はさらに激しさを増す。
「・・・違和感を感じるけど・・・。しょうがないか・・・。」
とりあえず立ち上がり、顔を洗うために廊下へ出る。
そう、ここは輸送船の中。個室に水道があるほど大きいものではない。
顔を一回ぱん、と張り、気合を入れる。
「よし、今日も頑張ろう。・・・私に出来ることを。」

ジムの補修にてんてこ舞いの整備室。
とっくに補修の済んだほかのMSは奥に詰め、総員で修理に取り掛かっていた。
「おーい、クッチー!そこそれじゃないだろ!」
「え!?そうでありますか??」
「おいおい、たのむぞ、そのパーツはガンダム用にカスタマイズしたもんだ。
 似てるがバランスが大きく変わっちまうんだ。」
「りょ、了解であります!」
そんな会話を外でしているのを聞きながら、ササハラはコクピットにいた。
別に修理をサボっているわけではない。訓練の時間として、認められている。
『大分落ち着いたようですね。』
「え?」
あの戦い以来、毎日訓練は行っていた。その合間もずっと会長とは会話してきたわけだが。
「・・・やっぱり気負って見えましたか?」
『ええ、まあ。いい意味で、今はいつものあなたです。』
「ああいう失敗をしてしまいますとね・・・。」
ササハラは苦笑いをしてその言葉を受け止める。
確かに、あの後多少気負っていたかもしれない。
「・・・自分自身が強くならないと、と思いまして。」
『・・・凄いですね。』
「え・・・?」
意外な言葉だった。会長は、AIとはいえ元はニュータイプと聞いた。そんな人から『凄い』なんて。
『・・・私は逃げましたから。そんな記憶がなんとなくですがあるんです。』
「・・・。」
『失敗を乗り越えて、さらに前に。・・・そのお手伝いを私にもさせてください。
 それはきっと、私自身のためでもあると思うのです。』
AIがここまでのことを言うなんて。驚きもあったが、どこか納得してしまう自分もいた。
このAIは人間味がありすぎる。ここまで一緒に会話してきてよくわかった。
何か大きなウラがある気がするが、それを考えても始まらない。
ササハラはその言葉に満面の笑みをして、こういった。
「もちろんです。よろしくお願いします。」

そのころ、オギウエは洗濯物を洗濯機兼乾燥機に入れていた。
「やっぱりこの人数だと大変だな・・・。」
そうはいいながらも、この仕事をすることが楽しい。笑顔がこぼれる。
自分に役目がある。しかも、こんな平和な。
向こうでの殺伐した生活とは違い、ここはとても落ち着いた。
特に、自分は・・・。
あれ?
また記憶が飛んでいる。なんでだろうか?
「・・・まあ、いいか・・・。」
とにかく自分のやることをやらなくては。
そういいながら一つの洗濯物を取り上げるオギウエ。
「・・・ん?」
その下には、古びた金属で出来た丸いものが一つ。
「・・・ロケット?」
ロケット型のペンダント。写真などを入れて保管するものだ。
誰のだろう。なんにせよ、大切なものだったら大変だ。
少しでも情報を得ようと、その中を見ることにする。
パカッ。
古い金属のこすれあう小さな音が聞こえると、写真が見えた。
「・・・綺麗な人だ・・・。」
思わず呟いてしまった。若い、一人の女性がそこにはいた。
誰かの想い人なのかもしれない。
・・・もしくは、だったのかもしれない。
オーノの「誰もが大切な人を無くしている」という言葉が蘇った。
それはともかくとして、持ち主に返そう。オギウエはそう思った。
「・・・とりあえずは洗濯物を片そう。」
そのロケットをポケットにしまうと、腕まくりをして作業を再開した。

