げんしけん近未来 【投稿日 2006/02/11】

カテゴリー-現視研の日常


2007年春――――

新入生・山田麻耶(やまだまや)は戸惑いつつも意気込んでいた。
ある種のサークルに入ると決意していたからである…。

『サークル入会の手引き』に載っていた一枚のイラスト。それに惹かれた麻耶は、
勇気を振り絞って、そのサークルの部室へ見学に訪れたのであった。
サークル名は「現代視覚文化研究会」――――。
しばらくの間、黙って会員達の談笑を聞いていた。
しかしやがて会員達は、トイレに行くとか用事があるとか言って出て行ってしまい、
部室には彼女ともう1人、一年生らしい女の子の二人きりになってしまった。

??「2人だけになっちゃったね、山田さん」
山田「は、はい…えと…」
??「あたしは北川ってんだ。よろしく!入会したのは昨日だけどね」
山田「よ、よろしく…北川さん」

北川の話によると、このサークルは今のところ一年生は彼女1人、
二年生は女性2人に男性1人、三年生はいなくて、四年生が1人いるらしい。
初めて部室に入った時、とても綺麗な金髪の外人の少女がいて驚いたのだが、
それが二年生の先輩で、しかも現会長と聞いてもっと驚いた。
さっきまで此処にいたのは二年生の先輩達3人だという。
四年生の先輩には、北川もまだ会ったことは無いそうだ。

着信音「♪シャア!シャア!シャア!」
北川「はいもしもし?」
山田(???何?今の着メロ…)
北川「え?…ああ、はい。すぐ行きまーす」ピッ
北川「ゴメンねー友達に呼び出されちゃって。あたしも失礼するわ。じゃねー」
山田「え…」

1人とり残されてしまった。

しばらく室内を見渡していたが、やがて視線は本棚の一角に釘付けになった。
山田(こ、これはもしかして…噂に聞く「やおい同人誌」…?)
一冊取り出し、パラパラめくってみる。
山田(わ…わ…うわわ…大佐と中佐が…す、すごい…もっとないかな…?)
ごそごそ。
山田(あ、スクダンだ…こっちはおおフリ…くじアンもある…」
ごそごそ。
山田(こっちもすごい…麦男くんと千尋くんが、こ、こんなことに…きゃぁぁ…)
表紙を見てみる。
山田(『あなたのとなりに 於木野鳴雪』…?)

ドア『ガチャッ!』

山田「!!!!!!!!」

勢い良く開け放たれたドアの向こうには、
二年生の先輩方3人と、帰った筈の北川が揃っていた。

山田「……(汗)」
ゾロゾロ
山田「…………(汗汗)」

会長「(ニヤリ)キミ!」
山田「………………(汗汗汗)」
会長「全部見セテ貰ッたヨ!」
山田「…………………はいぃ…」
会長「コノ本が気二入った様ダネ…やッパ同人誌はHardcoreに限ルよナ!」
山田「はうぅ………」
二年女「そんなに気にしないで。毎年やるのよこれ。私も去年引っかかったの」
二年男「俺も去年やられたぜ。ま、もっとも俺様ほどの達人になると、エロ本
     読んでるトコ見られようが竿握ってるトコ見られようが全く動じな…」
二年女「あ・ん・た・は・黙ってなさい!!」ドゴォッ!!
二年男「ぶべらッ!」
北川「あたしは引っかかってない♪」
会長「…とマア、 同 類 ッテ事デ!入会シテみちゃドウカナ?」
山田「はうぅ…はうぅぅ…………」

??「おーい。現役揃ってるかー?そろそろ移動の準備を…」
二年女「あ、春日部さん!こんにちはー。」
二年男「姐さん!お疲れさまです!」
春日部「姐さんはやめろっての。…ん?あんたらもしかして新入生?」
北川「昨日入会した北川といいます!よろしくお願いします!」
春日部「(き、北川…?いやまさかね…ブツブツ…)ああ、私は春日部。よろしくね」
    …で、こっちの娘はどうかしたの?」
山田「はゅぅぅぅ……」
会長「ククク…根拠ノ無いプライドが崩壊シタのデスヨ」
春日部「スー…あんた最近ホント斑目に似てきたよ」
二年女「春日部さん、もうOBの皆さんは会場にお揃いですか?」
春日部「それを言いに来たんだよ。さあ、みんなも準備して」
山田「…? みなさん、これから何かあるんですか?」
二年女「ああごめん!まだ言ってなかったわね。来月、私達の先輩同士が結婚するの。
     今日はそれを記念するパーティーを、現視研の仲間うちだけで開催するのよ。
     どう?あなたも来ない?」

会場へ移動する間、春日部が色々と話を聞かせてくれた。
今度結婚する二人というのは、今四年生の女の先輩と、その二年上で今編集者をやっている
男の先輩だという。女の先輩の方は、学生結婚ということになる。
一年半の大熱愛の末、ついに結婚に踏み切ったのだそうだ。

山田「素敵ですね…」
春日部「アハハ。素敵ねぇ…たしかに結果はそうだけど、そこへ至るまでに、
    さんざんてこずらせてくれたもんだったよ。あいつらは…。」

苦笑しつつも、楽しかった思い出を懐かしむように言った。最後の方は独り言のようだった。
麻耶は、改めて春日部を眺めてみた。
綺麗な人だ。服のセンスも抜群だし、化粧も自然な感じで決まっている。
山田(とても「そういう趣味の人」には見えないけど…)
その思考が、つい言葉になって出てしまった。

山田「あの…春日部さんも…オタクなんですか?」

春日部『ビキッ!』

二年女「キャー!春日部さんが石化したー!」
二年男「姐さんに対する禁句をサラリと吐くとは…こやつ世界を取るやも知れん!」
スー「マヤ…恐ロシイ子!」
山田「えっ?えっ?ええぇーっ????」
北川(この春日部さんって人…やっぱりお姉ちゃんが言ってた…)
春日部「とほほ…あたしは毎年、コレを言われ続ける運命なのか…」

そうこうしているうちに、結婚記念パーティーの会場である飲み屋に到着したようだ。
OBらしき人達が集まっている。

??「咲さーん!こっちこっち!」
??「おおー!なんか人数増えとるぞ!」

メガネの人、太った人、ひょろ長い人、胸のおっきな人…。
いろんな人がいるが、みんな明るくて楽しそうな顔をしている。
山田(よかった…このサークルでなら、本当の私を出せるかも…)
先輩達に暖かく迎えられて、麻耶もにっこりと微笑んだ。



あとがき:最初、ラブひな最終回のパロのつもりだったんだが、なんか中途半端になった…。
最終更新:2006年02月12日 04:11