「よーし、昼飯にでもするか。」
ふう、と汗のかいたおでこをぬぐうタナカ。
「・・・はあ、なかなか修理終わんないっすねえ。」
ササハラが苦笑いしながらため息をついた。
目の前にいるジム。ササハラが前回の戦いで半壊させたものだ。
見た目には大分修理が進んでいるように見える。
「誰が悪いんだ~?ササハラ少尉~?」
そのササハラにむけて意地悪そうな目線を送るマダラメ。
その言葉を受けて他の皆もササハラに視線を送る。
「・・・重々反省シテオリマス。」
「なーに、あとは足回りの確認だけだ。ダメージはないはずだったが、
 無理して動かしたツケだな。大分ガタが来てやがる。」
タナカがササハラを慰めるよう肩をポン、と叩く。
「やっぱり、無茶な動きになっちゃうんですね・・・。」
「ああ、あのシステムに機体の反応性が追いついてない。
 ・・・まあ、出来る限りのチューンアップはするけどな。」
困ったような顔をしながら、苦笑いのタナカ。
「ガンダムのパーツ流用してとか無理なのか?」
「それは無理ですよ。本体とのバランス・・・さっきタナカさんが言ってましたけど、
 それがめちゃくちゃになっちゃいますから。根本的に作り直さないと・・・。」
コーサカがそこで意見を述べた。
「コーサカはMS工学、研究してたんだな。」
「ええ、元々工学の知識はありましたし。MS自体は3ヶ月くらいですけどね。」
「コーサカの知識は凄いぞ。俺も知らんテクを教えてくれたりするからな。」
「設計がおもな仕事だったんです。・・・色々あってパイロットに戻りましたけど。」
(あれ?)
一瞬顔色を曇らせるコーサカ。その一瞬を見ていたのはササハラだけだった。
そのササハラも見間違いだろうと思い、そのまま気付かなかったことにした。
「ふーん。まあ、そのおかげで俺らも助かってるわけだしナ。」
そういって、コーサカの肩を叩くマダラメ。
「よし!飯行くぞ!」

「ウマ~~~~~~~~~~~~~~!!」
「あんた、毎度毎度大声出すな。」
天井を仰ぎながら大声を出すマダラメに、サキが突っ込みを入れた。
「しかしだな、うまいものにはうまいと感情を込めることはいけないことかね?」
「うまいと言うのはいい。だが、大声を出すな。」
「あはは・・・。怒られちゃいましたね。」
「むぅ・・・。」
いつものにぎやかな食事をする皆。
「あ、そうだ・・・。」
その中でオギウエはさっきのペンダントのことを聞こうと思い立った。
その矢先。
「あれ・・・?」
声を出したのはササハラ。何かを探すようにポケットをまさぐる。
「どうかしました?」
その焦りように心配そうに声を出すオーノ。
「いや・・・。ペンダントが無くなっていて・・・。」
「ああ、いつも持ってるロケット型のか?」
「はい・・・。」
ズキン。
オギウエの心が少し痛む。さっきのペンダントはササハラのものであった。
入っていたのは女性の写真。戦火にまみれた彼の故郷。
そこに、あの写真の人はいたのだろう。・・・どういう関係だったのだろうか。
「おいおい、部屋においてあるんじゃないのか?」
もっともなマダラメの意見に、ササハラもそうかと納得し、食事を再開した。
オギウエは、言い出そうと思っていた事が出来なくなってしまった。
タイミングを逸するとこういうことはかなり言い辛くなる物だ。
なぜ、そのとき黙っていたのか。そういう疑問が出てくることが間違いないからだ。
(しまった・・・。どうしよう・・・。)
そうは思っても、さまざまな思いが交錯し、ついに言い出せぬまま、食事は終わってしまった。

「う~ん?」
ササハラは部屋を徹底的に探したものの、ついには見つからなかった。
その悩み顔に、通りがかったサキが声をかけた。
「なに?やっぱりないの?」
「そういうこと・・・。」
困った顔で苦笑いをするササハラ。
「大切なものなの?」
「うん・・・。物自体も、中に入ってる写真もね。」
「そっか。じゃあ、探すの手伝ってやるよ。」
サキが笑顔で提案した。
「え。いいの?」
「まあね。男連中も忙しそうだし。オーノとオギウエに妹呼んで来て探そう。」
「助かるよ~。」

サキの要請にすぐさまやってきた三人。
「で、どの辺まで持ってた記憶があるんですか?」
「今日の朝、見た記憶はあるんですけど・・・。」
オーノの問いに、そう答えるササハラ。
「いつものようにポケットに入れて・・・。」
そういいながら洗濯物置き場まで歩いてくる五人。
「洗濯物出そうとここまできたんですよね・・・。」
(そのとき落としてかごに入っちゃったんだな・・・。)
そうは思っても、オギウエは声に出すことはできない。
「ふーん。あのさ、兄貴、それってあれでしょ?」
「・・・まあな。」
「そりゃ困ったね・・・。」
ケーコが兄がなくしたものの正体を知り、同じように深刻な顔になる。
(あのケーコさんがこんな顔になるなんて・・・。やっぱり大切なものなんだ・・・。)
そうは思いつつも、やはり言い出せる状況ではない。
「で、その後洗面所に向かって行って・・・。」
そういいながら進むササハラについていくしかないオギウエ。
その顔には冷や汗がだらだら流れてくるのだった。

「・・・で、クガヤマさんとここであって少し話した後、外に出て・・・。」
そういって洗面所を出るササハラと四人。
「あ、そうだ、そのときにクチキ君とぶつかったんだ。」
「そのとき落としたんじゃないですか?」
オーノの予想に、頷くケーコとサキ。
「あー、そうなのかな?でも、落ちてないよな・・・。」
そういいながらきょろきょろ周りを見渡すササハラ。
「・・・そうなると答えは一つ。」
「え?」
ケーコの言葉に、わからないといった表情をするササハラ。
「クッチーが持ってるんじゃない?」
「ええ?そんなわけないでしょ。そうだったらそう言ってる筈だし。」
ありえない、といった顔でその意見を否定する。
「うーん・・・。まあ、とりあえずクッチーに聞いてみよう。」
サキの言葉に、皆ひとまず整備室へ移動することにした。
(やばい・・・。クチキさんに疑いがかかりそうになってる・・・。)
関係ない人を巻き込んでしまいそうになりつつも、やはり言えない。
中の写真が誰なのか。それを知ってしまいそうで。
(誰だっていいじゃない・・・。)
そうはいっても、気になってしょうがない自分と知りたくない自分。
二人の自分が心の中で大戦争を繰り広げているようだった。
(馬鹿なこと考えてる場合じゃない・・・。本当、どうしよう・・・。)
「オギウエさん?」
オーノの言葉にビクッ!となる。
「どうかしました?」
「・・・いえ大丈夫です。」
様子がおかしいことには気付いてはいるものの、オーノは一応その言葉を聞き入れる。
「そうですか・・・。調子悪いようでしたら言ってくださいね?」
「も、もちろんです・・・。」
冷や汗をだらだら流しながらとぼとぼと四人の後を付いていくオギウエであった。

「え、部屋に帰った?」
サキが椅子に座っているクガヤマに聞く。
「あ、ああ、さ、さっき仕事がひと段落して休憩してたんだ。」
クガヤマはタオルで「ふぅ・・・。」といいながら汗をぬぐう。
「なんか変な様子なかった?」
サキが取り調べをするようにクガヤマに聞く。
「え、え?ま、まあ、ふ、普段から変なやつだからな・・・。
 た、確かに、さ、最近は特にそれが目立ってるかも・・・。」
あごに手を置き、考えるように呟くクガヤマ。
「そ、あんがと。」
そう聞くだけ聞いて四人の下に戻るサキ。
「部屋だって。最近ちょっと怪しいともいってたよ。」
「ええ?でもさ、それはいつものことだし・・・。」
クチキの奇行と奇言は慣れっこ、といった顔でササハラは呟く。
「最近は特にってさ。まあ、別に犯人と思ってるわけじゃないんだよ。
 話は聞いといたほうがいいだろ?」
「・・・まあね。」
五人はそのまま個室のほうへと向かう。

「な、なんでありますか?」
クチキは明らかな挙動不審であった。
(あやしい・・・。)
全員が全員そう思うほど何かにおびえるような顔つき。
「ササハラがペンダントなくしたの知ってるだろ?
 朝あんたとぶつかったとき落としたんじゃないかってことになってね。・・・何か知らないかい?」
サキがストレートにクチキに尋ねる。
「え、え、知らないでありますよ。」
「なんかあやしいね・・・。部屋、検めさせてもらうよ。」
「うぇ、ええ!?・・・まあ、どうぞですにょ・・・。」
クチキはしぶしぶ部屋へ五人を通した。

殺風景な部屋はどの部屋も一緒。皆はそんなクチキの部屋に入ることとなった。
「まあ、なんかあるわけないか。」
予想通りとはいえ、何もない部屋にため息をつくサキ。
「そりゃそうでしょ・・・。なんか大きな余計なものもって来る余裕はないよ。」
苦笑いをして回りを見渡すササハラ。クチキの趣味なのか、風景写真が張ってある。
デジタルカメラも一つ、無造作に置いてあった。
「これじゃ隠す場所も・・・ん?」
オーノが見つけたのは一つの小さい金庫。
「これ、何が入ってんのさ?」
ケーコが興味を持ったようで、その金庫を持とうとする。
「シャラーーーーーーーーーップ!」
大声でその行動を制止させ、金庫を奪い去るクチキ。かなり気が動転しているようだ。
「こ、これには触ってはいけないであります!」
「・・・あやしいねえ・・・。」
「・・・あやしいですねえ・・・。」
「・・・あやしいぜ・・・。」
サキ、オーノ、ケーコの三人にじわじわ詰め寄られ部屋の角に追い詰められるクチキ。
「これにはササハラ少尉のペンダントは入っていないでありますから!」
「なら見せてごらんって・・・。」
サキが子供をあやすような声でクチキに言う。
「う、うう・・・。」
うめき声を上げて詰め寄る三人を何とかかわそうと方法を模索するクチキ。
息を荒くしながら肩を上下させるクチキ。そして数十秒の間・・・。
「う、う、うおーーーーーーーーーーん!!」
耐え切れなくなったのか、大声で泣きながら走り出すクチキ。
部屋の出口へと突進し、その近くにいたオギウエにぶつかってしまう。
ドンッ!
「いたっ・・・。」
腰から倒れるオギウエ。その拍子に例のペンダントを落としてしまった。
そのままクチキは叫び声を上げ、金庫を抱えながらどこかへと走り去ってしまった。
「だ、大丈夫?オギウエさん・・・。」
オギウエに近寄るササハラ。しかし、その視線はその横に釘付けになった。
「だ、大丈夫・・・、あ・・・。」
その視線の先にあるものに気付き、顔が青ざめる。
「あ、あ、あの・・・!」
弁解をしようとしても、こういうときに言葉はすぐに出てこない。
ササハラはペンダントを拾う。視線は合わせない。
「オギウエさんが持ってたのか・・・。」
「言おう、言おうとは思ってたんですけど・・・。なかなか言い出せなくて・・・。」
もうどうしようもない。泣きそうな声になりながら言葉を搾り出すオギウエ。
非難を浴びる覚悟をして、オギウエはぎゅっと目をつぶった。
「・・・ありがとう。拾ってくれたんでしょ?」
思いもよらない言葉に逆に目を見開くオギウエ。
そこにはにっこり笑ったササハラがいた。
「え、え、でも・・・。」
「いやー、本当よかった見つかって。これ、親の形見なんだ。」
ロケットの中身を空けて、確認するササハラ。
いつにない優しい顔をしていることにオギウエは気付く。
「中の写真も母親。写真はほとんど燃えちゃって、残ってたのが若いころのだけでね・・・。
 俺ら二人は親父似だから似てないけどね。あはは・・・。」
「私は母さん似がよかったのになー。」
その言葉に反応して口を尖らすケーコ。
「そんな事いって、お前、ちゃんと自分の持ってるんだろうな?」
「モチのロンだよ。いくらつらくてもこれだけは手放さなかったんだから。」
ケーコもまた違う形のロケットを取り出す。
「あの・・・。本当に・・・。すみません・・・。ウェ・・・、エック・・・。」
たまっていたものがこみ上げてきたのだろう。
堰を切ったように泣き出すオギウエ。その様子を見たサキが苦笑いしながら一言。
「・・・後頼むわ・・・。」
その言葉を合図に、オギウエとササハラを置いて部屋から出て行く三人。
「大切なものなのに・・・。私・・・。ウェ・・・。」
「もういいって。別に怒ったりしてないよ。仮にクチキ君が持ってっても怒る気はなかったし。
 それに、実はこれね、オギウエさんに持っててもらおうかなって考えてもいたんだ。」
にっこり笑うササハラの言葉に、オギウエはさらにショックを受ける。
「え、でも、これは・・・。」
「いやね、これからよく出撃することになるだろうし、無くさない為にね。
 ・・・オギウエさんに持っててほしいんだ。」
笑顔の中に真剣さを含んだ表情を見せるササハラに、オギウエは言葉も無かった。
ササハラはゆっくりとペンダントを持った手をオギウエに差し出す。
「・・・わかりました。じゃあ、代わりにこれ持っててください。」
それを恐る恐る受け取りながら、意を決して自分の首に手を回す。
胸の中から取り出したのは青いペンダント。記憶は無いが、大切なものだというのはわかる。
これをもっていると、安心する。きっと、そういう効果のあるものだと思うから。
何とか泣き止み、それをササハラに向かって差し出すオギウエ。
「・・・お守りです。ササハラさんの無事のために。」
「・・・うん。」
そのペンダントを受け取るササハラ。少し、沈黙が続く。
視線が交わされる。何かが通じ合ったような気がした。
「・・・じゃあ、クチキ君に謝りに行こうか・・・。」
「そうですね・・・。」
冤罪のために嫌な思いをしたクチキ。彼には謝る必要があるだろう。
そう思って、立ち上がったオギウエ。
しかしそこに、緊急放送が入る。
タナカだ。
『おい、誰か来てくれ!クチキがジムキャノンに・・・おいやめろ!』
「ええ!」
ササハラは驚いた声を響かせた。

「おい、クチキ、やめるんだ!」
船内回線の近くからクチキに怒鳴るタナカ。
ジムキャノンはどんどんと出口へと迫っていく。
「もうこんなところいられないにょ~!!!出て行ってやる~!!」
そういいながら出口のほうに向かうクチキ。もはや何にも聞く耳を持たない。
顔は涙目であり、興奮したように荒い息を繰り返す。
「ば、ばか、や、やめろ!い、今結構高い所にいるんだぞ!」
同様に位置もは声の小さいクガヤマもあせって叫ぶ。
オートパイロットで飛んでいるため、細かい操縦が出来ないので、高度を高くしている。
「うるさ~いにょ~!」
そういって手動ハッチを動かし、扉を開けるクチキ。
「ば~いば~い!!」
そういって空へと飛び出すクチキ。その姿を、タナカとクガヤマは呆然と見ているしかなかった。
光のテールランプを光らせながら、夕闇のジャングルへとジムキャノンは消えていった。

次回予告

輸送船から降り、一人ジャングルをさまようクチキ。
ある村へとたどり着くことになる。
そこで出会った少女がクチキに向かって言った。
「あなたが勇者様ですね!?」

次回、「戦禍の村の伝説」
お楽しみに。